細胞の中に、我思う。
原稿用紙に綴られた物語は、あまりにも幼稚なものであった。それは私に幻想を見せてくれた。時に楽しく、時に切なく、時にひやりとさせ、いつも心を満たしてくれるものであった。 現実との違いに隔てられながら、私は幻想をのぞく。どれも、私が手に入れられなかったものだ。私は思った。「私のいない世界は、なんと美しいことか」と。美しい幻想に、私はいらない。私にとって私とは、絵画を汚す炭のようなものであった。だから、私は私のいない世界を描く。
それは、静かな自殺である。
女性の下腹部を執拗にさわったとして指名手配されてしまったユウスケ。彼の世間体を守りたい一心から、彼の逃走劇が始まる。果たして彼の運命は!?そして、その背後に潜む黒幕とは!?