アドニスの涙

アドニスの涙

─序章─

私に何が起きたのだろう
もしかしたら夢なのかもしれない─…

大きな騒音にまきこまれ
目の前が真っ暗になる

一拍遅れて全身を駆ける痛み

痛みを感じる暇もなくなにもきこえなくなる
闇に落ちてく感覚の中
耳に届いた唯一の言の葉

???「…また来たんだ」

嗚呼 私はまた─…
















─不思議な世界─

チュン…チュン…

鳥の鳴き声が聞こえる
なんとも平和な朝

いつもとは少しだけ違う感覚がする
身体が軽いというか
いつもの気だるさがない
少しだけ目を開けてみる

いつもの天井じゃないとはすぐわかった
光をまとった緑色の葉っぱで上空が埋め尽くされている
時折見せる太陽の光が心地よくて眩しくて

すぐに眼を閉じる

ふわふわで暖かいばしょ
空気を吸い込めば凛とした透き通った空気が全身を駆け巡る

このままずっと寝ていたい…

???「…きて…おきて…」

誰…?
可愛らしくて透き通った声が耳に入る

それがまた心地よくて─…

???「うーん…まだ寝てますか…」

心配そうな困ったような音色に起こされる私

私「ん…」

重い瞼をあげてみるとそこにはさっきまでの緑色の景色のなかに
お菓子で作られたような女の子が座っていた
カラメルのような綺麗で輝く髪
生クリームのように白い肌
綿菓子のようなふわふわなワンピース

そんなお菓子のようなお人形さんにひとつだけ違和感
そう ここはお菓子じゃない
深い深い綺麗な…

私「綺麗な目…」

瞳だけがお菓子のような見た目と対照的だった
まるで海から色を抜き取ったような
そんな素敵な青 真っ青な色
緑色の背景に浮かぶ海色の目

吸い込まれてしまいそうな瞳の色

つい見とれていたら
その綺麗な薄い唇からキャンディーのような音色が聴こえる

???「よかったです…目を覚まして」

私「あの…貴女は…?」

???「私の名はロゼット・ノアゼットです」

私「ロゼット…」

素敵ななまえ…

ロゼット「貴女は柊 麗恋(ヒイラギリコ)さんですよね 待っていました」

麗恋「待っていた…?どうゆうこと?」

そうだ忘れていた
私は確か…大切な約束をはたすためにいそいでいて…
あの子が待ってる…!

…あれ
どうしてこんなところに…!?

はやくあのこの元に…!

麗恋「ここは…ここはどこなの!?」

ロゼット「ここは─…」

突然おおきな音が響く
その音にロゼットの声がかき消された

幸せの音がとぎれたようなそんな錯覚に落ちる
なんだか…これから何かがはじまってしまう
そう私の本能が語っていた

緑色の景色は不穏な風を奏でる
一体今の音は─…

ロゼット「あら…?今日は麗恋さんだけだと思っていたのですが…」

麗恋「い、今の音…?」

ロゼット「新しい人がきたのですよ」

麗恋「えっ…え…?」

ロゼット「おかしいな…行ってみましょう 話はそれからです」


To be continue─…

─少年との出会い─

ふわふわとなんだかよくわからないことが多いまま
大きな音の音源にたどり着いた

そこに倒れていたのは1人の少年
不穏な風の中
一層不気味な雰囲気を纏った
綺麗な茶髪で可愛らしい印象の男の子

なんだろう
変な胸騒ぎがする─…

ロ「この子…」

麗「不思議な子だね…なんか」

ロ「ええ とりあえず起きるの待ちましょう」

ロゼットの言う通り少しだけ待っている

何分すぎただろう─…

風が収まりまたさっきの平和な景色に戻る
この子をまるで受け入れたように

きらきらと輝く緑色の葉
優しく包み込む日の光

穏やかな時が流れる
私が来た時と同じ―…

この優しさ…私は知っている…
暖かくて木の匂いがして─…
まるで…

???「ん…ぅ…」

突如はなたれた掠れたうめき声に私の思考回路は遮断された

その声はどことなく哀しそうだったように感じる
きのせい…であって欲しかった

私はいつの間にこんなこと考えるようになったのだろう
なんかの超能力者か私は

ロ「あ 起きましたね…」

麗「わ…綺麗…」

目に入ってきたのは
つい言葉にしちゃうくらいの美少年
顔がかなり整っていて結構タイプかも…

いやいや何を考えているんだ

1度感情を押し殺したせいだろうか
不思議と恋愛感情が全く込み上がってこない

いつもならこう…
もっと盛り上がるのに

???「君ら…誰…?」

ロ「私はロゼット・ノアゼット あなたは…?」

光「俺は…ひ、かる…」

ロ「光…そんな名前今日ないはず…」

淡々と繰り返される会話
その中にも違和感が混ざりあっている

名前が無い…どういう意味だろう
私の名前を知っていたことと関係あるのだろうか

ロゼットへの謎しかふかまらない…

光「ここ…どこなの…?」

ロ「ここはクラウド・ワールド 天上界です」

麗「天上界…え……えっ!?」

て、天上ってどういうこと…!?

ほとんどすべての謎が吹き飛んだ
そりゃもうなんでもありだよねファンタジーかってに

いきなりすぎる告白に慌てるしかない私は
風が怪しげに吹いたのにも気付かなかった

気づいていたらきっと─…


光「死んだってこと…?」

ロ「麗恋も聞いていなかったですね そのとおり死の世界です」

麗「私…死んだの…!?」

ロ「貴女は事故で今日亡くなる運命でしたので…でも…」

私が今日しぬ…
そんな…
こんなに実感ないのに…

でもたしかあの時
また って誰かが言ってた

1度しか死ねないはずじゃ…どういうこと…?

光「俺は…運命に逆らって死んだのか…」

ロ「…まぁなにがあったかは聞きません ちょうどいいので光るもきますか?」

光「どこに…?」

ロ「ティアーファウンテン…」

光「ティアー…」

ロ「はい…私は欲しいものがあるのです…」

麗「ほしいもの?」

ロ「…伝説の花」

光「なにそれ?」

ロ「アドニスの涙…もう一度人生をやり直せるものです」

麗「それ…生まれ変われるってこと?」

それじゃ私はそれでいちど生まれ変わったってこと?
でも…そんな記憶ない…

ロ「ちょっと違います 転生は自分とは違う新たな人生を歩むこと」

光「自分の人生をやり直す…」

ロ「伝説では死んだその時に戻って死んだ原因を取り除くもの」

麗「なにそれ…気になる…」

とにかく
それがなんなのかわかんなきゃはじまらない…!

ロ「それじゃついてきてくれますね!」

とロゼットが立ち上がると小さな傘を取り出した
ふわふわのまるでお姫様の傘
傘の先にキャンディーとおっきなリボンがついている

ロ「さぁ捕まって!」

麗「まるでおとぎ話みたい…」

ロゼットの肩に捕まる
こんなのがほんとに…ありえるのだろうか

もう
いろいろかんがえててもしかたない!

