鐘の音

今日もまた、どこかで鐘は鳴るのでしょう。

この鐘の音(かねのね)が聞こえますか?
この鐘の音はなんですか?
ああ、それは希望の音さ。
ああ、これは情熱の音で、
そしてこちらは安らぎの音。
優しく応える声がした。
嬉しくなって問いかける。
ではこの鐘の音は?
君は知らなくていい音だ。
ひどく冷めた声がした。

ああ、それは疑心の音。
こちらが嫉妬で、あちらは欺瞞。
そしてこれがー。
耳を塞いで走り出す。少しでも長く逃れたくて。
絶えることなく、鳴り響くは鐘の音。
なんて寂しく、なんて虚しい。

この鐘の音が聞こえますか?
この鐘の音はなんですか?
そんな音知らない、聞こえない。
震える声は、鐘の音にかき消された。

この鐘の音が聞こえますね?
この鐘の音はなんでしょう。
少し懐かしいその声は、ひどく悲しげで。
ああそれは、崩れゆく音。
僕らに捧げられる、さよならのうた。
疲れたように笑いながら、君がそっと吐き出した。
君がいたその場所に、小さな鐘が落ちていた。
拾い上げて振ってみる。
そこにはただ、無音が響くだけだった。

鐘の音

鐘の音

あなたのもとに降り注ぐ鐘の音が、幸せに溢れていますように。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-01-06

CC BY-NC-ND
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