「何年かに一度、波が虹色に見えることがあるんです──」 奇妙な言い伝えを信じて浜辺に通う紗雪と、人の記憶を蒐集していたとされる高祖父を持つ透子。 海は優しいようで冷たい。美しいようで恐ろしい。 ざざと波が鳴るので、私ばかりが淋しい。
これが、医療現場のリアルーーーー。そこには、本来思い描かれるような崇高さも、高尚さもない。ただ歴然と横たわる『現実』。 綺麗事だけでは、いずれ破綻することを誰もが実感している、現場の空気。現役医師が伝えたい、医療の現実がここに。国民全員に読んでもらいたい、衝撃の医療物語である。
(幕末明治維新に限らず世を変えてやろうと血気盛んな人達はいつの時代もいるものでして…)、その顛末やいかに。400文字以内のショートショート落語臭。とても短い創作落語。
おい、虎太郎、おめぇも見習えつーんだよ。何をだい? 見てみろ、あそこに座ってたお坊ちゃま。ご婦人に席をお譲りしたじぁねぇか…、その顛末やいかに。400文字以内のショートショート落語臭。とても短い創作落語。
失業した妻子持ちの男が、日々の生活に困窮してたどり着いた先は国が自殺を公に認める自殺幇助ボックス。この完全に密閉されたボックス内で、男は睡眠薬と一酸化炭素による自殺で苦しまずに死ねるはずだったが、システムの誤作動で生きたまま狭く暗い空間に閉じ込められてしまい、生と死の間でもがき苦しむ。
(いつの時代も流行言葉がありまして、昭和では「ナウい」なんて言葉も流行った訳ですが…)、その顛末やいかに。400文字以内のショートショート落語臭。とても短い創作落語。
「50になったら必ずだ・・・・・・」 彼女へのクリスマスプレゼントを買いに吉祥寺の街へ出かけた青年には、以前から数取器を使って正確に数えておきたいものがあった。 それは自分以外の他人に感じる悪意で、青年はそのカウント数がもし50に達したら、世直しのために吉祥寺の街で無差別大量殺人を決行する事を自分に課していた。 平穏無事にプレゼントを買って帰宅する事を願いつつ、行く先々で他者に配慮のない人々の迷惑な行動に遭遇して神経をすり減らし、次第に増えていくカウント数と共に膨らんだ被害妄想を一人抱えながら、とうとう限界値の50カウントを迎える。
ご隠居、鹿に土と書いて何て読むんだい。八つぁん、お前さんはいつも唐突だねぇ、まぁいい教えるよ…、その顛末やいかに。400文字以内のショートショート落語臭。とても短い創作落語。
一家団欒を避けるように、夕飯を終えた茶の間に出て来て晩酌を始めた祖母の、酔っぱらって振り返る過去の不遇と奇妙な出来事が、サルの生態を追ったドキュメンタリー番組に被さって、ぶつぶつと孫に語られる。
普段から理性的な思考で非科学的な現象に納得のいく答えを見いだしていた男が、「格安ならば・・・」と、借りたいわくつきのマンション物件で、自分の理性を越えた圧倒的な負の臨場感に飲み込まれていく。
新興宗教で発生した集団変死事件。遺書として教祖の半生と教団の変遷を綴った教団幹部の手記が、事件の手掛かりとなる教団の神とその神の真実を顕わにする、和製クトゥルー神話。
山間の田舎町で、将来に漠然とした不安を抱えていた高校三年の敦彦は、自宅の部屋の窓から公衆電話で援助交際をしている幼馴染のエツ(悦子)の姿を目撃する。 異性で唯一親交のあるエツに以前から思いを寄せていた敦彦は、嫉妬心から電話ボックスのエツを視姦して自慰行為に及ぼうとするが、エツの鞄にぶら下がった不可解な赤いお守りをきっかけに、夏の夜の神社で体験したある出来事を思い出す。 それはエツの後ろめたい家庭事情が引き起こした暗い事件で、敦彦はそれが天真爛漫で妙に成熟したエツが生まれながらに持つ深い業のせいだと知る。 自分を縛る環境から逃れるために町を出て行ったエツを、周囲の人間はただの不良少女として簡単に扱おうとするが、敦彦だけはいつまでもエツを擁護しようと心に誓い、卒業式の日に前からどうしてもエツに聞いておきたかった事を聞くためにエツに最後の電話をする。