麗「光はこないの?」

光「行くよ でも俺名前しか覚えてなくて…怖いんだ…」

ロ「自分の人生を覚えていないのですね」

麗「そのうち思い出すって 大丈夫大丈夫」

光もしぶしぶロゼットの肩につかまる

ロ「行きますよ?落ちないでくださいねー」

とロゼットが言うとふわっと体がかるくなる
空を飛んでいるかのように─


To be continue─…

─クラウド・ワールド─

麗「ってほんとに飛んでるよぉぉ!?」

ロ「傘で飛ぶのは当たり前ですよ?」

光「なんか意外と楽しい」

冷静(?)な2人を前にしてなにも言えなくなる
少し経つと城下町みたいなところが見えてきた

大きくて可愛らしいのはきっと城だろう

麗「あの城は?」

ロ「あそこはクラウド・キャッスルこの国の中心です」

光「お菓子の城にしかみえない(笑)」

光の言う通り屋根はウエハース
窓は水飴
所々に飴がかざられてる
まるでおとぎ話のお菓子の家のお城バージョン

…この国には蟻が存在しないのであろうか

くだらないことに思考を巡らせているうちに城下町に着地した

麗「へー…」

はじめて降り立った城下町は意外と賑やかだ

思ったより栄えていて人もいっぱいいる
お菓子を売る人 果物を売る人 傘を売る人
そこに綺麗なドレスを着た場違いな女の人が走ってくる

ドレス着て走るなんて…すごい運動能力だ

ロ「あ 女王陛下」

女王「ロゼット 」

女王陛下と呼ばれた綺麗な人は
紅色の髪 淡いピンクのドレス ついストロベリーのスイーツを連想させる
そしてロゼットと同じ深く綺麗な青い目をしていた

光「女王様もロゼットと同じ目してるんだ…」

麗「いやいやいやっなんで女王さまがこんなとこいるの!?」

女王陛下「ええ 青い目は生前者の証拠ですから」

麗「生前者…?」

女王陛下「はじめまして 柊 麗恋さん私はフリュイ・アプリコットよろしくね」

ロ「あっそうだっ 女王陛下麗恋と光にクラウド・ワールドの説明をお願いします」

フ「まだ説明してなかったの?」

ロ「ええ 時間がなくて…」

フ「わかった ここではなんなので城に移動しましょう」

というわけでクラウド・キャッスルにお呼ばれした
とても賑やかな商店街を抜けると人工的に作られた湖がある
水はとても綺麗で普通に飲めそうだった
橋を渡るとそこは城
騎士が守っている扉を抜けるとおおきな広間
奥の部屋に案内され入ってみると…

麗「わぁ…」

光「綺麗…」

ため息の漏れるような素敵なお菓子の調度品
窓ガラスには息を呑むような綺麗すぎるデザインの飴細工
夢のような場所だった

ケーキのスポンジのようなソファーに腰をかけて
メイドさんの入れた紅茶に口をつける

麗「美味しい…」

心があたたまる紅茶
魔法でもかけられているよう


フ「落ち着いた…? ここはクラウド・ワールド 死者の世界」

麗「死者の…」

フ「クラウド・ワールドの他にもうひとつ死者の世界がある」

ロ「ダートゥル・ヘル・ワールド 罪人の死者が罪を償う世界…」

フ「クラウド・ワールドには主に2種類の人が転生を待っています」

ロ「正死者と生前者」

フ「生前者は地上の空気を吸わず亡くなった者 主に流産された者」

ロ「正死者は運命に沿って死んだ者の事です 事故 病死 老衰などです」

フ「例外が1つある それが自殺者」

ロ「悲劇的な死に方をした自殺者は伝説を守る仕事で罪を償います」

麗「伝説の花…?」

フ「アドニスの銀色の涙といい伝説では転生というより生前の生きていた場所に戻れる…というもの…」

ロ「私はそれがほしいのです」

光「…!」

ロ「麗恋 貴女はアドニスの銀の涙が咲く1000年に1度の月夜 同じ時間に生まれています」

光「…ほんとに…」

光が何か言おうとしていたが
不可思議な風にかき消されてしまう
部屋の中だしクーラーは効いてるけどべつに窓があいてるわけでもない
光のそばにだけ吹いたような…そんな感じの風

フ「アドニスの涙が咲いている湖畔にはとても強い結界がはってあるの」

ロ「それを解けるのははった者とアドニスの涙の化身」

麗「私が…アドニスの涙の化身…」

ロ「麗恋 おねがいです 私と来てください」

フ「ロゼット」

フリュイ王女がつめたく言い放つ
ロゼットが少しためらってから口を開けた

ロ「アドニスの涙がある湖畔に行くにはとても危険な場所を通るのです…」

フ「自殺者が邪魔してくるし 下手すると転生までできなくなる」

ロ「それでも…きてほしいのです」


To be continued─

─決意と旅立ち─

軽い沈黙が流れる
生まれ変われるかわからない
そんな危険な場所に…私が…?

光「俺でよかったら…行くよ」

沈黙を破った光
光の言葉にロゼットとフリュイ王女は驚きを隠せないようだった
私ももちろん驚いてる

光「たとえ転生できなくなっても アドニスの涙見てみたい」

ロ「光…」

麗「…私も行く」

ロ「!?」

だって私が必要なら…
そう言おうとした瞬間光に遮られる

光「危ないらしいけどいいの?」

麗「そんなのいいよ ロゼットが行きたいって言ってるなら」

私が必要ならどこへでも行く
そう言おうと思ったのに口から言葉が出ない
大事な日の大事な約束
私はそれを破ってココにいる
そこまでわかるのに…なぜかなぜか大事な約束が思い出せない
考えれば考えるほど頭痛が走る

