「アマゾーン国探訪記」の、あとがきと批評解説です。

これは、「アマゾーン国探訪記」の、あとがきと、批評解説です。

https://slib.net/125858


本編では、語りきれなかったエピソードや補足部分を、セルフでツッコミながら、つらつらと語ります。


この物語は、前に書いた小説「庇護する女たち」

https://slib.net/125397

では、書けなかった表現などの反省をふまえ、名前のある血の通ったキャラクターや、躍動のあるストーリーを目指しました。

※反省点については、「庇護する女たち」のあとがきと批評解説をどうぞ。

https://slib.net/125484


【ムーサ】 Mousa

ギリシア神話の,詩歌,文芸,音楽,舞踊,学問の女神。複数形はムーサイMousai。英語ではミューズMuseといい,music(〈音楽〉),museum(〈博物館,美術館〉)の語源。※コトバンク調べ

あとがき



【注意】途中から、あまりにも淡々として、翻訳やAIのような文章になってしまいましたが、ちゃんと生身で書いてます。



遠近法とか時間軸が壊滅的!どう考えても時間が止まっているとしか思えないw(なかなか日が暮れない!?www)

ストーリーの展開上、主人公が目的地に着いてから、なんやかんやあって四日間くらいの話を、ムリクリ進めながら内容を濃縮させて詰め込んだ(それで、全十話の所を十三話になった。この手のやらかし三回目)ので、すごく不自然な流れになってしまったけれど、これならばいっそ、リアリティより、好きなように書いてしまえ。と、勢いとテンポの良さ(!?)でなんとか乗り切ったつもりです。

これだけ(・・・・)は、自信があるっ。



……。



ここからは、作者が自作を読みながら、ツッコミ解説、感想を述べる流れになります。



第一話「レナトス」


主人公は、旅人で、本を書くために取材をしております。

裕福な生まれで、何不自由ない立場。慣れた感じで、今回も旅を楽しんでいます。

取材も上手くいって、今のところ順調なようです。

ただ、どうしても看過できないことが……。



男性、少なすぎ。



わざわざ探して、たった数人でもいる(・・)から多い(・・)と住人がみなす(ほど)、この国では男性が希少な存在であることを主人公は、実感します。

もちろん、本で知ってることも、多いでしょう。しかし、実際に足を踏み入れて実感した体験は、彼に感動と困惑をもたらします。

書物の世界が、目の前にある。

と、彼が思ったように、異文化風情漂う街の喧騒に酔いつつも、違和感もしっかり覚えております。

実感とは、良いものばかりではなかったのです。


そして、周りに翻弄されながらも、彼の旅は続きます。



この話もつづきます。

その二



第二話「ニュムペ」


この国では、男性は子供扱いされるようです。

みんなで、世話を焼いているからでしょうか?

彼は、高名な身分であり、属する国の影響力も強いので、常套手段である身分証を見せることで、切り抜けようとします。


そこに、ニュムペという少女が現れて、あれよあれよという間に、アマゾーン国のやり方に巻き込まれてしまうのです。

野心を持ち、プライドの高い主人公ですが、内省力があり、紳士的な振る舞いをします。

アマゾーンたちの常識に、カルチャーショックを受けつつも、新鮮な驚きを楽しむ主人公。

さすが、旅人って感じです。

そうこうしているうちに、ニュムペの家に男性がいることがわかり、話は進みます。



第三話「ルキウス」


主人公たちは、簡素だけど丈夫そうな小屋に着きます。

ニュムペは、自分で造ったと言います。

希少な男性に替わって、危険な仕事や重労働をこなすアマゾーンの女たちですが、十六歳の女の子がひとりで小屋を建てたことに、主人公は驚きを隠せません。


そして、運命の邂逅。


小屋の中にいたのは、主人公が長年尊敬していた詩人だったのです。


ちなみに、主人公の名前。レナトス・アトランティウスの由来ですが、アトランティスの語源をウィキペディアで調べたら、ギリシャ神話の天の蒼穹を支えるアトラス(名前の意味は「支える者」「耐える者」「歯向かう者」)とあったので、王家を支える家系にピッタリだなあと決めました。(ただ、意味が不穏)響きが気に入った、というのもあります。

