(2020年〜連載中)本編②TOKIの神秘録一部「望月と闇の物語3」(海神編)

ごぼうかえる

(2020年〜連載中)本編②TOKIの神秘録一部「望月と闇の物語3」(海神編)
  1. 一話
  2. 二話
  3. 三話
  4. 四話
  5. 五話
  6. 六話
  7. 七話書き途中……

望月家の物語三話目です!
後悔の感情はなかなか消えない。
魂がきれいにならない。
しかし、あの男にはその感情がない。
なんで、あの人は私たちのために苦しんでくれないの。
なんで、あの人のが先に消えるの?
どうして……。
ジャパニーズファンタジー2020。

一話

凍夜(とうや)から逃げたルルと憐夜(れんや)は夜の世界をひたすらに走っていた。この世界は赤い空に砂漠ではなく、明け方になりかけている空に木々が乱立する森の世界だった。
「……はあはあ……なんか同じとこをグルグル回っている気がするよ……」
ルルが憐夜に不安な表情を向ける。
「薄暗いからよくわからないわね……」
憐夜は困惑していた。
ルルが現世の神であることを知っているため、逃げられるのが「Kの使い」であり、霊である自分だけなのはわかりきっていた。
憐夜は「Kの使い」であって「K」ではない。おまけに「特殊なKの使い」でもないため、ルルを連れて世界から離脱するのは不可能だった。
つまり、憐夜と明夜以外、この世界内をずっと逃げ回らなければならない。
気がつくと黒い人影がたくさん現れていた。人影はゆっくり不気味に揺れながらルル達の方へと迫ってきている。
「それから、なんなの? こいつら!」
憐夜は半泣きで後退りをしつつ、叫んだ。
「これは……厄だよ。黒く染まった負の人間の感情だよ。人型をしているから人間の。私は厄避け神だからわかるの。憐夜、私の後ろに……」
ルルは憐夜を後ろに回すと、手を前にかざした。
ルルが手を前にかざした刹那、まわりの黒い人影が弾けるように消えていった。
「なに!?」
「……厄を浄化したの」
憐夜の驚きの声にルルは冷静に答えた。
「すごい……」
「とにかく、逃げよう!」
ルルが憐夜の手を引いて逃げようとした時、憐夜の「待って!」という声が響いた。
「……!? どうしたの?」
「言わなきゃいけないことがあるの……あのね……」
憐夜が先程考えていた内容を口にしようとした刹那、銀髪の、やたらと髪がトゲのように立つ男が音もなく現れた。
「……っ! えーと……誰だっけ……」
「さっき会った……」
憐夜とルルが蒼白のまま、名前を思い出そうとしていると、横から鋭い声がかかった。
「竜夜!! 待て!」
茂みから出てきたのは明夜(めいや)と俊也(しゅんや)だった。
「明夜さんと……」
「あー、えっと俊也です」
憐夜とルルが混乱していたので、俊也はとりあえず自己紹介だけをした。
「俊也さん……」
「出会って早々に竜夜がいるとは」
明夜は眉を寄せつつ、憐夜とルルを背に回し、折れた刀を構えた。
竜夜の瞳には何も映っておらず、ただこちらを睨み付けていた。
「竜夜、見逃してくれない?」
明夜が頬に汗をつたわせながら尋ねる。
「……見逃しはしない。お前らはお父様を裏切った」
竜夜は睨み付けながら、憎しみの感情がこもる声で言った。
「戦ったら勝てないんだ。だから見逃してくれ」
明夜はさらに言葉を重ねる。
「見逃せるわけないだろ。裏切り者」
竜夜はさらに鋭い視線でこちらを見据えていた。
「まずいな……どうする? あ! 俊也、盾になってくれ」
「え!?」
明夜は俊也を引っ張ると、一番前に押し出してからゆっくり後ろに退いた。
「ち、ちょっと! 僕に死ねと!?」
「違う違う。今、君が望月家の一番上。凍夜は君を殺さない。だから安全なんだ。逆に」
「ああ……漫画とかで女の子の盾になるってこういう気持ち……」
俊也は怯えながら明夜に引っ張られていく。
確かに竜夜は襲ってこなかった。
「竜夜、何してるの? さっさとやっつけなさいよ」
ふと、少女の声が明夜達の後ろから響く。
「……?」
恐る恐る後ろを振り返ると、銀髪の少女、猫夜(びょうや)がいた。
「げ……」
明夜が顔色を青くした時、猫夜は憐夜(れんや)を呼び寄せた。
「憐夜、何してるの? 契約を結んだでしょう?
こちらで手伝ってちょうだい」
「や、やだ」
憐夜は首を横に振り、否定。
「やだ? それは通らないわよ。契約を結んだんだから」
「なんなの? その、モノを扱うみたいな契約!」
憐夜は猫夜に怒りをぶつける。
「あなたは『Kの使い』なんだから契約を結んだら従うのが当たり前でしょう?」
「当たり前じゃないよ。私達は人形じゃない。使いは様々だけれどね、人間は特に個々がある。だから、従わなくてもいい。平和を願う『K』が服従なんてさせないよ。普通」
憐夜の言葉に猫夜は眉を上げた。
「あなたを見てるとイライラする。あれだけお父様に壊されて……まだ歯向かうの?」
「歯向かう? 違うよ。普通のことを言ったのよ。ねぇ、自分はできない選択だから悔しいの?
そうなの?」
憐夜の挑戦的な目付きに猫夜の怒りは頂点に達した。言われたくない事を沢山の人がいる前で言われた、父に殴られ叩かれて泣いていた憐夜から、そんなことを言われたのはかなり屈辱だった。
「お父様にお仕置きしてもらいましょうか? 鞭じゃすまないわよ。憐夜」
猫夜の凍りつく発言に憐夜は体を震わせたが頭を横に振り、息を吐く。
「大丈夫。皆が守ってくれる……。私はひとりじゃない。お兄様もお姉様も仲間もいる。だから……あなたには屈しない」
「……っ」
憐夜の真っ直ぐな目に猫夜は言葉を失った。
「……どうして……なんで? あなた……お父様に殴られただけて泣き叫んで土下座してたじゃない!
みっともなく、『ごめんなさい、許してください』って……」
「そうだったわね。でも、今は違うわ。怖い気持ちはあるけれど、仲間が沢山いるから平気」
憐夜は呼吸を整えて猫夜を睨み付けた。
「このっ……お父様に捕まってしまえ! 竜夜! なにしてんのよ! さっさとやれ!!」
猫夜が荒々しく竜夜に命令する。
「お父様の命令に反してしまうだろ。お前こそ、当主を殺せばどうなるかわかるよなあ?」
「……ちっ。わかったわよ」
竜夜の発言に猫夜は酷く冷たい顔をし、ゆっくり憐夜達の場所へ歩いてきた。
明夜達は猫夜の能力を知らない。なぜ、丸腰のまま敵である彼らの方へ歩いてくるのかわからなかった。
気がつくと猫夜がいなかった。
「……? どこいった?」
明夜が焦った声を上げた刹那、前にいた俊也から殺気を感じた。
明夜はなんだかわからないまま、慌てて俊也を離し、後ろに後退した。
「いっつっ……」
後退した直後、明夜に鋭い痛みが襲う。肩先から生温かいものが手首に流れ落ちてきた。
「血!? 斬られた!」
明夜は肩先を押さえて動揺した顔を俊也に向ける。
俊也は
「竜夜、崩したよ」
と微笑んでいた。
「……猫夜だわ! その俊也さんは猫夜!!」
憐夜が叫び、ルルと明夜は慌てて俊也から離れる。
すると、いつの間にか小刀を持った竜夜が明夜の目の前にいて、懐(ふところ)に入ってきた。
「……まずい!」
明夜が折れた刀で竜夜の小刀を弾く。
その時、突然明夜達は動けなくなった。
「な、なんだ!?」
「影縫いだよ。明夜。竜夜が影縫いの術をかけた」
俊也に扮した猫夜が勝ち誇った顔で笑った。
「うう……動けない!」
ルルも金縛りにあったかのように動けなくなった。
「……皆!」
憐夜だけはなぜかかからなかった。よくみると憐夜の足元に、もうひとりの俊也が呻きながら横たわっていた。おそらく、こちらが本物で竜夜は俊也がいるために、憐夜の影に針を投げて縫い付ける事ができなかったのだろう。
「憐夜! ひとりで逃げて!」
「みんなは?」
「いいから!!」
ルルの叫びに憐夜は慌てて世界から離脱を始める。彼女は「Kの使い」であり、霊なため、自由に離脱できる。ここで移動できないのはルルと俊也だ。彼らは現世を生きる者達であるため、「K」か彼らを連れていける特殊な「Kの使い」でなければ離脱できない。
ルルはそこまではもちろんわかってはいなかったが、憐夜を助けるべく、そう言った。憐夜が捕まれば先程の猫夜の恨みにより、酷い暴行を受けそうだったからだ。
「追いなさい。なにしても構わないから連れ戻して」
猫夜は怒りを押し殺した声で三人組の人形を出すと、命じた。
三人組の人形は小さく頷くと離脱した憐夜を追って去っていった。

