【少年は怒りを日記に綴り、何を思うのか。】 少年はごく普通の小学校三年生。だが、ある時から隣の席の男子に嫌なことをされるようになった。あまりにも理不尽な仕打ちに少年は激しい怒りを覚えながらも、力不足により反撃が通用せず、もどかしい気持ちでいっぱいだった。それならば、せめて隣の席の男子が少年に対して行った数々の悪行を書き残してやろう、ということで、少年は日記を書き始めた。しかし、そうしているうちにも、少年を取り巻く状況はどんどん悪くなり、ついに彼はある決断をすることになる。
十三年前の心中事件。生存した青年の所在を突き止めた女婿は、花々に閉ざされた邸で彼と対面する。時を止めたような青年の傍らには悪魔的な少年が立っていた。
『君はただ、君だけを肯定しさえすればいい』 「運命愛、ニーチェの受け売り?」 「いいや、違うさ。ただ、知ってほしくて。運命の人も、親も、親友も、子どもも、君のことをどこまで行っても完全には理解できない。人は人。でもね、君は君なんだ」