レナトスの名は、レナトゥス (Renatus) は、「生まれ変わる、再生する (reborn)」を意味する("natos"は生まれるの意)、ラテン語が起源の名前。※Wikipediaより抜粋
で、(のち)の展開で意味を持ちます。

ルキウス・アポロニオスの由来は、テュアナのアポロニオス(生没年不詳)という、やたら神秘的な人物がいて、迫害されても奇跡の力で逃れたり、キリストに対抗する人物として、祭り上げられたりしたそうな。※コトバンク調べ

これも、キャラクターが、神官の家系という設定に合う(迫害を受けたり、旅をする所も)というのと、アポロの響きが好きなので、そのままでは何ですから、名の入った姓として決めました。(本編には、ほとんど出て来ませんが)

ティアナのアポロニオスはギリシャの人物ですが、ルキウスは、ローマ人の名前だよなー。(ごちゃまぜ)これまた響きが良いと、直感で決定。

ニュムペの由来は、ギリシア神話などに登場する下級女神(精霊)※ウィキペディア調べ
で、妖精みたいなもんですね。
ひたすら自由を求めて、奔放であろうとする所とか。


※これからは混乱を避けるために、主人公は名前で呼びます。(固有名詞を避けたがる、悪いクセだ)


レナトス(主人公)は、旅人で本を書くのが仕事ですが、詩を(たしな)んでいて、それはルキウスの影響なのですが、ふたりは、それで意気投合します。

それにしても、レナトスは、感情の起伏が激しい。

そりゃ目の前に突然、憧れの人がいたらね……。

気持ちは、わかるっちゃ、わかるっちゃ、わかるんですけどね……。


(こういうキャラ、嫌いじゃない)

その三



第四話「聖なる王」


正直、聖王の話いるかなぁ?と、思ったのですが、ルキウスは詩人ですから、やっぱり大事なことは詠うだろうし、披露する場面を作りたいという思惑もありました。

あと、なぜ彼らの国では、これほど聖王が厳格に信仰されているのか、説明する意図もあります。


それと、話を進めるのを優先して、デメトリアとアマゾーン国の神話の共通点とか、伏線ばかりで、まとまりが無いまま話を進めてしまったのですが、元々同じルーツの国が分かれて、そこから更に、それぞれの文化や信仰が新たに生まれて、広がり成熟したものと解釈してください(ご都合主義)

まあ、現実の神話もそういうとこ、あるでしょう?(コラ!)

元ネタとしては、古代オリエントの豊穣の女神と、穀物を司る男神(王)の聖なる結婚(聖婚※ヒエロス・ガモス)をモチーフにしています。

しかし、生贄になる王と、女神と結ばれ共に暮らす王。レナトスとルキウスのふたりは、同じ道を歩むことになるのです。

レナトスが、王と同じ名前なのも、それを示唆(しさ)しています。

だいたい、話のベースはこんな感じですが、伝わったでしょうか?

もし、そうなら感謝します。

そうだったの!?という方、実は、そうなんです!


重い話が続いたので、後半は、ほっこりタイム。


ふたりには、さらなる展開が待っています。


第五話「ガイア」


街の世話役で、面倒見の良いガイア。

彼女のキャラクターは、物語のテンポや展開上、具体的なシーンではなく(これで、泣く泣く削ったシーンが数多ある)ニュムペやふたりに対する言葉や振る舞い、態度で表すことにしました。

ニュムペに、現実的なことを言って諭すところや、ふたりへの気遣いも、欠かさないところとか。皆を労い場を和ませるのも、人となりが出て良いと思いました。


ニュムペは、よく働くいい子だと思うんですよね。

ふたりは、呑気だなー。すっかり、くつろいでますね。そもそも高貴な生まれのふたりが、ご飯を作るわけないんですよ。ルキウスは、家計を気にして詩を書いてますけどね。

でも、ニュムペは、まんざらでもないようです。



アマゾーン(アマゾネス)の、設定について。

アマゾン

ギリシア伝説で,黒海沿岸あたりに住むとされた女戦士の種族(複数形アマゾネスAmazones)※コトバンク調べ

と言う意味だけど、種族名をアマゾーンとして、アマゾネスは、戦士を指すと言う設定にしました。


ロバに二人乗りって、ちょっと可哀想だったかな?

