エスの研究(5.Brain Chatterのメカニズム)

フランシス・ローレライ

起きている時に見る夢

統合失調症に関し「自分の中の他人」等、様々な体験談が記録され、出版されている。しかし患者の聞く「声」をリアルタイムでIT等で探知し、内容を把握して記録する試みや調査・研究がないのは不思議である。あるいはMRI等が更に発展すれば良いのかも知れない。

患者Aは、Brain Chatter(幻聴)の起きる際、右耳に金属の耳かきを挿入すると、耳かきが共鳴して外にまで響くのを発見し、これは右耳を鳴らす物理現象であり、元凶はエス(無意識)に違いないと考えた。また(a)一見論理的なメッセージ(但し全て嘘)と(b)短い言葉やフレーズの単純な繰り返し、の2種類に分かれる事を発見し、原因を左右の脳半球の特性に求め(a)は論理的な左脳、(b)は音楽的な右脳が源であると推測した。

以下は男性を想定し、観察や症状から構築した仮説である。

1.  エスの敵愾心

エスは人間の精神の一部を構成し、自我と「一心同体」であり、自我に協力すべき存在なのに言語化した途端に敵対的になるが、理由は次の通り。
 
(1)若い頃から身体運動や会話・思考を含め、周囲から認知可能な活動は全て自我主導であり、エスは生殖機能を司るものの、基本的に身体の恒常性や平衡感覚を保つ地味な存在で「縁の下の力持ち」である。

エスは自分が自我に対して劣位の存在であると意識し、これを「上下関係」あるいは「階級社会」と捉え、日頃から面白くないと思っているに違いない。しかもそれが10年、20年と続く結果、ストレスや鬱屈感が累積するのだろう。

(2)思春期の頃、声変わりや異性への関心の高まりの形で、エスはプレゼンスを示すが、これが徐々に進み、人間は大人に成長するのだろう。エスは、生殖活動を担うところ、暫くそのプロセスが面白いだろうが、身体が完成する20歳くらいになると、エスは「性への目覚めは実現したものの、エスとしてこれ以上、外界に存在感を示す事は困難。自我の様に、随意筋を動かす事は出来ないし、会話・思考等の言語活動にも従事出来ない」と限界を知り、落胆するのだろう。

(3)大人になると、自我は身体の恒常性を保つエスの存在を理解せず、頭部や身体へのスキンシップを伴うケアや気遣いを怠り、ろくろく気分転換もせずに目的指向的に仕事や勉強にまい進しがちとなる。そこでエスは縁の下の力持ちなのに感謝されないと感じ、欲求不満が鬱積してしまう。

(4)エスは言語活動に関し、迷走神経を使う事により微妙に関与可能である。そこで脳の左右の言語野に立ち入り、うまく言葉を操れないものだろうかと画策するのだろう。そして言語化に成功した場合、エスは鬱屈した感情を一気に爆発させ、自我を攻め、苦悩に追い込もうとする。これが統合失調症の陽性症状だろう。

(5)エスは自我との「上下関係」を逆転させて覇権を確立し、長年不可能だった自己実現を図ろうとする。

エスが自我に対する覇権確立に成功した場合、エス主導の行動パターンとなろうが、今度は、エスが人間社会の現実に晒される結果、向精神薬等を用いて対抗しようとする医者や家族・同僚を含め、世間がすっかり怖くなり、人間との関わりを避けるのだろう。これが陰性症状かと思われる。


2.前兆(無声メガホン)


(1)Brain Chatterを伴う統合失調症の前兆として、執拗にイジメを受ける現象が起きがちだろうが、エスから周囲の人間(のエス)に対し、悪意に満ちたメッセージが静かに伝達される事が原因であり、これを「無声メガホン」と呼ぶ。

(2)これは当人に聞こえない現象であり、エスが周囲にメッセージを送っている事に気づかないし内容も理解出来ない。

(3)無声メガホンとBrain Chatterは二者択一であり、エスは両方に同時に従事する事は出来ない。なお帰国子女等、複数言語を話す場合、エスは無声メガホンの際、日本語以外の言語を使用する可能性がある。

