親子愛、父と子は互いの幸せを願う。 世界のすべてを知った少年は眠りから目覚めるために、繰り返される偽りの幸福で満ちた世界から去ることを決める。 だが、すべてを知ったとしても、全知にはなれない。
叫びたくても、口に詰め込まれた布がそれを許してくれない。可奈は、真っ暗な視界の中で必死に酸素を取り込んだ。かび臭いような、腐肉のような、不快な臭いが嗅覚を刺激する。自然と嗚咽が込み上げるが、この状況で嘔吐すればもっと最悪な事態を招くことは五歳の可奈でも十分に理解できた。/2019年製作。年齢制限なしでカニバリズムを書く試みです。
生きとし生ける者全て、使命を持って産まれてくるんだと私は思う。 ただし成すべきことを本人が理解できるかどうかはまた別の話。運良く到達したとして、運悪くビルから飛び降りたあとだったら意味がない。 その点、私は幸せ者だ。 /2019年製作。自殺がテーマのアンソロに寄稿予定だった作品です。
対岸の火事を見ている。それはことわざでも比喩でもなく、小高い丘に腰を下ろした喜多は、眼下に広がる民家がもうもうと煙を上げて燃えさかっているのをただ黙って見つめていた。/2018年製作。聾唖の女性と恋をするお話です。ややグロテスクなシーンがあります。
久しぶりに「死にたい病」が出たので書きました。 千葉県布良の浜は、布良星(めらぼし=カノープス)の見える北限です。 また、この地には海で死んだ漁師が寂しさのあまり、赤い恨みの星になって人を呼び寄せるのだと言う伝説があります。 連続する不審死はこれに関係するのでしょうか? ミステリー・ホラー。