そんなロバに、優しいレナトス。繊細な所もあって、いろいろ気にするし、悩みます。ルキウスのことで、葛藤を抱えています。何があっても、自分だけ逃げ帰ることはできないのです。

それにしても、ルキウスは、かっこいい。

見なくてもわかる、イケメンですね!


これからも出て来ますが、やることなすこと、すべてが魅力的。常に、冷静沈着。寛大な心で、冒険心が強くて、無謀に走り勝ちなレナトスを、見守ります。

その四



突然の、実家感。

ニュムペは、思うところがあって、どこかへ行ってしまいました。

ガイアは、慕われているんでしょうね。

ここでも、彼女の普段の行いや、人間性が垣間見えます。


第六話「ニコロ」


村長の家に預けられた、ふたり。

この国では、自分たちの常識が通じないことを、ニュムペの兄であるニコロから教わります。

ニコロは、最初の印象とは違い、ふたりに好意的なようです。



ニコロたち三人は、家事仕事をします。

途中ですれ違った子供たちを含めて、この家にも、男性は、ニコロと二人の兄弟しかおらず、村も街同様、男性の存在が希少なことや、その立場や扱われ方について、レナトスとルキウスは、見聞きして知るのです。


この国では、男児が生まれると、家で大事に育てられるが、コストの関係もあって、神殿と呼ばれる場所で、保護隔離されることもある。

街に男性がほとんど居ない理由も、判明します。


※ここから、時間軸がおかしくなります。ずっと昼だったり、なかなか日が暮れません。
ご了承ください。


ふたりにとって、はじめての洗濯。

しかし、それすらも、楽しんでしまえるルキウスの余裕っぷり。

レナトスは、大変そうですね。でも、一生懸命やってます。


今度は、台所でパンを作ります。

これは、楽しそう。

お気づきの方もいるかと思いますが、彼らは、火や刃物を使う仕事をしていません。

他の炊事、パンを焼いたり、野菜を切ったり、肉を捌くような仕事は、家の女たちがやっています。

男性がケガをしないための、配慮なのでしょう。

彼らは、こうして守られていますが、反面、窮屈で不自由な立場であるとも言えます。


第七話「ひとときの宴」


仕事の合間にとるには、豪華すぎる食事。

某イタリアンチェーン店の料理を、ふたりに食べてもらいました。

ルキウスが食べているのは、煉獄のたまごですね。

レナトスが食べているのはフリコですが、今となっては懐かしい。

せっかくなら、出来たてのパンを食べるシーンも入れたかった所ですが、これまた文字数、展開、テンポ、諸々の事情で泣く泣く割愛。



レナトスとルキウスは、ニコロから、街について衝撃の事情を聞かされます。

街では、男性は市場で売られて、それを女たちがこぞって買い求めること。

街の女たちにとって、男は宝石のようなもので、虚栄心を満たすために求める云々…。

それは、花婿市場と呼ばれていて、まるで生贄のようだと、彼は言います。

ニコロの兄弟が、男性が女たちにチヤホヤされると勘違いして羨み、ニコロに窘められます。

ニコロは、街は、恐ろしいところだが、この村は違う。男を大事にするし、子孫を残す役目以外は、自由だし安全だと言って、ふたりに村に住むことを勧めます。


旅を続けたいレナトスですが、ルキウスを置いて行くこともためらわれて、結論を先送りします。

その五



第八話「神殿の丘へ」


レナトスたちは、みんなで皿洗い。
食べたら後片づけ、ふたりにとっては、一宿一飯の恩義でしょうか?(泊まってないけど)


どこからともなく、聞こえるラッパの音。

何かが、はじまる予感。



ニュムペは、家族のことや、勝ち気な兄と大喧嘩して、家を飛び出したので、実家には帰りたくなかったようです。

それでも、一人前と認められたいニュムペは、彼女なりに頑張って、家を建てて、働きながら、ルキウスの詩を売り込んでいますが、なかなか上手く行きません。



レナトスたちは、馬に乗った女戦士たちが、聖域である神殿の丘を通過していることを、村の女たちを通じて知ります。

旅人としての血が騒いだレナトスは、ルキウスと共に現地へ向かいます。


ニコロは、なんとかごまかして、廊下を早足で進んで…って、絶対廊下は走らない。

行儀の良いふたりなのだった。

レナトスは、カバンを肩にかけて…そういえば、ルキウスって手ぶらかな?きっと大事なものはレナトスがみんな持ってるんだよ(!?)


