【短編】「梅雨ですねえ。また雨です」と僕は言った。 「いいじゃないですか。私は好きですけどね。雨。なんていうのかな? 街を洗っているみたいで」 僕はこくこくと肯いた。僕も雨は好きです。「でも僕には空が溜め込んだ不満を吐き出しているようにも思えます」と言った。 「そう考えたことはなかったです。雨ってだけでも人間それぞれの考え方があるんですね。うーん深い」彼女は肯いた。そうですね、と僕は微笑んだ。彼女は微笑みをかえした。(本文の一部を引用)
君には好意を寄せる女性がいる。しかし思いを伝えることができないまま、彼女には恋人ができてしまっていた。それからは強い嫉妬心に苛まれる日々だった。そんな君の心を癒すのは空を喰らう静穏な夜だった。この夜の先にある何かを探す君。そんな彼の前に、ある実態を持たない男が声を囁く。彼は自身を「夜の繋ぎ人」と名乗った。
【短編】降り続けている雨の音にまどろみかけている僕は、中学生だったときの記憶を思い出していた。冷えた白い秋の季節が、僕に感傷の苦しみを心底で燻らせた。
その豊満な肉体をもった彼女に、僕が一目惚れするまでの時間は秒数の単位をつけられなかった。僕は立花夏夜という彼女を見かけたその瞬間から、莫大な性欲の踊りを許してしまっていたのだ。僕のその浅はかな思考は、やがて後悔へと変わることとなる。 季節は夜に目隠しされたまま、立ち止まることなく歩んでいく。いつまでもそこに月はたたずみ、僕にあの桜がよどんだ川面を思い出させるのだ。
【短編】ある猫は悩んでいた。それは猫が恋している女学生の顔から、笑顔が消えたことだった。どうして彼女は変わってしまったのか、猫はわからないでいた。彼女の失くしてしまった表情を見つけ出すため、猫は自分なりに彼女を救おうと努力するが……。
石田は生まれてからというもの、自分の顔のせいで満たされない人生を歩んできた。そしてこれからもそういう人生が続いていくものだと思っていた。 しかし、社内での人気№1である沢木ちずるの些細な一言で、石田の人生は大きく変わりはじめる。 ※他サイト(小説家になろう)重複投稿作品
夢の中で『私はあなたの運命の上を歩む者』と告げる少女。 その出会いは梶原海斗の運命を変えるきっかけとなるが...。
ギャルのマドカは勉強が全然ダメで、ガリ勉のリョウは人間が全くダメだった。 そんなふたりが月あかりの歩道橋でめぐり逢った。 『数学教えてくれたら、アンタに ”人の気持ち ”ってモンを教えてやるよ。』 ケンカしながら互いの足りないところを補い合ううちに、月の夜に逢うのをマドカは心待ちにしてゆくのだが・・・。 もどかしい想いの行方は?! ≪全50話 完結≫
聞かせて、あなたの理想を。創ってあげる、あなただけのわたしを。その代わり、わたしにあなたを愛させて。たとえあなたが本物じゃあなくても。