騎士物語 第八話 ~火の国~ 第十章 黒い罪人

RANPO

第八話の十章です。
まずはVS『罪人』のインヘラーです。

第十章 黒い罪人

『お呼びでしょうか、女王様。』
 ごく限られた者しかその存在を知らない、一日中夜が続く国――スピエルドルフ。ほとんどの人間がおとぎ話程度にしか思っていない魔人族と呼ばれる種族が暮らす唯一無二のその国の首都、ヴォルデンベルグに立つ王城、デザーク城。そこの、いわゆる王との謁見の間に一人の魔人族がひざまずいていた。
 知らぬ者が見れば全身が燃えている人間となるだろうが、実際は人型のマグマ。手足と頭くらいはわかるが表情などは存在しないその者は、実のところかなり緊張してそこにいた。
「ええ……ヴァララさん、顔を上げて下さいな。」
 そんな彼とも彼女とも言えないマグマ人間――ヴァララが顔上げた先、玉座に座っているのは一人の女性。ところどころに赤い模様の入った黒いドレスを身にまとい、左右で色が異なる瞳と長い黒髪を持つその女性は、左手薬指にはめた黒い指輪をうっとり眺めていたところを……若干キリッとさせ損なった顔でヴァララを見る。
「戻って早々で申し訳ないのですが、再度火の国へ行って欲しいのです。」
『! ヴィルード火山で何か……再度マグマの探索を?』
 先日、その為に火の国へ行ったのでそう言ったヴァララだったが、玉座の女性はピクリとまゆを動かす。
「探索……マグマの中……そういえばヴァララさん、ロイド様をその身体――全身で包み込んだのですよね……」
『!!』
 心臓と呼べる器官はないはずだが、ドキッとして身体がこわばるヴァララ。元々緊張していたところに加えて今の一言、仮にヴァララが人間であったなら冷や汗をかいているだろう。


 田舎者の青年らと親しい間柄になっている女王だが、スピエルドルフの国民、特にフェルブランド王国でいうところの国王軍であるレギオンの面々にとっては拝謁するだけでも緊張する相手である。
 現女王、カーミラ・ヴラディスラウスは田舎者の青年と同い年の十七歳。スピエルドルフ史上最年少の王であり、当然レギオンの面々の誰よりも若いのだが、それでも王冠をいただいているのには相応の理由がある。

 人間が持つ知恵と魔法生物が持つ魔法の力。その両方を強靭な身体に収めた魔人族という種族は事実上、この世界における最強の種族である。故に世界の在り方の大部分を決める種族は彼らであるのが道理だが、実際にその立場にあるのは人間である。魔人族の絶対数が極端に少ない事や、人間と違って領地を広げようという欲が希薄である事などがその要因に挙がるが、一番の理由は彼らの生物的な弱点――太陽の光に弱いという点だ。
 あらゆる動植物がその大きさや知能に関係なく平等にその恩恵を与えられる太陽の光が魔人族にとっては毒に等しく、加えて様々な姿をしている魔人族はそれぞれに、これまた他の生き物にとってはどうということのないモノを苦手としている。
 後者はそれを避ければ良いだけだが、前者――昼の間世界の全てを照らす太陽の光に関しては、一日の半分もの時間活動を制限されてしまうという事もそうなのだが、何よりも純粋に、あの明るい光の下で生活したいという魔人族の夢の為、その克服に向けて長年研究が行われてきた。
 そしてその研究の最先端を進んでいたのが、魔人族の中でも群を抜いた強さと頭脳を持つ吸血鬼たち。彼らはたった一人で人間の街なり国なりを滅ぼせてしまう力を持つ反面、全魔人族の中で最も太陽の光の影響を受けてしまう種族であり、他の種族が極端に脱力したり気絶したりする程度のところを、彼らは数分で全身が焼けただれて命を落としてしまう。
 自らの生死に関わるという事もあって太陽の光の権威となっていた吸血鬼たちの、数えるほどしかない家系の内の一つ、ヴラディスラウスの一族はその研究成果の一つとして一定空間内を常に夜にする魔法を編み出し、他の魔人族たちを太陽の光から守ることを任され、後に建国されたスピエルドルフの王族として、現在も魔人族たちを守護しながら研究を続けている。
 そんなある時にヴラディスラウス家に生まれたのがカーミラという吸血鬼。その時点では他の吸血鬼と差異はなく、次期女王として友人らと共に日々勉強の毎日だったが、ある日、同い年の一人の人間の男の子――幼き田舎者の青年と出会う。
 丸一年間の交流を通して非常に親密な関係となった二人は、ある日に起きたとある事件を経て、互いの右眼を交換するという結果に至る。
 ヴラディスラウス家の者にしか発現しない魔眼ユリオプスの片方が田舎者の青年の右眼――即ち何の変哲もないただの人間の右眼となった彼女だったが、その時から身体に変化が生じ始めた。
 夜に生きる者である吸血鬼にとって太陽の光は非常に眩しく、通常であれば昼間の世界は白一色にしか見えないはずなのだが、彼女は暗闇の中と同じように鮮明に見る事ができるようになったのだ。
 太陽の光の中で生きる人間の眼を手にしたのだからある程度は予測できた事だったが、それを遥かに超える大きな変化があった。
 驚くべきことに、太陽の光を遮るローブ無しでは全身が焼けただれ、他の種族でも活動困難になる太陽に光の下で、彼女はローブ無しで数時間活動できるようになっていた。
 それはまさしく魔人族の悲願の一片。しかもそれを成したのは太陽の光に最も弱い吸血鬼。その偉業は一瞬で国中に広まり、彼女はスピエルドルフの国民を、魔人族たちを太陽の光へと導く希望の象徴となった。
 例の事件を通して国民たちから慕われるようになっていた田舎者の青年の右眼がそのキッカケというのも伝わり、彼はその時その場にはいなかったが、二人は次代の指導者としてスピエルドルフの国民から歴代の王たちを超えるかつてない支持を得る事となった。
 それを受けた当時の国王と王女――即ち彼女の両親は、象徴となった彼女を中心とした国民の更なる団結や、魔人族たちの希望となった彼女を立派な王とする為にたくさんの経験を積ませる事を目的に、王座を早めに継がせる事を決めた。
 そして「先代国王」がいては国民の支持も分散する上、新しい時代の先頭に立つ彼女に今までの時代の自分たちが口を出しては良くないのではという考えと……王族故にできなかった吸血鬼特有の長期睡眠をしてみたいというワガママから棺の中で眠りに入った。