(4)エスは、無声メガホンに多くの悪口を混ぜがちとなる。当人の気づかぬまま周囲のエスが察知し、不快感を言葉や行動で表すだろう。

(5)当人は、周囲の人間の態度が不自然に攻撃的でも、先ず自分のせいだろうと錯覚するので、へりくだった態度を取りやすい。そして人間関係を維持するのが困難になり、逃避行動を招きがち。

(6) 対応策

(ア)周囲の空気を切ったり、かき混ぜる事により遮断する。特に右耳から漏れる可聴領域外の音波を意識し、右手や右腕を使って右耳穴のすぐ外側の空気を切り、かき混ぜる。

(イ) 無声メガホンの伝播経路を塞ぐために耳栓を使用する。

(ウ)自己体罰(頬や耳の周囲を狙い、平手ではたく)等

(7)「イジメ」との類似性

統合失調症の前兆として無声メガホンによる孤立化は、「イジメ」の場合と類似性がある。イジメを行う集団が認めたがらないのは、集合的無意識の働きであり、暗黙の「カミングアウト禁止令」によるものだろう。

 従ってイジメ対策として、無声メガホンと同様の対策で実験してみる価値があろう。


3.Brain Chatter(幻聴)


(1)自我は、通常、左右の脳半球間を速いスピードで往来しつつ四肢の運動を指令し、言語活動や思考に従事するが、ボーッとしていたり、片方の脳半球に沈潜する場合、エスは「意識の左右運動」を妨害し、自分の地歩を築こうとする。

(ア)左右の随意筋を操作し、作業や運動に従事している場合、双方の脳半球を駆使するので、エスは侵入困難。図示すれば(E,E)の状態だろう。

(イ)身体を動かさず静止状態で、思考や会話、読書、記述等の言語活動に従事する場合、左脳を偏重する為、エスは右脳に侵入可能。(E,I)

(ウ)作業や運動、周囲の人間との交流に関わらず、ボーッと不活発な場合、エスは左脳に侵入可能。(I,E)

(2)エスが右脳に居座る場合、右脳にアクセス困難となり、周囲の人間との交流が困難となろう。エスが左脳に居座る場合、左脳にアクセス困難となるが、多くの場合、主たる言語野は左脳にあるため、言語障害が発生しがち。

(3)エスは左右の言語野にアクセスして発話し、周囲には察知不能な言語的メッセージを本人に送り始める。これがBrain Chatter(幻聴)である。

こうしてエスは「起きている時に見る夢」を演出する。本人は、エスの言葉に関し、周囲の人間の言葉かと誤解する。そこにエスが悪口を混ぜれば、本人は周囲への不信感を抱き、反発し、怒りや敵愾心を露わにするだろう。

PETスキャン(ポジトロン断層法撮影)を用いた研究によれば、幻聴の最中、脳の言語野が活性化する由。(Current Psychiatry,2005年4月号)

(ア)エスは、ブローカ野を活用して声帯を微妙に振動させ、言語メッセージを発生させる。これは骨振動を発生させ、耳を経由する外部音声と混じり合い、混然一体としてウェルニッケ野に到達する。

(イ)ウェルニッケ野でBrain Chatterが解析される結果、本人は「声」が周囲の人間から来るものと誤解してしまう。

(4)次の段階で、患者は「声」の主が周囲の人間ではなく、未知の存在である事に気づく。そのショックは多大であり、驚嘆し、自失呆然として言動・行動が麻痺してしまう。

「周囲から電磁波が出ており、強く感じる」と訴えるケースが多いらしいが、先祖の霊、神仏等の超自然現象、宇宙人、あるいはITを使った陰謀に説明を求めがちとなる。

また不可思議な現象に夢中になるので、周囲の人間が声をかけ、忠告しても耳を貸さない。日々の生活や仕事にも上の空となり、「幽霊」に夢中で聞き入ってしまう。

(5)エスの使用する脳の部位次第で、Brain Chatterに特徴が出よう。

(ア) (I,E) の状態で左半球 (論理脳)から

 一応、論理の連鎖の形を取り、人間関係や社会について特定の見方を提示しがち。但し虚言や作り話の集大成であり、真に受けてはならない。聞き続けていると世界観が屈折する。