ふたりは、神殿の丘を目指して歩きます。

神殿は、太陽の光を受けて輝き、神殿の役割を知りつつも、ふたりは、荘厳な雰囲気に圧倒されます。


ふたりは、その後何度も、女戦士の騎馬隊を目撃します。ルキウスは、この国で起きている異変を感じ取ります。しかし近くで見そびれて、レナトスは、再度機会を願い、ふたりは、部隊を待ちながら歩くうちに、何者かによって、連れ去られます。


自分で書いといて何ですが、腹立つわ~💢こいつら!

ちなみに、男の子のこと、僕って呼ぶの、上から目線だと思いませんか。

私は、昔から違和感があったので、あえて言わせたけど、やっぱり、ムカつきますね。

当然、レナトスもカッとなった訳です。


しかし、ふたりは、麻袋に詰められて、馬車で運ばれてしまいました。


ふたりの運命は、女神の手に委ねられたのです。



第九話「美しい鳥籠」


ふたりが、連れて来られたのは、男性保護施設。言わば、迷子センターのような所でした。

麻袋を解かれると、目の前にいたのは、施設の女性でした。彼女は、ふたりをいたわりながらも、その子供扱いな口調に、レナトスは、また、腹を立てます。(わかるよ)それから、身元確認のためのチェックを受けるのですが…話もかなり後半になってから、ふたりの容姿と服装が明らかに!これも、ストーリー上やむなし!それにしても、ふたりは同じ国なのに服装が違いすぎるな~まっ、立場も地域による文化の違いもあるし(すっとぼけ。本当は、好みと名前の雰囲気で決めた)


レナトスは、なくしたカバンが見つかって、安心します。中にある身分証が、助けになると確信しているからです。


それからすぐ、この施設の探検を始めます。

その切り替えの早さは、ルキウスもあきれるほどです。


施設は、シンプルな白い部屋の他に、豪華な客室のような広い続き部屋がありました。そこはレナトスが、最初に訪れた街のような異国風情漂う雰囲気でした。


大きな丸天井からは、日が差し込んでいた。


(なかなか、日が沈まない)


前にも話したように、この物語は、後半になると、時間軸があやしくなってくるので、そこは見逃して欲しい……。


そこに、謎の人物がいて、ふたりに声をかけます。

その六



声をかけたのは、初老の男性でした。

男性は、家族とはぐれて、この施設に保護されたそうですが、ふたりと違って優しく馬車に乗せられたとのこと。男性は、ふたりの扱いに首をかしげます。

男性は、この施設に来たのは、幼子の時以来二度目で、世間では、美しい鳥籠と、呼ばれるこの施設は、とても居心地が良い場所だと言います。

外装もさることながら、迷子の鳥を保護する鳥籠といった所でしょうか?


ふたりは、男性の話を聞いて、また、文化の違いを知るのです。


男性は、蔓草の装飾をした冠を被り、首飾りや腕輪などのアクセサリーを身に付けています。

簡素な他の住人たちと比べると、ずいぶん華やかです。

男性の話では、冠は既婚者の印で、男性は、複数人の女性と結婚していて、アクセサリーには、それぞれの結婚相手の家紋が付いています。

レナトスは、アマゾーン国と、自分たちの国との価値観の違いを受け入れ難く、拒否反応を示します。

ルキウスが、冷静に文化の違いや結婚観について男性に尋ねると、男性は、自分は他の文化は知らないと断った上で、結婚は良いもので、たくさんの人から愛され、必要とされ、自分に、神殿に居た頃とは違う、喜びと幸せをもたらしたと話します。