 そういった経緯で現在一人で玉座に座る彼女だが、女王としての才覚も吸血鬼としての強さも確かであり、国民は勿論、レギオンの面々も彼女を女王として認めている。
 魔人族の未来、その体現への憧れ。圧倒的な強者への敬服。女王への忠節。そこに混じる若さ故の危なっかしさや少女としての感情の起伏。彼女と親しい間柄ならばともかく、歴代の王たちとは様々な点が異なるこの女王を前にした者は、今一つ決めかねてしまう接し方に戸惑い、結果として妙に緊張した面持ちで膝をつくことになるのである。
 最も、ヴァララが更なる緊張を覚えているのは女王のジトッとした目から放たれているただの羨ましそうな視線ゆえだが。


「ロイド様のお身体を隅から隅まで……」
『じょ、女王様、あれはその、ロイド様をお守りする為の――』
「ええ、わかっていますよ。必要な事です、よくやってくれました。しかしそれとこれとは別の感情……ああうらやましい……」
『も、申し訳ありません……』
「怒っているわけではありませんよ。」
 ふふふと微笑む女王だが、あまり笑っていない目にないはずの心臓が止まるような気がしたヴァララは必死に話題を戻す。
『そ、それで私は火の国で何を……』
「ええ、そうでした。ちょうど今、ロイド様たちは何か予期せぬ敵と戦っているようなのです。」
『! ではすぐに加勢に――』
「いいえヴァララさん。その気持ちはわかりますしワタクシにもそういう想いはありますが、立派な騎士を目指すロイド様にとっては成長につながる経験です。あまり出しゃばるのもいけません。」
『そ、それでは……』
「ロイド様の成長の妨げになる……正確にはなりそうなモノがいるようでしてね。それの排除をお願いしたのです。」
 まるでそれを通して現地を見ているかのように、鋭い視線を黒い指輪に向ける女王。
「『世界の悪』、あれの欠片を手にした反政府組織、そしてワタクシたち。出会おうと願っても遭遇する事のない凶悪だったり強大だったりする者たちとのつながり――ロイド様は騎士としてこの上ない経験を得られるのと同時に命にかかわる身の危険とも隣り合わせという星の下にありますからね。未来の為にも後者の方は処理しないといけません。」
『御意にございます。』
「ではヴァララさん、この者――と、もしも出会えたらこちらも始末してきてください。」



 魔法生物が街に入るのを阻止するための防衛戦が繰り広げられる壁。その上であたしは突然現れた黒い男と戦ってた。
「ちっ、ガキのくせにいい動きをしやがる。」
 上段、中段と連続で繰り出された回し蹴りを最小限のステップで避け、攻撃直後の体勢が不安定なところにキックを放つあたしを忌々しそうに睨みながらトトンッとバックステップで距離をとる黒い男。
 こいつの戦闘スタイルはあたしと同じ徒手空拳で、蹴り技をメインに攻撃してくる。
 スーツだし首に巻いてるストールが邪魔そうだしかぶってるハットを押さえながらだからすごく動きづらそうに見えるんだけど、繰り出される蹴りはゾッとするくらい鋭くて、その勢いに乗って全身を回転させ、時に逆立ちになったりしながら途切れの無い連続攻撃を仕掛けてくる。
 壁の上は幅が二メートルくらいだから、いつもみたいに円の動きで相手の背後に回ったりっていうのがちょっと難しいんだけど、それは相手も同じ事。しかも今は――

『ルオオオオオオオッ!』
「『ヒートボム』っ!」

 技名と共に爆発が起き、壁の傍に立ってる巨大なゴーレムがよろめく。
「――くそっ、あっちもあっちでバカみたいな火力を!」
 あたしの『ブレイズアーツ』を避けながら、傾くゴーレムを横目に苛立つ黒い男。

 どう考えてもこの騒ぎの黒幕側のこいつの得意な系統は第五系統の土の魔法らしく、最初はこの壁を魔法で崩そうとした。だけどストカが作ったこの壁は……さすが魔人族っていうべきかしら、どうやらストカ以外の使い手じゃ干渉できないほどに強力な魔法で出来てたみたいで、男にはどうにもできなかった。
 そこで巨大なゴーレムを作り、あたしたちごと壁を破壊しようとしたわけだけど、アンジュが『ヒートボム』でその巨大な腕を吹っ飛ばして阻止した。
 ストカが作った壁に続き、アンジュの火力も想定外だった黒い男はゴーレムを更に強化しようとしたんだけど、あたしが殴りかかってそれを邪魔した。
 結果、壁を壊そうとするゴーレムの相手をアンジュが、ゴーレムを生み出した術者である黒い男をあたしが相手にする形になった。
 ローゼルを加えた三人で一気にこの男を倒すつもりが、あんな馬鹿でかいゴーレムが出てきたせいで「即行で倒す」っていうのは難しくなったけど……今の状況は悪くない。
 ゴーレムを一体作るのに必要な魔力とか身体にかかる負荷はその形とかで変わるけど、魔法生物たちを足止めしてるこの壁を超えるような大きさ、魔法負荷は相当なモノのはず。しかも、壊された腕とかを修復しようと思ったら更に魔法の負荷がかかる事になる。
 ゴーレムの維持とアンジュが吹っ飛ばす箇所の修復で常に大きな魔法負荷を受ける黒い男は、たぶん、それ以外の魔法を使う余裕がない。だからこいつは、言うなれば丸腰であたしと戦う羽目になってる。
 きっと、まともに戦ったらこの黒い男の方が強い。戦い慣れしてる感じだし、戦闘経験はあたしたちより断然多いと思う。だけど負荷の影響で魔法が使えなくなってる今ならあたし一人でも戦えるし、アンジュがゴーレムを爆破し続ければ負荷が積み重なって、その内勝手に気絶する。
 壁の破壊よりもあたしたちを倒すことを優先にしてゴーレムを解除したとしても、結局あたしたちが立ってるのは普通の地面じゃない、ストカの魔法で組み上がった壁の上。足元の土が使えないとなれば、魔法を使うようになったとしてもその攻撃力が今の徒手空拳のみの状態から跳ね上がるような事はないはずで、この狭い足場、アンジュと二人で挟み撃ちができるあたしたちの有利は変わらない。
 そして、強いけど中身は戦いの初心者っていう機動鎧装をローゼルが氷でサポートしながら中央の壁の防衛を維持してくれてるから、あたしたちは黒い男との戦いに集中できる。
 だから、「即行で倒す」っていうのは無理でも、たぶんこの黒い男を倒すのにそんなに時間はかからない。強化魔法も満足に使えなそうなこいつ相手なら、あたしの攻撃が一発でも入ればそれで終わりだわ。