※※

一方で拘束した鈴を抱えて弐の世界をさ迷っていた千夜(せんや)と狼夜(ろうや)の前に、突然にトケイが出現した。先程、猫夜の人形が飛ばしたトケイがここに現れたようだ。
「……っ!」
別の世界に身を隠す予定だった二人は慌てて立ち止まる。
トケイは鈴を見つけると足についているウィングを回して襲いかかってきた。
「なんだ!?」
狼夜が戸惑いの声を上げる中、千夜は狼夜を掴み、素早く方向転換して逃げ始めた。
「……時神弐現代神(ときかみにげんだいしん)鈴が排除すべき者になっているようだ。とにかく、逃げるぞ」
千夜は感覚を研ぎ澄ませてトケイからの攻撃を間一髪で避けながら進む。
トケイはしつこく千夜達を追い回していた。正確に言えば鈴を。
「狼夜、どこかの世界に一度落ちるぞ」
「はい」
狼夜が千夜に返事をした刹那、千夜が眉を寄せた。
「どうしました?」
「更夜の気配がする」
「では、そちらに……」
千夜の一言に狼夜が答えようとした刹那、トケイの切り裂くような回し蹴りが飛んできた。
「速いっ……」
狼夜は千夜を守り、トケイの足を受け流す。
「……お姉様、更夜お兄様がいるのなら鈴を連れて逃げてください。こいつは俺がいったん抑えます」
トケイは千夜が抱えている鈴目がけて攻撃を加えるが、狼夜が必死で受け流した。
狼夜は防御ではなく、受け流す術を持っているらしい。今もトケイの回し蹴りを手で撫でるように受け流し、回転がついたトケイは止まれずに上に舞い上がっていた。
「狼夜、頼んだ」
千夜は鈴を抱え直すと一直線に更夜(こうや)達がいる世界へと落ちていった。
トケイが追おうとするが、狼夜に体の軌道を変えられ、勢いで横に飛ばされた。
「少し柔術まがいのをやっていたんだ。……ちっ」
舌打ちした狼夜の顔が歪み、頬に切り傷が現れる。狼夜はつたう生温かい血で斬られたと気がついた。
「風圧で頬を切りやがった……こいつ」
狼夜の睨みも効かず、トケイはいなくなった鈴の気配を探している。
「俺は眼中にねぇのかよ」
狼夜はトケイを好戦的な表情で見据え、意識の集中を始めた。

二話

千夜は鈴を抱えながら高速でどこかの世界に落ちていった。
世界に入ると重力がかかり、飛んでいた者は落ち始める。
「……更夜はいるか?」
千夜は落ちながら辺りを見回した。ここは凍夜に犯された、赤い空に黒い砂漠の世界だった。
千夜は鈴を抱えつつ、音もなく砂漠に着地する。
「お姉様……と鈴!」
ふと男の声が聞こえた。千夜は更夜だとすぐに気がついた。
「ああ、更夜、鈴を捕まえたが少々厄介なことになってな……」
「はい……とりあえずご無事で良かったです。ここには実りの神と海神がおります」
更夜は鈴を気にしている感じだったが、気を失っている鈴に対して騒ぎ立てるのもおかしいので黙っていることにしたようだ。
とりあえず、更夜は千夜を促しつつ砂漠の山を登った。登った山の反対側に降りると、座り込んでいるメグと困惑しているミノさんがいた。
「姉が来た。少々厄介な事になったようだ……」
「厄介?」
更夜の言葉にミノさんは眉を寄せる。
「ああ、鈴を捕まえたが、なぜかトケイが突然に現れて、鈴を狙ってくるのだ。今は狼夜がなんとか抑えている」
千夜は手短に話した。
「アイツがこんな近くにまた出てくるとは……」
ミノさんは頭を抱えつつ、震えた。
「また……とは?」
千夜はいままでトケイがここにいたことは知らない。
「ええ、先程まで彼はここにいたのです。まあ、話すと少々長くなるのですが……」
更夜は要点だけ軽く伝えた。
「なるほど……複雑だな。サヨの中でエネルギーとして溶けていたものを形にしただと。聞いたことがないな。それでそれをトケイが元に戻しに来たと」
千夜は眉を寄せたが一応納得したようだった。
「はい。それよりも、狼夜にトケイを任せるのは心配です。加勢に行った方がよろしいでしょうか?」
更夜は赤い空を睨む。千夜は今にも飛び出しそうな更夜を抑え、
「……いや、まだ動かなくてよい」
と言った。
「何かお考えが……?」
「狼夜はお前が考えているよりも遥かに強い。どこで稽古をつけたかわからぬが、あのトケイを受け流す技を持っていた。そういえば、タケミカヅチから刀神を渡されるほどの使い手。呪縛のない状態なら、おそらく一番強い。追加で彼は呪縛のかかった状態でお父様に攻撃をしている。精神力ともにダントツで強い」
「……そうでしたか。では、メグが落ち着いたらお姉様の術を先に解きましょう」
更夜が提案するが、千夜は首を傾げた。
「待て、アヤがいなければ……」
千夜が言いかけた時、
「問題ない……」
と、メグが答えた。
「平気なのか?」
「もう、大丈夫。落ち着くまで待ってくれてありがとう。千夜さん、実はアヤは関係がない。猫夜を騙すためにああ言ったにすぎない」
メグは呼吸を落ち着けると再び、言う。
「今から千夜さんの中に入る。千夜さんは鈴を守っていてほしい」
「ああ、そうか。私自身は中には入れんからな」
千夜は気を失っている鈴を背中に回し、いつでも逃げられる体勢をとった。
「ミノさん、更夜、行くよ」
メグの掛け声に二人は深く頷いた。
「弐の世界の管理者権限システムにアクセス……『介入』」
三人は千夜の中に入り込んで行った。

