一日。-ドキュメント的に-

ただ、ふと、「仕事として、戦場に赴くことが当たり前の生活」は、今の日常生活とあまり変わらないのではないか?
と思って書き出した。それはこことかなり繋がっているということも。
ただ会社などの職場でなく、ただ戦場が仕事場であること。

常識は変わる。時と場所によって・・・。

   【W1】
 「今日は50人しか、しとめられなかったな。」
 父は機関銃を壁に掛けかけて言い放った。僕は別の銃の手入れをしていた。内心、僕は父と同じ心境だった。けれど、敢えてこういった。
 「それでも凄いじゃん。昨日は100人近く。その前は100越え」
 それに対し、父は頭を撫でてくれながら、笑顔で言った。
 「ありがとうな。明日はもっと頑張るからな」
 僕は、誇りに思い、笑顔で返した。すると父は僕の仕事の具合を聞いてきた。
 「大丈夫だよ! 今日だって、誘い込み6回も成功したし、もう売人の人たちにも僕のこと知れ渡ってるし。なんだって僕は父さんの息子だもん」
 そういっていたら、母が口を挟んできた。
 「全く、あんたたち働き過ぎだよ。もう少し肩の力抜いたっていいんだよ。適当にしてたって、食べるに困らないんだから」
 母はいつも、こうやって労ってくれる。
 「少しでもいい生活をさせたいだけだよ。これが俺らの仕事だからな」
 そう父は母の言葉を有り難く受け取りながらも、理解を求めていた。僕は少しだけ疑問に思ったことを口にした。
 「ねぇ、父さん。仕事で使うこの銃とかの武器だけど、壊れても壊れてもなんでいつも新品が揃っているの?」
 「それのことか。どこからかは知らないが、とにかく配給されるんだ。だから仕事道具には全く困らんな」
 そういって、父も母も大笑いしていた。


    【W2】
 テーブルには小綺麗なお皿に料理が並べられていた。そんなものには飽きたらしく、見向きもせずにお肉を指したフォークで遊んでいる少女。
 「こら、お洋服が汚れるでしょう。おやめなさい」とマダムがいった。それでもやめない少女にマダムは使用人を呼んで、やめさせるように指示を出した。もうその皿はさげちゃってと。少女は、
 「もっと遊ぶー、返してよー」
 と泣きはじめた。これにはマダムも困り果てたようで、夫に電話を繋ぐよう使用人に言った。すると、電話越しの夫は、どうでもいいような口調で、なにか買い与えなさい。もう議会が始まるから、後は使用人にでも対処させなさい。といってぷつりと電話を切った。
 マダムは少しは私の苦労を労ってよねとつぶやき、ため息をつき、自分は使用人に爪の手入れをさせていた。泣き止まない少女はそのまま放っときながら、自分の手の甲を突っ張り眺めながら。その指には、当然のごとく宝石がきらびやかに輝いていた。マダムはその輝きにうっとりしていた。

    【W3】
 実験がしたくてたまらない科学者。いかに簡易的に殺せるか、それを追求していた。軍事産業という分野の彼は熱心に、日々模索していた。ひとつの試作品が出来上がれば、実践で使いたくなるのが、研究の性である。だから今日も、実践を終えて収集したデータと睨めっこである。ただ純粋に良いもの、安全に使いやすい武器をつくれるか。それだけだった。経費は気にしなくてよかった。
 なにせ、こういった産業も、日常生活へと技術は反映され、生活が実にラクになっている。GPS機能や通信機能はその周知の一つだろう。だからどんどん予算もとれ、研究・実践まで行えて、そしてそれを巧みに口述する議員というヤツラがいる。
 そんなやつらがどうしていようがどうでもよかった。自分は探求したいだけだったから。いいデータがでたら、それはなによりの喜びだった。

    【W4】
 パソコンにへばりつき、外に出ても携帯を片時も離さずに、闊歩する大学生。ファッションのことや今の流行を逐一チェックしている。興味のあることは直に手に入る。言いたいことがあれば、つぶやくし、メールすれば、大抵友達と話せる。ストレスも発散できる。腹が減れば、また何か買いたければ、クリック一つで済む。僕の関心は政治だとか、世界がどうとか、そんなことどうだっていい。けれどそうじゃいかんらしいから、一応情報もチェックしてるよ。ほらこんなにも知識を持ってる。だから僕は責任も果たしているし、誰にも迷惑かけていないのだから、なにもとがめられることは無い。
 こんな単純なことを、他の騒いでいるヤツラはできないらしい。全く低能だ。僕は悪いことは何もしていない。騒ぎすらもね。言いたいことがあれば、書き込めばいい。わざわざそれ以上の労力をかける必要はないでしょう。

    【W5】
 背広を着たその男はモニターを見続けていた。でっぷりと肥った腹を抱えながら、額には汗を流し、頻繁にそれを拭い、片手でハンバーガーを。椅子に座ったまま目はモニターを見続け、なれた仕草で、引き出しからサプリメントを取り出し、コーラで流し込む。
 その合間に、PCのキーボードをカタカタならし、「うむ」と納得していた。モニターには、ただ線が上下に揺れながら、流れていった。
 電話が鳴った。男は生返事をしながら、対応していた。終えた瞬間には、「あのブタやろう。未だに議員にべったりか。いくら渡してんだか」と愚痴っていた。
 その男は、椅子を立ったと思えば、外に出て車を走らせ、ジムで適度に汗を流してシャワーを浴びて、またモニターの前に戻ってきていた。