「次から次へと! 面倒はイカれギャンブラーだけで充分だぞ!」
「こっちだって、魔法生物の相手で手一杯よ。」
 壁を挟んで魔法生物が暴れる側とゴーレムがいる側を交互に見下ろす黒い男は歯がゆそうな顔であたしを睨む。
「仕事も大詰めって時に……一体何者だお前は。もしかして学生のコスプレしてるだけで普通に現役の騎士か?」
「コ、コスプレじゃないわよ! そんなの言ったらあんただっていかにも悪党ですって格好してんじゃないのよ!」
「正装はビジネスの基本。ほとんどが一期一会になる裏の仕事じゃ信頼が何よりも重いんでな、第一印象を悪くしない為にパリッとした格好をするのは当然――ってくそ、んな世間話してる場合じゃないんだガキめ!」
「あんたが勝手にしゃべったんでしょ!」
「のんびりしてるとスタジアムの連中が――ち、臨時収入に手を出すのは気が引けるが……本収入を失うわけにはいかないからな……」
 心底嫌そうな顔をしながら、黒い男はジャケットの上から心臓の辺りをトントンと叩く。何か起きるのかと身構えたけど何も起きなくて、黒い男はそのままわたしの方に走り出した。
 幅の狭い、言うなれば一本道を真っすぐに近づいてくる黒い男は正直絶好のマトで、ガントレットを飛ばせばそれで倒せる気がする。もっと言えば、離れた所からガントレットとソールレットの全部を飛ばしてロイドみたいな全方位攻撃を仕掛ければ、魔法の使えないこいつはあっさり倒せる……とも思う。
 でもこいつは、たぶんこの騒ぎを裏から起こした悪党で、どんな奥の手を隠し持ってるかわからない――そんな風に思って武器を飛ばすのを切り札として温存してるわけなんだけど、そのあるかもしれないと思ってた奥の手を出してきたっぽい。
 どんなモノかこの攻防で見極めて、次の攻撃で倒す……!
「つぁっ!」
 あたしの間合いの直前で跳び上がり、空中で鋭く回転して体重の乗った蹴りを上から下へ放つ。うちの生徒会長を思わせる蹴り技には正直感心するんだけど、走って近づきながらじゃ動きが丸見えよ!
「はっ!」
 放たれた蹴りをかわし、それが地面につく前にガラ空きの胴体へ爆発で加速したパンチを打つ。回避も防御も間に合わないタイミングのその一発は黒い男の腹部にめり込み――

