また会う日を楽しみに Ⅵ
ーユキー
女の人の声が聞こえた。
初めて聞いた気がしない、そんな声で。
ー私の記憶は貴方に教えたわー
頭の中にズン、と響いてくるような感覚。
ールキフェルのこと、悪く思わないであげてほしいのー
私は、この声の主を知っている。
ルキフェル、という言葉も私は知っている。
だって・・・さっきまで、見ていたのだから。
ー私は今でもルキフェルのことを・・・ー
私は、その先の言葉も知っていた。
ーでも、私とルキフェルのせいで貴方には迷惑をかけたわー
そんなこと、ない。
だって、貴方は・・・。
ーだから、貴方の昔の話をしましょうー
私の、話?
ーそう。貴方は二つのことを知らなければならないのー
ー私のことと、貴方の過去のことー
ー私が、すべて教えてあげる。でも、決めるのは貴方ー
ーだから、もう少しだけ、眠っていてー
私は、また目を閉じたー・・・。
ーーーーーーーーーー
あれ、私、どうしたんだろう。
たしか、公園で寝てて・・・
瑠璃っていう男の人に会って・・・
真咲が笑ってて・・・。
ここは・・・公園?
そうだ、たしか"彼"と会った場所だ。
『君、起きて』
・・・え?
今、"彼"の声聞こえたような気がする。
私が幼い頃に、出会った"彼"。
そんなわけ、ないのに。
でも確かに、目の前にいたのは幼い姿をした"彼"だった。
『・・・ん・・・お兄ちゃん・・・だぁれ?』
そして、後ろのベンチに寝ていたのは
幼い頃の
私だった。
って、私!?
"彼"と昔の私は、私の存在には気づいてないようだった。
もしかして、見えてないのかな・・・?
『さぁね。それは僕にも、わからないんだ』
わからない・・・?
『・・・?』
『そんなことより、こんなところで一人で寝てちゃダメでしょ?帰りな。お母さんもお父さんも心配するよ?』
『・・・ままはお仕事してるから、夜まで帰ってこないもん。ぱぱは・・・知らない』
そうだ、このくらいの歳の頃って。
『え?知らないって・・・』
『死んじゃったから、心配なんてしないもん。だから一人で寝てても別に大丈夫だもん!』
私がちょうど父親を亡くした時期だ。
『・・・お父さんは、死んでなんかいないよ』
『え?どうゆうこと?』
『お父さんは今も生きているよ、空の上でね。天使って、知ってる?』
『てんし・・・?』
『そう。君のお父さんはきっと、天使になったんだよ。いつも空の上から、君のことを見守ってくれているんだ』
『そう・・・なの?』
そんなわけないのに。
あの頃の私は信じ切っていた。
"彼"はきっと私に気をつかってくれたのだ。
そう思うと、少し嬉しくなった。
『そうだよ。だからお父さんもきっと君のことを心配してる。帰ろう、君の家に』
『・・・お兄ちゃんのおうちは?』
『・・・さぁ、どこなんだろうね。僕は・・・自分自身のことを、あまり知らないんだ』
『え・・・?』
"彼"は、泣きそうな顔で言うのだ。
『自分の名前もない、居場所もない、信頼できる友もいない。あるのは肩書きだけだ。こんな汚い僕は、本当は君に会いに来てはいけなかったんだ。ごめんね』
だから、放っておけなくて。
すぐに、消えてしまいそうな気がしてた。
『なんでお兄ちゃんが謝るの?お兄ちゃん、全然汚くみえないよ?』
『・・・』
貴方に名前がないのなら、私が。
『お兄ちゃんに名前がないなら、つけてあげる!居場所がないなら、一緒にいる!友達がいないなら、今からお兄ちゃんと友達になる!』
私が貴方に名前をあげる。
『君・・・』
『お兄ちゃんの名前・・・うーん・・・そうだなぁ・・・』
『思いつかないなら、無理に考えてくれなくても・・・』
私は、"彼"になんという名前をつけたんだっけ?
そうだ。
『刹那っていうのはどう?』
"彼"に、刹那という名前を、与えたんだ。
どうして忘れていたんだろう、こんな大切なことなのに。
『僕の、名前・・・くれるの?』
『うん!あげる!』
『・・・あり・・・がとう。ありがとう・・・ありがとう・・・!僕、大切にするね・・・』
彼は・・・刹那は急に泣き出してしまった。
『ど、どうしたの?泣いてるの?』
『うれしくて・・・つい・・・そうだ、まだ君の名前を聞いていなかったね。君は、何ていうんだい?』
『雪っていうの!よろしくね!』
彼は嬉しそうに微笑んだ。
『・・・ユキか、そうか、君は、ユキって言うんだね。・・・よろしくね、ユキ』
『うん!』
その瞬間、私の視界が真っ暗になった。
『ひっく・・・もぅ、やだよぉ・・・怖い、怖い・・・!』
この記憶は・・・私、知ってる。
夢で見た記憶だ。
私は、何に怯えていたんだっけ?
