また会う日を楽しみに Ⅲ

また会う日を楽しみに Ⅲ

『----様!大天使ーーーー様!どうゆうことですか!これは!』



『そのまんまの意味だよ』



『大天使の座を捨て、地上に降りるとは!いつ世界にルキフェルが再来するかどうかも分からないのに・・・!』

『そうです!神がお許しになるわけがない・・・!』

『大天使様・・・!』



『大天使様はどうお思いなのですか。我々の未来がかかっておるのですぞ』







『・・・僕は・・・』




ーーーーーーーーーー

『ユキ』



声が、聞こえる。





懐かしい声がする。



私はあの声が大好きだった。


あの、柔らかくて、優しいあの声が。



そうだ、思い出した。




あの声の持ち主の背中には




何かが生えていた。



・・・何が?



何だっけ。


何なんだっけ・・・?



『僕が君を、ずっと守ってあげる



僕は、君のことが、好きだよ』



あれ、なんで




刹那のこと思い出したんだろう。






「ユキ、おはよう」



幻聴なのかこれは。ここは私の部屋のはずなのに、刹那の声が聞こえる。


「・・・おはよう。今日、日曜日なんだけど。っていうかなんで私の部屋にいるの」


「そりゃあ、ユキと僕がマンションのお隣さん同士だからだよ。ユキのお母さんは優しいね。すぐにユキの部屋に案内してくれた」



そうだった。私はこの涼しい顔をしている少年、刹那とご近所さんどころかお隣さんになってしまったのだった。
というか理由になってない。


「・・・で、何しに来たの」


「出かけようよ、僕と」


いきなり来て何を言っているんだ。
今時計の針は7時を指している。

日曜日の朝にしては、私にしては早すぎる。


「・・・どこに?何をしに?」



「ショッピングモールに、買い物をしに」



「何の?」




「・・・秘密」




そういって、刹那は優しく私に微笑んだ。





「へえ~ここがショッピングモールかあ。噂にはきいていたけれど、本当に広いねえ!迷子になってしまいそうだ!」


まるではじめてきたかのような反応を刹那はみせる。
たかがショッピングモールでここまで喜んでいる人はあまり、というか全く見たことがない。


「もしかして・・・もしかしてだけど、こうゆうところに来るのは、初めて?」



「うん。今日が初めて!一回は来たかったんだよ!」

そう言った刹那の顔は本当にうれしそうな顔をしていた。


刹那は昨日転校してきたばかりなのに、
何故か私のことを知っている口ぶりで。



私は何もこの人のことを知らない。



そりゃあ昨日転校してきたばかりなのだから




知らないことは仕方がないのだ。



仕方ないはずなのに、無償に切なくなった。


「・・・家族とかで、来たりしなかったの?友達とか」




「・・・僕には、家族はいないんだ。別に死んだってわけじゃないんだけどね。でも、いないんだ。人間と関わろうとしなかったから、友達もいないよ」



「そう・・・なんだ」


本当に、私、刹那のこと



何も知らない。


「ユキ、僕には君がいるから、寂しくないよ」



「・・・でも」



「本当だよ。だからそんなに僕のことで悲しそうな顔をしないで」



「・・・わかった」



「そんなことより、はやく行こう」



そういって、私の頭に手を乗せる。
刹那はいつもの笑顔を向けてきた。


私は、聞けなかった。


聞いちゃいけない気がした。


家族のこと、友達のこと。

そして、


刹那がどうしてそこまで私を必要とするのか。







「お待たせ!たくさん買ってきたよ!!」




「・・・よく、食べるね」



ものすごい量のスイーツ達がテーブルの上に並んでいた。



「え?そうかな?だってこのクレープも、アイスも、全部甘くておいしいんだもん」



幸せそうな顔をしながら買ったスイーツを頬張る刹那。
見ているこっちまで幸せな気分になってくるから不思議だ。
自然に優しい気持ちになる。


(あ、ほっぺにクリームついてる)


ごく自然に、刹那のことをかわいいと思った。



「あははっ、刹那のほっぺたにクリームついちゃってるよ。とってあげる」


そう言って私は刹那の頬のクリームを取ってあげる。



「・・・あ、ありが、とう」


刹那の食べる手が止まった。
・・・あれ、私何か変なことしちゃったかな。


「どうしたの?」


「・・・ユキ、君は、本当に・・・」



「・・・?」



「なんでもない。これを食べたら帰ろうか、ユキ」



「え?早くない?」



「もう用は済んだからいいんだ。ユキ、これを君にあげる」




そういって渡されたのは




白い羽のネックレスだった。



「これ・・・」



「誕生日プレゼントが花一本っていうのもね。物足りないじゃないか」


その羽は、真っ白で、なぜか懐かしくなるようだった。


「もしかして、今日ここに来たのって・・・」



刹那は、微笑んだ。


「誕生日おめでとう、ユキ」



「あ、ありがとう・・・」




私は、嬉しさに浸っていて、まったく気づいていなかった。




刹那が、悲しそうな顔をしていたことに。

ーーーーーーーーーー



『・・・僕はね、地上で守りたい人が出来たんだ。大天使なんて呼ばれているけれど、僕はたいした存在ではないんだよ。まあ、大天使の座を捨てたわけではないけれどもね』


『・・・ですが・・・!』


『それに神は許してくださったよ』



『・・・本気、ですか?』



『・・・本気だよ。僕はあの子を・・・ルキフェルから、全てから守ってあげたいんだ



そのためなら、僕はなんでもする





ユキを、守りたいんだ』

また会う日を楽しみに Ⅲ

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また会う日を楽しみに Ⅲ

『僕が君を、ずっと守ってあげる。そのかわり、君の全てを僕にちょうだい?』 彼には 白い翼が生えていた。

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更新日
登録日
2014-03-16

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