「――っ!?」

 突然揺れる視界。とびそうになる意識。平行感覚が狂って世界が傾く中、ぶれる黒い男の姿が蹴りのモーションに入って――

「――がはっ!」

 ミシミシという嫌な音と共にお腹の辺りに激痛が走り、あたしは数メートルふっとばされた。
「――! おいおいおい、マジで本当に学生かよ……」
 霞がかかる意識を身体をめぐる火のエネルギーで叩き起こし、何とか受け身を取って着地したあたしを見て、追撃しようとしてた黒い男が脚を止める。
「勢いの全部を殺せるわけじゃねぇから若干急所を外したのは認めるが、にしたっていい一撃が入ったはずだぞ? どんな根性してやがる。」
 いい一撃……ガンガンと痛むお腹……そう、あたしは蹴り飛ばされたんだわ。
「痛っ……」
 お腹の痛みに遅れてじんわりと顔――いえ、あごの辺りに痛みが広がる。
 そうか……さっきの平行感覚の歪みはあごに攻撃を受けたからだわ。たぶん、あたしがかわした脚とは逆の方を身体をひねってあたしのあごを打ち込み、頭が揺れたせいであたしがふらつく間に着地し、万全の体勢で蹴りを放った。
 でも……そんなのあり得ない。あたしのパンチは確かに当たった。多少の強化魔法くらいはかけてるだろうけど、その程度じゃ防げないっていうのを、朝の鍛錬を通してあたしは知ってる。
 なのにまるで何事もなかったみたいに反撃して攻撃直後の無防備なあたしに蹴りを入れてきた……!
 こいつは土の魔法の使い手……もしかして金属の膜みたいので防御を――いえ、パンチの感触は間違いなく生身だった……一体何が……
「……今のが、あんたの奥の手ってわけ……」
「ふん、使う予定は一切なかったんだがな。お前にもあるんだろ、奥の手。」
「……どうかしらね。」
「ガキが、ナメるなよ。お前の体術、普段はあるんだろう何かの要素をわざと控えてるのがバレバレだ。」
 ……やっぱりこいつ、普通に戦ったら相当な格上なんだわ……あたし自身も気づいてない無意識の動きのクセを……
「ま、それがうちのこれを超える事はねぇだろうがな!」
 走り出す黒い男。とりあえず『ブレイズアーツ』の為に身体にかけてる強化魔法を出来るだけ強くして、防御しながら何が起きたのかを――いえ、防御にまわったらダメよ。訳分からない内に攻撃されるよりも、多少のリスクは覚悟して見極める!
 黒い男がまた走りながら蹴りの体勢に入る前に、ソールレットからの爆発で一気に間合いを詰めたあたしは、わかりやすく面食らった黒い男の脇腹に蹴りを放つ。
 完璧なタイミング――ていうか、完璧過ぎる……?
「おいおいおい、普通はビビッて縮こまるところだろうが。」
 打撃の感触。脚に伝わる衝撃。あたしのキックは確実にヒットした。けれど何ごとも無く放たれる黒い男の膝蹴り。さっきとは違って反撃が来るかもっていう意識があるから今度は防御が間に合って、あたしは両腕のガントレットを盾代わりにしてそれを受ける。そして――
「はっ!」
 もう一方の脚のソールレットを起爆し、黒い男の頭に横蹴りをお見舞いする。それによって身体を大きく傾けた黒い男に追撃を――と思ったけど、黒い男が上着の内側に手を入れたのを見て、あたしは両脚からの爆発で後退、距離を取った。
「クソ、ガキが……!」
 体勢を元に戻した黒い男は、やっぱり無傷だった。
 でも……うん、ちょっとわかってきた。まず残念だけど、こいつのこの謎の頑丈さは腹部だけとかじゃなくて全身。でもって今の頭への攻撃は……自分で言うのはあれだけどたぶん予測はしづらかったはずで、それでも無傷だったって事は、こいつの奥の手は常に発動してるタイプ。あたしの攻撃に合わせて使ってるわけじゃなさそうね。
 そして……これはさっき自分でも言ってたけど、こっちの攻撃を完全に無効化してるってわけじゃない。頭を蹴った時に体勢を崩したって事は、ダメージは受けないけど攻撃の勢い自体は受けてるって事。ちょうど交流祭でロイドが使ってた吸血鬼の「闇」の力みたいに……
 ……いえ……ていうかこれ、つい最近経験したっていうか見たっていうか……まるで……
「……身代わり水晶……」
 思わず出たあたしの呟きに、黒い男が嫌な顔をする。
「……お前、今の攻防でそれに気づくって事は、最悪ワルプルガの参加者か? だとすればその技量にもある程度納得だが……それなら今頃はスタジアムにいるはずだろ……それがどうしてこんな所で壁作ってんだか……」
「気づくって……じゃあやっぱり身代わり水晶を……でもあれは致命傷を避けるだけのモノのはずよ!」
「おいおいおい、あのゴーレムを見て気づいてないとは言わせないぞ。」
 言いながら、黒い男はさっき叩いた胸のあたり、ジャケットの内側から小さな水晶を取り出した。
「第五系統の使い手が土いじりしかできないとでも? 鉱物も当然、魔法の対象だ。」
 まさか……本来なら致命傷や大きなケガにつながる攻撃のみを受けてくれる身代わり水晶を魔法でいじったって事……!? そりゃあ長年の研究の成果だっていうから魔法で効果を変える事はできなくないんだろうけど……あんな手の平サイズで全ての攻撃を代わりに受けてくれるようにしたっていうの!?
「! ということは、さっきの試合で身代わり水晶がおかしくなったのは――!?」
「ああ。一番キレやすくて他の魔法生物への影響力の大きい奴――ゼキュリーゼを怒らせるのがうちの仕事だ。」
 そういえば昨日ロゼが言ってたわね、第五系統で何かを測定してる奴がいたって……あれはこいつの事だったんだわ。第五系統の詳しいところは知らないけど、昨日一日の試合を通して身代わり水晶の仕組みとか効果を把握し、ゼキュリーゼの試合で身代わり水晶を誤作動させた……!
「中々のタイミングだっただろう。魔法生物側のどいつかが人間と相討ちになりそうな瞬間を狙った。ちなみにあの後ゼキュリーゼに岩を落としたのも煽り文句を言ったのもうちだ。」
「……なによ、いきなりベラベラと。」
「……ただのクソガキだと思ったらワルプルガに出てた奴――かもしれないときた。少し気合を入れねぇとな。」
 そう言うと、今までイライラが九割くらいだった顔により明確な、倒すべき相手に向ける敵意が加わった。
「うちはインヘラー。騎士連中が言うところの『罪人』の一人。依頼人の最終的な目的の為、この邪魔な壁を破壊する。」
「……自己紹介どうも……」
「ああ。こうして名乗ったからには――お前は確実に殺す。」
 そして黒い男――インヘラーはハットとストールとジャケットを脱ぎ捨てて――ってなによあれ……
「ゴーレムに壁の破壊を任せている事で今のうちが使える魔法はごくわずかだが、世の中にはこういう便利なモノがある。」
 インヘラーはジャケットの下に……宝石でゴテゴテに装飾された趣味の悪いベストを着てて、同じように装飾された腕輪が手首とか二の腕に巻かれてる。しかもその宝石たちは色や大きさがバラバラで統一感が一切ない。
「長引くほどに損失が大きくなるからな。なるべく早く死ねよ。」
 言いながら手にした身代わり水晶を悪趣味ベストの左胸の辺りにパチンとはめ込むと、インヘラーの姿が消え――
「――っ!!」
 反射的に振り返ったあたしは、目の前まで来てた蹴りを殴って相殺しつつ後退した。
「……おいおいおい、冗談じゃないぞ、今のを防ぐだと……? うちが位置魔法を使うのがわかったってのか?」
 信じられないって顔をするインヘラーだけど……今のは危なかった。なんの前触れもなくいきなり消えてこっちの死角に移動するどっかの商人と朝の鍛錬を重ねてたから反応できただけ。あてずっぽうで振り返ったけど、もしも真後ろ以外の死角から来られてたら終わってたわ。
 ていうか……自分でも言ったけど、こいつ今位置魔法を使ったわ……ほとんど魔法を使えないはずなのに第五系統よりも負荷の大きな第十系統を……!
 つまり、あの悪趣味ベストと腕輪についてるのは宝石じゃなくて――
「……それ、全部魔石なのね……」

 魔石。わかりやすく言うとマジックアイテムなんだけどそれとは根本的に違くて、分類するなら魔眼と一緒のグループになると思う。
 マジックアイテムは凄腕の魔法使いがモノに魔法を込めて作る人工の物だけど、魔石は自然の中で作られる物。ヴィルード火山みたいに魔法的にちょっと変な場所とか、場合によってはたくさんの人間が魔法を使う騎士の学校とか闘技場とかでも生まれる事のある特殊な石。たぶん身代わり水晶も魔石の一種だとは思うけど、あれはもっと特殊で変な性質を持ってる感じだから厳密には魔石とは違うのかもしれないわね。
 とにかく魔石は、周囲に漂ってるマナやら魔力やらが色んなキッカケで結晶化してどうこうっていう理屈で出来上がるらしく、中には何かしらの魔法が入ってる。それを引き出す事で、術者は魔法の負荷を受けること無く魔法が使えるっていう代物。
 すごく便利だし、場合によっては術者の力量を超えた魔法を簡単に使えちゃうんだけど、中の魔法が無くなったらそれで終わりで……要するに使い捨て。石の大きさと入ってる魔法の種類で使える回数は変わるけど、大抵はマナの枯渇とか負荷の影響で魔法が使えなくなった時の為の緊急用の道具として使われる。
 それでもたくさん持っていれば戦いが有利になるんじゃって思うだろうけど……この魔石っていうのは出来上がるのにすごい年月がかかるからほとんど宝石みたいに扱われてて、すごく高価なのよね……

