更地に草が生えていました。単なる雑草でしたが、ある一つのものだけ、ほかのものがグングン背を伸ばしているにもかかわらず、同じ背丈でした。 いっこうに伸びもせず、花を咲かす準備もしません。 それを不思議に思ったトカゲはそれを問うと、どうもどう咲かすのかが分からずに、そのままでいるらしいのです。 途方にくれているうちに、周りの同じ草たちは、花を咲かせました。 それなのにその草は、大きな成長は見てとれません。 けれど、嵐が過ぎ去った日のこと、ほかの草たちは全部風に吹かれてしまっていたけれど、その草だけが無事にいました。 驚いたトカゲはその草の今の花が何かを感じ取ったらしく、挨拶をして去りました。
心が硬直して、かさかさになって、訳が分からなくなって、けれど何か大切なものがどんどんこぼれていくような気がする。 そんな時、あがいていろんなことしてみるけどしっくりこない。歩いてもみる。 いつもの光景の道。けれど、何かに目が留まって、一気にこみあげてくる人間的な思い。 その息吹があるから生きられているようなもので、だけど、それが一体なんなのか、定かではない。 だから掴もうとそっと手を出す。なかなか難しいその作業。 けれど、それは大そうなものじゃなく、ほんとそこら辺に転がっているもので。 なんでもない変哲のないものを愛せるものが、言葉を物語を紡げるのだと思う。
『雨くゆる、日曜2時に紫陽花まえで。』番外編最終話です。 アサヒが卒業し、陸上部は恒例 ”追い出し会 ”を開催。 その後、部室にアサヒとナツふたりきり。 涙を必死に堪えるナツだったが・・・。 本編【雨くゆる、日曜2時に紫陽花まえで。】 【番外編1、2】 【スピンオフ1、2、3】も、どうぞご一読あれ。
『雨くゆる、日曜2時に紫陽花まえで。』スピンオフ3です。 ひとり海外留学したアキ。 ホームシックで泣き暮れるアキに、唯一の日本人シュウは誰より冷たくて。 しかし急病で倒れたアキを助けてくれたのはシュウだった。 急激に近付くアキとシュウの想いの行方は・・・。 本編【雨くゆる、日曜2時に紫陽花まえで。】 【番外編1、2】 【スピンオフ1、2】も、どうぞご一読あれ。
冬になって葉っぱを落とした、樹たちは枯れ死んだと思われて、そうそう抜かれないと思っていたら、結構抜かれてしまって、代わりに、街灯という外炉樹があたりを埋めていた。 その者たちの言葉はほとんどわからず、テカりものの常用広葉樹さんたちも困った顔している。 夜長に思いを巡らせても、世を間違えたかのような感覚になる。 ほとんどを概念化された物事に追いやられ、ただ夜空を眺めることも遮られてしまう。夜だというのに、活動したいという概念が、明かりが澄み切った漆黒の夜空の邪魔をする。 しかし、自分が歩んできた自然とともにある感覚である、直感を大切にしたほうがいいと訴えてくる。もう自分の中の自然を踏みにじりたくないのだ。
支配者は壁をつくりガラスで覆っていく。しかしそれは台風の風や雨には通用しない。 ひっかかること。それが、この世界をぐらりと揺らすことになる。 支配者は奴隷や使用人に命令し、飼いならしている気でいる。 しかし、現場を知らない支配者は、逆に支配されている。自分の意志というものの所存に関係してくる。 いくら、スマートにふるまっていても、台風がくればそれは一瞬に砕け散る。 常に自分以外の外部の者が下した中にいる。その既存の中で生きる我々は、自分の人生を歩むには、無意味の意味を提示することが不可欠になる。 しかしそれも含め台風のなかの目的というものに縛られていても、それは目的の奴隷のままだ。 だから、偶然の足で踊ることが、自分の意志で決定を下すことだ。言葉はただ重たい者のためにある。重たい者が扱うの
『雨くゆる、日曜2時に紫陽花まえで。』スピンオフ2です。 アサヒとナツが計画した ”たこ焼きパーティー ”を開催。 スミレを捉えたミサキの暴走は誰にも止められない?! 本編【雨くゆる、日曜2時に紫陽花まえで。】 【番外編1、2】 【スピンオフ1】も、どうぞご一読あれ。
まだ薄暗い朝、雨がしとしと世界を埋めている。 雨に埋め尽くされている地上と天空にイメージを走らせると、地上が雨に埋もれた、深海と似ていると気がつく。 分厚い雲に光は遮断されて深海魚のように、生きている自分たち。 けれど、人々は海の深海には研究熱心だが、隣同士にいる雨の深海の、地上の僕たちには研究熱心とは言い難い。 その目を瞑って生活しているここの人々に、僕は不思議でたまらなくまた雨に思いを馳せていく。
ひと夏の蝉のセリフ。 蝉からみた、猫やゴキブリを通して見える、人の接し方の絶望的な差。 同じ命というけれど、という、蝉の声にのせて。 陽気に、皮肉にうたいましょう。
『雨くゆる、日曜2時に紫陽花まえで。』の番外編2です。 アサヒとナツの、はじめての動物園デート。 相変わらず笑ってばかりのふたりが、目を伏せた瞬間・・・。 本編【雨くゆる、日曜2時に紫陽花まえで。】 【番外編1】 【スピンオフ】も、どうぞご一読あれ。
美大を卒業してから、一人暮らしをはじめた菜子。その借家での不思議な出会い。 将来をあいまいにしていた菜子は、自分の人生を見つめなおしていく。 淡々と過ぎていく日々。非現実的日常。
『雨くゆる、日曜2時に紫陽花まえで。』 の番外編です。 アサヒとナツ、約束のたこ焼きを食べに行く、笑い声あふれる放課後のひとこま。 本編【雨くゆる、日曜2時に紫陽花まえで。】も、どうぞご一読あれ。
森の中に善人が一人いました。その時は、周りの草木や小動物などとも話せていました。 新月と満月のとき、善人は胸の内になにかもやもやを感じていました。 しかし善人は森の中で、同じ姿のものに出合い、どんどんと出会い、集落をつくります。そこに住んでいた生き物たちはびっくりしました。そうしてより良い生活のためにいろんなことをしていきます。塀をつくったり、もやもやが気にならなくなったことで夜遅くまで活動できるようになったりと。 ある善人がまた森で人に出合い自分たちの集落に誘ったが、断られたと騒ぎます。その人は森が作り出した「キジン」だと叫ばれるようになりました。 そして、食べ物の分け前で、トラブルが起き「悪人」がでました。 集落にいたある者―「キジン」は、一連の出来事を書いて集落を去ります。それはのちに文献になるものです。