透水

ことばは、存在と非存在、光と闇、永遠と時を結ぶ。その場に、身を晒していたい。

桜の花の咲く頃、遠くで汽笛が鳴る音を聴きながら、生まれてきました。生まれてから、随分時を経たような、気がします。今は幼い頃や少年の頃、つい一昨日の事も、そこに居て一緒に笑っていた人が、誰一人近くに居ないのです。言葉が歴史と命の始まりだということ、それが現実を目覚めさせ活かすという事を、信じて、生きていく他はありません。過ぎ去ったもの、これから来るもの、それらはみな、歌われる事によって、今の中で永遠と化体し、見えるものを見えぬものの象りとし、見えぬものを見えるものの声とする。そんな、生きた人間の歌によって。

涙の日

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
  • CC BY-NC-ND