「知っているならその価値もわかるだろう? 今お前が防御したうちの攻撃にどれほどの値がつくか。」
「知らないわよそんなの。」
 魔石は中の魔法がなくなるとその宝石みたいな輝きが消えてただの石ころになるから、装飾品としての価値もなくなる……もしもあの悪趣味ベストについてる魔石が全部石ころになったら、さっきこいつが言ったようにとんでもない額の損失になるでしょうね。
「くそ、これは出し惜しむほどに損失がデカくなるパターンか? 仕方ない、な!」
 嫌そうな顔で、インヘラーはその場でバク転する。何してんのかと思った次の瞬間、あたしの左肩から血が噴き出し――
「――!!」
 斬られた!?
「こま切れになれ!」
 バク転の次はダンスを始めるインヘラー。とっさに爆発を利用して上に跳んだあたしがほんの一瞬前にいた場所、その地面に斬撃の跡が走る。
 これは第八系統の風の魔法『エアカッター』……見えない空気の刃を飛ばす技!
「く!」
 その場にとどまったら狙い撃ち、あたしは爆発を使って空中を飛び回る。
「おいおいおい、お前飛べるのか。面倒だな!」
 ダンスに見えた動きはその場での連続蹴り。たぶん足首とかにも悪趣味な腕輪がついてて、そこから『エアカッター』を飛ばしてるんだわ。
 ていうかこれ、かなりまずいわ。確かに爆発を利用して飛ぶっぽいことはできるけど、フェンネルみたいに常に炎を出してるわけじゃないから「その場にとどまる」っていうのができないし、ロイドみたいに細かくも飛び回れない。その内動きを見切られて『エアカッター』を当てられる……!
 そもそも攻撃が見えないからちゃんと避けれてるのかが攻撃をくらってないっていうことでしか判断できない……もしかしたら既にギリギリでかわせてる段階かも……!
 肩から血がダラダラ出てくるし、思ってる以上に傷が深いのかもしれない……!!
「どうすれば――」
 頭の中が焦りで埋まって来たその時、空中にいるからか、少し遠くで戦ってるロイドの姿が見えた。空を飛んで壁を越えようとしてる魔法生物に風をぶつけて押し返したり、その翼に回転剣をぶつけて落としたりしてる。風は空気だから見えないし、回転剣も速すぎるから見えなくて、パッと見だとロイドは空中で――二つ名の通り、指揮をしてるようにしか見えない。見えないけど……あたしにはわかる。
 ロイドの技を知ってるから? いえ、違う……感じるんだわ。ロイドの魔力っていうのを。
 本人確認の為に魔力が使われるくらいだから、取り込むのが自然に漂うマナだったとしても、それを魔力に変換した段階で人それぞれの個性が出る。毎日の朝の鍛錬と……あ、あと……い、いつも一緒にいる――せい、なのかしら、あたしにはロイドの魔力が……見えるはずのない風の動きがなんとなくわかる。
 この感覚をインヘラー相手にも使えたらきっと見えない攻撃もかわせるんでしょうけど……まぁ、魔人族じゃないんだからそんなの無理。でも……そう、確か第八系統の使い手は空気の動きをつかむ事で相手の動きを先読みするって言うわ。
 先読み……そうよ、『エアカッター』自体は確かに見えないけど、それを発射してるインヘラーは見えるじゃない。
 それにこんなのロイドの曲芸剣術――速過ぎて見えない回転剣が全方位から飛んでくるあれに比べたらなんてことないわ……!
「――!? おいおいおい、どういうつもりだ?」
 飛び回るのを止めて壁に着地したあたしに燃料切れか何かと思って攻撃しようとしたインヘラーは……あたしの突撃の構えを見てそれを踏みとどまる。
「覚悟の一点突破か? それともとうとう奥の手を出す気になったか?」
「さぁ?」
 ロイドの今のところの弱点っていうか課題の一つなんだけど、剣を飛ばす時にロイドは腕を振る。指揮に例えられるあの動きは、あくまで攻撃の起点として振ってるだけで回転剣の軌道と同じにはならないけど、それでも攻撃のタイミングを相手に教えちゃう動作。初めはどうしようもなかった曲芸剣術だけど、朝の鍛錬に参加する面々はその腕の動きを元にして結構回避できるようになってたりする。
 でもってインヘラーの場合はもっと単純で……『エアカッター』は脚から放たれるし、軌道は直線的だから目を見れば大体の狙いもわかる。
 バカね、何が見えない攻撃よ。見え見えじゃないの。
 それにたぶんこいつ、身代わり水晶を発動させてから……
「ふん、ならまぁ……出血大サービスだガキ!」
 ここ一番の大きな蹴り。きっと特大の『エアカッター』が発射された。
 脚の向き、それと直前のこいつの目線――ここ!
「なに!?」
 ――っ、ちょっとかすったっけど――いける!
「くそが!」
 再びのダンスに似た連続蹴り。でも動きに惑わされちゃダメだわ……体勢的にあたしの方が見えてない時に放たれた攻撃は狙いが定まってない――避けるべき攻撃は限られる!
「おいおいおい!」
 爆発を利用したステップで飛び交う斬撃をかわしながら近づいていくあたし。時にガントレットからの爆発も使っての無理矢理な回避もするから――正直、時々さっき斬られた左肩にかなりの痛みが走る。
 でもこんなの――まぁ、こういう考え方がいいのかはわかんないけど、クロドラドに身体を真っ二つにされた時の痛みとか恐怖に比べたらどうってことないわ……!
「――!! んじゃこれだっ!」
 蹴りを止めたインヘラーが手を銃みたいな形にしてあたしに向けたけど――残念、そういう攻撃もどっかのへそ出し貴族がよくやる技よ!
「おらぁっ!」
 指先から放たれたのは特大のビーム。地面の幅を超える極太の熱線が壁の上を走ったけど――
「んなっ!?」
 発射の直前で壁の上から跳び下り、爆発を利用してインヘラーの真横から迫ったあたしは勢いそのままに横から頭を殴りつけた。
「――か――バ、バカが! 効かねぇって――」
 盛大に姿勢を崩しながらも余裕の顔で笑うインヘラーの前に着地したあたしは――
「はああああぁぁぁっ!!」
 インヘラーの左胸にパンチを叩き込んだ。
「!!! おま――」

 バキィッ!