※※

暗闇。
メグ達が立っていたのは毎回見る、あの屋敷の前だ。ただ、今回は闇夜。月がない真っ暗な夜だった。山の中なので、得たいの知れない獣の声がする。
「うまく入れたみたいだな」
更夜はメグに確認を取った。
「うん。千夜の過去のよう」
「で、どうすんだよ」
ミノさんは不安げな顔をメグに向ける。
「千夜に接触する。手順は変わらない」
「そうか」
ミノさんの声を最後に三人は黙って千夜が来るのを待った。しかし、いくら待っても千夜は現れない。
「……お姉様は屋敷の中にいる」
「え?」
ふと小さくつぶやいた更夜にメグとミノさんは同時に声をあげた。
「わかる。姉の気配は忍として未熟だ。まだ、子供だろうからな」
「……では、屋敷に入るしかなさそう。一回目は接触できずに失敗する可能性が出てきた……」
メグの言葉を更夜は首を振って否定した。
「いや、この時の姉は弱い。今も気配がおかしいくらいにぶれている。俺も含めて当時の兄弟達は皆、泣いて助けを呼んでも誰も来なかった。皆、助けを叫んでいたのだ……。……いくぞ」
更夜はメグ達に目配せをすると素早く飛び出していった。
「お、追いかけるか?」
「うん」
ミノさんの問いに小さく頷いたメグは更夜の背中を見つつ、追いかけた。ミノさんも後に続く。
裏口の扉を静かに開け、暗い廊下に入り込む三人。障子扉の部屋の内の一部屋のみ蝋燭(ろうそく)の灯(あか)りがともっていた。
「……メグ、キツネ耳、影を映すな。見つかるぞ」
更夜の鋭い声音(こわね)にミノさんの肩が跳ねた。ミノさんの影の一部が障子扉に映る前に引っ込む。
廊下は恐ろしいくらいに静かだった。
「あなた達、やっと来たわね」
ふと、後ろから消えてしまいそうな女性の声が聞こえた。
ミノさんの肩が再び跳ね、声にならない悲鳴がミノさんの心で反響した。
「お母様」
更夜は吊り上げていた眉を戻し、佇(たたず)む女を見据えた。
女は最初に会った時よりも若く見えた。
「千夜は……泣き叫び助けを求める。この時の私は弱くてヤツに文句の一つも言えなかった。怖かった。だから耳をふさいで震えたまま、涙を流して怯えていただけ」
女は歯を食いしばり、蝋燭が揺れる障子扉の奥を睨み付けた。
「……私達がお姉様を助けますので、お母様はお気を確かに」
更夜に言われ、女は目に涙を浮かべながら安堵したように頷いた。
こちらの世界の女はまだ、若い娘のようだった。もしかするとサヨと変わらない年齢なのかもしれない。
「……せつないな」
ミノさんは小さくつぶやく。
死後の世界とはいえ、過去を見ているとはいえ、この女にはこれから不幸しか降りかからない。
誰からも守ってもらえることもなく、ただ涙と血を流すだけ。
元々が捨て子だというのだから、さらに救いようのない人生だ。
自分の血を分けた子供が幸せになることを許されず、暴力により狂い、兄弟同士で傷つけ合い、殺しにまで発展する。
どんな気持ちだったのだろう。
考えるだけで苦しくなる。
「……この障子扉の先に千夜と凍夜がいるということでいい?」
メグが女に感情なく尋ねた。
メグも負に染まらないように必死だったのだ。
「ええ」
女は短く言うと更夜に抱きついた。女は震えていた。
更夜は静かに母を抱きしめ、頭を撫でてやる。
「大丈夫です。もう、大丈夫」
「……私は……はじめから……怖がりなの」
「大丈夫。私達がいます」
更夜は母に声をかけ続ける。あの時の自分が母を安心させられる人間だったらどれだけ良かったかと思いながら。
「……凍夜が……なんか話してる」
メグのささやきで一同は再び顔を引き締めた。

