目が覚めるとそこには

目が覚めるとそこには

夢で終わらない

 あぁこれは、いつもの夢だ。誰にでも、1つくらいあるだろう。
 同じような夢。疲れた時に見る夢。誰かを殺したいと思っている時に見る夢。

 窓も、ドアも、部屋の調度品がなにもない部屋。上も下もわからない白い部屋に私が全裸で居る夢をよく見る。

 私は、部屋の中を抜け出すために走りまくる。床だけでなく、壁や、天井を使って、走りまくる。走って、走って、走って、疲れ切って、倒れる。最後は、なぜか部屋から抜け出す。
 その時に、必ず振り返ってしまう。白かった部屋が、真っ赤に染まったシーンで目をさます。

 目を覚ますと、私の目の前には、いつもの天井が広がっている。白く塗った天井だ。
 そうこれは夢。私が見ている夢なのだ。

 今日も、現実が始まる。
 私の事を殴るしかしない。父。
 私の事を、父に殴らせる事で、自分が逃げる事しか考えない。母。
 私の事を、汚れた物でも見るように蔑む。妹。
 私の事など存在していないかのように振る舞う祖父母。

 これが私の現実だ。
 学校に行けば、私は存在しない人間として扱われる。
 学校はましだ、存在しないだけだからだ。1人で過ごせるだけましな時間だ。

 休み時間は、私の安らぎの時間だ。
 図書館で本を読むことが出来る。家で本を読むことはできない。洗濯をして、掃除をして、食事を作らなければならないからだ、その上で、バイトを行って、父に酒を買わなければ、殴られる。
 妹には、トイレが汚いと言われて、妹の排泄物を処分させられる。

 図書館だけは、私を受け入れてくれる。
 ここさえあれば私は満足出来る。学校の成績が良ければ、女子から呼び出されて殴られる。だから、テストはいつも間違えて提出する。そうすると、先生から呼び出される。さじ加減が難しい。
 真ん中くらいの成績で居なければならないのだ。

 妹は、身体を売っている。そのお金で、遊び歩いている。
 妹は、私も同じことをして、金を渡せと行ってきたが、逃げた。それから、私の事を、許さないと殴るようになった。殴られるくらいの方がましだ。好きでもない男に股を開くくらいなら死んだほうがいい。
 純潔を守りたいわけではない。私の意地だ。早く、高校を卒業したい。

 この家を出たい。そればかり考えるようになっている。

 一度、妹が男を連れてきて、私を犯そうとした。その時には、思いっきり男根に噛み付いた。
 それから、妹は、私の事を汚れた物を見るような目で見る。自分の排泄する姿を見せて、拭かせて、舐めさせて喜ぶようになった。どこか、心が壊れたのだろう。
 母は、数年前から、父の暴力におびえていた。父は、公務員だった。真面目に仕事をしていたが、なんとかという議員が役所にもとめてきた、文章提示に対して、別の議員からの圧力があって、提出文章を改ざんしてしまった。それが週刊誌に取り上げられて、酒に逃げるようになってしまった。その当時は、毎日のようにマスコミを名乗る狂人が、昼夜関係なくチャイムを鳴らしていた。
 私の学校にも記者を名乗る人が来て居た。それで、学校側も私は居ない者として扱うようになった。
 あれで、家族が壊れてしまった。
 壊れてしまった事を、私がマスコミに言ってしまった事で、またマスコミを名乗る狂人が騒ぎ始める。議員の圧力やパワハラが有ったのではないかと・・・。私が、家族の絆を壊してしまった。だから、これは当然の事なのだ。

 今日も無事、父のお酒を買うことができた。これで、殴られる回数が減る。

 そして、今日も1人で外の物置で眠る。
 ここが一番安心出来る。寒いし、暑いが、誰も近づいてこない。近づいてもすぐに分かる、私だけが知っている抜け道もある。下着は、妹が売ってしまった。今ある下着は、3枚だけ。バイト先で貰った物だ。バイト先の女性店長が私の事を気にかけてくている。それで時々服や下着をくれる。店の売れ残りだからと言っているが違う事は知っている。でも、嬉しい。バイトの時間は、私を人として見てくれる。