フ「麗恋 顔色悪いわよ…」

麗「へっ?あっいやぁお腹すいたなーってっ」

もう考えるのはやめよう
今はロゼットの助けになりたい

ロ「なら旅準備のついでにごはんたべましょうっ?」

少しワクワクしたロゼットに思わず笑みがこぼれる
なんだかすごく嬉しい

フ「ロゼット 行く前に城によって」

ロ「はい」

光「俺もお腹すいた いいとこ紹介してっ」

ロ「わかりましたっ 任せてくださいよぉ?」

麗「わーいっ」

ロゼットと光と一緒に部屋から出ていく
ひとりぽつんと残った王女
王女は全て悟ったように悲しそうに口を開いた

フ「神よ…貴方はなんて意地悪なのでしょう─…」


城からでるとさっきよりも賑やかさが増している

ロ「さぁ食べに行きましょうっ」

光「俺あのでっかいフランクフルト食べたいっ」

ロ「いいですよー」

麗「私玉こんにゃくっ」

ロ「ヘルシーですね」

ロゼットがフランクフルトと玉こんにゃくを買って
楽しそうに戻ってくる

ロ「食べ終わったら旅準備をしましょう」

光「はひふんひ?(旅準備?)」

麗「食べ終わってから話しなさいよ まったく…」

ロ「はい おふたりにも傘を使いこなしてもらいたいので…」

光「ロゼットが使ってる傘?」

ロ「ええ 生前者には不思議な魔力が宿っています」

麗「魔法みたいな?」

ロ「そのとおりです 火 水 土 光 闇 風 精霊…などです」

麗「もしかしてロゼットは風?」

ロ「はい だから傘で移動します」

光「俺たちもそんな能力ほしいっ」

ロ「王女から魔法水晶を貰えばつかえますよ その能力は個人によってわかれますが」

光「たぶん俺は光だなっ」

麗「名前が光だから?」

そんなふうに笑いながら食べ終わると
ロゼットは傘売に傘を買いに行った

ロ「これです」

私のはシックな紺色で淵には白いリボンがついている
落ち着いたシンプルなデザインのものだった

光のは…ビニール傘

光「俺だけ扱いひどくない!?」

半泣きの光にふふっと楽しそうにロゼットが笑う
そんな風景が大好きでなんだか落ち着いた

ロ「さぁっ旅立ちましょうっ 1度城に戻りますよ」

それぞれの傘を持ってまたクラウド・キャッスルへ向かう
城の玄関まで来るとフリュイ王女が待っていた

フ「ロゼット…これは王家に伝わる羅針盤です」

ロ「アドニスの涙の場所を知る羅針盤…ほんとにあったのですね」

フ「くれぐれも気をつけて─…」

ロ「あっあと魔法水晶くださいっ」

フ「わかったわ 光 麗恋こっちにきなさい」

フリュイ王女の前まで来ると
透明のビー玉のような玉がついたネックレスをもらった

麗「綺麗…」

ロ「持ち主の能力によって色が変わります…さぁ」

ロゼットにうながされるまま水晶を手にする
そうすると光のは白濁色に 麗恋は透き通ったエメラルドグリーン

ロ「光のは能力コピー 麗恋のは草ですね」

光「能力コピー…?」

フ「他人の能力をちょこっとだけ借りれる能力よ」

麗「草…か」

フ「使い方はのちのち覚えるでしょう ロゼット…気をつけて」

ロ「フリュイ…はい 行ってきます フリュイ」

光「王女呼び捨てっ!?」

ロ「私達は親友なのです 同じ日に中絶で亡くなったので…」

フ「だからロゼットは第二王位継承者です 」

麗「えっ!?じゃここにいなきゃ…!!」

ロ「大丈夫です さぁ行きましょうっ」

フ「ロゼット…戻ってきなさいね…」

ロ「あたりまえじゃない…」

2人は軽く握手してからロゼットは旅路に入る

ロ「さぁおふたりとも行きますよ!」

光「おーっ!」

私達はこうしてクラウド・シティーを後にした─…

フ「貴方はなんて…酷いのでしょう…どうか無事で─」


To be continued─…

─平和な森─

王都を離れた私達は今
羅針盤が示す道を辿ってきてる
もちろん道中で魔法の練習はしてきてるけど…

麗「いでよっ草よっ」

ぼんっと藁がたっくさんでてくる
なんでこんな藁が…

ロ「もっとしっかり植物らしい植物を想像してみてください」

ロゼットの言う通り魔法と言うのはイメージで使うものらしい
私はそーゆーのが1番苦手だ

光「俺も練習さしてー?」

ロ「わかりました」

とロゼットが手を空に掲げるとふわりと風が吹く
その風は小さくロゼットの周りを纏っている

光「主の手元にある風よ 我が手元にっ」

光が唱えると風は光の手に纏い始めた
ロゼットの周りからは風が失われ代わりに光に纏い始める

ロ「光は完璧ですね」

光「そうかな?」

照れくさそうな光
私も負けてはいられないっ

麗「咲き乱れる花よ 私の元へ!」

やけくそで言ってみたがすこし恥ずかしい詠唱をしてみた
そうすると地面に無数の花が咲き乱れた

ロ「わぁお 麗恋すごいですね」

光「ちょっと厨二くさいけどな」

麗「わぁ…こんなこと出来るんだ…」

ロ「厨二くさいと威力ますそうですね」

な、なんか私が厨二病っぽくなった…

ロ「それじゃそろそろ傘で移動しましょう 疲れてきたでしょう?」

確かに少し疲れた…どうしてだろう…

ロ「魔法は自分の体力と水晶の力を使うので使いすぎると体力がおおはばに使われます」

麗「水晶はなくならないの?」

ロ「ええ 女王が作り出す水晶はなくなることはありません」

不思議な事もあるものだ…

ロ「さぁっ傘で移動しましょう 傘を開いてください」

ロゼットに従って私も光も傘を開く

ロ「行きますよ」

ロゼットが傘を開くとぶわっと風が吹き乱れた
その風にのってロゼットは空に舞い上がっていく
光も上手く風に乗っていくが…

麗「飛べないいぃぃ!」

私だけ飛べない
泣きたい

ロ「詠唱してみてくださいっ意外と飛べるかもですよっ」

麗「えええっ うぅ…」

ロ「さぁっ」

麗「風よ 私を空に運べっ」

ふわっと体が浮く
ほんとに飛べた…!

ロ「さぁっ行きますよ 我が風よ 羅針盤の行く先へ案内せよ」

びゅーっと台風なみの風につられてすぐ見えてきたのは森
そう 私とロゼットと光が出会った始まりの場所
ふわっと着地すると傘を閉じて森のなかへ入っていった

森のなかのはずなのに日の光が輝いている

ロ「ここはクラウン・フォレスト クラウド・ワールドの中で1番平和な場所といわれています」

光「確かに…リラックスできそうだな」

麗「とても落ち着く…」

そういえば私は最初ここで寝ていたんだった
誰か…大切な人の大切な約束に遅れそうで急いでたところで事故に……
忘れていた ここは死の世界…

光「ここ…ちょっと居心地悪い」

麗「そうかな?とっても気持ちいいと思うけどなぁ…」

ロ「あら?また誰かいますよ…?」

ロゼットが指さした先には誰にもいないように見えたが遠くに黒い影が浮かび上がる
背の高い人で大きな鳥とたくさんの小鳥たちにかこまれているようだった
男の人っぽいかなぁ…?

光「行ってみようよっ」

ロ「いいでしょう 危ない人ではなさそうですし」

光「やったーっ」

でも…たくさんの鳥を操る人影一体なにものだろう─…

To be continued─

─ショコラ・ガナッシュ─

光「おーいっ」

光が徐ろにその人に話しかける
その人は光に気づいてこっちまでくる

???「君ら…なにもん?」

その人の言動が少し気になった
別に私たちは普通のひとじゃないかな?

???「そこの子…姫だろ?来たばっかの生前者と何つるんだ?」

ロ「この子はアドニスの涙の化身なのです 」

???「ふーん…ほんとにいるんだな」

麗「貴方は…?」

シ「俺はショコラ・ガナッシュ見ての通り精霊使いだ」

ロ「貴方が噂のショコラでしたか…」

シ「ふーん?どんな噂があるんだ?」

ロ「最強で珍しい精霊を操る精霊使い…王都では有名です」

シ「へー 別にそんなことないけどな…おまえらアドニスの涙のところにいくのか?」

光「まぁね」

シ「…俺もついてってやろうか?」

ロ「ほんとですか?」

シ「おまえらだけじゃ心配だ」

とショコラは私の方に寄ってきた
ショコラの肩には鷲が大人しくとまってる

シ「君…なんていうの?」

麗「柊 麗恋…」

シ「ふーん 麗恋よろしく」

麗「はぁ…」

なんで私だけなんだろう…?

ロ「クラウン・フォレストで聖樹の水晶を見つけなきゃいけないのですが…何かわかりますか?」

シ「あの緑の玉のことか」

どうやらアドニスの涙を取りにいくには水晶が必要らしい
聖樹の水晶 神水の水晶 秘岩の水晶
と3つの水晶が必要らしい

シ「それなら聖樹の方にあるんじゃないか?」

ロ「聖樹ですか…」

ロゼットが聖樹と聞いて顔をしかめる

麗「危険なとこなの?」

ロ「ええ…でもショコラがいますし…行ってみましょう」

光「おーっ!」

To be continued─…

─聖樹の守人─

ショコラにつづいてだいぶ歩いた
聖樹と言うなら神聖のイメージだが
それと対照的に森のオーラは禍々しいものになっていく

麗「ホントにこんなとこにあるの~…?」

シ「あぁ 間違いない」

ロ「ずいぶんと居心地の悪いところですね」

シ「そりゃ聖樹の守人は自殺者だからな」

光「自殺者…」

麗「そんなの水晶もってかえれないじゃんっ」

シ「いや そうでもない」

ロ「自殺者と交渉 もしくは戦いで勝てばいいのです」

そんなのできんのかなって思いつつショコラについていく
途中で不思議なキノコや見慣れない花が咲いている

ロ「こんな奥地までくるのは久しぶりです…」

光「このきのこ食べられるー?」

麗「この花かわいい…」

そのうちひょこっと顔を出したのは小さなリス

ロ「わ キャンディドール!」

シ「可愛いよな」

麗「キャンディドール?」

ロ「この世界では珍しい金平糖が大好きな動物たちのことです」

光「へーっ」

麗「おいでおいで…」

するとキャンディドールのリスはぴょんっと麗恋の頭に乗った

麗「きゃーかわいいーっ」

シ「あっちはドロップフラワー咲いてるぞ」

光「うまそーっ!」

わいわいしながら話していると
一気に闇の中に落とされたような…そんな感じがした

シ「聖樹…聖樹の守人が近くにいる」

ロ「いよいよですね…」
そうこう言い合っているうちにぱっと視界が開ける
水蓮花が咲いてる透き通る湖 その真ん中にずどんっと伸びる大木
その大木には小さな穴が空いている
風景とは裏腹にとても禍々しいオーラを放っている大木

