「ツイてねー」というのが最近のシンジの口癖だ。 立ち上がると足の小指を角にぶつけるし、歩いているとイヌのフンを踏むし、車に乗るといちいち赤信号にひっかかるし、メモを書こうするとボールペンのインクが切れているし、パソコンを立ち上げようとすると…
ある男「私」の思い出からはじまる、少し不思議な物語……。 過去と未来はSFの定番ですが、それらをいわゆる文学風に仕上げてみました。 派手な出来事ではないものの、やや不思議な、そんな雰囲気重視のSF短篇です。 ですのでこれといった感想は出ないと思いますが、そんなものもアリでしょう。 それでは。
「生きるってなんなんだろうね」 消える少女、少女の残す意味深な台詞、少年と周囲の間に生じる認識の齟齬。少年は、その謎を解明するべく行動を開始するが――
或る戦の最中、己が足を負傷した一人の男が居た。 降頻る真白な雪の中、男が辿り着ひたのは一人の老婆が住む小屋であつた。 男は藁にも縋る思ひで其の小屋に逃げ込むだ。 冷へ切つた男に、老婆は温かな飯を用意する。 「雪女を、御存知でせうか。」 老婆は語り出す。切なく冷たひ、身も凍る様な昔語り。
「夜分遅くに申し訳ありませんが」 静かな室内に、闇とともに静かに侵入してくる影。 死にゆくものの最期を看取り、最後の願いを叶える死神。たった一人で部屋に籠る少年の最期の願い。最後の三日に寄り添う死神が見たのは、死を受け入れながら、むしろ死を望むような少年の孤独な姿。出会いの一日目、少年の日常の二日目、そして少年を取り巻く真実を知る最後の日。少年はなぜ死ななければならないのか。死にゆく少年に、死神が最後に吐いた嘘に込められた心情は。
空の夕焼けは、濃い紅色と、黒色が混ざり合ったような、歪んだ色をしていた。限りなく、夜に近づいている。僕の向こう側から、一人の男性が歩いてきた。僕も男性に向かって歩いていく。そして、僕と男性が交差するかしないかの時。僕は、その男性の肩を、トントン、と二回、静かに叩いた。瞬間、男性は、人間を司る様々な構成要素を地球へと還元し、その場から永久に姿を消していた。僕は、何事も無かったかのように、まるで散歩でもしていたかのように、また元の普通の生活の中へと溶け込んで行った。
ある山村を支配し搾取していた野盗たちを旅人が“食べた”。美しい少女の姿をしたその化け物は残党狩りに出かけ、その従者を自称するだみ声の少女が村に居残る。彼女はおびえる村長の息子兄妹を相手に、主人が味方であることを教え、同時にある噂話について問いかけた。その噂話とは、「まったく関係のない二人の旅人が、別々のときに、同じ村で同じ野盗たちを退治した」というもの。そしてその「同じ村」とは、どうやらこの村のことのようだった。驚く兄妹に、彼女は自分たちの旅の目的を告げる…。
中世西洋風の架空の小国。第二王女ロゥデリュシカの乱心により、父王が殺された。悲嘆に暮れる第一王女イルェシュニアは即刻妹を処刑せんとするが、自らのそば仕えの騎士セリヴによって制される。何よりも対外情勢を憂えていた父王のために、ロゥデリュシカは隣国皇太子と婚約を交わした身であった。次期女王の判断として、イルェシュニアは刃を収め、冷静に騒ぎを収めるべく隣国との再交渉にも臨んでいく。しかし一方で、妹を殺させなかったセリヴと妹がかつて恋仲であった事実が、イルェシュニアの心を確実に波立たせていく。そんなある日、隣国王室から届けられた“翡翠の仮面”と一通の“国書”。その“国書”に記された隣国の要求とその含意に、イルェシュニアは戦慄を覚えるのだった…。
時に西暦20XX人類は地球上から突如として絶滅してしまった。 その原因については諸説有るが 人間達が自ら作り出した病原体により絶滅してしまった、との説が有力である。 猫の惑星 この物語は突如として絶滅した人間に代わり、知性の突然変異を起こした猫族や犬族、或いは動植物が地球上を支配し闊歩し始めた時代の物語である。
朝の日差しは夜との決別。 それは新しい命の誕生に似た、恐怖感。 重い宿命と罪を背負う「紅い魔女」紅我 煽(こうが せん)と、 その使い魔となり「無人の境眼」を通して繋がる影平 流(かげひら ながれ)の戦いや『無人=独り』と言う恐怖からの『二人の愛』の行く末の物語。 人々の情動を揺るがす、奇術師――――。白い感情と、黒い予知。 二人は日常の倦怠を非日常的スリルで融解する。
我々に、驚きという娯楽を与えてくれる、マジックの世界。 しかし、その裏側に秘められた人間の野心と苦悩とは… 敏腕ジャーナリストが暴き出す、手品師たちの素顔。 タネもシカケもございません。
SHADOWという謎のデスゲームに巻き込まれた神威《カムイ》高等学校 2年B組の生徒達12人。 果たして主催者の真の目的とは? そして、12人の運命はいかに___________!?
駅前のコーヒーショップで人間観察をする「狩野」は妄想ばかりしていて、世界に一線を置いているものの、彼独自のコミュニケーションで他者との距離を縮めようとする。
繁華街のアパートで、ホステスが産んだはずの赤ん坊が忽然と消え、産んだ母親は失血死してしまう。 消えた赤ん坊の謎を追って、捜査に乗り出した刑事の前に、まぼろしの如く現れたものは…? 見るからに風采の上がらないヤボな中年刑事。名前も、年齢も、所属も、一切不明の彼には、ある秘密があった。 それは<人に見えないものが見える事>そんな「やさしい刑事」が織り成す幻想の世界を綴った物語です。