 殴られた勢いでそのまま後ろに倒れたインヘラーが……損失を思っての事なのか、顔を青くするのと同時に、悪趣味ベストの左胸に取り付けられた身代わり水晶が砕け散った。
 ワルプルガの試合中にはできないしやる意味もないわけだけど……身代わりの力が厄介なら、水晶そのものを破壊すればいい。
「――! ――!! ガキ、おま、これの価値が――」
「……価値がどうこうより、これで無敵じゃなくなったことを心配したら?」
「心配……? おいおいおい、勘弁しろよ……」
 距離的には一歩踏み込めばあたしのキックが届くから、身代わり水晶を失ったインヘラーにしたらピンチだと思うんだけど……なんていうか、損失のショックが混ざりながらもなんとか余裕のある顔で半笑いする。
「うちがいつ、身代わり水晶は一つだと言ったばああああっ!?!?」

 ベキベキッ

 ――ていう音を響かせて、インヘラーは後ろから飛んできたあたしのガントレットに殴られ、あたしの横を通り過ぎてだいぶ後ろの方で転がった。
「……言ってはないけどそうだろうとは思ったわよ……」
 さっきから聞いてればこいつが儲け話的なのに敏感なのはわかるし、身代わり水晶が……ヴィルード火山でしか使えないって言ってもそれなりの価値があるっていうのも理解できる。それをたった一個しか持って帰らないわけないわ。
「ちなみに、一個壊しても他のが身代わりになる可能性……つまり複数の身代わり水晶を同時に発動させてるかもっていうのも考えたけど、あんたの場合はないと思ったわ。」
 だってこいつ、ケチっぽいし。
「なん……だ、今のは……何が……」
 真後ろからだったからか、何が起きたのかもわからずに転がったインヘラーはピクリとも動かない。
「これがあたしの奥の手よ。あんたのビームを避けて空中に出た時に左のガントレットを飛ばし、身代わり水晶を破壊してあんたが次の水晶を発動させる前に後ろから飛ばしたガントレットを……腰にぶち当てたのよ。」

 あたしの攻撃は大抵が一撃必殺っていうか……普通の人が普通にくらったらたぶん、普通に死んじゃう。でも悪党相手の時……場合によっては情報を聞き出すために捕まえるっていうのが必要になるかもしれない。そんな事をこの前のラコフ戦で思ったあたしは、いい感じに相手を気絶させたり動けなくしたりする方法はないかって……身体について色々と詳しいティアナに聞いてみた。そしたらティアナは……
「せ、背骨……腰の辺りを、こ、骨折させちゃえば……う、動けなくなると、思うよ……」
 って言ったのよね。内臓に直でダメージが行っちゃうお腹とか、折れた骨が致命傷になりそうな胸とかに比べれば、腰の骨は身体の外側から直で狙える上に、そこが砕けても動かなくなるのは下半身だけだと思う……っていう、ちょっとゾッとする答えだったけど、これは結構いいかもしれないわね。真後ろからだから完全に死角だし。

「く、そ……こんなところでこんなガキに……ゴーレムを出したのが……壁の破壊を優先したのが間違いだったか……」
「……それもそうかもだけど、一番の失敗は身代わり水晶だと思うわよ……」
「なんだと……?」
「水晶の無敵を使って……こっちの攻撃した直後の隙を狙うっていうカウンターの為なのか無意識なのか知らないけど、身代わり水晶を使い出してからあんた、割と隙だらけになったのよ。」
「!!」
「あんたの頭を狙った攻撃、身代わり水晶を使わないで体術のみで戦ってた最初の状態だったら対処された気がするのよね。魔石を使い出したら更に隙が大きくなったような気もするし……あんな接近された状態でビームみたいな大技、自分の視界を遮るだけじゃない……」
 元々のこいつは相当強い。第五系統の魔法を使う普段の戦闘スタイルっていうのを出されてたらきっと、あたしは勝ててない。普段使わないだろう魔石に無敵の身代わり水晶……そんなすごいアイテムが逆にこいつを弱くしたんだわ……
「……なんて終わり方……ボスに申し訳が……」
 そこでインヘラーはガクンと気絶し、同時にアンジュが相手をしてた巨大ゴーレムがガラガラと崩れていった。
 ……一応勝ったけど、これはちょっと反省ね。結果的に隙だらけになってくれたけど、結局こいつはその時から本気を出し始めたわけで……あたしのことをただのガキだと思ってる内にガントレットを飛ばしてた方が良かったかもしれない。
 ……っていうかこれ、まんまこの前のラコフ戦じゃない。油断してくれてる間に倒す……今回はちょっと慎重になりすぎたわね。
「……気絶しちゃったけど、何か情報を持ってないかしら……」
 とりあえず危ないから悪趣味ベストとかを全部外し、あたしは黒幕らしいインヘラーのポケットの中とかを探る。
「? 何よこれ。」
 悪趣味ベストの下、シャツの胸ポケットに名刺入れ……よりはもうちょっと厚みのあるケースが入ってて、開いてみると中には……魔石なのか、オレンジ色に光る石が一個入ってた。
「ふー、やったねー、お姫様ー。何気にこっちも大きな魔法を撃ちまくったから結構疲れて危なかったんだよ――って、男ひん剥いて何してんのー?」
「へ、変な言い方するんじゃないわよ! こいつが何か持ってないかと思って――」
「うわ! お姫様、その箱閉じて! それ煌天石だよ!」
 あたしが手にした石とケースを奪い、石をしまって慌ててふたを閉じたアンジュ。
「こうてんせき……? なによそれ。」
「知らないの!? こんな危ないモノ!」
「?」
「火の魔法に反応して爆発する石だよ! 石ころみたいな大きさでも身体の半分は吹き飛んじゃうんだから! それをこんな、火の魔法生物だらけの場所で出したらすぐに引火してドカンだからね!」
「それは危ない……けど、なんでそんなモノを……」
 このヴィルード火山に持ってきちゃいけないモノ第一位になりそうなくらいの危険物をわざわざ胸ポケットに……というか火の魔法に反応して爆発なんて、まさに今の戦いであたし相手に使うべき道具じゃない。あたしにポイッて投げつければそれで大ダメージなのに、なんで使わなかったのよ……
「……アンジュ、その煌天石って価値のある……珍しいモノなの?」
「火山の近くではそこそこ採れるらしーけど……ヴィルード火山の煌天石はずば抜けて強力だって聞いたことあるよー。それに他の場所のよりもきれいで見た目が宝石に近いから……悪党の間で高値で取引されてたって話もあるねー。」
「? なんでよ。」
「フェルブランドみたいに魔法技術が進んでる所なら大丈夫かもだけど、そうじゃないとこだと煌天石と宝石を見分けられなくて……例えば偉い人への贈り物の首飾りとかにこれを仕掛けて暗殺……みたいな事件もあったみたいだよー……」
「……なるほど、この男が好きそうなアイテムね。もしかして、これがこいつの言ってた報酬……? こいつの依頼人が掘り出したのかしら……」
「それはないと思うよー。そーゆー悪い使われ方を防ぐためにって、煌天石が採れる所は研究所の人たちが引火で爆発しないように封印の魔法をかけて、その場所は魔法生物たちが守ってるからねー。報酬として渡す為に掘り出すとかは無理だよー。」
 ここでしか採れない、悪党にとって利用価値のある石……これが報酬だっていうなら納得できそうだけど……アンジュの話からすると、最悪、こいつに仕事を依頼した奴っていうのは……
「……とりあえずそれは――あたしやあんたが持ってるのは危ない気がするわね。自分の魔法で爆発しちゃったらシャレになんないわ。」
「そだねー。この箱の中の状態なら大丈夫なんだろうけどちょっと怖い――っていうかお姫様、今さらだけどその肩大丈夫なのー? 血がすごいけどー。」
「痛みはするけど身体を真っ二つにされるのに比べたら…………いえ、あれ……」
 じわじわと急激に痛みが大きくなっていく。あ、まずいわこれ、たぶん戦ってる最中だったからあんまり感じなかったんだろうけど、こうやって一段落つくと――かなり痛い……!

