「菜の花が生けてあるのですよ」
「日はこんなに長かったですかなあ」
「ヤモリですかな」
町で羽振りのよかった高木だが、今は寄る年波で、現役から退いている。
「昼寝をしていて夢を見ました」
引っ越し先に予定していた賃貸マンションは市街地の端にあり、室田はその小さな駅に降りた。
「もう一つ深い階層とはどういうことでしょう」
「桜の花も散りましたなあ」
「何をどうしていいものか、最近分からなくなりましたなあ」
三好は寂れた町を歩いている。わざとそういうところを選んでいる。