また会う日を楽しみに Ⅳ
「へぇ~あれが大天使が大事にしてる子なのかぁ」
「そのようでございます」
「しかも、あの子の気配・・・もしかして・・・。まぁ、いっか。直接会えばわかることか」
「では、下界へと降りるのですね」
「うん、そうするわ。大天使との決着もつけたい、し・・・。今度こそ奴に俺の力を見せつけてやるよ。ユキ?って言うんだっけ?その子も・・・気になるしね」
「・・・いってらっしゃいませ」
「うん、いってくるわ」
「世界の全ては、貴方様のものでございます。ルキフェル様」
物語は進んでいた。
私が知らない間に、ゆっくりと。
ーーーーーーーーーー
高橋刹那がこの学校に転校してきてからしばらく月日が流れたある日の放課後。
私と真咲は放課後によく行く公園のベンチに座っていた。
「なんで今日高橋君学校に来なかったんだろうね」
友人の真咲は不思議そうな顔をしながら言った。
そう。今日、刹那は学校に来なかった。
めずらしいことだ、刹那が休むなんて。
「うん・・・」
私の考えすぎ・・・かな。
「ふぅ~ん・・・そうゆうこと、なのかなぁ」
「真咲?」
「ううん、なんでもない・・・あ、電話だ。ちょっと電話してくるね!」
そういうと真咲はパタパタと公園の奥の方へ消えて行った。
「今日は空が青いなぁ」
今日は天気がすごくよくて、ポカポカしている。
そういえば、あの日も、こんな天気がよかったっけ。
あの日?
あの日って・・・いつだろう?
なんだか、眠ってしまいそうなくらい温かくて。
私は自然と、目を、閉じた。
あの日、幼い私は公園で友達と遊んだ後、疲れてベンチで寝てしまっていた。
そこで、出会ったのが、"彼"だった。
『君、起きて』
『・・・ん・・・お兄ちゃん・・・だぁれ?』
『さぁね。それは僕にも、わからないんだ』
『・・・?』
『そんなことより、こんなところで一人で寝てちゃダメでしょ?帰りな。お母さんもお父さんも心配するよ?』
『・・・ままはお仕事してるから、夜まで帰ってこないもん。ぱぱは・・・知らない』
『え?知らないって・・・』
『死んじゃったから、心配なんてしないもん。だから一人で寝てても別に大丈夫だもん!』
『・・・お父さんは、死んでなんかいないよ』
『え?どうゆうこと?』
『お父さんは今も生きているよ、空の上でね。天使って、知ってる?』
『てんし・・・?』
『そう。君のお父さんはきっと、天使になったんだよ。いつも空の上から、君のことを見守ってくれているんだ』
『そう・・・なの?』
『そうだよ。だからお父さんもきっと君のことを心配してる。帰ろう、君の家に』
『・・・お兄ちゃんのおうちは?』
『・・・さぁ、どこなんだろうね。僕は・・・自分自身のことを、あまり知らないんだ』
『え・・・?』
『自分の名前もない、居場所もない、信頼できる友もいない。あるのは肩書きだけだ。こんな汚い僕は、本当は君に会いに来てはいけなかったんだ。ごめんね』
『なんでお兄ちゃんが謝るの?お兄ちゃん、全然汚くみえないよ?』
『・・・』
『お兄ちゃんに名前がないなら、つけてあげる!居場所がないなら、一緒にいる!友達がいないなら、今からお兄ちゃんと友達になる!』
『君・・・』
『お兄ちゃんの名前・・・うーん・・・そうだなぁ・・・』
『思いつかないなら、無理に考えてくれなくても・・・』
『ーーっていうのはどう?』
『僕の、名前・・・くれるの?』
『うん!あげる!』
『・・・あり・・・がとう。ありがとう・・・ありがとう・・・!僕、大切にするね・・・』
『ど、どうしたの?泣いてるの?』
『うれしくて・・・つい・・・そうだ、まだ君の名前を聞いていなかったね。君は、何ていうんだい?』
『雪っていうの!よろしくね!』
『・・・ユキか、そうか、君は、ユキって言うんだね。・・・よろしくね、ユキ』
『うん!』
そうだ、私が"彼"に名前を与えたんだ。
"彼"って・・・誰、だっけ。
霞がかっていて・・・思い出せない。
あと、もう少しなのに。
もう少しで、手が届くのに・・・。
*
「おい、起きろ」
「ん・・・あれ、ここ・・・」
私はいつのまにか寝てたのか。
「お前ヨダレ垂れてっぞ」
「ヨダレ!?嘘!?どこ!?」
私はそう言われて自分の顔に手を当てる。
人前でヨダレ垂らしてたとか・・・最悪・・・!!
