ママは死者が乗る列車をホームで待ち続けていた。ホームは果てしなく長く、その果ては闇の中に消えていた。ホームには一台の電話が設置されている。それは下界の自殺志願者と繋がる電話。電話が鳴った。ママは自殺志願者に、死を選択させることも、生きることを説得することもできるのだった。
ここがかつての聖地だからなのか。ここで暮らした人々の大地に染み付いた想いが、人々を見守っていた神々の眼差しが、月の光に彷徨っているような……。 聡は闇に浮かぶ神殿を見上げた。
捨てられた都。 忘れられた遺跡たち。 ひとつの文明が母なる大地に抱え込まれ、ひっそりと息をしながら長い眠りについている ──そんな静けさがある
杏樹。君が何かを隠していることは、寮のみんなが知っていることだよ。だが、誰もあえてそれを聞こうとはしない。寮にいるやつらはみんな人に言えない秘密や悩みを抱えているからな。──だが、君は少し違う
いいか。ここは墓なんだ。さっきだってあれだけの骨が転がってたんだぞ。生贄にされた霊もいるんだ。幽霊なんてそこら中うようよしてるんだよ
「僕はこの古代文字の解読をしたいんだ。君にできるか? 頭を使えないなら、君は体を使う。──それでいいだろう」 杏樹はあっさりとした口調でそう言ってのけた。麻柊は歯を食いしばり、拳を握りしめた。おそらく『玲』には麻柊を挑発するつもりはない。
今まで歩いて来た方角などわかる者はいない。道を探すのに精一杯であり、地下の曲がった通路を歩いてきて、誰も今いる位置など把握していない。誰もが杏樹の並外れた、というより人間離れした方向感覚に言葉を失っていた
櫂はそう言って黒い染みを手でなぞりながら口を固く結んだ。黒い染みの正体は少年たちの『血』だ
真夏の太陽が降り注いでいた森から一歩踏み込んだ先は、ひんやりとした冷たい闇だった。 固く敷き詰められた石畳に足音がやたらと響く。徐々に涼しいというより寒くなってきた。 声を低くして櫂が振り返った。闇の中に琥珀色の瞳が光る。睨まれた聡は口元を隠した。
「ルールを破りし者に、罪を ルールを破りし者に、罰を ルールを破りし者に、報いを」※続きは本文へ。@ココミュ(台本)
杜雪が『癒しの手を持つ少女』だとわかると、彼女はその日から巫女にされた。巫女は清められ、他の子供たちとは離されて大切に育てられる。だが、彼女には好きな人がいたんだよ……君のお父さんの名は夜風だね