ロ「聖樹…」

麗「こんな空気じゃなければきっともっと綺麗ね…」

シ「さぁ 水晶探すぞ」

???「まって…」

か細く綺麗で鈴がなるような声が聞こえる

シ「自殺者か…」

???「水晶…とりにきたの…?」

ロ「そうです!私達に水晶を与えてください!」

???「嫌…嫌…!」

自殺者が大きな号哭を上げると禍々しいオーラが一層増す

???「私の名は冬埜(ふゆな)…水晶は…渡せない!!」

To be continued─…

─冬埜の闇─

冬埜はそう叫ぶと聖樹の周りに吹雪が吹き荒れる
その中にいる冬埜の目は燃えるような赤に変わり纏う雪は軽く紫色を帯びている

ロ「自殺者…!」

麗「ちょっどーすんの!?」

冬「ここから…ここから去って!私の領地を…荒らすなぁぁ!!!」

シ「しゃーねーな…」

ショコラが手を天に翳すと鍵の魔法陣が現れる

シ「いでよジェミニ 失いたる主の元へ 双子の力を」

鍵の魔法陣が光だし星座記号の魔法陣にかわる
そこから召喚されたのは冬埜にそっくりな2人組

冬「やだ…くるな…!」

その精霊を見た途端冬埜の吹雪が一層増す
ジェミニは陰が薄くなり消えそうになる

シ「主に恐るな 主を闇から救え ジェミニ」

ジェミニと呼ばれる精霊は冬埜に近づき手を合わせる
その瞬間3人の間に光が宿る




─…─

???「冬埜ってさー…マジ暗いから関わりにくいんだよねぇ」

???「冬埜!また貴女は…どうしてこんな子生んだのかしら」

???「え?なに?ホントにつきあってるとか思ってたわけ?遊びに決まってんじゃんwwお前みたいな暗い地味子好きになるやつなんかいないっつーのww

???「冬埜ちゃん…ごめんね…ちょっともう関われない」

どうして……どうして……
みんなみんな…私を見捨てててく
私は…この世界のいらない歯車…
その歯車のせいで世界が噛み合わないんだ…

私は誰にも…必要とされていない…邪魔なんだ……ならいっそ…


………なんだろ…眩しい…?

???「冬埜…君なら完璧にできる」

誰…誰…?

???「冬埜ちゃん…一緒にあそぼ…?」

誰…?この声…聞き覚えはあるのに…
思い出せない…

???「冬埜はホントにいい子だ…よく今まで頑張ったな」

???「これからは私達と一緒にあそぼ…?」

落ち着くこの声
聞き覚えのあるこの声は……

冬「………私の声だ」






─…─

ジェミニと冬埜が光を宿した瞬間に
吹雪がふわっと止んだ

シ「…ジェミニよくやった」

麗「なにが…起こったの…?」

ロ「恐らく ジェミニが自殺者の闇を消した…ということでしょう」

光「闇を消す…?そんなの無理だろ」

ロ「それが可能なのです その自殺者の心の中に入れればですが」

シ「この程度なら俺の魔力さえあれば心の闇なんてすぐ潰せる」

冬「…─」

冬埜は1滴涙を流して姿を消した
まるで悪霊が成仏した時のように…

1滴の雫は聖樹の根元に落ち周りに波紋をつくりながら広がる
聖樹の根元には透き通る気の苗が埋めこまれた水晶が浮かび上がる

シ「ひとつ…clear」



To be continued─…

─森の水晶の波紋─

静けさが残る聖樹の湖
水晶から小さな雫がおちる度に全くブレない波紋を映し出す

さっきまで禍々しい雰囲気を纏っていたとは想像もつかないくらい
洗練され綺麗な空気が流れているのは私でもわかる

光「あれが…聖なる水晶…」

麗「綺麗…」

ロ「聖樹をかたどりし神秘の水晶よ…我が元に…」

ロゼットの問いかけに応えるかのように水晶が輝き出す
すると水晶から小さな光が羅針盤向かってとんでくる
光が消えると羅針盤には木の芽が入った小さな水晶が埋め込まれていた

シ「さすが…姫の問には神秘の水晶も応えるってわけ…か」

ロ「神秘の水晶よ…元ある場所へ帰れ…」

ロゼットの呼びかけに応え水晶は聖樹の中に入っていく
ポチャン…と音と一つの波紋を残して消えて行った─…

シ「…ほんとにあるんだな…聖樹の水晶…」

光「半信半疑だったんだ?」

シ「まーな…伝説なんて信じないのが筋だろ」

麗「私は信じちゃうな…」

ロ「それじゃいきましょう 長居は無用です」

ロゼットが聖樹に背を向けた途端濃い霧が聖樹とその湖にかかる
まるで姫以外の侵入を拒むように

麗「置いてかれるとはぐれちゃいそう…」

シ「いこーぜ」



少し歩くと見慣れたクラウン・フォレストに出た

麗「次はどこにいくの?」

ロ「次は神水の水晶みたいですが…」

シ「大きい湖なら3つあるぞ?」

光「どんなのどんなのっ?」

シ「北にアイシング・レイク 南にスパークリング・レイク 東にキルシュ・レイク」

ロ「羅針盤の指し示す場所は北のようです…」

シ「よりによってアイシング・レイクか…」

麗「あぶないところなの?」

シ「まぁな…俺も詳しくはないが…行って見ればわかるだろ」

ロ「それじゃアイシング・レイクへ 出発ですねっ!」


To be continued──…

─初めての野宿─

麗「もう歩くの…つ 疲れた…」

光「お、俺も…」

ロ「確かにだいぶあるきましたね…」

シ「もうギブかよ」

聖樹からでてかなり歩いた私達
クラウン・フォレストを出れる気配はなくて
日もすっかり落ちている

シ「はぁ…そろそろこのへんで野宿か」

ロ「の…じゅくですか?」

光「あれ?ロゼット野宿しらないの?」

ロ「ええ…初めて聞きました」

麗「その場所で宿を借りずに休むことよ」

シ「ちゃんとメイド呼ぶから城っぽくなるかもけどな」

ショコラが天に手を掲げる

シ「いでよ…ヴァルゴ」

ジェミニの時とは違う星座記号の魔法陣が光だしメイド服をきた女の子が召喚される
ピンクのツインテで先を少し巻いている
目はぱっちりしていて眉は優しそうに下がっていて

光「どっかのアイドル?…」

んむそのとおりに見える

ヴ「なんの御用ですか?」

シ「その辺に寝泊りするテントを貼ってくれ」

ヴ「かしこまりました」

ヴァルゴがその辺の木を運んでぱっぱっと作り上げたのはロッジ
広いところがあってその奥に軽く個室がある
もう…家じゃん

麗「テントじゃない…」

ロ「テントってなんです?」

光「こーゆー…ピラミッドみたいなやつ」

シ「お姫様がいるんだしこっちのがいいだろ」

確かに…ショコラはよく考えてるな…

中に入ると出来立ての木の香りがした
とても綺麗で本当のお家みたいな感じ…

ヴ「なにか必要でしたらなんなりとお申し付けくださいね」

にっこりとしてヴァルゴはふわっと消える

シ「ベッドは個室にある シャワーはあそこだ」

麗「あ シャワー先にいい?」

ロ「はい 終わったら私に声かけてくださいね」

光「俺はりょーり手伝おっか?ショコラ」

シ「ん 頼むわ」

麗「じゃいってくるっ」

どうやって水をくみあげてるのか知らないけどとりあえず汗をながしたい
シャワー室に入るとバスタオルが常備されていて新しい洋服も準備されている
くっと蛇口をひねると少し冷たい水が落ちてくる

今日はいろいろあったな…
いきなり死んだとか言われて…
可愛いロゼット姫と光に会って…
お城に案内されて…私が必要とされて…
森に行って…強者のショコラと会って…

聖樹で冬埜ちゃんに─…

ん…?冬埜…??

