科学と神秘
「科学的方法と、オカルト的方法の違いは何でしょうか」
「オカルトとは神秘主義のことかね」
「はい、そんな感じです」
「まあ、世の中というか、この宇宙は神秘そのものなのだから、神秘主義でもいいのではないかな」
「その違いは何でしょうか」
「何の」
「だから科学と、そのインチキ臭い方法との違いです」
「どちらも方便かもしれんなあ。使い心地の違いだろう。長く使っていると信じてしまうもの」
「今は科学を信じている人が多いのでしょ」
「まあ、信じ切れるのはいいことじゃ。信じられるうちが花かもしれんのう」
「師匠は、科学を信じておられないのですか」
「科学信仰とはよく言ったものだね」
「そうですねえ。信仰じゃありませんから、科学は」
「君は神秘主義に興味があるのかね」
「はい、不思議なことに興味があります」
「不思議か」
「はい」
「森羅万象全て不思議かもしれんからなあ」
「そうなんです。これは決して信仰ではありませんが、科学的な方法とは別のルートがあるような気がするのです」
「それは昔からあったが、今は減ったのう」
「それらのマニュアルはないのですか」
「魔導書のことかな」
「はい、師匠ならご存じではないかと思いまして」
「それらは、既に世に出ておるので、魔導書というほどのものではない」
「既にもう民間に知られていると」
「ただ、それらは迷信として終わっておるがな」
「やはり、神秘主義はインチキだったのですか」
「そうではないが、使い方の問題だろうなあ」
「では、正しい神秘主義の方法はないのですか」
「それは万人には当てはまらん。個人的なことではないかな」
「やはり、無理ですねえ。だから、科学的方法が採用されるんですね」
「誰がやっても同じ事が得られるのが科学。神秘的な方法は個人にしか当てはまらん」
「分かりました」
「それで納得出来たのかな」
「納得出来ませんでしたが、私なりの方法を考えてみます」
「それがよい。万人に当てはめる必要はない」
「はい」
了
科学と神秘