ふたりは今日も何か言い合ってる。顔面に直撃したとか、血まみれになったとか、勝ったのは私とか、隠れて特訓なんてセコいとか、そんな事言ってる奴のがよっぽどケツの穴が小さいとか……。──まあ、付き合っているようには見えないけど……。
怪談のドキドキと先生に見つかりませんようにというドキドキと一ノ瀬君と一枚の布団の中にいるという嬉し恥ずかしのドキドキに、私の胸はもうドキドキドキドキ……。
だって一ノ瀬さん僕と違ってイケメンだし。背は高いし、お客さんの受けもいいし、僕の届かない範囲のものまで楽々手が届くし、僕の見えない店の奥まで見渡せるから、一ノ瀬さんがいると万引きの被害もないし、それに、西日が差し込む時には日よけにもなるし、それに、それに……