男性は、神殿で育ったことがわかりました。



第十話「聖なる結婚」


男性は、幼い頃家族とはぐれて、施設に保護されたものの、家族は現れずに、神殿で育てられます。

神殿は、天国と見紛うほど白く輝き、フードを被り長い服を着た男たちが慎ましく暮らしています。

男性は、優しく寄り添う彼らに、慰められて、家族と別離した心の傷を癒やします。

男性は、愛情に包まれ、平和に暮らしますが、彼には、定められていた結婚によって、再び別れが訪れます。


実は、神殿の目的とは、国の繁栄のために、命を繋ぐ男性を保護、養育することにあったのです。

アマゾーン国では、神話の時代から、希少な男性は、神々からの恩寵として大事にされてきました。

神話によると、かつて人間の男王と、大地の女神が結ばれ、大地に緑をもたらす信仰があり、神殿の男たちも、それらに則って結婚が行われます。

……。

別れのシーン、泣いてまうやろ!

皆、涙を流しながら、私を見送った。これが最後と、抱きしめてくれた。

なぜ、こんなことになってしまったんや!

(作者のせい)

はい、自分が悪いです。


しかし、すべてははじまりにすぎず、その後、男性は、人々から熱烈な歓迎を受けて、式は執り行われ、男性は、新しい家族を作りました。

アマゾーン国の事情と習慣もあり、男性には複数人の妻がいますが、彼女たちは、感謝と敬意をもって男性に接します。

男性は、そこで新たな幸せを掴んだわけです。


男性の話に驚き、感心するふたり。


ようやく、日が傾いてきました。


そのころ、レナトスのカバンを取りに行った、施設の女性が戻ってきて、男性の家族が迎えに来たことを告げます。

男性は、ふたりにお礼言って、女神の加護を願うと、部屋から出て行きました。


施設の女性が、レナトスのカバンの中には、身分証は無いと言ったので、狼狽したレナトスは、カバンの中身をひっくり返して探し、去りゆく女性を追いますが、ルキウスに、運命には従う時も必要と言われて、止められます。

その七



月明かりの夜。


窓を見上げて、途方に暮れるレナトス。

そこへ、心配をして様子を見に来たルキウスが現れます。

レナトスは、自分が初めて感じる非力をルキウスに伝えます。

ルキウスも、自分を迷子の幼子に例えて、レナトスを慰めます。

ルキウスは、持ってきたロウソクをテーブルに置くと、その小さな炎をふたりで見つめて、詩の女神に祈り、詩の力を信じることを自らに誓います。



しかし、非情にも彼らは、翌朝、身元不明者として、市場で売られるのです!


なんじゃそりゃーーー!

非人道的すぎるだろ! ヤバーン!


ふたりの運命やいかに!(お前が言うか!)



第十一話「花婿市場」



ニュムペは、奔走しています。

自分が現状から逃げたせいで、ふたりを守れなかったと、後悔しているからです。

兄のニコロの悔し涙も、強い影響を与えています。

自分は、自立して、男がいれば、一人前になれると思い、家族に頼らず、兄の思いも反発してきた結果、ふたりを守れず、危機が訪れようとしています。

ニュムペは、いろいろ考えて、ひとりではなく、ガイアに頼ることを思いつきます。

ニュムペは、ガイアがどこかに居るであろう街を目指して、ひたすら走ります。


レナトスとルキウスは、荷馬車で市場に連れて行かれようとしています。

何の罪も無いのに、理不尽な扱いを受けて、レナトスは、ルキウスを庇いながら女たちに抗議します。

ルキウスは、事を荒立てても、良いことは無いと判断して、レナトスをなだめます。

手枷を付けられ、鎖を引かれても、レナトスは、動けません。

彼の頭の中には、生贄になった男王や神殿で男が隔離される話や、ニコロが言った男が売られるイメージが思い浮かび、彼は恐れを抱きます。

彼は、自分が当事者になるとは、思っていなかったようです。

そんなレナトスにルキウスは、人々のために犠牲になった、聖王を思い出すよう言って発破を掛けます。

そのおかげで、レナトスは、女たちが手荒な事をする前に、荷馬車に乗ることができました。

荷馬車の中で、ルキウスは、レナトスを褒めます。

レナトスは、荷馬車に乗る時、自分が同じ名前でも、立派な人物と比べないでほしいと強く言って、女たちの手が迫る恐怖から逃れるために乗り込んだので、とても気まずいです。