三話

「千夜、剣術で他の望月に負けたのは何回目だ? なまけすぎだ。俺に恥をかかせたいのかな」
凍夜の冷たい声が千夜を突き刺している。
「……完全に力負けを……」
「力負け? 笑わせる。本気で殺しにいかなかっただけだろう」
メグ達の耳に凍夜の感情のない声が聞こえ、渇いた破裂音が響く。
「うっ……申し訳ございません」
その後、千夜のうめき声が流れた。風を切る音と皮膚を打つ渇いた音が何度も障子扉ごしに響いてくる。
「……凍夜がお姉様を鞭で打っている。いつもの仕置きか……。凍夜は鞭が好きだ。的確に痛めつけられる上、そんなに疲れないからな」
更夜は目を細め、つぶやいた。
「あいつ、本当にクズだな」
ミノさんはいらだちを表に出していたが、なんとか抑えていた。
弾く音が聞こえる中、千夜は声すらあげない。代わりに凍夜の声はよく聞こえる。
「しかし、お前は痛みに強いな。忍としていいことだ。捕まっても口を割らない良き忍になれる。そろそろ上の拷問の練習にいくか。仕置きと訓練が同時にできるのは時間の無駄がはぶけていいな。そうは思わんか?」
「……はい。そうですね。……どうなさるつもりですか?」
千夜は恐ろしいことに平然と凍夜に答えていた。
「一段階上げよう。庭の焚き火を使おうか」
「……っ」
廊下側ではない向こう側の障子扉が開け放たれ、明るい火の影がゆらゆらと揺らめいていた。
火に照らされた千夜と凍夜の影がメグ側の障子扉に映った。凍夜は庭の焚き火に入っていた細長い棒を取り出した。肉を焼くようなにおいがメグ達の鼻をかすめる。
凍夜は熱した鉄をそのまま素手で持っていた。凍夜に痛覚がないのか平然と棒を握っている。
「さあ、これだ。仕置きが一段階上がったな。とりあえず尻辺りからいくか」
「……」
凍夜の楽観的な声とは逆に千夜の息を飲む音がした。
「まあ、痕が残るが問題はない。お前には『子を産む力さえあればいい』。その他に使えるところはないからな」
「……」
凍夜の残虐な言葉にメグ達も言葉を失っていた。
……千夜は……こんなことを言われていたんだ……。酷すぎる。
「酷すぎるぜ……。本当にあいつには人の心がねぇのか……」
ミノさんがつぶやいた刹那、千夜が初めて嗚咽を漏らした。
「……許してください……。それっ……それだけはっ……」
「諜報に失敗して捕まった忍が、謝罪すれば許してもらえると思うか? そんなわけはねぇだろ? なあ? それにこれは俺がお前にする仕置きだ。お前は俺に口出しできる立場ではない。やるかやらないかは俺が決めるのだ」
「……いやっ! やだ! 誰か……おかあさん! おがあざん!! 助けて! だずげでー!」
千夜が泣き叫びながら障子扉にすがろうとした刹那、障子扉を勢いよく開けてメグ達が飛び出した。
「……?」
急に開いた障子扉から現れた三人組を千夜は涙を流しながら見上げた。
「お姉様、助けに来ました」
「……たす……け?」
更夜は幼い千夜を素早く後ろに回すと凍夜を睨み付けた。
「……誰だ? ずいぶんと俺に似ている」
凍夜は興味深そうに更夜を見ていた。
「……未来から来たお前の息子だ」
更夜は刀の柄に手をかけながら静かに言い放つ。
「ふっ……変なやつだな。その娘は俺のだ。返していただこう」
「お前はお姉様の心から消えろ」
「……更夜、感情を抑えて」
いらだちを見せている更夜にメグがささやいた。
「すまぬ……」
小さくあやまった更夜を上から下から眺めながら凍夜は含み笑いをしていた。
「お前は強そうだ。お手並み拝見といくか」
この時の凍夜はかなり好戦的だったようだ。まだ若いからか。
以前のように退かず、当たり前のように刀を抜いた。先ほど平然と持っていた鉄の棒を再び焚き火に置くと、刀を構え直した。
「千夜、よく見ていろ。剣術は型にはまらぬ方が良いのだ。……ははは!」
狂気的に笑った凍夜は関節をならしながら更夜に攻撃を仕掛け始める。
「……っ!」
凍夜は関節を外しながら自分の間合いを広げ、更夜に斬りかかってきた。
「……」
更夜も関節を外しながら凍夜の刃を避けていく。
「なんだよ。あいつら、関節を外しながら動いてるぞ……」
ミノさんが青い顔で小さくつぶやいていると、幼い千夜が訝しげにこちらを見ていた。
「……あなた達は誰だ?」
千夜は子供らしい声の高さで背伸びするように尋ねてきた。
「え? ああ、助けに来たんだよ。なあ?」
ミノさんは尋ねられてから、慌ててメグに助けを求める。
「……ええ。あなたを助けにきた。更夜に加勢するつもり。あなたも、怖いと思うが、お父さんに立ち向かってほしい」
メグは幼い千夜の頭を優しくなでながらそう答えた。
「……立ち向かう……。お父様は怖い。私は勝てないと思う」
下を向いた千夜に、メグは目線を合わせるように腰を落とすと口を開いた。
「それは協力者がいれば別。勝てないと思っているならば、協力者に頼ること。あなたはひとりじゃない」
「ひとり……じゃない……」
メグの発言に千夜の目から涙がこぼれ落ちた。
「そう、ひとりじゃない」
「誰も助けに来てくれなかったのに……諦めていたのに」
千夜は嗚咽を漏らしながらメグに手を伸ばした。メグは千夜の痩せた体を強く抱きしめ、声をかける。
「つよくなんて、ならなくていい。あなたは、もうじゅうぶんつよい」
メグの言葉に千夜は子供らしい子供に戻っていく。千夜の涙がメグの肩あたりをだんだんと濡らしていった。
「私は男にならないといけないの。男の忍になるために……軽くなるために食事も抜いて、日々戦って強くなって、大人に勝てないといけないの。夜も寝てはいけないのよ」
「辛かったんだね」
「うん」
千夜が千夜ではないみたいだ。こちらの千夜が本当の千夜なのだろう。
「女の子の言葉を使うとお父様から叩かれるの」
「もう叩かれなくてもいいんだぜ」
ミノさんが耐えきれずに千夜の手を掴んだ。
「おたくの弟はすげぇ強い。だから、それに甘えながら、おたくが自由を掴むんだ!」
「……お父様に向き合ってみろってこと? あたし……怖いわ」
千夜の本性は弱々しい少女のようだ。
「大丈夫だ。おたくにはあの男がいるから」
ミノさんは息切れすらしていない更夜を指差した。 お互いに攻撃を仕掛けている凍夜と更夜だが刀がぶつかり合うことはない。
どちらも関節を外して、あり得ない方向から攻撃を避けている。目には見えないが、何か忍術をお互いにくり出しているようだ。
「やっぱ忍者だな。速すぎて何をしてるのかわからねぇ」
「……お父様が影縫いをかけるために針を放つが、相手が針が刺さる前に移動。お父様は次に糸縛りをかけようとするが、相手が糸を刀で斬る。お父様が催眠術をかけようとするが、相手にはなぜか効かない。みたいな感じをやりながら剣術をしている」
千夜にはすべてが見えていた。
「……見えるのか……」
「見える」
千夜が頷いた刹那、凍夜が口角を上げながら口を開いた。
「千夜、この男の隙をついてみろ」
凍夜は千夜に、更夜の隙を見つけて攻撃しろとの命令を飛ばした。
「え……」
千夜は戸惑った。助けてくれた自分の弟だと言う彼を攻撃しなければならないのか。凍夜の意図はわかっている。更夜は千夜に攻撃できない。そこを狙えと言っているのだ。
「千夜、お前に自由はない」
「自由はない……」
千夜が再び絶望へ落とされかけた時、千夜の母が飛び出してきて必死に叫んだ。
「千夜! 私も戦う!」
「……おかあさん」
「諦めないで!」
二十歳を超えたばかりの若い母は、体を震わせながら凍夜を睨み付ける。この時の彼女は凍夜という夫が心底怖かった。優しくされたことはなく、千夜が産まれたのも無理やりだった。
人数を増やすための家畜だと言われて、昼夜暴行され、泣きながら毎日を生きていた彼女には立ち上がる勇気はなかったのである。彼女達は時代により頭である男に従う以外に生きるすべはなかったのだ。
「わ、私は戦う! 千夜は?」
「……あ、あたしは……」
「千夜……こんな時代だけど、一緒に自由を掴もう?」
母はいつも優しく千夜を見守っていた。千夜が心をなくしてもずっと千夜をかばっていた。
「……自由……お父様を殺すことが自由なの? あたしはお父様を殺したくない。誰も殺したくない」
千夜の悲痛な声に皆、顔をしかめた。更夜も凍夜と死闘をしている。殺しにかからなければ殺されるのだ。凍夜には何を言っても意味はない。
「他に呪縛を断ち切る方法を考えないと。千夜は優しいから」
メグが凍夜の動きを見つつ、考える。凍夜は更夜の刀をぎりぎりで避けながら千夜を急かしていた。
「はやくしろ。忍に迷いはいらんぞ。お前はただ、操り人形のように動けばいいのだ。今動けば仕置きをなくしてやる」
「……」
千夜は凍夜の言葉に感情が揺れていた。今をとるか、絶望かもしれない未来をとるか。
「お姉様、ここでこの男を捨てなければ、後々にあなたは私達と共にかわいい妹を殺してしまうことになる。……簡単なことです。この男に逆らってください。この男を捨ててください」
更夜は刀を構え直してから、背中ごしで千夜に言う。千夜は涙と鼻水で顔を汚しながら頭を抱えた。
「望月の柱を捨てるなどできない」
「こいつは……この男は上に立てる人間などではありません。望月を背負うのはこいつではなく、『あなた』と『あなたの息子』です!」
更夜は語気を強めて千夜に言った。
「散々言ってくれるな。千夜は上には立てん。いくら男を装っていても女はどうせ女だ」
凍夜の嘲笑にも似た乾いた笑いが響く。更夜は息を深く吐くと凍夜をじろりと睨み付けた。
「そうか。あなたは後悔することになる。お姉様は俺達の上に立ち、あなたを追い詰める」
「ほう、千夜はそこまで成長するのか。いいことだ。では今後もしっかり教育せねばな」
更夜の睨みを流した凍夜は心底楽しそうに笑っていた。
……狂っている。
誰もがそう思った。
人の心は本当に持ち合わせていないようだ。
「千夜、このまま突っ立っているだけならば命令違反としての仕置きをおこなうぞ? 火鉄打ちだ」
「……ひっ」
千夜が恐怖で歯を鳴らす。更夜は我慢ならずに叫んだ。
「ふざけるな! そんなことをしたら死んでしまうぞ! 子供が死ぬか死なないかすらもわからんのか! このうつけ!」
「更夜! 落ち着いて!」
更夜の荒い息だけが断続的に聞こえ、メグは血走った目をしている更夜に鋭い声を上げる。
しかし、更夜は続けた。
「俺達はお前を『恨んでいる』ぞ。これからもずっと、死んでからもずっと! 絶対に忘れない。俺達の子孫もお前を許さない……。絶対に許さねぇぞ……凍夜ァ!」
「お前はそんなので忍なのか?」
凍夜は更夜の怒りを軽く流すとおかしそうに笑った。
「……お前が俺達を『残虐な忍にした』んだ。お兄様もお姉様も妹も、狼夜も猫夜もっ!」
「更夜……、落ち着いて! 記憶だから、これは!」
メグの言葉に更夜は荒い息を吐いて黙り込んだ。
「あたしの弟っていうあの人は、なんであんなに怒っているの?」
「それは家族だからだ」
千夜の疑問にミノさんが答えた。
「家族……近くの村に住む人間と同じような感覚なの?」
「……それはわかるんだな」
「うん」
「うらやましかったか?」
「うん」
千夜は恥ずかしそうに淡々とミノさんに頷いた。
「お父さんをどうする?」
ミノさんは千夜に優しく声をかけた。千夜は口をつぐみ、下を向いた。
「わからない。でも、争いは嫌」
千夜は悲しげに鞭打たれた背中をさすりつつ、言葉を続ける。
「でも……あたしは……言う」
言葉を切った千夜は息を吸い込み、気迫のこもる声で叫んだ。
「お父様はおかしい! あたしとお母様を傷つけても変わらない! 人間はそんなに単純じゃない! そしてあたし達を傷つけた罰を受けるべきだ!!」
千夜の声に凍夜はバカにしたように笑った。
「バカバカしい。現に俺に罰を与えられるやつはいない。俺の所有物に何をしようが関係ないだろう。飼い主に逆らいたくば飼い主を殺せばいい。そう教えたはずだが? 望月家はそうやって発展するのだ。この……俺の息子と言い張る奴も飼い主を殺しにきた。お前が男になるならば、俺を殺しにこい」
「……できません……。お父様だから……かぞくだから……」
千夜は控えめに涙をこぼし始めた。
「では従え。従えないなら死ね」
凍夜の一言が場を震撼させた。
千夜は息を飲み込むと決意のこもる目で言い放った。
「あたしたちは自由を掴む。従わないし、生きていたい。皆自由に生きたいはず」
千夜の声は震えていた。今までの常識を壊すのには勇気がいた。
千夜は目に涙を浮かべながら、歯を鳴らす。浅い呼吸と震えに言葉が出てこない。
「あ、あたしはっ……」
千夜が再び凍夜に自分の決意を叫ぼうとした刹那、何かが弾けるような音が聞こえた。
「……な、なんだ!?」
ミノさんは肩をびくつかせながら辺りを見回す。
「ミノさん、落ち着いて。千夜が自分から呪縛を断ち切った」
メグの発言に一同は目を見開いた。千夜は凍夜と戦うことなく、術を解いたのだった。