「なんて。嘘。ヨダレなんて垂れてないぞ」
・・・。
なんだ、この失礼な男は。
いきなり話しかけてきたうえに嘘までつくとは。
「・・・だれですか、貴方」
「誰だと思う?」
無償に怒鳴りたい気分になったが、万が一にも初対面の人だ。そんなことをするわけにもいかない。
いかないけど・・・我慢できない。
「なんなんですかいきなり、私に用があるなら早く・・・」
「・・・早く?」
男の顔を見た瞬間、不覚にも見とれてしまった。
サラサラとしたきれいな黒髪。
青色・・・違う。透き通るような瑠璃色の瞳に、引き寄せられてしまう。
すべて、見抜かれているような・・・そんな気が、して
「きれいな瑠璃色・・・」
「・・・瑠璃?」
つい、口に出していた。
「あ、えっと、その・・・あ、あはは・・・」
笑ってごまかしてみた。
・・・無理がある、か。
これじゃあ完全に私、変人じゃないか。
「・・・お前の名前は?」
あれ、この人
「雪・・・ですけど」
誰かに似てる?
「ユキ・・・か。よろしくな」
誰に似てるの?
「・・・はぁ。一応聞きますけど貴方の名前は?」
あ、そうか。
「・・・じゃぁ、瑠璃!お前は俺のこと、瑠璃って呼べ!」
そうだ、この人・・・いや、瑠璃は、
刹那に雰囲気が似てるんだ。
彼はニカっと歯を見せて笑った。
「じゃあな!また会おうぜ!ユキ!」
「え、ちょ、ちょっと!?」
何だったんだあの人。
「雪~!おまたせ!待たせちゃったね!!・・・って、どうしたの?ぼーっとして」
真咲が手を振りながら走ってくる。
「いや、なんか、変な男の人がいて・・・」
「・・・どんな?」
「黒髪の・・・不思議な目の色をした男の人・・・」
私はそういって真咲の方に顔を上げた。
すると。
「ふふっ・・・」
真咲が笑っていて。
「まさ・・・」
真咲、と声をかけようとしたその瞬間、視界が真っ白になっていた。
私は、気を失っていた。
何が起こったのか、私にもわからなかった。
ただ、一つわかったのは、自分の目で見えたのは。
「やはり世界の全ては大天使ではなく、貴方様のものです・・・ルキフェル様・・・!」
私が見たことがない、真咲がそこにいたということだけだった。
ーーーーーーーーーー
嫌な予感はしていたんだ。
「大変です!大天使様!」
「どうしたの」
あぁ、どうか、的中しないでくれ。
「雪様が・・・!さらわれたという情報が入りました!犯人は人間ではなく、この天界のものだと思われます!」
どうして、僕がいないときに限って。
「・・・ッ!まさか・・・あいつか・・・!?」
僕は、なんて馬鹿なんだ。
こんなことになるなら、ずっとユキを見ていればよかった。
でも、過去は変えられないのだから、僕にできることをするまでだ。
「いかがなさいますか?」
「天界を洗いざらい調べろ。総力をあげてユキを探せ。いいな」
「はっ。了解しました、大天使様」
「・・・やめてよ、大天使なんて。僕には、もう名前があるんだから」
ユキ。
君は
僕が
「・・・守ってみせる」
また会う日を楽しみに Ⅳ
更新!
少し遅くなりました!すみません!おかしいところいっぱいある気がするのでちょっと後からわからない程度に修正するかもしれません。多分。
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