「あ、あたしが、治す、よ……」

 ドクドク流れる血に青ざめてきたところで、両腕を大きな翼に変えたティアナがふんわりと壁の上に着地した。
「形状の魔法で、傷を修復しながら、塞ぐ……よ……」
 人間の腕に戻った両手をあたしの肩にそえ、目を閉じて集中するティアナ。

 戦いの場で騎士がケガをする事はよくある事で、そういう時に活躍する――いわゆる回復役になる人たちが使う魔法はザックリ分けて三種類。
 一つ目は明確に「治癒魔法」っていう魔法がある第三系統の光の魔法。回復魔法と言ったら大抵はこれの事で、傷にも病気にも効く万能な魔法。ただしその回復力の源となるのはケガ人や術者の生命力で、あまりにケガが大きいと逆に命を縮める事になったりする。
 二つ目は第十二系統の時間の魔法。これは単純に、ケガをする前に身体の時間を巻き戻すっていう魔法。生命力とか関係なく、術者への魔法の負荷だけでできるんだけど……前の交流祭でロイドが戦ったラクスっていう時間魔法の使い手が言ってたように、「戻す」っていうのは第十二系統で最高難度の魔法。はっきり言って十二騎士になるような人じゃないと使えない。
 ということで最後の三つ目、第九系統の形状の魔法。生命力とかは使わずに、かつ第十二系統よりは使い手のハードルが下がるのがこれ。モノの形を操る形状の魔法で傷口とか病に侵された部位を元の形に戻す。身体を作る……えぇっと、細胞とか組織? とかを再構築したり組み直したりなんなりするらしいけど、これをやるには医者みたいな専門知識が必要になる。
 ティアナの場合、一時期暴走した魔眼を何とかするために人体について勉強しまくってたし、第九系統の高等魔法『変身』を使うようになってからは、その魔眼ペリドットを使って人間だけじゃない色んな生き物の身体を観察し、コピーできるようになった。
 今でもそういう勉強は続けてて……要するに、背骨を狙えとか言うくらいにティアナはそういう知識をしっかりと身につけてる。
 だから――

「すごーい、傷が塞がってくよー。」
 自分の傷口だけどちょっと気持ち悪いから直視はできないんだけど……斬られた場所が段々と塞がってくのがわかる。擦りむいた場所にカサブタができるような感じじゃなくて……本当に、元の状態に戻ってく感じだわ。
「……うん、これで、大丈夫だよ……」
「すごいわね……本当に元に戻ってるわ……」
「で、でも……流れた血液は、戻らないから……あんまり無理は、しない方がいい、よ……」
「気をつけるわ。ところであたしとアンジュがこいつの相手してた間、大丈夫だった?」
 司令塔として戦況を把握してるティアナにそう聞くと、困った感じに笑って――
「大丈夫、だよ……ほら……」
 魔法生物が迫ってきてる方を指差すと同時に、あたしたちの傍にズシンッて地面を揺らしながら一体の機動鎧装が着地した。

『おおおおおお!』

 勇ましい雄叫びと共に走り出したその機動鎧装は、まるで体術の熟練者みたいにキレのある動きで手にしたランスを振り回し、電撃で次々と魔法生物たちを気絶させていく。
「カラードくんが、頑張ってくれてる、から……」
「……は? カラード? え、あれに乗ってるの!?」
「私もびっくりよー。」
 他の四体とは明らかに違う動きでバッタバッタと魔法生物をなぎ倒してく一体を、いつの間にか近くに立ってた……ビーチサンダルに海パンにビキニで上に白衣っていうおかしな格好のロゼが笑いながら眺める。
「おかーさん!? なんでここにいるの!?」
「やー実はねー、あっちの四体を動かしてるのはいわゆるテストパイロットだからいーんだけど、私は彼らが出したデータをもとに改良を加える役割だからねー。ぶっちゃけ操縦が一番ヘタクソなのよ。」
「そ、それで……ま、魔法生物に囲まれちゃったところに……カラードくんが、駆けつけて……操縦を交代、したんだよ……」
「交代って……あれって初めて乗ってもあんな風に動かせるモノなの……?」
「あはは、まさかー。車の運転の十倍は複雑よ。だけどそのカラードくんはこう言ったの、「『ブレイブアップ』で強化するから大丈夫」ってねー。全身の強化だと数秒しかもたないけど、操縦できるようになるくらいの強化なら数分はいけるはずだーって。」
「はぁ? 身体を強化したって操縦技術が身につくわけ……」
「うふふ、私もそう言ったわ。そしたら「自分を、これを操縦できるレベルまで強くするのだ」って答えたわ。」
「……もっと意味わかんないわね……」
「でも結果的にあの動きでしょー? うちのテストパイロットの誰よりも上手だし……たぶんだけどカラードくんの強化魔法、『概念強化』の域に片脚踏み込んでるわよ?」
「がいねん……?」
 ? どっかで聞いたわね……ああ、この前の交流祭だわ。うちの生徒会長と戦ってたリゲル騎士学校の生徒会長、ベリル・ゴールドが使ってた強化魔法。なんかすごすぎて結局よくわかんなかったのよね、あれ……
「それってどーゆー強化魔法なのー?」
「うーんと……ほら、第一系統の強化の魔法って一番簡単な魔法でしょー? だからなんとなく軽く思われてるけど、強化魔法って最大限に極めると他のどの系統よりも強力な魔法になるって言われてるの。その極みの魔法が『概念強化』よ。」
「概念って……何をどう強化すんのよ、それ……」
「強化魔法が強化するのって、筋力とか身体の頑丈さとか、あと武器にかけるなら切れ味を上げたり破壊力をアップしたりって感じでしょう? そーゆーのじゃなくて……そーね、例えば『概念強化』は心を強化できるわ。」
「こころ?」
「強敵を前に足がすくんじゃってる人の心を強化して、どんな相手だろうと立ち向かう勇者にしちゃったりするのよ。逆にその恐怖心を強化して一歩も動けなくしたり気絶させたりもできちゃうわねー。」
「何よそれ……」
「身体の自己治癒力を強化して回復とか、痛覚を強化して痛みを感じなくしたりちょっとの事でも激痛が走るようにしてみたり……術者のイメージだけ使い道があるから、要するに「何でも強化できる魔法」って感じかしらねー。理屈抜きのふわふわしたイメージを現実に引っ張ってきちゃう魔法なのよー。」
「じゃ、じゃあカラードは何を……」
「そーねー……機動鎧装を操縦できるようになった自分を今の自分よりも強くなった状態と捉えて、その段階まで自分を強化したって感じかしら。知識や技術を得るっていう難しい話をすっとばして、強化したんだから操縦できるのは当然って感じで動かしてるんでしょーね。」
 結局滅茶苦茶でわけのわからない魔法だけど……『ブレイブアップ』を考えるとちょっと納得できるかもしれない。あれ、具体的に何が強化されてるのかって考えると、身体能力とか五感とか、武器の威力や耐久力、頑丈さ、色んなモノが対象になってるのよね。だけど本人がイメージしてるのは自分の中にある強さの可能性の全て――とにかく強くなるっていう事しか考えてないみたいで……このデタラメな感じは今のロゼの話に合う気がするわ。