ピタリと麗恋の髪を洗う手が止まる

冬埜…って
聞いたことある……

ズキッと頭痛が走る

麗「っ……」

もう考えるのはやめよう
思い出しちゃいけないと無意識に頭が騒いでる

さーっと体の泡を洗い流しシャワー室をでる
バスタオルで体を拭き脱衣所を出た途端

麗「…え…?」



To be continued─……

─私と私─

さっきまでの光景が
聖樹の時のように霧がかった風景に変わっていた
霧の中にひとりの影がある以外
なにもほかの風景は見えない

麗「ちょっと…なにこれ…」

自分の声が反響して返ってくる
気味が悪い程しっかりはっきりと

麗「ロゼット…?」

とりあえず霧の中にある影に話しかける

が 反響して返ってくるだけ

麗「光…!」

虚しく自分の声が返ってくる

麗「ショコラ…!」

反響するだけの声


おかしい…
木のログハウスがこんな綺麗に反響するはずがない


意を決して1歩進む
と影も1歩近づく

私の動きをコピーしたように完璧に動く影
私はその影に引き寄せられるように近付いた

麗「あなたは…」

影「誰ですか…?」

私…私がいる
目の前の誰かは私と同じ姿で同じ声で同じセリフで

影「あ…私は反対側の貴方」

麗「鏡…」

影「鏡の中の私…」

そっと手を伸ばし影に触ろうとする
影も私に手を伸ばし触ろうとする

影「私たちは…」

麗「触れられない…?」

手を合わせ…るはずの空間には
1枚の板が挟まってる感触がする
柔らかく暖かい感じではなく冷たく硬い感じ

影「私がそっちに干渉することは禁じられてる…」

麗「なのにどうして私の目の前に…」

影「私は夢を見た…きっと正夢になる」

麗「正夢…?」

そうだ冬埜ちゃん…私の夢に出てきた子だ…
お思い出した途端ズキッと頭痛が走る

影「私は鏡の中の世界の人 そして貴女に1番似てる影」

麗「影がみる夢は…こっちに影響する…?」

それじゃ私が思い出せない記憶があるのは影の記憶なのか…?

影「私の記憶は貴女に反映されない 貴女の記憶は貴女のもの」

影は私の心を読んでいるように私の知りたいことを教えてくれる影

影「私は貴女に伝えなきゃいけないことがあってきた」

麗「夢の話よね…?」

影「ええ 麗恋あの子とこれ以上つるまないほうがいいわ」

麗「あのこ…?」

その途端霧が晴れてくる

影「時間…ぎれ…」

麗「あの子…あのこってだれなの?」

影「…─…」

影の声が聞き取りずらくなり
霧が晴れる

麗「まって…!」

ロ「どうしました…?」

気づくとロゼットの部屋で寝ていた
私の影は…?
あのこってだれ…?

麗「私とそっくりな子…みなかった…?」

ロ「いいえ…?ログハウスの外にたおれてたのですよ?」

麗「え…?」

頭の整理がつかない
影は私の夢?どこから私は寝たの…?

ロ「…もうゆっくり休んでください…?」

麗「そうする…」

私は目を瞑るとすぐふっと落ちる
真っ暗闇の中少し聞こえたロゼットのつぶやき



ロ「影……ややこしいヤツがでてきましたね…」


To be continued─…

─ゲンガー(ショコラ目線)─

─…ショコラ目線…─



シ「んー…いい天気だ…」

夏らしい高い空が広がる
俺以外はまだ寝ている午前5時

シ「朝の空気はいいよな…」

伸びをしてうんと空気を吸い込む
暖かい空気が喉を通りス-ッとした気分にさせる

静かで高い空
俺はそんな夏の朝の空気が大好きだ

みんな夏は嫌いと言うけど
こんな綺麗な高い空が嫌いとか意味わかんね
朝だったら空気もこんないいのにな…

ロ「起きていたのですねショコラ」

シ「ぁん? 姫様じゃん」

ロ「もう私は姫じゃありません」

シ「王家の姫ってことじゃねーよ」

ロ「あなた…なぜそれを…」

シ「で? 俺になんか聞きたいことあるんだろ?」

ロ「…麗恋が自分の影と出会いました」

シ「…は?」

どういうことだよ
自分の影っつーのは凡人にはみえねぇ
ましてや影が言葉を発するなんてことあるはずがない

鏡の世界に入り込んだ…?
いや影がこっちにきた…?

麗恋はいったい…自分の影から何を聞いた…

シ「…それいつだ」

ロ「昨日の午後10時 私の部屋から出られなくなったので風で空気を聞いていたら…」

シ「あいつ…なにもんだよ」

ロ「アドニスの化身です…」

シ「ぜってーそれだけじゃねーだろ…」

ロ「それにしても…朝の空気って素敵ですね…」

シ「自分の周りにいつでも丁度いい風吹かせてるくせに」

ロ「ええ…久しぶりに外界の空気に触れました…」

シ「ほらみろ…高い空見えるだろ」

ロ「北の地へ行くには絶好の天気ですね」

シ「…今日はとべんのか?」

ロ「はい 禍々しい空気は私から抜けたので」

2人には秘密にしてたがロゼットは空気が悪いと力を使えない
ま 戦いには使えねぇやつ

シ「ちょっと早めに出発すっか…」

ショコラが手を上にかがげると
乙女座の魔法陣が開きヴァルゴがおりてくる

ロ「ショコラも詠唱しないで精霊召喚できるのですね」

ヴ「ま 詠唱された方がでやすいのですがね」

シ「出発すっからみんなおこしてこい」

ヴ「かしこまりましたっ」

ロ「ショコラ…貴方影についてどれくらい知っていますか…?」

シ「詳しいことは知らないが鏡の自分に遭遇しちまったらやべぇってことくらいだな」

影の自分か…
ドッペルゲンガーとは違うホンモノってことだよな

写した影は殺しちまうらしいし…

麗「おっはよショコラっロゼット!」

当の本人のお出ましか…
変わったこともなさそうだな

ロ「おはようございます麗恋」

光「まだはやいじゃーん…」

シ「おはようふたりとも 今日までに北の地へいくぞ!」

麗「そんなの無理じゃーん…」

ロ「飛んでいきますから大丈夫ですよ」

光「お とべんの?よっしゃー!」

シ「その前に北の地には強者の魔物がうようよしてるからな」

ロ「魔法の特訓をしましょうっ」

麗恋…影が本当に見えたなら覚醒時は俺より魔力があがるはずだ
楽しみに特訓してやる…



To be continue─…

─能力の目覚め─

シ「それじゃ特訓するぞ」

何故かいきなりショコラが特訓するなんて言って切り開かれた草原に来た
てかクラウン・フォレストにこんなとこあったんだ…

ロ「それじゃ手本を見せますね」

ロゼットが1拍呼吸を置いて手を広げる
その途端広場の…いやすべての風がロゼットに集まってくる

ロゼットが一本の木に手を掲げる

ロ「…破」

ロゼットのつぶやきに応え風が1本の木に向かっていく

あっという間に粉々になる木
ぽかーんと見てるしかなかった私と光

ロ「これくらいできるようにしてから出発ですよ?」

麗「えええ!?」

いや無理無理っしょ

光「よしっ俺はショコラの精霊魔法コピーするぞ!」

シ「いいぞ 誰がいいかな…」

光「できればかわいーこでっ」

シ「おまえも男だなぁ」

ロ「麗恋 まず意識を自分の中に集中してください」

意識を…自分の中に…

ロ「肩の力を抜いて自分の中から力を引っ張り出すイメージです」

でてこい…

ロ「そこから出てきた力を目標にぶつけてください」

当たれ…!!

……?