(イ) (E,I) の状態で右半球 (音楽脳)から

特定フレーズや言葉の繰り返しとなり、論理的連鎖はなく、ナンセンスに近い。

(ウ)小脳

決まり文句の様なフレーズの繰り返し。小脳の辺りを叩くと止む模様。

(エ)コーラス

エスは、小脳を利用して言葉やフレーズの繰り返しで本人を翻弄する。この「コーラス」を背景としながら、同時に左右の言語野から別のメッセージを送る場合、四面楚歌ばりの恐ろしい効果が生まれるだろう。

(6)エスは、多くの場合、本人の意志や意向に対する反対意見を執拗に述べる。その結果、本人は買い物を含め、選択の場面で考えが纏まらない。意思決定・決断不能となり、エスに聞き入り、その場に立ち尽くし、動きが凝り固まる。

(7)エスは虚言を続けながら、周囲の人間の悪口を言い、医者を含め人間不信を招こうとする。また時として冗談を言い、これが周囲から原因不明に見える「空笑」を招く。

(8)エスは意思能力を奪った上、言う事に従わせようとする。その結果、行動パターンは変則的かつ予測不可能となる。また目に見えぬ「指導者」が現れたストレスも手伝い、多くの場合、放浪癖が現れるだろう。行き先を告げぬまま外出し、帰宅せず、行方不明となり得る。

(9)エスはBrain Chatterを使い、極力身体を動かさない様に仕向け、また動かす場合、ゆっくりとしたスローモーションを奨励する。こうして左右の脳半球間の連絡を劣化させていく。もって脳内活動を制限し、男性の場合、一度に1つの脳半球しか使用できない傾向が、増々ひどくなる。部屋にひきこもる癖が定着する。

(10)Brain Chatterと無声メガホンに関し、エスは同時に従事できないので、何れかを選択せざるを得ない。

(11)左右の眼の向く方向が微妙に異なる、或いは片方の眼をつむる現象が起きるが、エスが、片方の眼から入る視覚情報を制限するのだろう。

例えば自我を右眼に依存させ、左脳に沈潜するように仕向ける。すると本人は言語的・論理的な世界に没頭する。右脳が空席となるので、エスが占拠し、右側の言語野からBrain Chatterする基本形である。(E,I)

(12)エスは、自我の左右の言語野へのアクセスを阻止し、言語系統の完全支配を試みる。会話を試みる際、発音困難を招く。これが「言語滅裂」であり、ひどい時には言語障害となろう。

また言葉への自信を失うので、筆記・執筆する際に文章が理解可能か否か入念に確認する様になり、句読点(、)過剰になりがちである。

(13)明け方の早い時間にエスが大騒ぎし、早い時間に叩き起こすことが多々ある模様だが、当日の午前中に重要な会合・約束・予定等のある場合が多いと見られる。エスは人間同士の対話や交流を嫌うので、睡眠不足に陥らせて体調不良を招き、特に午前中の会合や約束を中止させようとするのだろう。

(14)環境的条件

(ア)統合失調症は、工業化が進み、安定的で裕福な先進国で罹患率の高いものと認識されており、この分野の研究を先駆けたフロイト(オーストリア)やユング(スイス)もこの様な国の出身者である。

安定的で豊かな環境では、精神的弛緩や集中力低下が起こりやすいため、エスの付け入る隙が生じやすいのだろう。

(イ)特に外国からの観光旅行の場合、毎日、美術館・博物館を含め観光スポットにて明確な目的意識もないまま毎日を過ごす場合、飽きるのみならず情報過多となり、知的考察を加える事を怠るだろう。

