風船人形事件以来、剛、蛯原、五郎、園田の男四人が博子の身辺を守っていたが、憎むべき怪人は一向に現れなかった。 そんな中、博子の余命が間もないことを偶然知った蛯原は、彼女に12年前の真実を打ち明ける。 衝撃の告白に、戸惑いを隠せない博子。 そこへあのローブの怪人が、二人をあざ笑うように現われた。 さっと身をひるがえし逃走を図る怪人を、博子が止めるのも聞かずに追う蛯原だったが・・・ 「しっかりして、お父さん‼」 一気に犯人追及への急展開を見せる連載小説「蒼い青春」、待望の第十一話‼
吾輩は猫叉(ねこまた)である。遥かな昔、人間に飼われていた頃には名前があったが、もはや忘れた。口さがない連中は吾輩を化け猫などと呼ぶが、失敬極まりない。同じく齢(よわい)を重ねた猫の変化(へんげ)した妖かしであっても、品格が違う…
ああ、ああ。ええと、音声ワープロは動いているかな。あれ、余計なことまで印刷されちゃった。まあ、いいや。後で削除しよう。『宇宙の不思議』を読んで。4年3組遠山ヒカル。ぼくは課題図書の中から、『宇宙の不思議』を選びました。なぜなら、ぼくは…
「あなた、ゴロゴロしてる暇があるなら、庭の草むしりぐらいしてよ」「ああ」庭付きの家を買ったのが八木の秘かな自慢だったが、特にこの季節には、どうしてこんなにと思うぐらい草が生えてくる。しかし、子供がまだ小さいので、除草剤をバンバン撒くわけにも…
《お帰りなさいませ。ご夕食はサバの味噌煮でございます》「ああ、ありがとう」いつものことながら、榊原はメグミの献立に感心した。その日の昼食は、取引先の好みに合わせてコッテリした肉料理だったので、夜は魚がいいなと思っていたのだ…
待ち合わせた喫茶店には幸い他の客はいず、その男だけが待っていた。わたしも男と同じくコーヒーを注文し、改めて男の顔を見た。予想していたより老けていたが、ハンサムな男である。「ギャンブルのコツが聞きたいんだって?」 男はちょっと皮肉っぽい…