春夏秋冬“春”

 “春”それは恋、そして出会いの季節。俺無神 秋羅(むかみ あきら)はまさにそう思った。俺はそう思いながら桜舞う校舎の前で、白髪の青年“新城 春香”(しんじょう はるか)に出会った。


「……ら。……きら。おい!秋羅!」
「えっ?うわっ!?ととととっ!あ、やべっ!!」
 秋羅は、市川 夏樹(いちかわ なつき)にいきなり声をかけられた。だが体勢を崩しそのまま椅子ごと後ろに倒れた。
「っ!い、痛ってぇ……!夏樹!いきなり声かけるんじゃねぇよ!!」
 秋羅は、腰を擦りながら夏樹に怒鳴った。だが、夏樹はきょとんとした顔で秋羅に答えた。
「いきなりじゃあないよ?さっきから呼んでるのに、秋羅がボーとしてるから悪いんじゃん。あ、もしかして“例の白髪の子”のこと考えてた?」
 夏樹はニヤニヤしながら言った。
「ばっ馬鹿!?そんなじゃねぇよ!俺はただ……!」
 秋羅は、顔を赤らめながら夏樹に言った。そこに夏樹は秋羅を煽るように聞き返した。
「んー?俺はただ?何?」
「お、俺はただ………。ただ……その……」
「うむ。その続きはぜひ俺も聞きたいものだな」
 秋羅が一人ブツブツと言っている時に、後ろから声が聞こえた。
 声の主は、秋羅と夏樹の幼馴染み。三谷 冬馬(みたに とうま)の声であった。
「あっ冬馬!だよね!だよね!聞きたいよね?続き!」
 夏樹は笑いながら冬馬に問いかけた。それに冬馬は、秋羅の方を見て答えた。
「ああ、そうだな。っで?秋羅どうなんだ?」
 冬馬にそう聞かれ秋羅は、やけくそに答えた。
「あーそうだよ!朝に出会った奴のこと考えてたよ!悪いか!!」
 夏樹がそれを聞いて、突然お腹を抱えて笑い出した。隣では冬馬が笑いを堪えていた。
「ぷっ、あははははは!やっぱ!あの事気にしてたんだ!あーヤバイ!腹痛てぇ!」
「くすくす……!やはりな。そう言うわけか。いや、なに悪いとは誰も言ってないぞ?」
 冬馬は、笑いで出た涙を拭きながら秋羅に言った。それを聞いた秋羅は叫びながら言った。
「だー!うるせぇ!うるせぇ!どうせ俺は見た目は中学生だよ!!」
 そして笑いがおさまってきたのか、冬馬は話始めた。
「まぁまぁ、秋羅落ち着け。秋羅の場合これから身長伸びるかもしれんぞ?だから諦めるな」
「そうそう!そのうち、俺らの身長抜かすかもじゃん!諦めんなって!」
 それに続いて夏樹は、秋羅の髪をグシャグシャにしながら言った。その行為にイラつきながら秋羅は夏樹の手を払ったあとに言った。
「やかましい!しかも、180あるお前らに言われても自慢にしか聞こえねぇよ!!」
 秋羅たちがそんな話をしている時、廊下から突然女子の声が聞こえた。
「キャー!あれが噂の転校生よ!どうしたんだろ?2年の教室に来て?あ、もしかして私に会いに来たとか?」
「はぁ?何言ってのそんなわけないじゃん!あははは!」
「どうしたの?誰かに用事?」
 他の女子たちがそんな話をしてる中1人の女子がそう聞いてきた。名はモブ子。春香はモブ子に、にこっと笑いながら答えた。
「はい、そうなんです。ちょっと……無神先輩って方に用事がありまして……。すみませんが、どこにいますか?」
「無神……?あきらんのこと?あきらんならねー、たぶん教室にいると思うよ?呼んでこようか?」
 そう聞かれ春香は、少し申し訳ない気持ちで言った。
「お願いできますか……?僕まだ先輩の教室分からなくて……」
「そんなの大丈夫だよ!じゃあ呼んでくるけど、少し待っててね!」
 そう言ったモブ子は、秋羅たちがいる教室の中に向かった。
「あーきらん!1年生の春香君が呼んでたよ?何か用があるみたいだけど?」
 秋羅はそう聞かれ、頭にハテナを浮かばせながら答えた。
「え?俺に用?何だろう……?」
 そう思いながら秋羅は、春香の待つ廊下に向かった。それを見ていた夏樹は、小さな声で呟いた。
「ふーん。これは、面白いことになるかも……」
「何が面白いことになの?ナツ?」
 夏樹はモブ子にそう聞かれ、イタズラを思いついた子供のように聞き返した。
「んー?聞きたい?でも、内緒!ね、冬馬!」
「ああ。そうだな」
「えー!何それ!冬馬も分かってるのに教えてくれないの!ずーるーいー!私にも教えてよ!」
 モブ子はそう言いながら、夏樹と冬馬をポカポカと殴り始めた。
 秋羅はそれを背中で聞いてため息をついた。そのあとに、秋羅より頭一つ小さい春香に話かけた。
「はぁ…。まったくあいつらは……。ところで、えーと俺に用って何かな?」
「えっ!?えーと……その……。よし………!あの、これ!読んで下さい!し、失礼します!!」
 春香は顔を赤らめながら秋羅に手紙を渡し、一礼してさっき来た廊下を戻って行った。
 秋羅は、春香の背中をポカーンとしながら見つめていた。
 そうしていると、夏樹に続いて冬馬モブ子と秋羅に近づいてきた。
「何?何?秋羅、あの子からラブレター?」
 夏樹は後ろから抱きつきながらそう聞いた。それに秋羅は呟きに近い感じで答えた。
「果たし状」
「え?」
 夏樹にそう返されたので、秋羅は持っていた手紙を3人に見せた。
 そこに書いてあったのは、確かに習字の職人が書いたような達筆な字で「果たし状」と書いてあった。
 秋羅は無心でその手紙を開いた。そこに書いてあったのは。

            ※この話は、下に続きます。

『拝啓 無神秋羅様。今日の放課後、第2体育館の裏にお越しくださいませ』
 それを読んだ四人は、そのまま固まった。それから、15分ぐらい固まっていたあと秋羅は話始めた。
「え……?

春夏秋冬“春”

春夏秋冬“春”

この物語は主人公秋羅と春香のほのぼのBL 恋愛ストーリー(かもしれない)になっておりますが、時折秋羅の幼馴染み、夏樹と冬馬の恋愛ストーリーが入るかも知れません……。夏樹と冬馬のBL 恋愛ストーリーは後ほど番外編、成人向けとして書く予定です。あくまで予定です。※モブ子→モブ女子の略称です。

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-02-09

CC BY-NC-ND
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