    【W6】
 スーパーには大安売りの広告が踊っている。実に安い。ファストフードは至る所にあるから、つくる必要もないかもしれない。そっちの方が安上がりだ。一応国産だって記してあるし、大丈夫でしょう。家計のやりくりもあるんだし、大変なのよ。けど、私だって息抜きは必要よ。だって人間だもの。当然の権利でしょう。
 だから、外食もするの。欲しいものも買うの。それは趣味だから、人に何言われる筋合い無いわ。だって私の権利だもの。趣味なんだから、誰にも迷惑かけてないし。というか、不景気な今の時代に、こうやってお金使ってる私は、社会貢献してるんだから、誉めて欲しいくらいよ。

    【W7】
 輸出。これは正当で重要な収益だ。この収益が無ければ、いやこの食料の自給力が無ければ国力は下がるし、なめられる。俺らがつくる農作物は、直接人に回るし、また家畜にも回る。飢饉がいまだにあるこの世では、いかに効率よく作物をつくれるかがカギなんだ。だから、大規模に行うし、政治家も後押ししてくれる。立派な行いだろう。環境にも配慮しているしね。通信技術の発達で、余計なコストも省けるようになった。
 それを開発してくれた、軍事産業には頭あがらねーなぁ。俺らは何も悪いことはしていない。食べるという根本に大きく貢献しているのさ。

    【W8】
 この社会をどう上手く回せられるのか。政治家はまったく悩ましい。消費しなければ経済は回らないし、そうしなければ民間人は職を失う。貧困に陥ってしまって犯罪も増えてしまうかもしれない。悩ましい。
 だから俺ら政治家は、少し特殊な扱いをしなければならない。必然なのだ。我々は国民のためにそうしているのだから。色んな産業に手を回し、それをいかに売り込み資金を稼ぐか。すべては国民、もっと言えば世界のためなのだ。
 我々はより大きなものを抱えているのだから、少しの影は生じてもそれは仕方が無いのだ。全ては国民の生活のためだ。
 だから、他の文化がどうかはねじ伏せればいい。文化を操作すれば、色んな品が売れる。牛を、穀物を売りたいのだ。それ以外を消費する地域は、なんとでも理由を付け責めればいい。それが正攻法だ。
 農畜産業の方々もいうだろう。売り上げが上がってウハウハだと。今季は何万頭も出荷できたよと。

    【W9】
 会社員は、節約のためファストフードにいく。どこ産だなんて大体予想もつく。そんなことよりも、自分の生活がかかっているのだから、安いにこしたことはない。俺がそれらを選ぶことで、それで誰かが死んだか? 俺は人殺しなんて犯罪を犯してないのだ。何も悪いことはしていない。そもそも、そんなこといちいち構ってられるか。俺は忙しいんだ。そんなことに構ってられるか。
 募金だってしてる。それをしているのだから、楽しんで生活すれば世界は潤うだろう? 笑顔になれば、広がって皆笑顔になるしな。
 好きなことをして何が悪い。法の枠ははみ出さないさ。自由の権利はあるだろう。
―――その募金は、”募金”だけでなく、日頃の行いは武器を与える”募金”にもなってしまっていることもある。だから言うのだ。

    【W10】
 僕らの行いはどこかで集約していく。それが武器がつくられ、どんどん水面下で売買が行われ”配給される”。そこで政治家は、それを悪として自分の正義をこれ見よがしに振る舞う。これが正当法なんだと。変わらないそれをみて、諦めの大人は倣う。それが広がり、社会人から若者まで、情報の鎧をまとう。
 したたかな人間は、そういった仕組みを利用して、武器をつくりそれを送り配給する。そこで血が流れる。それはモニターで眺め、データとしてだけ取り扱う。
 ―――自らの手を汚さずに、世界の支配者の気でいる。コントロールしていると。
 ―――そして、我は犯罪や、まして殺しはしていない、というだろう。だが、加担していることには目を背ける。じゃあどうすればいんだと腹を立てながら言ってくるであろう。忙しいんだ、事実社会はそうなっているんだ、ともいってくるだろう。

    【W11】
 もし、あなたが手にしたモノゴトに印があって、それがどこへいくのかが分かったとき、どう形を変えていったのか知ったとき、それでも、あなたはそういえるだろうか。責めることができるだろうか。貶すことができるだろうか。
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 「父さん、今日もまた、新しい武器が配給されてきたよ。これで効率よく仕事ができるね。僕も頑張るから。より良い生活をつくるために尽力するね」

一日。-ドキュメント的に-

全てが、中途だが、それでいいと思った。
断片。
つなげることもしようとも思わなかったけど、結果なった。それはいい。

一日。-ドキュメント的に-

コンクリートの街並み。その合間を縫って、通勤する。それが今のここでの日常。一日。 戦場が、当たり前の日常となっている人々はいる。そこから始まる。 そして、各地、各人の日常という”一日”がある。それをただ並べた話し。

  • 小説
  • 短編
  • サスペンス
  • 時代・歴史
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-01-15

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