バレンタイン
甘やかしてほしいから、きょうだけはあの子を殺してあげられる契約を、結びました、僕の世界で。死んでしまうことに気づくまで、誰ももとめてはいなかった、特別な日を、僕らは最終手段として、愛を理由に制定した。あの子が料理したチョコレートの量と、僕が食べたチョコレートの量は、平等ではなくて、世界中のどこかで、甘やかされなかった人のチョコレートは捨てられて、動物が理性を持とうとするとき、僕は好きな人のことを考えていた。かわいくなりたかったから、舐めた、手に垂れたチョコレートは、味がしないことになっていて、それでも、きみのことを思った、ゆびが溶けてしまいそうだった。ほんとうはあの子の手垢のついた、クッキーが食べたい。美しい人の美しくないものを、食べることで、僕は美しくなりたい、そんな日。僕はあの子のことを殺しながら、きみに恋していて、とてもつまらなくて、どきどきしています。
バレンタイン