『ユキ、落ち着いて。僕なら君を、守ってあげられる』
『ほんと・・・?』
『ユキ、僕と契約をしよう』
『けいやく・・・?』
『約束をするんだ。君がもう二度と、怖い思いをしないように。僕達が再び、巡り合うために』
『・・・?』
『これを、君にあげる』
『わぁ・・・きれい・・・これ、ゆびわ?お花の絵が描いてあるの?』
『そう。その花の名前はダイヤモンドリリーって言うんだよ。ほかの人には見えないんだ。』
『どおして?』
『二人だけの約束だからね。でも、君にも17歳の時まで、見えなくなる。その時まで、お別れだよ。ユキ』
『お別れ・・・?え・・・い、いやだ・・・、いやだ!刹那とお別れなんて!やだ!やだぁ!!』
『僕が君を、ずっと守ってあげる
そのかわり、君が17歳になったとき
君の全てを
僕にちょうだい?』
彼の背中には・・・白い翼が生えていた・・・?
白い・・・翼・・・?
契約を守るために、私の誕生日の日に転校してきたの?
私を、守るために・・・?
もしかして、刹那は
ううん、もしかしなくても
天使、なの・・・?
*
"ユキ!!"
声が、聞こえる
"返事をしてよ!ユキ!"
あぁ、この声は
刹那の
声だ。
「刹那・・・?」
「ユキ・・・!!」
「そんなに大きな声だして・・・どう・・・し・・・たの?」
そういいかけた瞬間、私は刹那の腕の中にいた。
「ユキ・・・!ユキ!ユキ・・・」
刹那は泣いていた。
「・・・もう、何回も呼ばなくても聞こえてるよ」
私は自然に微笑んでいた。
「怪我はない?」
「まぁ、寝てただけだしね、大丈夫。だから泣かないで」
「そっか・・・よかった・・・」
ところでここはどこだろう?
私は白いベッドの上にいた。
外の窓の景色は、花畑が一面に広がっている。
「ここは、天界だよ」
え!?
て、天界!?
「え!?嘘!?なにそれ!?」
「神様と天使がいる場所だ」
「か、神様と、天使・・・?」
「それと、他のもいるけどね」
刹那がそういった瞬間、すべての窓が割れ、ガラスが飛び散った。
「イヴ!目覚めたんだな!イヴ!」
そこにいたのは
「ルキフェル・・・」
瑠璃・・・いや、ルキフェルだった。
「イヴだな!?俺、ずっとお前に会いたかったんだ!」
ルキフェルが私に向かって手を伸ばしてきた。
違う。
私は・・・雪だ。
「私は・・・イヴじゃ・・・ない・・・っ!」
私がルキフェルの手を振り払うとルキフェルはその場に座り込んだ。
「えっ・・・なんで、イヴが・・・戻ってきて・・・ないんだ・・・よ。イヴが戻ってくるように正確に術もつかったハズ・・・」
「ルキフェル・・・いや、堕天使。イヴはもう死んだ。お前もいい加減、堕天の道から外れろ。今ならまだ間に合う。神もお許しになられるかもしれない」
刹那がそういうと、しばらくルキフェルは黙ったままだった。
そうして、口を開いたのは、1分後だった。
「人間なんて、神なんて、大嫌いだ。
殺してやる!なくしてやる!
お前も、お前らも、神も、全部・・・!
俺がすべて消し去ってやる!」
「そうか。なら僕は受けて立つよ。神の許可は下りている」
「お前、余裕なんだな。俺なんかすぐに倒せちまうか?アハハッなんたってお前は神のお気に入りだもんなぁ!なぁ!大天使!」
大天使?
刹那は、ただの天使じゃないの?
「違うよ、そんなんじゃない。ただ君は、ユキを巻き込んだんだ。たとえユキがイヴの生まれ変わりだったからだとしても、僕は君を許さないよ」
そういって刹那は呪文を唱えた。
私の方を見ながら。
「ー誰が神の如きか」
綺麗だな、と思った。
それはあまりにも白くて、みとれてしまった。
「我の名は
大天使、ミカエルなりー」
彼には
白い翼が
生えていた。
また会う日を楽しみに Ⅵ
すみません、結構おくれました。しかもおくれた割には過去の引用が多いのです。すみません。
ちょっとわかりにくいかな?あとから内容が変わらない程度に訂正するかもしれません!
本当に文章力なくてすみません!!><がんばります!
プロローグ http://slib.net/28770
Ⅰ http://slib.net/28788
Ⅱ http://slib.net/28917
Ⅲ http://slib.net/29218
Ⅳ http://slib.net/29862
Ⅴ http://slib.net/30380
毎度ながら!更新おくれます!