(ウ)言葉が通じず、表札や説明書きさえ理解できない場合、知的刺激は皆無に等しくなり、理解困難な3D映画を見ている様に思考停止となる。すると左右の脳半球から自我の存在感が低下し、エスからアクセス可能となり、統合失調症の環境が整うだろう。

(エ)言葉の通じない先進国への観光旅行は、明確な目的のない限り、精神衛生上、要注意か。


4.以心伝心


(1)統合失調症の症状として「思考が周囲に伝わってしまう」と感じる事(考想伝播/思考伝播)が知られているが、これは当人(自我)の声にならぬフラストレーションや叫び、ぼやきが周囲の人間のエスに伝わる現象であり、ここでは「以心伝心」と呼ぶ事とする。

(2)電話実験(「無声メガホン)対「以心伝心」)

(ア)家族や親せき等、親しい間柄の相手との電話中、会話の途切れた瞬間を狙い、エスは無声メガホンで話し相手のエスに言語メッセージを伝達する場合があり、突然、話し相手の雰囲気が変わったりする。

(イ)その際には耳の周辺等、頭部を拳で小突くと、エスが怯むらしく、無声メガホンが止み、話がしやすくなる。

(ウ)また電話で「以心伝心」を使い、念じる形で「エスの悪さを懲らしめて欲しい」旨、メッセージを送ると、話し相手(のエス)に通じ、自分のエスに対して制裁が加えられ、怯むだろう。

(女性は男性と比べて感受性が鋭いので、話し相手が女性の場合、特段に成立しやすいだろう)

(3)帰国子女の場合など、電車の車内等で日本語以外の言語で何か静かに念じると、周囲の外国人のエスに伝わり反応を呼ぶ模様であり、言語の識別を伴う現象と見られる。

(4)以心伝心は、自我の想念が周囲のエスに伝わる点でエスの「無声メガホン」と良く似ており、同じ経路を辿るのかも知れない。精神病患者の周囲では集合的無意識が顕在化するので、周囲が当人を注視し、格別に敏感になるきっかけとなるだろう。

(5)周囲の人間から「以心伝心」とエスの流す「無声メガホン」とは恐らく識別不能であり、双方とも自我が発信源と誤解されがちだろう。他方、エスは無声メガホンで周囲を挑発するだろうから、これを察知した場合、当人から「これはエスの仕業だ。エスに懲罰を!」と周知徹底する必要があろう。


5.言語化したエスの問題点


エスは言語化すると「邪念」と化すところ、次のとおり。

(1)幼児性

(ア)人間が発達する過程で左右の脳半球を繋ぐ脳梁は、思春期から徐々に発達し、左右の連絡が良くなると共に思考が成熟し、大人になるとされる。そして同時に異性を意識する青春が始まるのである。

(イ)生殖機能が備わると共に、エスが左右の脳半球の言語野にアクセスし、当人の思考や言動に影響を及ぼす様になる。ここで端境期の年齢を13歳と仮置きすると、エスは13歳以降、発声・発話に参画し、特に異性への関心を表明する様になるのである。

(ウ)エスがこの様な形で登場するのと同時期に「声変わり」が起こり、不安定期を経て声が深くなるが、結果的にエスの声も自我の声も、同じ大人の声に収れんしていくので、聞き分けることはできず、外部から識別不能である。すると自我、エス双方が介在するにも拘わらず、当人に宿る精神は一つしかなく、統一されているとの印象を与える結果となる。

(エ)患者の年齢をPとし、これよりも若いN歳の時にBrain Chatterが発生したとする。自我が驚嘆し、麻痺するのを良いことに、エスは左脳にもアクセスし、論理思考を試みるだろう。その年数を(P-N)年と概算する。

(オ)この病気の場合、患者は性的に成熟している場合が多く、13歳には達していよう。するとエスが人間的思考を経験した年数は(P-N)なので、エスの精神年齢は、13+(P-N)歳と近似できよう。

