合衆国の秘密組織《エスメラルダ機関》の研究が、不死の超人をアメコミの世界から現実に引きずりだした。 那智剣吾――彼はアメリカにその肉体を不死身の超人兵士に、その運命を戦う者に変えられてしまった。 最初はテロ事件の解決者として、次は主要国に牙を剥く、『自我を持ったコンピューター』の破壊の使命を負う者として、彼は世界中を飛び回る。 不幸な少女マリアと出会い、彼女の庇護者とならんと決意した時、彼はエスメラルダ機関と訣別する。そして自我を持つコンピューターに作られた超人兵士若林がかけがえの無い友として、彼とともに立つ。 この物型は、生きる運命を誰かに弄ばれることに抗う剣吾の、愛と、血と、暴力と冒険の黙示録である。
銀河系の中心に位置する人工惑星ギーンの酒場にて、宇宙の引き揚げ屋(スペースサルベイジャーズ)のマキタ・ソウゴは愛銃〈ハンディキャノン〉の一閃で、1人の女の危急を助ける。 だが、女がマキタに近づいたのは、目的があってのことだった。 銀河を舞台にした冒険スペースオペラ、ここに開幕!
マキタを罠に嵌めたのは、銀河屈指の富豪惑星ジュドー星当主のサビアだった。 連邦と組んだ軍事国家ラビド星に陥れられたジュドー星は、国の宝を譲渡しなければならない瀬戸際に追い詰められていた。ところが和平調停にて渡す筈の宝を持って、ここギーンに赴いた使者が、旅客船の事故によりある星に漂着してしまったと言う。 〈ブレイザークロス〉。連邦、帝国双方から畏れられる閉鎖星系にだ。 脅迫と表裏一体のマキタへの依頼は、その閉鎖星系から、使者と宝とを引き揚げるというものであった。 そして〈ブレイザークロス〉は、マキタにとっても特別な意味を持つ場所であった。 ビジネスライクに振る舞おうとしながら、実はマキタを憎からず思い、彼を大変な事態に巻き込んだことを悔やんでいたサビアに会うために、警備陣ひしめくホテルに、マキタは単身潜入していく。
メンバーと合流した際に第3のメンバー、オスカー・シュートも拾い、マキタの運命の場所、閉鎖星系ブレイザークロスにやってきたスペースサルベイジャーズ一行は、政府軍の巡回船団を襲う1団と遭遇する。 待ち伏せられ、返り討ちに遭いかけた海賊まがいの1団。しかしそのエースパイロットは、コイケを唸らせ、マキタも舌を巻く程の腕前の持ち主だった。その正体は、戦闘機乗りにはまるで似つかわしくない、少女と言ってもいい、1人の女。 彼女――エレナに先導され、マキタたちは閉鎖星系で唯一、星を開こうと政府に逆らい続けるレジスタンス〈ブレイザークロス開放戦線機構〉の拠点に向かうことになる。
マキタたちはひとまず開放機構の中に招き入れられた。 しかしすぐには信用を得られる筈もなく、時間ばかりが無駄に過ぎていった。特に開放機構の実質的リーダー、マイスコルは、マキタたち傭われ軍団に執拗に疑いの目を向けてくる。それもその筈、開放機構は少し前から、作戦という作戦を政府軍に読まれ、ことごとく返り討ちに遭っていたのだ。 もうこれ以上は待てない。コイケが決意したその時。 別の衛星上にあった開放機構の基地が政府軍に襲われた。生存者を乗せた輸送艇がマキタたちのいる開放機構本拠を目指して進んでくる。こちらの基地を敵に発見されないためには、彼らの犠牲もやむを得ないとするマイスコルに反発するエレナ。そのエレナに味方したマキタは、傭兵仲間アレクとともに、輸送艇救出のために愛機で飛び出していく。