荷馬車は、街へ向かい、レナトスは、ルキウスと向き合えないまま、ひとりで街を眺めています。

街の人々の反応は様々で、レナトスは、旅をはじめた時、こんな事になるとは思わなかったと、振り返っています。



市場のある街の中央広場には、女たちの群衆がひしめき合って、この国に慣れたレナトスでも、気分を悪くします。


広場にある舞台の上で、恰幅の良い中年の女商人が場を盛り上げて、これから競りが始まろうとしています。

その八



レナトスとルキウスは、荷馬車から降ろされて、舞台の様子を見守っています。


舞台の上では、手枷を付けられた若い男性が、女に鎖を引かれて群衆の前に現れました。

その姿は、ふたりが、神殿で育った男性から聞いた、結婚の衣装そのままでした。

女たちは、自分たちの神話に基づいた儀式と称して、男たちを取り引きしているようです。

ふたりは、それを確かめ合うと、ルキウスは、皮肉を込めて、花婿市場と言います。


女商人は、若い男性を売り込み、女たちは、値踏みしながら場が盛り上がった所で、ある女の提案で、男性の体を調べるために、服を脱がせることが決まりました。

男性は、蹲って抵抗します。それでも無理矢理立たせられると、泣いて、やめてくれるよう懇願しますが、女たちは皆、嗜虐心でその様子を楽しみます。


……。


なんか、心が痛む。正直、Sっ気出しながら、嬉々として書いたんだけど、後で読み返したら、ズーンと、心が重くなってしまった。なんや、これ。…なんか、すまんやで。


しかし、すんでのところで男性は、裕福な女に買い取られ、男性は、難を逃れました。

ふたりは胸をなで下ろしますが、レナトス、ちょっと、この世界に飲まれかけているような…。ルキウスは、自分の立場が危ういのに、他人の心配をするレナトスにあきれつつも、そこに、らしさを感じて肯定的に見ています。


ふたりは、今度は、自分たちの運命を乗り越えるために、互いに言葉を交わして決意を確かめます。


商人が再び、群衆を盛り上げる中、ルキウスが舞台に出て、レナトスも後に続きます。


女たちの好奇の目線と、商人の打算的な思惑を前にルキウスは、自分たちが詩人であると、高らかに宣言します。


第十二話「女神へ捧げる詩」


それを聞いた商人は、彼らが詩人であり、群衆の前で詩を詠むつもりであることを確かめて、売り込むのに都合がよいと、皮算用をします。


ふたりは、並んで群衆の前に立ち、ルキウスは、自分たちの扱いは、詩を聞いてから決めるよう言ってから、詩を詠いはじめました。


鳥籠で、詩の女神に祈り、自らに誓った思いを胸に、今、詩人としての力を発揮する時が来たのです。


それは、“聖なる王と女神の結婚”という、アマゾーン国と、デメトリア王国に通じる神話に基づく内容でした。


愚かな者の為に、身を捧げた王を愛する大地の女神。

愚かな者を、滅ぼそうとする女神。しかし、王は、愚かな者でも愛するゆえに女神のもとに来たと、女神に言って人々を庇います。

そんな王の愛ゆえ女神は、王を愛し、結ばれたのです。女神は、王が人々を愛する限り、大地を実らせ豊穣を約束します。

それに応えるように、王は、人々の幸いの為に女神の愛が注がれるよう祈ります。


レナトスとルキウスは、呼び合うように詠い合い、そして終盤は、共に詠いあげます…。

人々の知らない所で、人は愛され恵みを受けていることを詩にのせて、ふたりは詠い終えました。

その九



ふたりの詩を聞いた群衆は、静まり返り、それから拍手が鳴り響きます。

女たちのふたりを見る目は変わり、事態は好転したかに見えましたが、違いました。

女たちは、ふたりに尊敬ではなく、独占欲を抱いたのです。

女たちは、ふたりを共有しようと話し合い、商人と交渉して、ふたりを買い取ろうとします。


その有様に、ルキウスは、幻滅して倒れかけます。レナトスは、ルキウスを支えます。

献身的な愛と赦し、人々が愚かなで無関心でも注がれる、愛と恵みのもとに世界は成り立っていることを詠う、詩の意味を理解する者はいなかったのです。


(だろうな…※じゃなかったら、ここまで民度下がってない)

