「元妻」の左手は、遠い。 離婚した妻と私は、離婚後も結婚指輪を外さなかった。 しかし、久しぶりに会った妻の左手薬指から、指輪が消えていた。
二十三年ぶりに日本に訪れた「しっぽの日」、次に日本に訪れるのは十九年後。 ピークの二時四十分に向けて、彼らのしっぽが伸びてくる。 そんなしっぽの日に、好奇心を満たそうと画策する二人の会話劇。
彼らは、持ち主と見た景色を忘れない。 中古カメラ店のショーケースの中で、カメラたちが以前の持ち主との想い出を語ります。 彼らがどんな景色を見てきたのか、ちょっと聞いてみませんか?
鉛筆、消しゴム、三角定規…… 文房具たちは人知れず、動き出し、お喋りをし、時には恋もします。 彼らが生きる世界を、ちょっとだけ覗いてみましょう。
家出した弟がわたしの家に転がり込んで間もなく、使い捨てのマスクが切れた。 マスク作りを通して、わたしは弟に家出の理由を尋ねる。 彼なりのけじめをつけた弟の頭を、わたしはがしゃがしゃと撫でまわした。
自動販売機に話しかけたことはありますか? 彼らは言葉を発しません。ただそこにじっと佇んで、ぶいんと唸るだけ。 そうやって紳士的に悩みを聞いたり、弱音を受け止めるのが自動販売機なのです。 人生に迷ったら、自動販売機に打ち明けてみてください。
お喋りも上手にできない僕の自慢は、1つ年下の弟「タイチ」。 弟はみるみるうちに成長して兄を飛び越し、置いていかれた兄は弟を誇りに思う。 タイチ、おっきくなれよ。
出会えた喜びは、僕ら家族の喜び―― およそ1000文字の短いお話です。 皆さんも、家族との初めての出会いを思い出してみてください。