また会う日を楽しみに Ⅷ
「ユキ」
彼は・・・刹那は、私の名前を呼んだ。
ああ、どうしてだろう。
名前を呼ばれただけなのに、こんなに嬉しくなるのは。
「・・・なに?」
「ユキにプレゼントがあるんだ。ちょっと来て」
そういうと、刹那は白い翼をひろげた。
刹那は、天界の人間だ。
他の人からは、大天使ミカエルと呼ばれている・・・とか。
天界のお偉いさんなのだ。
刹那の翼は、本当にきれいだと思う。
それは、天界のお偉いさんだから、なのかはわからないけれど。
「どこいくの?」
「秘密」
刹那の笑顔に、私はつい、胸が苦しくなった。
翼を広げたのに刹那は飛ぼうとしなかった。
私が手を引かれて連れて行かれた場所は、花畑だった。
「うわぁ・・・きれい・・・!」
一面に広がっていたのは、ダイアモンドリリーだった。
真っ白なものや、程よくピンクに染まったもの、紅色のものなど、様々な種類のダイアモンドリリーの花がそこにはあった。
「ダイアモンドリリーは白いものだけじゃないんだ。他にも微妙に色合いの違うものがある。ダイヤモンドが輝くようなその美しさから、ダイアモンドリリーと名付けられたんだ」
今までにここまで感動したことはなかったかもしれない。
こんなに、何かを夢中になって見たことなんて、なかったかもしれない。
そのくらい、ここの・・・天界に咲いているこの美しい花に、私は心を奪われていた。
「これが、私へのプレゼント?」
「半分正解。もう半分は・・・ほら、前をみてごらん」
「前・・・?」
よく見ると、遠くにうっすらと人影が見えた。近づいてくるたび、それが誰なのか、私にはすぐにわかった。
最初は信じられなかったけれど。
「お父・・・さん?」
私が幼いころ、亡くなってしまったはずのお父さんが目の前に立っていた。
背中に天使の翼を広げて。
「・・・久しぶり。大きくなったな、雪」
自然に涙がぽろぽろと落ちる。
「お父さん!お父さん・・・!!」
私はお父さんに抱き着こうとした。けれど、すり抜けてしまう。
「ユキ、彼はまだ力が弱いんだ。僕は立場が立場だから実体化できるけれど、実体化を保てない天使が多くいるんだ。彼も・・・その一人だ。僕の力で姿を見えるようにはしているけど・・・ごめんね、触ることはできないんだ」
「大天使様のおっしゃる通りだ。すまない、雪」
「ううん、いいんだよ。私はお父さんに会えただけでも、夢みたいだと思ってるんだもん・・・」
本当に、夢みたいだ。
ずっと、ずうっと気にしていたこと。
いつか、お父さんの顔や声まで忘れてしまうことが本当は怖かった。
でも、もう一度、お父さんに会えた。
それだけで・・・十分だ。
「僕が言ったこと、正解だったでしょ?」
ーーー『・・・お父さんは、死んでなんかいないよ』
『え?どうゆうこと?』
『お父さんは今も生きているよ、空の上でね。天使って、知ってる?』
『てんし・・・?』
『そう。君のお父さんはきっと、天使になったんだよ。いつも空の上から、君のことを見守ってくれているんだ』ーーー
あ・・・!
私が幼いころに刹那と交わした会話が浮かんできた。
ああ、もう。
愛しい。
こんなにも、こんなにも、気持ちは溢れていたのに。
こんなにも・・・!
「雪、お父さんは雪の顔が見れて本当にうれしいと思っている。お母さんのこと、頼むな」
「うん・・・任せて、お父さん」
「私はいつまでも、雪の幸せを祈っている・・・じゃあね、雪。元気でやるんだよ」
そういうとお父さんは消えてしまった。
「・・・寂しい?」
「ううん、嬉しい。ありがとう、刹那。最高のプレゼントだよ」
私は精一杯の笑顔で返した。
「・・・ユキ」
「ん?」
「僕達も、もうお別れだ」
「・・・え?」
時が、風が、全てが止まったような気がした
「僕はしばらくここにいなくちゃいけない。ルキフェルやイヴのこと、僕の立場のこと、他にもいろいろ片づけなければいけないことがたくさんあるんだ」
「刹那・・・」
刹那の言っていることはわかる。
けど。
やだよ、そんなの
やだよ・・・!
まだ、私は何も伝えてない・・・
何も・・・
「そんな顔しないで、ユキ」
「だって、刹那と離れるなんて、会えなくなるなんて・・・せっかく私の記憶も戻ったのに・・・」
「会えなくなるとはいってないよ?」
「え?」
「神や僕はいつも君や、人間を見ている。だから、会えないわけじゃないんだよ。それに、僕もこれでユキとバイバイするつもりもないしね」
「ど、うゆうこと・・・?」
「もう少しまってて、ってこと」
ああ、また会えるんだ。
良かった。
そう思った瞬間気が抜けたように倒れこんでしまった。
「あ・・・力が・・・入らな・・・」
刹那が私の体を支えてくれた。
「あたりまえだよ。天界はただでさえ人間には都合の悪い場所なのに、ユキはずっとルキフェルに連れ去られてたし、しかもしまいにはイヴに体まで貸して・・・。体力を消耗しないわけないじゃないか。無理をしすぎだ」
「えへへ・・・ごめん・・・」
「ねえ、ユキ、聞いてくれるかな?僕ね、いつか、ユキに会いに行くよ。絶対に。待っててくれ、なんて図々しいことは言わないにしとくね。でも、もし僕がもう一度会いに行ったときに、ユキが僕のことを覚えていてくれたら・・・聞いてほしいことがあるんだ」
だんだん、意識が遠くなっていく・・・
刹那の声も、香りも、感触も、遠くなっていく・・・
「うん・・・」
でも、この返事は、どうしてもしたかった。
「私は、ずっと待ってるよ・・・大好き・・・」
そう言って、私は完全に意識を失った。
*
「無事に地上に帰れたかな・・・ユキは」
一人になった僕は呟く。
ユキ。
反則だよ、もう。最後の最後にあんな爆弾を落としていくなんて。
僕から言おうと思っていたのに。
「ユキらしいや」
いつかきっと、君に・・・会いに行くよ。
「また会う日を楽しみに」
また会う日を楽しみに Ⅷ
いままでインターネットの調子が悪くって更新できずにいました。すみません!
一応ラストスパートなとこです(?)最後にエピローグが来ておわりにしようと予定してます。
お父さんは、ずっと出したいと思ってました。いい感じのおじさんだといいですね。
そして、今回の話でタイトル回収できました。わーい!タイトルの意味ここでゆっちゃおっかな~とおもってましたがやめます!気になる方は調べてください!
最後までこの小説にお付き合いいただければ幸いです!では!
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