ロ「目 開けてください」

麗「ほぇ…?あ…」

そこにはこんもりとした藁がたくさんあった

麗「なんでぇ…?」

ロ「藁…そうだっ麗恋薔薇をイメージするのです!」

麗「薔薇…」

ロ「もう一度同じ容量でやってみてください」

集中…
薔薇 薔薇 薔薇……

麗「我の中に眠りし力 今目覚めよ」

ロ「!?」

シ「…」

なんかわからないけど
もう一人の自分がでてきてる

もう一人の自分が体を支配してる

私はもう一人に埋もれてしまいそう…

シ「やばいぞ 暴走するかもしんねぇ」

ロ「まだコントロールができないということですか?」

シ「あぁ…まさか今目覚めるとは…影の言葉を聞き取れるほどの魔力だ 麗恋が埋れちまう」

なに…なに…?
みんなの言葉が微かにしか聞こえない

真っ暗闇に溺れてしまいそう

嗚呼─

あの時もそうだった─

聞こえるのはブレーキ音だけ

鈍い痛みが走ったあの時と一緒─

麗「ありがとう…こっちの麗恋 私が滅ぼすからね」

光「…!」

ロ「とめるしかないですね…影」

シ「まさか影が体のっとったのか…力をしらないホンモノの麗恋の代わりに…」

ロ「私達でできるでしょうか…」

シ「光がカギを握るな ロゼットお前は風で影を吹き飛ばせ」

ロ「やってみます」

遠い遠い昔ばなし…

『今日もいっぱい遊ぶ夢を見たの』

『君は私の真似するだけだけど』

『私のこんな話し聞いてくれる相手』

『君しかいないから』

そう…私は幼稚園の頃
鏡と話していた

友達とは違う私のそっくりさんと
話すのが私の日課だった

『君は静かに聞いてくれるから好き』

いつも私がずっと聞いてる側だから
嬉しかった

『り…麗恋…』

誰かの声が聞こえる

『私と話そ』

鏡の私が言っている


ロ「麗恋 戻ってきてください! 麗恋!」

麗「うるさいなぁ…」

ロ「ショコラ 光まだですか!?」

シ「いくぞ…光」

光「うん…!」

麗「させない…あなたを滅ぼすまで体は麗恋にかえさないわ!」


To be continue─…

─影の願い(光目線)─

※光目線

ショコラがばっと空中に手を掲げる

麗「ムダよ」

麗恋が不敵に笑い目を細める

シ「くっ…!」

何が起こったんだ…
ショコラが苦痛に顔を歪めている

ロ「ショコラ…!光!私の魔法をこぴーしてください!」

光「わかった…」

すぅっと意識をロゼットに集中する
ロゼットの魔法 ロゼットの使い方 ロゼットの考えてること

全てもらうように自分に引き込む

俺は少し蒼がかったベールを纏う

この間の風と違う…

ロ「それは治癒の風です!それを早くショコラのてに!」

俺はコピーしたばかりの風をショコラに当てる
手を狙い手を掲げるが…

麗「むだ」

と麗恋の放った何かに風を取られる

ロ「くっ…風よ!けが人を纏え!」

ロゼットは麗恋に風を当てながら異質の風を作り出しショコラに纏わせる

シ「すまない…」

ショコラが回復していく…
俺は…なにもできないのか…

あ そうだ…麗恋の影をコピーすれば…!

シ「あいつだけはコピーするなよ光」

光「どうして…!」

シ「あいつの今の魔法はちょいこっちのものと性質が違う」

ロ「取り込んだらどうなるかわかりません…」

麗恋はロゼットの風を受けてもへっちゃらな顔して
堂々と仁王立ちしている

シ「だからアレしかない…行くぞ光…」

キッと麗恋の顔が険しくなる
なるほど…アレは効くってわけか…

ロ「頼みます…!」

ロゼットは一層風の力をつよめる
それに応じて麗恋も苦しい表情になる

シ「いでよ!我の元へ!」

光「主と我に力を!」

麗「くっ…!!」

麗恋がこっちを向いて攻撃しようと試みる…が…

ロ「邪魔させません!」

ロゼットの風が麗恋を檻のように閉じ込める

ショコラが召喚したのはジェミニの1人
光がこぴーしたのもジェミニの1人

離れ離れの双子は麗恋に向かって駆け出す

麗「くっ…お前だけは絶対滅ぼす…」

ピタリとジェミニの動きとロゼットの風が収まる

ロ「なぜ…!」

麗「時間を軽く止めただけ…」

シ「そんなこともできんのかよ…」

確かに俺達の体は動かない

麗「あなた達の力充分みせてもらった これ以上やると体に負担をかける」

ロ「影は影の世界へ帰りなさい…!」

麗「嫌よ 私は麗恋の影 麗恋のこと1番わかってる者」

シ「それがなんだ…」

麗「このままじゃ未来の麗恋がとてつもなく悲しむ…」

光「どうゆう…」

麗「力を蓄えて…麗恋の体をこの魔力になじませてまたくる…!」


To be continue─…

─いざ 北の地へ─

『君と話してると落ち着くよ』

鏡の中の私が話す

鏡の中の私と話すのは好き
でも…
外の世界に大切なものを置きっぱなしなきがする

『私そろそろ戻らなきゃ…』

『うん 戻ってみんなの力にならなきゃ』

『私なら』

『できるよね』




『力に慣れて…そうすれば私は…』

最後の鏡の私の声は聞き取りずらく
ロゼットの声が鼓膜に響いてきた




ロ「麗恋…麗恋…」

ん…ロゼット…?
あれ…私…

麗「なんか…懐かしい夢を見てた気がする…」

シ「色々大変だったんだかんな…」

光「おかえりっ麗恋!」

私にはちゃんと…帰る場所あったよ…
こんな素敵な仲間がいるよ…

ロ「麗恋…?なぜ泣いているのですか…?」

麗「へ…?」

自分の目に手を当てると雫が落ちてくる
どうしてだろう…

シ「なんで泣いてるかはそのうちわかるだろ とりあえず泣きやめ」

光「はい ハンカチっ」

麗「ん…」

光から受け取ったハンカチはとてもあたたかくて
涙がふっと消え去った

ロ「それでは麗恋も泣き止んだ事ですし……」

シ「行くか アイシング・レイク」

光「おー!」

麗「行くぞー!」



『今はそう何も考えずに笑っていて お願い 真実にたどりつかないで─…』



シ「じゃロゼット 頼む」

ロ「任せてください」

光「俺は1人でとべるぜっ」

ロ「風よ」

光「我らの手元へ」

シ「光うまくなったな」
ロゼットと光に風が集中していく

シ「ほいよ傘」

いつの間にかショコラが精霊を呼び出し傘を出現させる
私達は傘を広げ光とロゼットに触れる

光「我らを」

ロ「北の地へ誘え」

ぶわっと風が吹き
体が宙を舞う

麗「あいかわらずすごいなぁ…」

シ「こんだけの風圧はじめてだ」

ロ「あとは風が連れてってくれるはずです」

ヴ「わぁこれ楽しいですー♪」

光「え?こんなこいた?」

シ「こらっヴァルゴ 勝手にでてきやがって…」

ヴ「だってだってっご主人様が楽しそうなことしてるからです!」

ロ「空を飛ぶって誰でも夢ですものね」

確かに…空を飛ぶなんて無理だと決めつけていたから
こうして空を飛ぶのはとても嬉しいことなのかも…

ヴ「ご主人様 ホロロギウム出しだらどうですか?北の地まであっという間ですよ?」

シ「そうだな」

光「ほろろぎうむ?」

麗「確か時計座の名称だったと思う」

シ「そ あいつは体感時間を減らしたりふやしたりするからな」

ロ「それじゃあっという間につくわけですね」

光「なんでださないのー?」

シ「だしたくないんだよ……いでよ ホロロギウム」

見慣れない星座記号の魔法陣から出てきたのは女の子
とてもインパクトある外見 顔が大きくオカマっぽいのに厚化粧
きゅっとツインテしていて結いていて腕には腕時計
ハデハデの露出だらけの水着を着て懐中時計を下げている