 あと、二週間。二週間ですべてが終わってしまう。

 今日も、いつもの夢を見た。
 少しだけ違った。今日は全裸で”なにか”に追いかけられる。それから必死に逃げる。逃げるがドアが見つからない。逃げ場がないと思った時に、”なにか”が爆発して、赤い色が白い部屋を染めていく、ゆっくり開いたドアから私は外に踏み出す。

 そこで目をさます。目を覚ましたら、いつもの天井が目に入ってくる。
 夢だとわかる。

 これから、毎日”なにか”が増えていく。私は、その”なにか”を知っているが、知らない。
 目をさます時には、いつもの天井だけが優しく私を見つめている。

 明日。私は、明日。ここから出ていける。私の事を知らない人たちの中に入っていくための準備が整ったのだ。

 ねぇみんな知っている?
 人って追い詰められると、どうでも良くなるのだよ?

 ねぇみんな知っている?
 私の事が見えないのなら、見ないのなら、必要ない物が有るよね?

 ねぇみんな知っている?
 人ってなかなか壊れないのだよ?

 ねぇみんな知っている?
 無視するってそれだけ意識しているって事だよ?

 ねぇみんな知っている?
 大切にしている物を壊された時、自分の中の別の自分に気がつくよ?

 ねぇみんな?なんで、人にやった事が、自分がやられないと思っているの?そんなわけないよね?自分が他人にやったことなら、他人から自分がやられるって事も有るよね?その時には、憎悪や悪意が付与されたら、やった事が大きくなって返ってくるよ?

 まずは、妹から始めよう。次は、祖父母。そして、父。最後は、大好きなお母さんにしよう。それが、終わったら、学校の卒業式に行かなきゃだよね。店長には、今日で街を出るからお店やめますと伝えた。毎日、お酒を安く売ってくれた酒屋さんにも、昨日の間にお礼の言葉を伝えた。残念だと言ってくれた。すごく嬉しかった。私の事を見て、私の事を必要だと言ってくれた。遠い人ほど親切なんだね。

 準備はできた。白い部屋の夢は、今日も見た。そして、私がやりたかった事がはっきりと解った。

 まずは、妹の部屋に行こう。
 大丈夫。ぐっすり寝ている。食事に睡眠薬が入っているとは思わなかったのだろうね。そのまま致死量を入れようかと思ったけど、それじゃ面白くないよね。

 さて、妹の部屋の鍵は持っている。掃除をするために必要だからだ。この娘。明日からどうするのだろう?私、卒業したら居なくなると伝えていたのに・・・。まぁいいか、そんなの、明日から考えればいいのだろうね。私以外の人が考えればいい。私でも考えられたのだから、大丈夫だろう。

 妹はぐっすり寝ている。
 まずは、服を脱がそう。起きないように丁寧にやらないとダメだね。
 次は、声が出て祖父母や母や父が起きたら迷惑だから、口枷をしてあげよう。あぁ起きて暴れたら大変だから、手枷と足かせもしよう。犬用の首輪も買ってあるから、してあげよう。男に股開いて、下品な声を上げるようなメス犬にはちょうどいいだろう。

 全裸の状態で手枷をして、ベッドに縛り付ける。首輪を買った時についでにかった鎖が役に立った。次に、足かせは、メス犬にちょうどいいように足を閉じられないように縛り付ければいい。そして口枷をしてから、あそこに、温めた棒を入れれば、起きてくれるだろう。前の穴よりも、後ろの穴の方がいいだろうね。楽しんでくれるだろう。少し、血が出ちゃったけどいいよね。