信頼を勝ち取ったマキタたちのもとに、遂に開放機構からの、作戦への全面協力決定の報せが届く。 深まっていく交流の中、エレナがマキタのことを、〈あの男〉の息子であると気づいていたとコイケは知ることとなる。 そして、傭われ軍団の作戦遂行のための囮になるために、出撃していく開放機構の兵士たち。 だが、作戦が始まる寸前に、開放機構基地に政府軍と保安省の強襲部隊が入り込んでくる。 その侵入を許したのは、基地内部からの手引であり、思いもよらなかった裏切りだった。 マキタの、コイケの怒りが爆発する。そして遂にセカンドフェイス・オスカーがその力を見せつける時が来た。
閉鎖星系の政府軍大艦隊から辛うじて逃げ果せた傭われ軍団だったが、開放機構の協力を失い、作戦は八方塞がりの状況に陥った。政府軍をやり過ごすために潜んだ小惑星帯の中で、マキタたちはバロア帝国軍の超弩級巡宙戦艦デビアスに遭遇する。 皆が訝る中、マキタだけが確信を込めて断言した。「潜入工作員を救いに来たのさ」と。 それは開放機構を内側から分裂に追い込み、政府軍に入り込むことを画策していた裏切り者…。 その正体を知ったエレナの怒りが爆発する。 その頃、アーカム・ソールは着々と、閉鎖星系首都での情報収集を進めていた。 小惑星帯での傭われ軍団の大騒ぎが政府軍を動かした。まだ開放機構の生き残りがいると思わせることに、偶然ながら成功したのだ。僥倖に助けられた形ながら、コイケは主星ラドンの首都タキアスへの降下を決意する…。
マキタたちはクロムの先導で、遂にブレイザークロス主星ラドンの首都タキアスに降り立った。 そこで彼らは、“変わり果てた”アーカム・ソールと合流。彼の手引で内務省宿舎ビルに軟禁されるアリーゼ・サロイとの対面を果たすのだった。 しかしそこで彼らの侵入は露見する。迫る保安省暗殺部隊と殺戮機械クランゲージョ。必死に逃げるマキタたち。 エレナは自分が囮になることを決意し、独りグレイハウンドを首都の空に駆った。 もちろんマキタがそれを放っておくわけがない。愛機ジンリッキーでエレナを追う。 そしてそれは、彼がずっと夢見てきた、父を超えるための戦いに挑む瞬間でもあった。 2人はブレイザークロス総統庁に、比翼の突入を決行する。
マキタは遂に念願であったブレイザークロス総統庁突入をエレナとともに果たす。 障害・妨害を乗り越え、階上へと向かう2人を、総統グランザー自らが迎え撃った。超絶の力を誇るグランザーに、マキタたちの武器は一切通用しなかった。しかしそれでも、マキタは力の限り戦い抜き、とうとう力尽きる。 アリーゼ・サロイを取り戻したはいいが、マキタが戻らなければこの仕事を請けた意味がない。コイケはアリーゼ送還をレイバーたちに任せ、自らスプリッツァを駆り主星への突入を決意する。だが、それを仲間たちが許さなかった。俺たちはマキタと一緒に帰る、と。 口を割らないエレナに、マキタの拷問を見せつける保安省のハイマン。しかしマキタは死ぬような責めを受けつつ、エレナに笑いかけて見せる。 そしてコイケが遂に最終兵器の発動を決意した時、裏切り者がレイバーを撃った…。
ハイマンの苛烈な拷問にマキタが死んだと思い込んだエレナは、彼の生存を知るや否や、子供のように泣き出してしまう。そんなエレナをなだめるために、マキタはおどけて見せ、そして父親のことを語る。 その時2人の前に現れたのは、総統グランザーその人であった。 マキタ救出に動き出した傭われ船団を、ブレイザークロス首都防衛艦隊が迎え撃った。それも、全兵力を動員して。彼らは傭われ船団を対等の敵と見做したのだ。その大艦隊相手に、次元連動砲がその威力を見せつける。同時にセカンドフェイス・オスカーが単身、首都に突入した。 だが、敵も負けてはいない。帝国軍最強艦隊をも打ち負かした奥の手〈十字星〉が、そのヴェールを脱ごうとしていた…。 遂に決戦の時を迎えました。閉鎖星系での最後の戦いです。お楽しみ頂ければ幸いです。 ただ、物語はこの後もう少し続きます。おつき合いください。