ノヴィ・カニィ

ノヴィ・カニィ

雨は深海

まだ薄暗い朝、雨がしとしと世界を埋めている。 雨に埋め尽くされている地上と天空にイメージを走らせると、地上が雨に埋もれた、深海と似ていると気がつく。 分厚い雲に光は遮断されて深海魚のように、生きている自分たち。 けれど、人々は海の深海には研究熱心だが、隣同士にいる雨の深海の、地上の僕たちには研究熱心とは言い難い。 その目を瞑って生活しているここの人々に、僕は不思議でたまらなくまた雨に思いを馳せていく。

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果てしなき-童話的な-

ひと夏の蝉のセリフ。 蝉からみた、猫やゴキブリを通して見える、人の接し方の絶望的な差。 同じ命というけれど、という、蝉の声にのせて。 陽気に、皮肉にうたいましょう。

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語りき

支配者は壁をつくりガラスで覆っていく。しかしそれは台風の風や雨には通用しない。 ひっかかること。それが、この世界をぐらりと揺らすことになる。 支配者は奴隷や使用人に命令し、飼いならしている気でいる。 しかし、現場を知らない支配者は、逆に支配されている。自分の意志というものの所存に関係してくる。 いくら、スマートにふるまっていても、台風がくればそれは一瞬に砕け散る。 常に自分以外の外部の者が下した中にいる。その既存の中で生きる我々は、自分の人生を歩むには、無意味の意味を提示することが不可欠になる。 しかしそれも含め台風のなかの目的というものに縛られていても、それは目的の奴隷のままだ。 だから、偶然の足で踊ることが、自分の意志で決定を下すことだ。言葉はただ重たい者のためにある。重たい者が扱うの

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四重夢

夢の中で、夢と気づき、けれどそれもまた夢の中。 昔の話し。

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木枯らしに吹かれて-文語的叙事文-

冬になって葉っぱを落とした、樹たちは枯れ死んだと思われて、そうそう抜かれないと思っていたら、結構抜かれてしまって、代わりに、街灯という外炉樹があたりを埋めていた。 その者たちの言葉はほとんどわからず、テカりものの常用広葉樹さんたちも困った顔している。 夜長に思いを巡らせても、世を間違えたかのような感覚になる。 ほとんどを概念化された物事に追いやられ、ただ夜空を眺めることも遮られてしまう。夜だというのに、活動したいという概念が、明かりが澄み切った漆黒の夜空の邪魔をする。 しかし、自分が歩んできた自然とともにある感覚である、直感を大切にしたほうがいいと訴えてくる。もう自分の中の自然を踏みにじりたくないのだ。

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転がっている

心が硬直して、かさかさになって、訳が分からなくなって、けれど何か大切なものがどんどんこぼれていくような気がする。 そんな時、あがいていろんなことしてみるけどしっくりこない。歩いてもみる。 いつもの光景の道。けれど、何かに目が留まって、一気にこみあげてくる人間的な思い。 その息吹があるから生きられているようなもので、だけど、それが一体なんなのか、定かではない。 だから掴もうとそっと手を出す。なかなか難しいその作業。 けれど、それは大そうなものじゃなく、ほんとそこら辺に転がっているもので。 なんでもない変哲のないものを愛せるものが、言葉を物語を紡げるのだと思う。

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雑草という名の

更地に草が生えていました。単なる雑草でしたが、ある一つのものだけ、ほかのものがグングン背を伸ばしているにもかかわらず、同じ背丈でした。 いっこうに伸びもせず、花を咲かす準備もしません。 それを不思議に思ったトカゲはそれを問うと、どうもどう咲かすのかが分からずに、そのままでいるらしいのです。 途方にくれているうちに、周りの同じ草たちは、花を咲かせました。 それなのにその草は、大きな成長は見てとれません。 けれど、嵐が過ぎ去った日のこと、ほかの草たちは全部風に吹かれてしまっていたけれど、その草だけが無事にいました。 驚いたトカゲはその草の今の花が何かを感じ取ったらしく、挨拶をして去りました。

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ありんこと僕

松林にいる僕はありんこを眺めている。ありんこは自分の体の倍以上もある荷物を忙しなく運んでいる。 自分の指人形でもすぐの距離を、せかせかと休むことなく運んでいく。 手を地面に当てると、周りのぬるい空気とは異なりひんやりとする。松葉が落ちて地面にも刺さる。松葉の絨毯。 地面からあげた手を見つめると、砂がついている。 けれどすぐに乾き、風に吹かれるまま手の上で砂は踊りだす。 皺のないところについていた砂だったけれど、砂はあっという間に皺の線に沿っていた。砂でさえも、既存の線に沿うのかと、僕は手を握り締める。 そのころにはありんこは見当たらなくなっていた。

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お月さんとお天道さん

明るさが君を傷つけたとして、僕はそれを恨むだろうか。暗さが君を引っこ抜いたとして恨むだろうか。 なんで隣にいて、何もできなかったか後悔するのだろうか。恨みもするし、後悔もする。 しかしその起伏を起こさせる物事は、常に規則正しく世界を回っている。 メビウスの輪のような世界に、いつの間にか誘われ入り込んでしまっている。 僕は、色んな葛藤をしていく。陰陽は常に、悠然とただ回っている。 見るたびに僕は思い起こすことになるけれど、いつか忘れて見ることという行動だけが、残る。 そしてなんて綺麗なんだと思うだろう。その両極があってこその世界なんだ。 そしてまた同じことを繰り返していく。それもまた綺麗なことだ。

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炭素君

彼は物書きをしている。 僕の体は削られて、紙君の上にすらーっと並んでいく。いろんな発見で驚きっぱなしだった。 僕はシャーシンと呼ばれて、いつも一緒の紙君とのつながりが何かしらあると感じている。それを確かめたくて仕方がなかった。 えんぴつ君や墨さんのことで、僕はそのつながりが何かを少しだけわかってきた。 なかなか聞けずにいた紙君に、直接それを聞くチャンスがきた。すると、紙君は親切に答えてくれた。 そして、シャーシンの僕は、彼とのつながりもあるとしっかり感じていた。

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