四話

「お姉様が自ら術を……」
更夜は少しだけ呆然としていたが、すぐに我に返り、凍夜を軽々斬り捨てた。どうやら千夜に勝たせないといけないと考えたようで、一歩のところで手を退いていたらしい。
凍夜は不気味な笑みを浮かべたまま白い光に包まれて消えていった。
「更夜……手を抜いてやがったのか……恐ろしい男だぜ……」
ミノさんが青い顔でつぶやいた刹那、辺りはいつもの真っ白な空間になった。
千夜も元の千夜に戻る。
「……術を切れたのか……。『凍夜』に立ち向かわずに」
千夜は自分の両手を見、体を見て異常がないことを確認した。
「あんたは強かったのよ。千夜……」
「お母さん……」
千夜は若い母を視界に入れ、涙ぐんだ。今までの自分を思い出して罪悪感が沸き起こる。
千夜は今まで、母を助けようとすら思っていなかった。むしろ、凍夜に壊されていく母を見下し、父に従い暴行を加えたこともある。
「お母さん……お母様……ごめんなさい。私は……」
「わかってるわ。やっと解放されて良かったわね。私はあなたを恨んだことはない。安心して」
母は軽く微笑んだ。その優しさが千夜をとても苦しめる。
「許せるわけが……」
千夜が母に手を伸ばす。母は千夜の両手をしっかり握り、抱きしめた。
「許してる。もう『どうでもいい』の。そんなこと。あなたも母親ならわかるでしょう? 千夜」
母の言葉に、千夜は産まれたばかりの時に引き離された明夜(めいや)を思い出した。
「……母親……。私は母親にはなれなかった……。明夜は……行方がわからない」
千夜は涙を堪えながら下を向いた。
「大丈夫。明夜は最初から凍夜に従っていないから。あの子は私達に灯りをともしてくれている。心優しい子」
「……会ったのですか?」
千夜は目を見開いて母の顔を見る。
「見たことはある。今は凍夜の城から逃げようとしているわ。あなたの子孫だって元気一杯な優しい子だから私はそれだけで嬉しいのよ」
「お母さん……」
母の言葉を聞いた千夜は涙を拭って立ち上がった。
「私にはまだ……やることが残っていました。今度は息子のため、子孫のために戦います……」
「それでいいのよ。千夜……。もっといっぱい食べさせてあげたかった。あなたは小さい頃の栄養不足で体が成長しなかったのよ。女の子らしい体つきに、健康的にしてあげたかったの。あなたの弟達は自分で勝手に食べていたけど、私は川で魚をとることもできなかったから……」
母は千夜に申し訳なさそうに言った。
「……お母さん、ありがとう」
千夜は母の想いを受け取り、頭を深く下げてお礼を言った。
母は軽く微笑むと今度は更夜に目を向ける。
「更夜、あなたの娘、静夜(せいや)も元気よ。彼女はあなたを恨んではいないわ。あなたの妻もこちらであなたに会いたがっている。そういえば色々と聞かされたわ。あなたは奥さんと娘に優しくしていたようね。子孫も元気よ。だから、あとはあなたのもう一人の娘を救いなさい」
「なぜ隠し子の事を……。もうひとりの娘は……鈴ですか?」
更夜は目をわずかに開く。
「そうよ。あなたは鈴を娘のように可愛がっている。あなた達が楽しそうに笑う過去をみたことがあるわ。……ちなみに、静夜達を知っているのは、会ったことがあるから」
「そうでしたか」
「あとは憐夜(れんや)ね。あの子は強い。凍夜の呪縛にはかかっていない。今も仲間と逃げている」
母の言葉に一同の顔色が明るくなった。
「良かった!」
安堵の表情を浮かべてる最中、母が白い空間に溶け込むように消え始めていた。
「お母様!」
「私はもう消える。でも最後まで見守るわ。憐夜達を助けてあげて。私は凍夜の結末をこの目で見届ける」
母はそれだけ言うと背景に溶けて消えていった。
「……負けるわけにはいかなくなった」
「そうですね」
千夜の言葉に更夜は答え、白い空間もなくなっていった。