 なにか騒がしいな?犬の言葉はよくわからない?
 今更何を言っているの?散々やってきただろう?あぁ熱い?そうだね。冷やしてあげるよ。ちょうど、私もおしっこしたくなったから、顔にかけてあげる。いつも貴女がやっていたことでしょ?
 あっ注意してね。お腹の上にほら見えるでしょ?そうそう、貧弱な頭でよく考えて、貴女の両方の乳首をつまんでいる洗濯バサミ。そうそう、紐が天井まで伸びているよね?うん。気がついた?それほどバカじゃないみたいだね。アハ!楽しいでしょ。動かなければ大丈夫だからね。乳首に付けた洗濯バサミが取れなければ、天井から吊るしている包丁がお腹に刺さる事も無いからね。大丈夫何度か実験しているから、動かなければ、朝までは平気だよ。それまでに誰かが気がついてくれるといいね。声出ないでしょ?口枷だけじゃ心配だったから、舌を麻痺させる薬も入れているよ。大丈夫、麻酔じゃないから、お腹に包丁が刺さればしっかりと痛いと思うよ。

 全裸で、股を開いて、後ろの穴に棒を刺した状態の写真も沢山撮影してあげたからね。貴女のスマホのアドレス全部に送付しておいてあげたからね。嬉しいでしょ!!おしっこもう少し出そうだから、最後に出していってあげるね。
 あっそうだ!綺麗に舐めるのは無理だろうから、貴方の履いていた汚いパンツでも、こんな事には役立つね。私のおしっこを拭いておくね。あっそのパンツも売っていいよ。おしっこ付いていると高く売れるのでしょ?
 あぁ制服ももう必要ないよね?貴女の汚い物で汚れちゃったから拭いておくね。私、優しいよね。スマホ、動画にしておいたから!
 そうそう、貴方の汚い雄に入れてもらっていた場所がしっかり見える位置で、動画配信してあげるね。たくさんに人に見られて幸せでしょ?

 それじぁバイバイ!

 祖父母は、1階で寝ているはずだ。
 あぁ疲れているのかな?ぐっすりだね。居ない物として扱っているような目なら必要ないでしょう?

 両目とも潰してあげるね。これで、嫌な物は見なくて済むでしょ?
 騒がないでよ。誰か起きてきたら大変でしょ?汚らしくくちゃくちゃ食べる口なんていらないでしょうから、接着剤で止めておいて正解だったね。取れちゃうと困るから、縫い合わせておくね。痛くないよ。大丈夫。
 え?何?しっかり喋ってよ。なにいっているかわからないよ?

 大丈夫。死ぬことはないと思うからね。
 眼球をくり抜く事ができなかったのは残念だけど、お互いの目玉から出た血となにかわからない汁を食べたのだから、幸せでしょ?これからも一緒に元気に過ごしてくださいね。

 それじゃバイバイ!

 父とお母さんは、私が居ないとダメな人たちだから、さよならする前に、私が居なくなっても大丈夫な状態にしないとね。

 さて父は。やっぱり、お酒に匂いを撒き散らして、危ないな。
 割れたコップの片付けしないとダメだね。そんなにお酒ばっかり飲んでダメになってしまうでしょう?うん。しっかり眠っているね。首を縛って、手枷と足かせで、部屋の柱に固定する。うん。これで逃げられない。あとは、ネットで買った薬を注射して・・・量は間違えないようにしないとダメだよね。これで死んじゃったら大変だからね。
 うんうん。大丈夫みたいだね。起きちゃったけど、何言っているかわからないよ。ごめん。私、人の言葉しかわからない。獣に成り下がった人の言葉は理解できないんだ。そんなに暴れないでよ。これから大事な作業が有るのだよ。
 まずは、指からでいいかな。小指を切り落とそう。喚かないで、耳が痛いでしょ。だって、毎日殴っていたのは、この手でしょ。だから、手さえなければ大丈夫でしょ?
 面倒だね。そうだ!釘とハンマー!あった。あった。良かった。物置って便利だね。手が動いてうまくできないから、床に釘で固定すればいいよね。うん。できた。ほら、そんな騒がない。暴れないでよ。足そんなにうごかしたら・・ほらずれちゃった。足も動けないように釘で固定しておこう。あっそんなに長い釘がなかった。でも、大丈夫だよ。安心して、そんなこともあろうかと、木を削って、杭を作ったからね。これで、太ももを刺しておけば大丈夫だよね。ほら、これで、動かなくなった。あれ?おかしいな。身体全部が動かなくなっちゃった。あぁ心臓は動いているみたいだから大丈夫だね。
 反対の手の小指から斧で落としていく。うんうん。うまくできた。次は、足の指の爪を剥いでいく!
 うんうん。うまくできた。最後に、お酒が好きだったからね。手と足にしっかりとアルコール度数が高いお酒をかけておいてあげるからね。