私が男だったら絶対はなしかけたくないってくらい…

ホ「あぁんっやっとだしてくれたぁぁんっ」

シ「…」

ホ「ひどいわん!ご主人様ぁん!私はこんなに役に立ちたいって言ってるのにぃ!」

ホロロギウムはショコラにくっつきたがってるがショコラが逃げてる

ホ「私はぁんご主人様ぁんのことぉこんなぁぁに愛してるのにぃ

なるほど
これはだしたくないわけだ

シ「…」

ホ「んでぇ?おねがいわぁ?」

シ「北の地へ行くために時間をすすめろ」

ホ「あぁん♪もちろんおっけーよんっ」

ホロロギウムが手を翳すと
ふわっと空気が冷たくなる
少し肌寒いと思い下を見ると…

ホ「はぁいできた…」

シ「消えろ」

ホロロギウムが消えた

ヴ「ご主人様ホロロギウムきらいみたいですね」

シ「知ってんだろ」

光「俺は意外といけるわ」

ロ「まじですか…」

麗「ここが…北の地…」

ロ「そう ここはアイス・アイランド クラウド・ワールド最北端です」

麗「アイス…アイランド…」

シ「聖水の水晶…まってろよ」


To be continue─…

─雪の積もる湖─

麗「さむぅ…」

シ「そりゃクラウドワールド最北端だかんな」

ロ「私が暖をとりましょう」

光「嘘できんのっ?」

ロ「風よ 南風を我々に与えよ」

ふわりと暖かい風が私たちを包む

麗「あったかーい…」

シ「すげぇな」

まるでコートとマフラーで体を覆うように暖かい空気は私たちに幸を与えてくれる

光「ん…?なんか地面白くね?」

確かに光の言う通り
地面が白い
まるで雪が降ったかのように

シ「あぁ この辺からは万年雪地なんだ 何年も雪がつもってるからな」

ロ「ほんとはとても低い地なのですよ」

シ「ま ほんとに最果てまで行けばどんだけ高いかわかるはずだぞ」

麗「よく沈まないね…」

ロ「それは私達が魂の存在だからですよ あれ?ご説明しましたっけ?」

麗「たましい…」

シ「ま 死んでるからな 生物は生物同士 霊は霊道士触れ合える ここまではわかる?」

麗「うん」

ロ「だから霊からの攻撃は当たるし痛いです」

光「なるほど…」

麗「死ぬって言うのはないの?」

シ「どんな痛みを受けても死ぬことはないぞ」

ロ「そこがやっかいだったりします」

シ「よかった魔物ゾ-ンに入る前にこの話ができて…」

麗「それは…」

ロ「痛みはどこでも共通ということです…心して踏み入れましょう」

光「魔物ゾ-ンに入るの!?」

シ「神水の湖 アイシング・レイクはその魔物ゾ-ンの奥だ」

ロ「まるで魔物がアイシング・レイクを守ってるように…」

麗「守人は…?」

ロ「いると思います でも守人がとても弱いから魔物が住み着いてるという考えができます」

シ「入るしかねぇんだからいくぞ」

魔物ゾ-ンの目印はとくにないし
どこからが魔物ゾ-ンかよくわからないけど

なんか空気が違う
聖樹に行った時より強い禍々しい空気を感じる

ロ「破!」

ロゼットがいきなり風を放つ
そうすると目の前に猫型の悪魔がでてくる

悪魔「よくわかったねぇ」

ロ「わからないはずはないです」

悪魔「でもぉそこのふたりはむりみたいだねぇ」

猫型…というか猫耳を生やした少女 顔に不気味な模様が埋め込まれ光っている
深い紺色のワンピースを着ていて猫耳のあたりから羽がちょこんとついてる

だいたい140cmくらい
ロゼットと同じ背の高さだ

悪魔「じゃぁここでかえってくれないかなぁ?」

シ「なんでとおせんぼする?」

悪魔「あーあーわかんないんだぁ」

ロ「守人に会わせたくないのですね」

悪魔「せーかいっ♪あたまいいねぇ」

シ「じゃ力ずくで通させてもらう」

悪魔「えへへん やってみなよぉ?」

シ「…ホロロギウム」

ホ「はぁいん?♡」

シ「ほら あいつお前のこと好きだって」

悪魔「ふにゃあ!?」

ホ「あらん?かわいいわねぇ♡」

悪魔「こ、こんな奴好きになったおぼえはないぃ!」

シ「行こうぜ」

麗「な、なんかかわいそ…」

ロ「相手は悪魔ですよ」

光「どんまい あくまちゃん」

悪魔「いやぁぁぁ」

悪魔の断末魔をききながら奥へ進む

横から何か気配がする…

麗「ていっ」

気配がする方に意識を集中して草で獲物を捉えるのをイメージする

なにかつかんだ…
それは…

麗「さ、かな…?」

シ「やるじゃん麗恋」

麗「ほ?」

ロ「それは毒魚 横から気配を消して攻撃する卑怯なやつです」

シ「なかなか見つけるの大変でな そいつにてこずってやられるやつも多いんだ」

光「麗恋すげぇ…」

麗「えへへへっ」

シ「このままじゃ意外と早くつくかもなっ」

ロ「その通りです ほら…」

目の前にはなにもないしろい地面
本当にここが…??

ロ「間違いありません」

シ「この先はもうすこしありそうだぞ?」

ロ「いいえ…麗恋 貴方の問いかけに応えるはずです さぁ問いかけを…」

シ「なるほどな…それで冒険家たちはここをみつけられなかったのか…」

光「え…?」

シ「アイシング・レイクは伝説上の湖だ…まさかほんとにあるとは…」

ロ「ここは神聖な感じがする…」

麗「そんな…問いかけとかわからないよ」

シ「影…」

ロ「そんな…危なすぎます…!」

シ「影なら知ってるはずだろ」

光「あの麗恋を…!?」

麗「影って…鏡の中の私のこと…?」

シ「…!?」

ロ「話せるのですか…??」

麗「うん 鏡があればだけど…」

シ「ヴァルゴ 鏡」

ヴ「はいはーいっ」

ロ「麗恋 お願いします…」

麗「うんっ おはよ 私……」


To be continue─…

─仮面の双子─

鏡「おはよう 私」

麗「なんかね神水の湖をとく呪文おしえてほしいの」

鏡「それはあなたも」

麗「しっている…」

ロ「これが鏡との会話…?」

シ「まるで麗恋がひとりで話してるみたいだ」

光「影の麗恋と…」

鏡「覚えていなくてもいい記憶」

麗「私に少しわけてほしい」

鏡「大事な」

麗「水晶を呼び起こす呪文」

鏡「プリオン タイウェア セアル ヒィアワス ソルフド ケムナ」

麗「プリオン タイウェア セアル ヒィアワス ソルフド ケムナ」

鏡と同じ言葉を復唱したとたんに地響きがする

鏡「あなたが─…ひと─……いる」

麗「え…?」

地響きのせいで鏡の声が聞こえにくい…
大事なこと言ってるきがするのに…

シ「うぁ!」

ショコラの悲鳴に振り返り
鏡の自分に手を振る

ロ「ショコラ!」

光「くそっ」

麗「ショコラっ!」

ショコラが落ちたように見えたところには穴があいている

意を決してショコラの落ちた穴に飛び込む

ロ「麗恋!」

ロゼットも続けて追いかけてくる

その後には光の姿もみえた

穴はそれほど深くなく尻もち程度に済んだ
穴の中に広がる空間…それは…

麗「素敵…」

青く反射する雪の天井
綺麗なクリスタルのような大きな石が輝いてる
真ん中には大きな湖
水は透き通っていてしたにもキラキラした石が光ってる

シ「魔道空間…」

光「え…?」

ロ「雪の下に大切な湖を閉じ込めるために魔法で雪の中に空間をつくったのでしょう」

シ「その光ってる石は大魔法石だ これのおかげでこの空間をたもってるらしいな」

??「あれれ?お客さんだ」

??「あれれ?ここに来れたんだ」

??「とゆうことは」

??「とゆうことは」

??「アドニスの化身かな」

??「アドニスの化身だね」

ロ「!」

ロゼットが攻撃体制をとる
ショコラもそれに応じて攻撃体制をとる

聞こえてきたのは全く同じ声質の声
トーンが若干ちがうだけのこえ

シ「これだけの大魔法石を操る守人…」

ロ「並大抵の魔力の持ち主ではないはずです」

??「アドニスの化身は」

??「消さなくちゃいけないの」

??「ここで消そう」

??「ここで消さなきゃ」

シ「姿をあらわせ!神水の守人よ!」

??「こわいこわい」

??「あ 精霊使いだよ」

??「私たちで潰せるね」

ロ「守人よ名前と姿を表わせ!」

??「しかたないなぁ」

小さな二つの影が浮かび上がる
ひとりは右の横ポニで水色がかった白い髪
もうひとりは左の横ポニで藍色の髪
それ以外はそっくりだった
それぞれ片割れの仮面をつけた不思議な双子

