ここは自分の生まれた国なのか、異国なのかよくわからない。けたたましい音に交じり、美味しそうな食べ物の匂いから、鼻につく香辛料の匂い、そして馬の糞の匂いまでが入り混じり、独特の匂いが漂っていた。
フィツエルネス――それは、ある男が運んできてくれた不思議な言葉。 鉱物と言われていること以外、謎に満ちているその言葉には、あのとき見た男の姿と同じ、壮大な何かが秘められている気がした。 宿屋で働く青年ペティアが、ある男との出会いをきっかけに旅に出る、そこそこ日常に近い物語。
ふと気がつくと、砂漠のまちにいた……。
異常な気候、ドーム型のまち、不思議な能力を持つ人々……。そして、人間はいつも、救いを求めている……。