ルキウスは、人を買い被りすぎだって。レナトスは、聖婚の詠は、上澄みだけ受け取れば、女たちを煽り兼ねないと、予感を的中させました。


迫り来る女たち!この旅、始まって以来の大ピンチです。


ふたりは、花婿として、舞台から群衆に突き出されます。

熱狂のために意味もわからぬまま、王を賛美する女たちに、ルキウスは、我に返って怒ります。


ふたりは、舞台に上がって来た女たちに、腕を掴まれ、つま先立ちでぶら下げる格好で吊されます。

女たちは、彼らの服を剥がし、奪います。

しかし、上着の中に着ていた服のおかげで、素肌を見られずにすみました。

※ちなみに、中衣(トゥニカ)は、調べたら、古代ローマで着用されていたシャツのような衣服で、現代のチュニックの起源とのこと。
キトン(メロスみたいな服装)と迷ったけれど、トゥニカの方が上着の中に着るものだったのでこちらを採用。

この屈辱的な扱いに、誇り高く、プライドも高い彼らが、黙っている訳がありません!

ふたりの怒りは爆発して、侮辱する女たちを蹴飛ばしたり、頭突きをお見舞いして、戦います。

手枷を付けられ、敵に囲まれれても、彼らは屈することなく、抵抗を続けました。


ふたりは、いきなり宙に放り出され、床から顔を上げると、周りの状況は変わっていました。


今まで、歓声をあげてふたりの戦いを見ていた女たちは、今度は皆、悲鳴をあげて、顔色を変えて、舞台の周りを右往左往しています。

遠くから、ラッパの音が響いて、女戦士の騎馬隊が現れます。

女戦士たちの中から、ひとりの少女が、馬より速くふたりに向かって駆けて来ます。


それは、ニュムペでした。


ニュムペは、舞台に飛び乗り、ふたりと再会します。


商人は、女戦士の隊長から、所業を問い詰められ、しどろもどろになって言い訳しています。

隊長は、本来なら、王と女神への感謝と、男性に対する敬意で行われるべき神聖な婚姻の儀を利用して、王を侮辱し男性を虐げた事を断罪し、商人と関係者を罰する宣告を下しました。


手枷を外され、自由の身になったレナトスとルキウスは、ニュムペにお礼を言います。

ニュムペは、照れながら、すべてはガイアのおかげだと、事の顛末を話します。


ニュムペは、あれから何とか、ガイアを見つけると、ガイアは、直ぐさま行動に移しました。

ガイアは、持ち前の人望と情報網を駆使して、レナトスとルキウスを攫った連中をあぶり出し、ボコボコにしばきあげて、奴らが盗んだ身分証のありかを吐かせます。


いや~実に爽快!


ガイアは、身分証を取り戻すと、早馬で都に行き、女王に直訴して、事態を伝えます。

聡明な女王は、アマゾーン国と国交を結ぶ、重要なデメトリア王国の男性が、危機にあると判断し……

この部分、最終話の袂を分かち……と、矛盾した設定になってしまった。

あくまで、表向きは交流しないけど、一部の者と秘密裏に書簡を交わし、暖かく見守ることが、国交ということで。

それくらい、アマゾーン国にとって、デメトリア王国は、重要なのです。

理由は、その十で。

女王は、騎兵隊を派遣し、ふたりの救出と、最近蔓延る、男性の不当な売買を取り締まる為に現地に向かわせた。

不当じゃない売買があるような言い方ですが、結納のような習慣があって、政略結婚のように、家の利益のために取り引きすることもあるので、この国で区別するのは難しいのです。それでも、男性を尊び決して粗末には扱わないのですが、一部の者たちが、蛮行に走ってしまった訳ですが……。


何はともあれ、ふたりは、無事救出されて、売買組織は壊滅。物語は、フィナーレを迎えることになりました。

その十



女王は、慈悲深い人物だった。

それで、国を併合するという……。

争いが絶えない国は、自分が世話してあげようという、支配欲というか、庇護欲の強いお方なのだろう……。

やむなくとはいえ、贖罪の意味もこめて。


デメトリア王国は、ルーツが同じの姉妹だった。
なので、アマゾーン国と分かれても、断絶はせずに、密かに一部の者とは、交流を続けたという。

ひょっとしたら、女王は、機会を狙っていたのかもしれない。

自国のみならず、この国でも、男児の出生率は低下し、男性が希少になりつつある。

国が停滞するのも、時間の問題だったのでは?

