夜行、朝日の物語

海の向こうの東の空が白んできたのを僕は、漁港の堤防に座って眺めていた。心は穏やかだった。だけど太陽が水平線から顔を出した瞬間、僕はとてつもない吐き気に襲われた。海に向かって思い切り嘔吐した。何度も嘔吐し、胃の中に何もなくなるとようやく落ちついた。僕はそのまま海のすぐ横に膝を抱えて座った。僕はきっと死ぬ日まで指折り数えるんだろうな。だって僕はあの時人を殺したんだから。
 僕が顔を膝の間に埋めていると、カラスがやってきた。母ガラスだった。「おやおや、坊やどうしたのよ、くらい顔して。今まさに一日が始まったところじゃない」僕は最初カラスが口を聞いたとは思わず、びっくりして辺りを見渡した。だけどあたりには僕しかおらず、幻聴かと思った。「あらあら思春期なの?返事してくれても良いじゃない」と今度はもっと大きな声で聞こえた。間違いない。今度はどういうわけだかすんなりと、カラスが僕に話しかけた事がわかった。

夜行、朝日の物語

夜行、朝日の物語

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-02-03

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