※※

「戻ってきたか」
千夜の声が聞こえ、メグ達は我に返った。赤い空に黒い砂漠が視界に入る。
「いい気分だ。自由を感じる」
千夜は息を一つつくとメグ達の元へと歩いてきた。背中には意識を失っている鈴がいる。
「お姉様、ご無事でしたか」
更夜が代表で声をかけた。
「ああ。ありがとう。締め付けられるものがなくなった気がする。後は狼夜がまだトケイを抑えているから次は鈴の呪縛を解くか?」
「そうですね……お姉様はこちらに残ってください。私達の侵入中に猫夜が来たらとりあえず、逃げてください」
「そのつもりだ」
更夜に力強く頷き返した千夜は、メグ達を見る。
「連戦だが大丈夫か?」
「……待って。鈴の場合はもっと人数がいる……。凍夜が人ではなくなっているから。アヤやサヨがいた方がいいかもしれない。しかも記憶には猫夜がいる」
メグは眉を寄せながら小さくつぶやいた。
「そうか。なら、直接対決で術を解くしかないな……」
「お、おいおい……マジかよ……。あいつに会いに行くのか?」
千夜の言葉にミノさんの顔から血の気がひいた。
「問題ない。鈴には私達がついている。負ける気がしないのだ」
「マジかよ……」
ミノさんが怯えていると更夜が口を開いた。
「キツネ耳、もう過去に行く必要はなくなったようだ。凍夜と対峙する故、目が覚めるまで鈴を抱えておいてくれないか?」
「……そ、それならできそうだ……」
ミノさんは声を震わせながら鈴を受けとる。鈴はまだ起きる気配はない。
「……ではもう一つ、トケイはどうやって元に戻す?」
千夜がもう一つの疑問を口にした。
「……トケイは……『K』のデータ修復ができればたぶん戻る。今は『K』である『あや』がひとりで修復をしている」
「メグが『K』なら『あや』とやらの手伝いができるのか? しかし、時神アヤと同じ名前とは詳しくは知らんが深い関係がありそうだな……」
千夜が首を傾げつつ、唸る。
「関係は深い。あやのバックアップデータが時神アヤ。彼女達を守っているのが父親の健(けん)だと言われている。詳しいことはよくわからない。それよりも、狼夜を助けつつ、『Kの世界』へ向かいたい」
メグは赤い空を仰いだ。
「わかった。向かおう」
更夜が代表で深く息を吐きながら答えた。

五話

あやがいる場所に行くべく、メグ達は赤い空に黒い砂漠の世界から抜け出した。宇宙空間にネガフィルムが巻き付く場所に出た時、狼夜(ろうや)がトケイの攻撃を受け流しているのが見えた。
「ほんとだ。あいつすげぇな……」
ミノさんが目を見開いて驚いた時、
「ごたごた言ってる場合ではない。少しだけ待っていろ」
と、千夜が狼夜の邪魔をしないように近づいていた。
「お姉様」
「……狼夜、いったん逃げるぞ」
「……」
狼夜はトケイを危なげに受け流すと千夜と共に逃げ始めた。
「追うよ」
それを見たメグは自分の使い、セカイを出すと千夜達を追っていった。メグが進むとミノさん達もついてくる。
『K』は壱の世界の魂も運べる。
本来なら現世を生きる者達は弐を動き回ることはできないが、『K』がいることでそれが可能であった。
トケイは再び、ミノさんが抱いている鈴に目を向けた。トケイは速度を上げると、ミノさんに突っ込んでいく。
「うわっ! やっべぇ……」
ミノさんが殺気を感じて小さくつぶやいた。
「俺が!」
いち早く動いたのは狼夜で、メグがセカイを動かすよりも速かった。狼夜は横からの回し蹴りを手の甲で流れに任せつつ、押した。
トケイの足は微妙に軌道を変えられて、狼夜達に当たることなく通りすぎていった。止まる部分を失ったトケイはそのまま回りながら、狼夜達とはかなり離されて飛ばされた。
「すげぇ……」
茫然とするミノさんを一瞥してから、メグは先へと進んだ。
メグ達は千夜になんとか追い付き、そのまま一緒に進む。
「狼夜、大丈夫か?」
「問題ありません」
千夜は狼夜を心配したが、狼夜に体の不調はなかった。
「おたく、マジですげぇな……」
ミノさんは怯えた顔を狼夜に向け、つぶやいた。
「それより、トケイが来る。スピードを上げる!」
メグが鋭く言い、千夜、狼夜、更夜達、霊は進む速度を上げ、さらに蛇行しつつトケイをかわしていった。トケイは無機質な目でメグ達を捉え、無駄なく追いかけてきている。
「速い……」
トケイに追い付かれそうになった時、目の前に「Kの世界」があった。
「あった! 防護プログラムが解除されてる。入れる!」
メグが一言そう言って、弾丸のように真っ直ぐ「Kの世界」へ落ちていった。

