誰に聞かせる 当てもないから
とわずがたりは いつも本望
人生なんて 泣けてくるほど短くて / それでなくても ままならないのに / 誰が頼んだわけじゃなし / 自分で好んで落ちた恋 / しらばっくれて ひねくれて / 挙げ句の果てに 棒にふる?
ぶどうに惚れこみ 甘いぶどうを作ることしか頭になかったひとりの男が / 畑のハの字にも縁のない 世間知らずの都会娘に惚れこんだ / もともと男は不器用で、無骨で えらくまどろっこしくて / 物腰だって言葉つきだって 洗練というにはほど遠いけど / だからって それがどうした? / これだけ潔く愛されたら / これだけありったけの力で守られたら / これだけ臆面もなく支えられたら… / 応えたくなる / 応えずには いられなくなる / 愛さずには いられなくなる
その男、名はハン・ミングク。 我が主(あるじ)にして、いわく言い難い“変わり種”。 しばしお時間いただけるなら、みなさまに我が主、お目にかけたし。
酔狂にも10年 / ひとりの女に死に物狂いで惚れた男が 望んだものはと言えば / 高慢と強情の鎧の奥深くに潜む 快活で聡明な女の魂が / いつの日か自らの意志で 己に寄り添ってくれること / ともに寄り添って人生を謳歌すること / ただそれだけだったのに
縁(えにし)を結んで 集った人を 家族と呼ぶと / 縁に引かれて 集った家族が 日々憩う場を 家と呼ぶと / 縁のあやに 笑って泣いて / その家で その家族らが / 歳月かけて紡いでいくもの / それが家門だと / 崇めるものでも けなすものでも 決してないと
サウサンプトンで/ポーカーに負けて 君を知らずに/あと数十年 平凡に/生きながらえるか フルハウスで/3等切符と君を得て 大西洋の/藻屑と果てて 甘んじるかと/訊かれたら あと100回でも/1000回でも フルハウスを/僕は選ぶ じゃなければ君に 出逢えなかった
身の程知らずの 男の衝動 / たがが外れた 男の狂気 / 何とでも言え 笑わば笑え / 異形の身でも 愛したかった
愛されて 言い訳する野暮 / 言い訳しながら 愛する無粋 / 金輪際 君には見せない そう誓う / だからこうして ここに立つ 原作“Je ne suis pas là pour être aimé” (2005年フランス映画/邦題『愛されるためにここにいる』)