いつかは、アマゾーンの世話になる時が来たはずである。

ならば、世話好きの女王の言葉も一理ある。


支配とは、お世話。とは、誰の言葉か。


こんな風に、本編でも、だらだら書き連ねてしまい、パッとしない文章になってしまったのに、また繰り返す。


ちなみに、二人(ふたり)の表記を“ふたり”か“二人”どっちにしようなんて悩んで結局、ルビ付きでまとめた。という、言わなきゃ伝わらんこだわりを今さら述べる、今日このごろ。


…戻ります。


そういえば、「庇護する女たち」のタイトル、最初は「包囲する女たち」だったな。

あの時は、女たちが攻めて来るから、というより、だんだん少男子化によって、小男多女になって、徐々に女が増えて囲まれる…そんな世界になりつつある国の、男性主人公の話を書きたかったんだと思う。


その割には今回、えらく凶暴な女を書いてしまったな~。

あくまで、一部の悪い人たちのしわざだったという話を、書ききれなかったのが悔やまれる所。


地域の有力者も絡んで、ヤバい奴らがこぞって加担して、人身売買がまかり通ったことで、街じゅうが見て見ぬふりして、感覚がマヒしてしまったって…どんだけ、民度と治安が悪いんだよって話です。

街で男性が少ないのは、出生率の問題や神殿に隔離された人もいますが、大半は攫われた訳でも売られたからでもなく、まっとうな人たちは、男性を隠して守っていたから。

という設定も、書けばよかったな~。

話のテンポのために、削った話のなんと多いことか。

アマゾーン国の女が、男性を子供扱いするのも、自分たちが善意や愛情だと思っている、庇護欲や支配欲の現れですね。

たとえ、恐れ敬い、感謝しても、一方的だし、異文化にとっては、看過し難いものがあるのは、わかりますよ。

レナトスやルキウスも、そうでした。

しかし、運命の女神に魅入られた彼らは、聖王のように、女神のもとで暮らすことになるのです。

ふたりは、女王の住む宮殿で、詩作を続けることになります。

女神信仰は本来の姿に戻り、ルキウスは無罪放免、レナトスは、晴々とした心で、母や姉に故郷の家を任せて、ルキウスと暮らすつもりです。

デメトリアは、もともと女性が強い国だったけれど、少男子化も相まって、男性の立場が変わって行ったと思われます。

レナトスのアマゾーンへの思い入れも、ルキウスが亡命先にアマゾーン国を選んだのも、それらの事情と関係があるかもしれません。

ふたりは、帰ることもできますが、故郷はすっかり変わったことでしょう。

ふたつの国は、ひとつになって、もはや、デメトリアは、アマゾーン国の一部。

いえ、違う名前の新たな国として、生まれ変わったのですから。


二つの国は、聖婚(ヒエロス・ガモス)によって結ばれ、女神と王のように、すべては成就したのです。



エピローグに後日談が出てくるの、いいですね。

みんな元気でよかった、とか。

ニュムペもガイアも、彼女たち、らしいエピソードだったし、案外いいヤツだったニコロも、相変わらずで何よりでしたね。

ニュムペ、出世おめでとう!

ガイア、これで、街は安泰ですね!

ルキウス、ついに売れっ子に!

そして、実は、この話は今、あなたが呼んでいるんです!という、オチ。

主人公を詩人(作家)にしたのも、この物語を結ぶためでした。

レナトスは、野望を隠しきれないようですが、それは、叶えられるでしょう。



今まで、つらつらと語りましたが、解説と言うより、ほとんどが話を振り返る、長い実況になりました。

(ちなみに、全七話でまとめようとしたけど、全十話になりました)


ここまで呼んでくれた方、本当にありがとうございました!



おわり

「アマゾーン国探訪記」の、あとがきと批評解説です。

「アマゾーン国探訪記」の、あとがきと批評解説です。

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  • 随筆・エッセイ
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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-01-17

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  1. あとがき
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