※※

一方、サヨ達はこれからどうするか相談中だった。
「次はどうするよ? あたしさ、狼夜とか千夜を探せって言われて、元々ここに来ちゃったんだけど」
サヨは頭を抱えつつ、アヤ達を見る。
「トケイもいなくなってしまったし、敵対していた華夜(はなや)もいなくなったから、ここにいる意味はないわね……」
アヤは辺りを見回してから確認するように逢夜(おうや)を仰いだ。
「ああ、このまま敵の本拠地に乗り込むのも、心もとないな。やはりお姉様と狼夜に会うのが一番……」
逢夜が考えを巡らせていると、すぐ真上の赤い空から何かが落ちてくるのが見えた。
「ん……?」
「なんか……落ちてくる……」
サヨが目を凝らすよりも先に逢夜が動いていた。
「あれは憐夜(れんや)だ!」
「え!?」
アヤとサヨが同時に声を上げる。
「憐夜!」
逢夜は高く跳躍すると、憐夜を抱き止めた。
「お兄様! いた……。よかった! たまたま落ちただけで……あのね……」
憐夜が話している最中、逢夜が砂漠に着地し、アヤとサヨが近寄ってきた。
「憐夜、良かった……。って、怪我をしているじゃねぇか!」
逢夜は涙ぐみつつ、憐夜を眺めると苦痛の声を上げた。
よく見ると、憐夜はあちらこちら擦り傷を負っていた。
「お兄様! それはいいんですが、あのっ……」
「いいわけあるか!」
逢夜は厳しく言い放つと、憐夜を抱きしめた。
「いや、あの……」
憐夜はなんだか様子がおかしい。何かに焦っているようだ。
「逢夜! 上見て! 秒で!」
「なにしやがる!」
サヨは逢夜の首を無理やり上に向けさせた。逢夜の目線の先で三人組の人形が光のない瞳でこちらを見ていた。三人組の人形は憐夜を追うように、こちらに突進してきていた。
「……っ。あいつらは……」
「猫夜のドールだわね」
戸惑う逢夜にアヤが冷や汗をかきながら答える。
「……憐夜を追っていたのか……」
「お兄様、私、猫夜からすごく嫌われました。あの人形に攻撃されています」
逢夜に子供らしく伝えた憐夜は戸惑った目で逢夜を仰いだ。
「憐夜、よく戻ってきた。本当に良かった……。とりあえず、あれは俺に任せろ」
逢夜は憐夜をアヤ達に預けると小刀を抜く。
「なに、かっこつけちゃってさ、 あたしもやる! ごぼうちゃん!」
サヨはカエルのぬいぐるみ、ごぼうを出すと、逢夜の背中を半目(はんめ)で見つめた。
「……まあ、あの二人はやっぱりどこか似ているわね……」
「似ている?」
アヤの言葉に憐夜が首を傾げた。
「ええ。なんかそっくり。……私も微力だけど頑張るわ」
アヤが答えた時、逢夜が人形とぶつかる音が響いた。

六話

異様に硬い人形達の攻撃に、逢夜は苦笑した。三人組の人形はつまようじを片手に、かまいたちやら、居合い抜きやらをやってくる。
つまようじは刀のように鋭く、気を抜くと斬られてしまうくらいに硬い。
「一体どうなってんだよ……」
逢夜がため息をつくと、三人組の人形から黒い靄(もや)が出始めた。
黒い靄はやがて人型になると、四方八方から逢夜達に攻撃を仕掛けてきた。
「オイ! 増えたぞ! サヨ! 守れ!」
「えらそーに!! わかってるってば! えーと……『同調』!」
逢夜の声にサヨは悪態をつくと、ごぼうを危なげに動かし始めた。
サヨと繋がったごぼうは、視界が広がり、サヨの指示にうまく従うようになった。
「お! なんか上手くなってね?」
サヨが襲い来る人影を、ごぼうの格闘術で凪ぎ払いつつ、つぶやいた。
「……サヨって強いんだね。あんな速い攻撃を防いでる。あのカエルのぬいぐるみを操っているのもサヨでしょう?」
憐夜は小さい声でアヤに尋ねる。
「そうだわね。いつの間にあんなに動けるようになったのかしら……」
アヤはそんなことを言いつつ、自分のやるべきことを模索し始めた。逢夜は小刀一本で三人組の、強力な人形の相手をしている。手のひらサイズの人形達に力負けしそうになるくらい彼女達は強かった。
ドールのうち、ひとりが光の球体を飛ばしてきた。逢夜はなんだかわからずに、とりあえず避ける。
光の球体は弾丸のように飛び、黒い砂漠を深くえぐりながら爆発をした。
「……いっ……。なんだ、あれ……。サヨ! 妙な術を使ってくる。気を付けろ!」
「それならたぶん、ごぼうちゃんもできる! 真似しよう!」
サヨは冷や汗をかきながら、ごぼうに指示を飛ばした。
……大丈夫。やり方はわかってきた。ここは夢の世界。想像の世界でもあるんだ。だから、できると思えばできるんだ!
サヨは鋭い目を三人組の人形に向け、ごぼうを操る。ごぼうは同じような光の球体を出すと三人組の人形に飛ばした。
「あたしのはちょい違う! 追尾機能付き! どこまでも追え!」
サヨは弾幕ゲームなどによくある、自機を追尾する弾を思い浮かべた。
……できる。
さっきもできたんだ。
試しに反射神経が神がかってると思ったら、あの動きができた。
……あたし、気づいたよ。
あいつら、Kがどうやって人形を動かしているか。
なぜ、「子供」が多いのか。
夢を追っているやつらが多いからだ。
ごぼうが出した弾は三人組の人形を驚かせた。避けても追ってくる不思議な弾だ。司令塔の猫夜がいない今、彼女達はテンプレートな動きしかできない。視界が狭いからだ。弾が見えないのである。
「リンネィ! 斬って!」
三人組のドールのうち、フランス人形風な少女が、着物姿をした黒髪少女に叫ぶ。着物姿の少女リンネィは、フランス人形風な少女を追尾している光の弾をつまようじで切り捨てた。
「ムーン! 小刀が来る!」
フランス人形風な少女は、今度は茶色のパーマ髪の少女に叫ぶ。
ムーンと呼ばれた茶色のパーマ髪の少女は、空気を切り裂くように凪いできた小刀をつまようじで受けた。
「シャイン! 手助けするでござい!」
逢夜の刀をつまようじで弾いているムーンが、フランス人形風な少女、シャインに叫び返した。
現在、彼女達は司令塔の猫夜がいないため、代わりにお互いの危険を知らせあっているようだ。
「リンネィ、一発やって!」
シャインが着物姿の少女リンネィに一言言うと、シャインはつまようじよりも強力そうなファンタジーの武器を出して、逢夜に斬りかかっていた。
「ぐっ……」
逢夜が装飾品のついた剣を、小刀で受け流す。しかし、相手方の力が異常だったため、押し負けてしまい、肩を薄く斬られてしまった。
「私も、なんとかしないと……」
ひとり、戦況を見守るアヤは、逢夜が危険になったらすぐにでも時間を止める準備をした。
人形は疲れないのか、激戦にも関わらず、疲れを見せていない。
だが、なぜだろう。すごく辛そうに見える。
三人組の人形はまたも、黒い影を出現させた。それを見たサヨはごぼうを操り、黒い人影を切り裂いていった。
「アヤさん、お人形さん達、辛そうね」
アヤの影に隠れていた憐夜が、アヤに小さくつぶやく。アヤにもそう見えた。猫夜は「K」の理を外れている。もしかすると、外れた猫夜に従うのが辛いのではないか。
「……憐夜、ちょっと彼女達に話しかけてみる?」
アヤの突然の問いかけに、憐夜は驚いて目を見開いた。
「話しかけるって?」
「どう思っているのか聞いてみるってこと」
「……どう……思っているか……」
憐夜は拮抗して戦う両者をそっと見据えた。

