第1の詩集です。
戦争の記憶が静かに息づくタイ西部・カンチャナブリ。泰緬鉄道の跡地に佇む神社で、筆者が体験した一夜の出来事――それは、煙草の煙に導かれ現れた英霊たちとの、哀しい邂逅だった。月影の下、川辺に漂う煙が呼び覚ますのは、帰れなかった兵士たちの声と影。痩せこけた若者、裸足の少年兵、包帯に覆われた顔――彼らは何を求め、何を伝えようとしていたのか。怪談としての緊張感と、鎮魂記としての静謐さが交錯する本篇は、戦争の悲劇と人の記憶にそっと触れる一篇。恐怖の奥にある哀しみと祈りが、読む者の心に深く染み渡る。