一本の唐辛子が人生を変えていく! 1992年、タイ・バンコク赴任初日。エリートの自信を粉砕したのは、スクムヴィット路地裏のソムタムだった。 以来三十余年——水上タクシーの排ガス、深夜の屋台カオトム、ジャングルの食堂で突きつけられた「経済戦争」の皮肉な総括。胃袋に刻まれた料理の数だけ、男は日本人であることの意味を問い直してきた。 笑顔の裏に本音を隠すタイ人。夢を抱いて消えた日本人たち。そして静かに色褪せていく母国・日本。 定年を目前にした夜、健司は独り台所で青パパイヤを刻む。 三十年経った今も、健司にはわからない。自分がこの国を愛しているのか、それともただ——逃げられなくなっただけなのかを。胃袋だけが知っている、言葉にできなかった三十年を!
作者便り:当時の目の高さをもう一度感じたい。今の私なら屈んで合わせたあの目の高さで何が見えるか、確かめたかった】
小さい頃の夢って覚えてますか? 悩んだとき、夢のコンパスがあれば迷わなかったかもしれない。 時が経って変わらない3人の関係が織りなすささやかな物語。