杏樹。君が何かを隠していることは、寮のみんなが知っていることだよ。だが、誰もあえてそれを聞こうとはしない。寮にいるやつらはみんな人に言えない秘密や悩みを抱えているからな。──だが、君は少し違う
いいか。ここは墓なんだ。さっきだってあれだけの骨が転がってたんだぞ。生贄にされた霊もいるんだ。幽霊なんてそこら中うようよしてるんだよ
「僕はこの古代文字の解読をしたいんだ。君にできるか? 頭を使えないなら、君は体を使う。──それでいいだろう」 杏樹はあっさりとした口調でそう言ってのけた。麻柊は歯を食いしばり、拳を握りしめた。おそらく『玲』には麻柊を挑発するつもりはない。
最強の魔導士により異世界へ召喚された主人公コウは、攫われたお姫様を助けるついでに魔狼の子孫を倒す旅へ!やがてそれは、北欧神話の魔狼フェンリルとその拘束具グレイプニールを巡る戦いになっていく。
今まで歩いて来た方角などわかる者はいない。道を探すのに精一杯であり、地下の曲がった通路を歩いてきて、誰も今いる位置など把握していない。誰もが杏樹の並外れた、というより人間離れした方向感覚に言葉を失っていた
小さい頃に交わした約束を守るため、少年は再びこの街へとやって来た。 Bluebird同様、舞台は流星街。 少年は生きるために偽りを覚えた。 少女は生きるために孤独を選んだ。 これはそんな二人の物語。
櫂はそう言って黒い染みを手でなぞりながら口を固く結んだ。黒い染みの正体は少年たちの『血』だ
【完結済】 5年前ほどに書いたものに手を加えただけのSS集です。 第一話『小梅メランコリア』(しょっぱい恋のお話) 第二話『金木犀』 第三話『キミは風のように、あなたは太陽のように』(青春もの) 第四話『メロウの翠』(ホラー風味) 第五話『ポメグラネイト』(ファンタジー風味)
真夏の太陽が降り注いでいた森から一歩踏み込んだ先は、ひんやりとした冷たい闇だった。 固く敷き詰められた石畳に足音がやたらと響く。徐々に涼しいというより寒くなってきた。 声を低くして櫂が振り返った。闇の中に琥珀色の瞳が光る。睨まれた聡は口元を隠した。