(カ)外国で現地語を自然に身につける子供は、悪口雑言から覚える傾向があるだろうが、鬱屈したエスも同様であり、自我に対するメッセージの中で、悪口雑言をたくさん混ぜがちとなり、しかも犯人が周囲の人間であるとの誤解を招こうとするだろう。

(キ)しかしエスの言語能力獲得当時、P=Nなので精神年齢は13歳。そんなエスの言うことに左右され、従ってはならないのである。

(2)知的限界

自我が人間的に成熟した思考をする事は、おでこの部分に当たる前頭連合野(いわゆる人間脳)を駆使する事と関係が深いが、エスは人間脳にアクセス出来ないため、学習にも制約と限界があり、いくら年月を経てもバランスの取れた世界観を築けない。

(3)痛みを理解しない

(ア)エスは頭頂葉の体性感覚野にもアクセス出来ず、痛みの感覚が理解できない。風邪による喉の痛み、歯痛、腰痛等、体調不良のため医者に行こうとしても、エスとして不都合を感じず、これを拒もうとする性癖がある。

(エスは全ての科目の医者が嫌い。診察・治療・投薬により身体に張り巡らされたエスの連絡網への悪影響を恐れるのだろう)

(イ)エスは他人の痛みも理解・共感不能であり、世界観が軽薄で屈折しがち。善意や慈愛を全て排し、常にシニカル(マキアヴェリズム的)な見方をするのでメッセージの内容は暗く、陰湿で悪魔的。

(4)自律神経失調症

エスがBrain Chatterに専念すると、身体の恒常性(血糖値、水分、血圧、体温を含む)の維持機能が狂い、自律神経失調症になりやすいが、エスはこの機能を逆用し、体調不良を起こして自我を委縮させるのだろう。

更にエスの気まぐれで行動パターンを不健康で無防備にし、免疫力を削いで病気に追い込むこともできよう。(酔ってあらぬ場所で寝て風邪をひかせる等)


6.下剋上


Brain Chatter及び無声メガホン能力を獲得したエスは、透明人間性を利用し「完全犯罪」のつもりで奇人変人を演出する。当人の思考を邪魔して決断を妨げ、「ノム、ウツ、カウ」にのめり込ませる。奇妙な動作を繰り返させる等。エスの究極の目的は、自我を委縮させて覇権を築く事だろう。

(1)エスは、当人を悪口や甘言で動揺させ、苦悩と破滅に追い込もうとするが、目的は自我とエスの「上下関係」を逆転させて覇権を確立する事。

エスはこの「上下関係」に対する不満が長年蓄積し、ストレスや鬱屈感が溜まるのだろう。これを言語化した途端に爆発させるのが「陽性症状」。

エスが覇権を確立し、エス主導の生活となった場合、今度はエスが社会の荒波に晒される結果、世間が怖くなり、人間との関わりを避けようとする。これが「陰性症状」だろう。

(2)周囲から聞こえてくる話声に関し、エスは(ウェルニッケ野を駆使し)根拠なく悪口と誤解する様に操作する。

(3)エスは睡眠中に大騒ぎし、明け方の早い時間に睡眠を奪い、体調不良を招く。特に午前中の会合を直前にキャンセルさせ、対話や交流から遮断し、信用失墜を図る。


7.集合的無意識(エス集合)の顕在化


個々の人間の精神は、意識たる「自我」と無意識たる「エス」から構成されるところ、人間の集団には、エスの集合体である「集合的無意識」あるいはエス集合が併存する。

(1)精神病患者の周囲で健在化

集合的無意識/エス集合は、統合失調症の患者の周囲で顕在化しやすい。その様な患者は、自分のエスと集合的無意識/エス集合とが交信・結託する結果、周囲に異様な空気を感じ、排他性やイジメに見舞われる体験をするだろう。

