逃走者たち
世界には約70億人以上の人間がいる。彼らは同じ類族内にいる似たような容姿の別個体を容易に識別することが出来る。人類以外の動物や文明にしてみれば、人間は肌の色が違うくらいで、だれそれと区別はできないだろう。
これに関しては、誰もあまり気にしないのか詳しい説明が今までなされてこなかったが、作者の独断的な推測だと、これは人類が持つ同じ種族同士の容姿の違いを識別するためのロジックが、長い時間をかけて発達し、容姿の違いを誇張して認識するようになったからではないだろうか。
とすると、そのロジックから偶然にも漏れだしてしまう存在もいるのである。
穏やかな朝に、スマホの電子音がけたたましく鳴る。
雑誌やゴミくずが、少しばかり散乱したワンルームアパートの一室だ。ユウスケはそこで一人暮らしをしている。彼の人生は悲惨なほど退屈であった。
というのも、それは彼が持つ独特の体質によるものであった。彼は幼い頃から、よく影が薄いと言われていた。両親に小さい頃の印象を聞いてみても「う〜ん、あんまり覚えてないわねぇ、あ、そうそう、そういえばお向かいの坂本さんがね〜」と話をたぶらかしてしまうほどだ。
学生生活を始めると、必然的に学級という集団に組み込まれる。このシステムは実に残酷だ。ユウスケはそこでも己の体質の存在をありありと実感した。短期大学を卒業した彼だが、異性の恋人はおろか友達という友達は1人もおらず、ましてや同性の恋人さえいない(これは非常にまれなケースでもあるが)という実に焼き海苔オンリーで空腹を満たすような淡白な学生生活を送った。彼がそのたぐいまれない過去を悲観し、ひきこもりにならなかったのは、彼が自らの体質を物心ついた頃からよく理解しているからである。彼がそのような学生生活を送らざるを得なかったのも、クラスにおいてその存在を気づかれなかった体質によるものと言える。
電子音が鳴り止む。朝の静寂の中に、都市が動き出す喧噪が隠れている。日常が始まる合図は、彼が仕事前につけるテレビのニュース番組から始まる。
『本日、警視庁より1級指名手配犯の発表が行われました』
そういえば、去年に指名手配に関する法改正が行われていた。かなり急いでつくられた法案らしく、国会ではかなりの不備が指摘されたようだが、なぜか強行採決された。
『田村ユウスケ容疑者 26歳 電車の社内で女性の下腹部を執拗にさわったとして・・・』
痴漢のニュースを聞き流し、彼はコーヒーをすすった。
しばらくして、盛大に吹き出した。
田村ユウスケ・・・明らかに俺の名前だ。フルネーム、顔写真、年齢・・・。女性の下腹部を触ったこと意外は全て合っている。というか、なぜ痴漢?そして下腹部?しかもなぜそれが指名手配される???
出頭した方がいいか。いや・・・。
根拠は無かった。ただ、彼の中で、何かの勘が必死に逃げろと訴えていた。
逃走者たち
今、この文を読んでいるということは、あなたはこの長ったらしい文章を見事読み終えたということですね。えっ?違う?えっ?ありがとうございました。えっ?
なにぶん、思いつきで書いたところもありますので、見る側からしてみれば大変稚拙な文章です。今回、連載を決意したのもほんの出来心です。5分くらいで決めました。
数分程度でサクッと読める。そんな小説を目指していきたいです。ありがとうございました。