吾輩は猫叉(ねこまた)である。遥かな昔、人間に飼われていた頃には名前があったが、もはや忘れた。口さがない連中は吾輩を化け猫などと呼ぶが、失敬極まりない。同じく齢(よわい)を重ねた猫の変化(へんげ)した妖かしであっても、品格が違う…
ああ、ああ。ええと、音声ワープロは動いているかな。あれ、余計なことまで印刷されちゃった。まあ、いいや。後で削除しよう。『宇宙の不思議』を読んで。4年3組遠山ヒカル。ぼくは課題図書の中から、『宇宙の不思議』を選びました。なぜなら、ぼくは…
「あなた、ゴロゴロしてる暇があるなら、庭の草むしりぐらいしてよ」「ああ」庭付きの家を買ったのが八木の秘かな自慢だったが、特にこの季節には、どうしてこんなにと思うぐらい草が生えてくる。しかし、子供がまだ小さいので、除草剤をバンバン撒くわけにも…
《お帰りなさいませ。ご夕食はサバの味噌煮でございます》「ああ、ありがとう」いつものことながら、榊原はメグミの献立に感心した。その日の昼食は、取引先の好みに合わせてコッテリした肉料理だったので、夜は魚がいいなと思っていたのだ…
待ち合わせた喫茶店には幸い他の客はいず、その男だけが待っていた。わたしも男と同じくコーヒーを注文し、改めて男の顔を見た。予想していたより老けていたが、ハンサムな男である。「ギャンブルのコツが聞きたいんだって?」 男はちょっと皮肉っぽい…
逃れられない運命。 どんなに身分を隠しても、殺人者の弟ってことがばれてしまう現実。 一億総監視を受けている現実が加害者の家族を追い詰めてゆく。 罪は兄弟までもが償わなければならないのか。 償いの意味を問う。 償うとは何か、真実とは何か? 第一章。