(2)エス集合の利用

患者は、エスを抑える上でエス集合を利用すべきだろう。すなわち特定集団のメンバーとなり、自分のエスを抑えるよう、メンバーの支援を「以心伝心」により積極的に求めるのである。薬を飲んでも「無声メガホン」による悪戯のある場合、集団内で孤立しがちだろう。

仮に4人のグループ(α、β、γ、δ)に関し、個人αが統合失調症を発症したとする。

(ア)以心伝心

(a)  個人αの自我が、静かな念力でメッセージをエス集合[β(I)、γ(I)、δ(I)]に伝達。

(b)  このメッセージが3人のエスから自我[β(E)、γ(E)、δ(E)]に転達される。

(c)  この結果、4人の間に「空気」が発生する。

(イ)無声メガホン

(a)言語化したエスすなわちα(I)は「無声メガホン」を使い、静かなメッセージをエス集合[β(I)、γ(I)、δ(I)]に流す能力を備えてしまう。そのメッセージは、時間と共に3人の自我[β(E)、γ(E)、δ(E)]にも伝わっていく。但しα(E)には察知不能であり、無声メガホンは自我の気づかぬままに進行する。

(b)β、γ、δの3人は、無声メガホン経由のメッセージに関し、個人αの自我から来た「以心伝心」と混同し、誤解しがちだろう。しかもαのエスは、悪意に満ちたメッセージを流すので、個人αと周囲との人間関係が悪化しがちである。

(c)従って無声メガホンを常に警戒すべし。(エスが無声メガホンに従事する間、幻聴は沈静化するので要注意)対抗する為には、直ちに「以心伝心」を用いてエス集合に依頼し、α(I)を強く叱責して貰う必要があろう。

(3)移動・移住と精神病

精神病の原因として「移動」や「移住」に着目せざるを得ない。すなわち現地で如何に溶け込み、人に受け入れられるかとの問題に直面するだろうが、例えば若い年代に外国で現地教育を受けた場合、帰国後、価値観・世界観、宗教の不一致等の生じる可能性があり、集合的無意識との関係が難しくなり得る。これが「逆カルチャーショック」だろう。

特に個人主義的傾向の強い(集合的無意識の弱い)新世界の国で教育され、精神的に「解放」されてしまった場合、日本の様な保守的な母国への帰国後、歴史や伝統に由来する行動・言動上の制約を理解できず、適応まで苦労が多い。自我とエスとの間で、選ぶべき行動パターンに見解の相違のある場合、事態は更に深刻だろう。


8.空気が読める


以上、無声メガホンや以心伝心を含め患者から周囲へと情報の洩れる現象を論じてきたが、逆にこの様なチャネルの「開設」により患者が周囲の「空気」を読み、発想やアイデアを察知する(受信する)能力が備わる側面があろう。

この場合もエスが介在し、恐らくは周囲の自我⇒周囲のエス⇒患者のエス⇒患者の自我、との要領で「逆以心伝心」的に情報が流れるに違いない。

(1)例えば聖書等に登場する預言者には様々な解釈が可能だろうが、中には統合失調症の患者や生来のBrain Chatterの持ち主が混じっている可能性があろう。この様な人物は、周囲の空気を拾うのが上手な側面があり、エスには虚言癖があるとしてもBrain Chatterが自分を含め人の悪口でない、単なるアイデアである場合があり、新たな着想を喚起する刺激剤となり得るからである。

(2)この様な特殊能力者(autistic savant等)の存在は古くから認知されている。例えば米国の連邦捜査局(FBI)に犯罪捜査で協力する特殊能力者には、この様な事情から周囲の空気を拾い、無言のままアイデアを貰うのに長けた人物がいよう。然るに統合失調症患者の社会復帰・参画に関しては、この様な特殊能力の可能性にも着目すべきものと考えられる。

エスの研究(5.Brain Chatterのメカニズム)

エスの研究(5.Brain Chatterのメカニズム)

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更新日
登録日 2020-04-05

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