 おやすみ!
 それじゃバイバイ!

 最後は、お母さん。
 お母さんは、心がもう壊れちゃっているから、心臓を取り出してなおしてあげる!
 大丈夫。私なら何でも出来るって言ったのはお母さんだからね。心臓取り出すの大変だけど、頑張るね。暴れると面倒だから、まずは、首を落としちゃうね。そうしたら、静かになるでしょ?
 ほら、お母さん。静かになった。心臓を取り出すね。これが壊れちゃったのだね。なおしてから戻してあげるから大丈夫だよ。

 だから、治ったら一緒に行こうね!お母さん!

 今は、治せないから、まずは、学校で卒業式に出てからになるけど、ごめんね。

 学校で、私の大切な図書館で暴れて、本を破った人たちを怒らないとならないからね。
 先生もだね。その人達が、私がやったと言ったからって、それを信じて、私を怒らなくてもいいのに、私、本を大事にしていたよ。先生も知っていたよね?その人達が、偉い人の娘や息子だからって、私の責任にしないで欲しいな。
 私から本を取り上げないでほしかったな。

 私が唯一癒やされた、白い図書館。出口がわからなくなるほどの本があった、私だけの白い部屋。

 お母さん。ごめん。少し、卒業式に遅れそうだよ。
 急ぐから許してね。なんか、今日街が騒がしいね。やっと学校に着いたよ。先生たち何を慌てていたのだろうね?

 卒業式は体育館だったよね。お母さん。急ごう!

 うんうん。やっぱりみんな揃っているね。
 私を無視していた人たちも、私から図書館を白い部屋を奪った人たちも、父がおかしくなるきっかけを作った人も、妹を抱いていたいやらしい教師も、みんな、みんな揃っているね。

 それじゃ!みんな、バイバイ!!

 あぁこれは夢だよね。いつもの夢だ。
 白い部屋の中で、私は皆を殺しまくる。そして、いつもの白い部屋のからでて目が覚める。

 目が覚めると、今日はいつもと違う現実が待っている!

 お母さんと一緒に、ご飯を作ろう。今日からは出来るはずだ。
 妹ももう大丈夫だろう。妹が好きなプリンも作ろう。そうだ!おじいちゃん歯が弱くなっているから、魚の方がいいかな。でも、今日は、私が大好きな。お母さんのグラタンが食べたい!今日は、わがまま言っていいよね?おばあちゃん。みかんばっかりそんなにむかなくていいよ。わかった、ジュースにするよ。一緒に飲もう!お父さん。おかえり!!今日ね。お母さんのグラタン一緒に作ったの!それとね。妹とプリン作った!ご飯の後で、一緒に食べよう!

 これが、私の現実だ!!!!!
 夢なんかじゃない。夢とは違う。そう、夢の中でだけの出来事だった。私は、私は、私は、私は・・・・私は・・・だれ?

fin

目が覚めるとそこには

目が覚めるとそこには

私は今日も同じ夢を見る。白い部屋の夢だ。 夢を夢だと認識して、夢で終わらないようにする。私に残された唯一の方法 私が私でいられる場所。 私が望んだ事が実現できる部屋。 白い部屋から出る時には、赤く、赤く部屋が染まる。 私は、今日まだ目が覚めていないのだろう。

  • 小説
  • 短編
  • ホラー
  • 青年向け
更新日
登録日
2020-04-24

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