2011年。冬休みに一時帰国した音楽院生・蘭は24歳のクリスマスに実家の引き出しから携帯電話を見つける。 高校入学の記念に買ってもらった初めての携帯電話。その中には高校時代にお遊びで作曲した「無題」が残っていた。 ありがちだが耳触りのいい変ロ長調に含まれる暖かさに、懐かしい記憶が甦る。 平成~令和を音楽と共に駆け抜ける蘭。そして、彼女を取り巻く者達の群像劇。
時系列は2000年夏、東北。 「雪と花の狭間に」の前日譚。 中二の夏。一哉は蘭を喪う悪夢にうなされる日々が続いていた。 二年生に進級して以降、蘭が同級生からのやっかみを買い吹奏楽部を追い出されたと耳にしたからだ。 一哉との逢瀬で一時の楽しさを得ても、癒えたはずの心の傷の痛みに再び苦悩する蘭。 起きてしまった過去は変えられない。 ならば、悲しい過去を楽しい思い出で塗り替えよう。 君を呪縛から解き放つためならば、俺は何だってする。
「殺されるか監禁されるか、どちらが好みだ?」修学旅行先の出雲大社で少年にそう囁かれた後、幽子(ゆうこ)の信じていた日常は終わりを告げた。 何かの冗談だと思い、あの言葉をすっかり忘れて登校した幽子を待ち受けていたのは転校生として現れたあの少年だった。武瑠(たける)と名乗った彼は幽子に契約書を渡す。そこには幽子と彼の両親が結んだ契約であること、そして幽子が15歳になったら彼の両親に幽子を預ける旨の文言が連なっていた。 武瑠の正体は影で帝に仕え、仇なす存在から帝を守る家の末弟だった。そのため帝に敵対する存在に近い幽子を監視するために転校してきたと告げられる。 幽子は彼の家に迎え入れられ、毎日封印を施され、霊力制御を彼の協力の下行い、自らの内にある怨霊を封じ込めにかかるが、彼女を疎ましく思う一派が現れて……? 日本神話ファンタジー、ここに開演!
七年に一度、宇侘(うた)八幡宮で奉納される猿楽(さるがく)『紫桜(しざくら)』。 大学生の僕・森崎浩司は、この珍しい伝統芸能に心惹かれて山間の温泉郷・深津峡(ふかつきょう)を訪れた。朗らかな女将(おかみ)の蘭さんと、その娘で責任感の強い水菜さん、天真爛漫な果林ちゃん、そして白装束に身を包んだ桔梗さんという個性的な三姉妹と出会った僕は、いけすかない写真家・妹尾(せのお)夕介に振り回されつつ、猿楽『紫桜』上演に立ち合う。 そして僕は、決して出会うはずのなかったある人物と出会うことになったんだ──。 ──幽玄のしらべに少女たちの物語が響き合い、此岸と彼岸が接するとき、止まっていた時が静かに動き始める── 山深い温泉郷を舞台に、薪能(たきぎのう)をモチーフとして展開する、長編青春小説! 【2016年2月15日全面改稿出来】 ※ 縦書き閲読推奨。
原案:死にたくないけど仕方ないから死ぬ覚悟をしたのに死にたくなくなってしまった話 明日を迎える事が出来なくなってしまった2人の物語
1997年。父の仕事の都合で新潟から福島の小学校への転校した一哉は信濃川の桜を懐かしみ、転校先の学校でできた友達に教えられた松川の桜の下で一人の少女と出会う。 プルシアンブルーのワンピースを着た、高潔な美を纏う少女に少年は恋を覚える。