七話書き途中……

「お、お人形さん達!」
憐夜はとりあえず、声を張り上げてみた。アヤは突然に憐夜が声を上げたので、やや驚いた。
「ちょ、ちょっと! まだ心の準備が……。何を話すのかも決めてないし!」
アヤが制止するも、憐夜は続ける。
「猫夜が……、猫夜があなた達を苦しめてる。あなた達は、平和を愛する『K』の使い。猫夜を止めたくない?」
憐夜がそう尋ねると、人形達は素直に手を止めた。それにより、サヨ達も攻撃をやめる。
「なんとか……なんとかしてくれるでごじゃるか?」
人形の内の一体、和装のリンネィが代表で憐夜に言葉を発した。同じ、『Kの使い』である憐夜の言葉に反応したようだ。
「なんとかなるよ。私達を見て。視野を広げて! 私達は猫夜に敵対をしていないでしょ。むしろ、助けたいよ」
「裏切り者の『K』を倒すのではないのでごじゃるか?」
不安げなリンネィに憐夜は無垢な顔で頷く。嘘偽りない顔だ。人形は元々、子供のオモチャだ。子供の心には素直に反応を示す。
「『K』も『Kの使い』も争いは好まない。だから、争いたくない。私達と猫夜を止めよう?」
憐夜の言葉に誰もが息を飲んだ。
「争いは猫夜を止める段階で、おそらく起きるでごじゃる」
リンネィは残りのふたりを見ると、そう答えた。
「……それは止めるため。向こうが攻撃してきたら、もちろん守る。でも、よく考えて、私達がここで争う理由はある?」
「……」
三人組の人形は黙り込んだ。
「……ないわね」
三人組のうち、フランス人形っぽいシャインが小さくつぶやく。
「……では、どうすればいいのでござい?」
パーマをかけた髪をした人形、ムーンが困惑ぎみに尋ねてきた。
「それは、サヨの使いになる」
「なっ!?」
憐夜の言葉に、三人組の人形と共に、逢夜達も驚いた。一番驚いていたのはサヨだ。
「ちょいまち! あたしはごぼうちゃんを操るので精一杯! それにそんな簡単に猫夜から離せるの!?」
「わからない。私は一度、猫夜の使いになってしまったけど、従わない! って突っぱねたら関係が切れたみたい」
憐夜がサヨに無邪気な目で言う。
「それ、人形と人間で同じ感覚で関係が切れるわけ?」
サヨは苦笑いのまま、三人組の人形を一瞥した。
「……ど、どうなの?」
アヤが恐る恐る人形に尋ねる。
「……私達は猫夜を見捨てられないでごじゃる。だから……」
リンネィが口ごもりながら、先を続けた。
「今は退く。様子を見ることにする……でごじゃる」
リンネィはシャインとムーンを視界に入れると、目を伏せつつ、空間転移で消えていった。
「成功……したのかな……」
「根本的な答えはなかったわね」
憐夜が不安げにつぶやき、アヤがそれを拾って答えた。
「憐夜、ありがとうな! まさか、話し合いに持っていくとは思わなかったぞ」
逢夜は微笑みながら、憐夜を撫で回し、憐夜はおとなしく突っ立っていた。頬に赤みがさしていることから、逢夜にほめられて嬉しかったようだ。
「ねぇ、お兄様?」
憐夜は逢夜にふと、不安げに尋ねる。
「なんだ?」
「猫夜に……ひどいことしないって約束してくれますか?」
憐夜は気性の荒い逢夜を心配しているようだ。昔の逢夜は恐怖で人を縛るようなことをしていた。
「……しねぇよ。罰を与え合うのはやめたんだ。もう、これじゃあ何にも守れねぇって気がついた。気づいたのは死んでからだが」
「……そうですか。疑ってごめんなさい」
憐夜は申し訳なさそうに目を伏せた。
「いや、いいんだ。当然だからな」
逢夜は憐夜を軽く撫でると、様子を見ていたアヤとサヨに目を向けた。
「お前ら、怪我はないか?」
「ないわ」
「ないね」
二人はそれぞれ返事をする。
「これからどうするか……。サヨの通りに、お姉様と狼夜に合流するか?」
「皆バラバラな状態なら一人ずつ回収していくっきゃないっしょ? それとも、猫夜の人形を追いかけて、凍夜をぶっ飛ばす?」
サヨは自信に満ちた顔でパンチを繰り出した。
「……さすがにこのチームだと不安があるな。サヨは俺に似て、激情型だ。奥深くに進みすぎて、痛手を追う感じになりそうだぜ」
「失礼な! まあ、じゃあ、皆を探そうか……」
さあ、いこうとしたところで、突然、アヤがぼそりとつぶやいた。
「……私って、役に立っているのかしら……」
アヤのささやくような声を聞いた逢夜は、ちらりとアヤに目を向けてから、素直に頭を下げた。
「ありがとうな。時神。あんたは俺達を助けてくれている。心強いさ」
「……そう」
アヤは納得がいっていない顔で頷く。
「アヤ、アヤがいなかったら、ここまで来れてないよ! アヤ、ありがと! これからもどーぞよろ!」
今度はサヨが満面の笑みでアヤの背中を叩いた。
「……サヨ、ごめんね。気を使わせて」
「いーから、これからも一緒にきてね! はい、じゃあ、いこ!」
サヨは手を軽く叩くと、アヤ達をふわりと空へ巻き上げた。
「そろそろ、最終決戦ってかんじだねー! 燃えるわ!」
サヨはごぼうを肩に乗せると、赤い空に向かい、高く飛んだ。

※※

「Kの世界」に無事に落ちたメグ達は、黒い砂漠の中であやを見つけた。あやは必死に電子数字をいじっている。あやの様子を見ると、まだまだ「K」のプログラムは壊れてしまっているようだ。
「あや!」
メグが声をかけた刹那、暴走していたトケイが、腿(もも)についているウィングを動かしながら、突進してきた。
「はやすぎるぞ!」
ミノさんが叫び、千夜、更夜、狼夜がそれぞれ構え、攻撃に備えた。先に動いたのは狼夜だ。トケイの一撃を上手く受け流した。
「初撃は流しました!」
「いいぞ、狼夜! そのまま次にいくぞ。メグはあやを手伝え!」
狼夜が報告し、千夜が指示を飛ばす。狼夜、千夜、更夜の三人はトケイを抑える方向に頭を持っていく。
しかし……
「……来たのは……トケイだけじゃない!」
と叫んだあやにより、メグ達の表情は青くなった。あやの近くで銀色の髪が揺れる。
「何をする気……? 凍夜(とうや)……」
あやは冷たい汗を拭いながら、突然に現れた凍夜を睨み付けた。
「凍夜!」
狼夜、千夜、更夜が凍夜の姿を捉えるなり、牙をむく。

(2020年〜連載中)本編②TOKIの神秘録一部「望月と闇の物語3」(海神編)

(2020年〜連載中)本編②TOKIの神秘録一部「望月と闇の物語3」(海神編)

望月家の物語三話目です! 後悔の感情はなかなか消えない。 魂がきれいにならない。 しかし、あの男にはその感情がない。 なんで、あの人は私たちのために苦しんでくれないの。 なんで、あの人のが先に消えるの? どうして……。 ジャパニーズファンタジー2020。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-03-01

CC BY-SA
原著作者の表示・CCライセンス継承の条件で、作品の利用を許可します。

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