身長は139cmくらい
幼い子どもみたいだ

??「私は正夢(いむ)」

??「私は悪夢(あむ)」

正「あなた達を」

悪「消しに来た」

正「神水の守人」

悪「アドニスの化身」

正「ここで旅はおしまい」

悪「ごめんね♪」

ロ「そうはさせません!」

ロゼットが手を振ると風が起こる
その風が双子に襲いかかるが

ロ「え…?」

風は双子の前で消えた

正「あぶないなぁ」

悪「けがしちゃうなぁ」

正「そーゆー悪い子は」

悪「ママに愛されないよ」

ロ「き、効かないですって…?」

シ「ロゼット あいつらはこの大魔法石の所有者だ」

正「精霊使いさんは頭がいいね」

悪「ままにいっぱい愛されるね」

正「でも」

悪「私たちが怒られちゃうから」

正&悪「私達に消されてね」

シ「消されてたまるか!」

悪「消すのはアドニスの化身」

正「その子を消せば」

正&悪「私達はいい子だから愛される!!」


To be continued…─

─夢という名の少女─

麗「くっ…!」

双子から放たれる魔力は底知れない闇を感じる

ロ「麗恋!」

ロゼットが風でかばってくれるけど
それも吹き飛ばされそう

シ「くっそ…精霊魔法が…」

悪「つんつん頭の魔法はだめなの」

正「つんつん頭は魔法がつよいの」

悪「化身を消す」

正「邪魔なの」

シ「つんつん頭っつーながき!」

悪「そう私たちは」

正「何も出来ない子ども」

光「…!」

麗「光…?」

光の目つきがかわった
まるでなにかに怯えてるような…
いつもと雰囲気が違う…なにか違和感を感じる…

悪「なにか考え事?」

正「化身さん余裕?」

ロ「くっ…風よ禍々しき空気を吹き飛ばせ!」

ロゼットの起こす聖なる風は禍々しき空気を吹き飛ばすかと思いきや
双子にとめられてしまう

悪「あぶないあぶない」

正「あぶないあぶない」

悪「今度は私たちが」

正「殺るばんだね」

悪&正「悪夢(あくむ)は覚めず正夢(まさゆめ)と化す」

悪夢と正夢が叫んだ瞬間に闇の塊が麗恋をめざして飛んでいく

麗「きゃ…!!」

光「風よ!化身を守れ!」

麗「へ…?」

光から発された風は麗恋を守るように包む
その強度はロゼットを上回っていた

シ「光…お前はいったい…」

ロ「ショコラの強さと私の能力をコピーした…」

正「私達に光りなんかなかったのに」

悪「どうして…どうして化身にはあるの?」

正「私は」

悪「そんな愛されなかったのに…!」

光「なんだ…?」

双子の体が光出して一つの身体になっていく
禍々しくて気持ちが悪くなるほど居心地の悪い邪気
た、たえられない…

影『私 私の中でやすもう』

麗「う…ぁ…」

体の中から声が聞こえる
なにかが這い上がってくる…

影『大丈夫 私に任せて』

麗「鏡の…私…」

ぱぁっと禍々しい邪気がいっぱいになり
私が意識を失う寸前に見たその姿は

??「…」

小さな小3くらいの少女
紫と金色の瞳の色を持つ禍々しい少女
私にはその名前がわかった…

麗「ゆ、め…ちゃん……」

影『久しぶり…七島』

その言葉とともに私は闇に沈んでいった─…

To be continue─…

─愛されなかった子の末路(影目線)─

??「そう…私は七島 夢 認められるために褒められるために愛されるために天地へ繰り出された双子の本体」

ロ「七島 夢…?」

影「やっぱ…」

シ「知ってるのか…?」

影「ええ 表の私はどうかわからないけど私は覚えてるわ」

夢「私はあなたを知らない」

影「そうでしょうね だって私は七島と接触していないもの」

光「どういうこと?」

影「七島の自殺後の面倒を見たのが私達柊家」

夢「…!?」

ロ「なるほど…でもどうして麗恋たちが…」

影「第一発見者の表の私は七島の事情を知って母に相談したわけ」

夢「そ、んな…」

表の私は
親に愛されず
友達にも恵まれず
悲しみを抱き死んでいった悲劇の少女に
一筋の光を与えた

その悲劇の少女が七島 夢

夢「でも またあんな目にあうのはやだ…やだぁ!」

七島の邪気が強くなる
七島が体験したのは愛されない哀しさ
それをけすのは一筋の光じゃたりないということか

夢「お母さんに怒られるのはヤダ…」

影「子どもなら当たり前の心理ね」

ロ「ぐはっ…」

シ「ロゼット!」

光「ロゼット!!」

やはり生半可な体じゃこの邪気に殺られる
ロゼットはしかも聖なる体だしつらいだろう

ショコラは魔力地がたかいだからだろうが
光はなぜたっている…?

ショコラの恩恵?

影のこの私にもわからないなんて…

影「光 ロゼットに癒しの風を この邪気じゃ死ぬ」

光「あ、あぁ! 癒しの風よ本当の主にまとえ」

ロゼットの体に絹のような風をまとわりつかせている
これであっちは大丈夫

夢「何余所見してるの?いけないんだよ」

いつのまにかに七島が邪気の塊を私に放っている…が

影「人を傷つけろと習ったの?」

少し風を起こせばふっと横にずれていく

夢「お母さんの言うとおりにいい子をつくれば怒られないの!」

影「まさかここまで拗れてるとは…」

夢「私は悪い子だから私じゃないイイコを作ってほめられるの!」

影「自分じゃない自分…かまるで一昔前の私だ」

どんどん邪気が強くなってくる
あの三人は大丈夫かな…

でもここであの三人の心配をする余裕はない

夢「そしたら認められるの!ほめられるのぉぉお!」

邪気がさらに強くなり私もたってるのがやっとになってくる

どうしたらいいの…!
大きな光をどうあのこの闇を照らせば…!

夢「お母さんはイライラしないの 私に酷いことはしないの!」

影「落ち着いて!ねぇ!」

夢「嫌い 自分じゃない自分を作れば作るほどホントの自分が嫌い…!!!」

影「じゃぁ自分を好きになればいいじゃない!」

夢「へ…?」

邪気が少し収まる…
なるほど 迷いがあるってわけね

影「本物の自分を好きになればいいじゃない ここには七島の母親はいないでしょ?」

夢「お母さんが…いない…」

どんどん収まってく
夢の邪気の正体はお母さんへのやみだったのか…

影「もう夢を苦しめるものはいない…幸せな夢を見なさい…」

夢「ぅ…ぁ…」

夢が泣き崩れる
辛かったんだろうな…

親が子に与える影響はとてつもなく大きい
怒鳴れば怒鳴るほど子どもの心に巣食う

夢をそっと抱きしめてあげる
これから幸せという光をいっぱい浴びて欲しい
雪の下にそびえる湖などとびだして─…

夢「ありがとう…ありがと…」

影「ん…よく頑張ったね…」

ふわりと聖なる雰囲気がただよう
それに伴って半透明になっていく夢

しゅる…と消えると私の手元には飴のゴミが残っていた

そうだ…表の私は可哀想だからって飴を一緒に棺にいれたんだ…

影「表の私…七島はちゃんと飴もってたみたいだよ─…」





To be continue─…

アドニスの涙

アドニスの涙

死んだ後のちょっぴり不思議な物語

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-06-11

Copyrighted
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  1. ─序章─
  2. ─不思議な世界─
  3. ─少年との出会い─
  4. ─クラウド・ワールド─
  5. ─決意と旅立ち─
  6. ─平和な森─
  7. ─ショコラ・ガナッシュ─
  8. ─聖樹の守人─
  9. ─冬埜の闇─
  10. ─森の水晶の波紋─
  11. ─初めての野宿─
  12. ─私と私─
  13. ─ゲンガー(ショコラ目線)─
  14. ─能力の目覚め─
  15. ─影の願い(光目線)─
  16. ─いざ 北の地へ─
  17. ─雪の積もる湖─
  18. ─仮面の双子─
  19. ─夢という名の少女─
  20. ─愛されなかった子の末路(影目線)─