第14回 江古田文学賞落選作。亡父が遺したメモをもとに、想像(妄想?)で戦後から現代までを短編に押し込み、その時代を生きた人物(父)を描こうとした作品になります。
「ねえねえ、六平太、また忍術見せてよ」そうせがんできたのは近所に住む御家人の長男坊、松之介だった。六平太は一瞬自尊心をくすぐられたが、思い直してかぶりを振った。「だめだ、だめだ。忍術は見世物じゃない。それより剣術の稽古をつけてやろう…
台風による大雨で中津川の一部が氾濫した。そして小規模な土砂崩れが発生、それに巻き込まれたような格好で男の死体が発見される。身元は佐波原姉市埋蔵文化財センター調査課長の加藤清志だった。 多摩中部署の刑事柏崎一茂は加藤の死を佐波腹署の若手刑事猿橋弘毅から知らされ驚いた。加藤と一茂とは大学時代に入っていた考古学研究会で先輩後輩の間柄だった。加藤を知る一茂は用心深い加藤が、台風による豪雨で土砂崩れを起こすような危険区域に立ち入るはずがないと疑問を口にした。だが佐波原署は威圧的に事故としてt結論付けてしまう……