こんにちは パパでちゅよ

こんにちは パパでちゅよ

こんにちは パパでちゅよ

 初めまして。
 こんなに誕生が嬉しいし、感動的なことだなんて思っていなかったし、自分とこんなに見た目の違う姿の人がこんなに愛おしいなんて。
 僕は、もう一度、新しい家族の顔を見ました。僕らは至近距離で顔を合わせます。なんだか優しい匂いがして、懐かしいような温かいような。
 おぎゃあ、おぎゃあ。
 看護師さんが駆け寄ってきて、抱き上げました。
「ほらほら、パパとママがいまちゅよ~、よかったでちゅね~」
 百戦錬磨のベテランは、膝のばねと全身を巧みに操って、絶妙な揺れであやします。
「お腹すいたかな? ママのおっぱい飲もうか。はい、じゃあ、ママは服をまくって、おっぱいを出してあげてください。まだ目はあんまり見えてないから、口のところまで寄せてあげてね。そしたら自分で飲むから」
 初体験。上手にできるかな。
 これから毎日、数時間おきにやることだから少しずつ上手にできるようになっていこうね、と看護師さんは笑います。

 ふがふがふが。

 ぐびぐびぐび。

 ふがふがふが。

 それからゲップ。強さの加減がわかりません。看護師さんは、けっこう強く叩きます。ベテランさんがやることだから、きっと間違いないと納得します。

 ゲフぅ。

「あらあら、ちょっとゲロしちゃったわね、ママはこれで拭いてあげて」
 ガーゼでちょんちょんと拭きます。よくあることらしいので、これにも慣れていかなければなりません。汚いとか、気持ち悪いとか、そういうことではないのです。
 出産に際して、いつもより長い時間起きていたので、身体は疲れています。でも、こうして、お腹越しではなく、直接会えたことが本当に嬉しくて、それどころじゃあありません。
「はい、じゃあ、今度はパパが抱っこしてみようか」
 看護師さんが差し出します。
「まだ首がすわってないから、こうやって、そうそう、上手に抱っこできてますね」

 トントントン。

 温かい。親子って、こんなに温かいんだ。
 おくるみ越しでもわかる体温、脈拍、呼吸。手の大きさだって、全然違います。顔だって、まだまだ人間と宇宙人くらい違っています。それなのに、同じ家族で、同じ匂いがして、同じ温度があって、同じように呼吸して、同じように絶えず心臓がポンプしています。不思議ですね。

 トントントン。

 僕の耳に声が届きました。
「こんにちは、パパでちゅよ」

 パパ、ママ、これからよろしくね。

こんにちは パパでちゅよ

こんにちは パパでちゅよ

出会えた喜びは、僕ら家族の喜び―― およそ1000文字の短いお話です。 皆さんも、家族との初めての出会いを思い出してみてください。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-05-13

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