『貫け! ブレイブチャアアアアァァッジ!!!』

 そんなとんでもない魔法を使ってるらしいカラードはすごくイキイキした声で技名を叫び、その巨体からは想像できない速さの突進で十数体の魔法生物を宙に舞わす。その活躍に、怒りに我を忘れてるはずの魔法生物たちが後ずさり、忙しく応戦してたロイドやアレキサンダー、リリーとローゼルがポカンと手を止めるくらいの余裕ができた。
『ロゼ博士! もしやこの機動鎧装、操縦者自身が使う魔法の負荷も軽減しているのでは!』
 えらく様になった跳躍と着地であたしたちの近くに立った機動鎧装からカラードの声が響く。
「そうよー。魔法が使えない人の為の武器だけど、使える人が乗ったらその魔法は更に強化されるようになってるのー。現状、三割くらいの負荷を機動鎧装の方で受けてくれてるわー。」
『やはり! 全身全霊ではない『ブレイブアップ』とは言え、その終わりがかつてないほど遠くに感じられる! これならあと十分は動けるだろう!』
 そう言いながら……っていうか叫びながら背を向けたカラードの乗る機動鎧装は手にしたランスを天に掲げ、激しい雷光をまとうとその先端を地面に突き立てた。
『ブレイブサンダァァァァアァアァアアッ!!!』
 地面を伝った電撃が周囲の魔法生物たちを襲い、更に十数体の魔法生物が倒れていく。
「あらー、私たちが作った槍にあそこまでの出力はないわよー?」
「うわー、正義の騎士くん、機動鎧装そのものまで強化しちゃったんだー。」
 嬉しそうな顔の母親と呆れ顔の娘。
「……ていうかカラードの『ブレイブアップ』って、ちょっとだけ使う――みたいな細かい事できたんだったかしら……」
『あー、それは最近の練習の成果じゃねーか?』
 突然この場にいない――同じ壁の上だけどあたしがいる場所からかなり離れたところにいるアレキサンダーの声が、リリーの『ゲート』を通して聞こえてきた。
『この前のラコフ戦、最後の切り札っていうのは理解できても、やっぱり他の連中が戦ってる時に見てるだけってのが嫌だったみてーでな。元々先生から指摘されてたってのもあって、三分間っつー使用限界を細かく制御できるように訓練してたんだ。』
 三分間しか使えない上に使った後は三日間動けないけど馬鹿みたいに強力な強化魔法。一度に三分じゃなくて、一分と二分みたいに分割できるようになったのは知ってるけど、もっと細かい使い方ができるようになったのね。
 元々魔法を一切使わないでもランク戦を勝ち進めるほどの実力者だし、要所要所で使い分けられるってなったら相当強いわね。
『んで――おいロイド、カラードはあと十分あんな感じみてーだが、俺らはどうする!』
『そうだな、カラードもそうだけどエリルのところに誰か来たみたいだし、機動鎧装部隊が頑張ってくれている間に状況を整理しよう。』
 言い終わると同時にあたしたちの近くに『ゲート』が出現してロイドとアレキサンダーとローゼルがそこから出てきて、ストカが壁の下から軽々とジャンプして、最後にリリーがパッと現れ――
「ぎゃあああ!? エ、エリエリ、エリル!?!? ちちち、血が! 制服が真っ赤だぞ!?」
 あたしを見るや否や真っ青になったロイドがおろおろした顔であたしの周りをバタバタする。
「だ、大丈夫よ、ティアナに治してもらったから……」
「ホ、ホントか!? 無理してないか!?」
 あたしの顔とさっきまで傷があったところを交互に見て……本当に心配そうにするロイド。仮にも騎士を目指してるんだからこういう傷を負う事だってあるだろうから大袈裟だと思うけど……その気持ちが嬉し――くないわよ、別に!
「本当に大丈夫よ!」
「そ、そうか……」
「あー、ロイドくん、血は出ていないが魔法をたくさん使って結構ぐったりなわたしの事も心配するといいぞ。」
「ボクも! そこの筋肉移動させるの重くて大変なの!」
「あたしもねー、さっきまでバカでっかいゴーレムと戦ってたんだよー。」
「え、えっと、あ、あたしは……し、司令塔、頑張ったよ……」
「う、うん、みんなも大丈夫……?」
 ……今もまだ魔法生物との戦闘中なのに、いつもの感じになるのはすごいわよね……
「人間の身体は弱いなー。俺はまだまだ走れるぜ!」
「お、おう、ストカは余裕そうだな……え、えぇっと……そ、そうだそいつ! エリル、そこで転がってる男は?」
「……今回の騒ぎを引き起こした奴よ。身代わり水晶をいじってゼキュリーゼを怒らせた張本人。ただこいつはあくまでそういう仕事をしたってだけの悪党で、それを依頼した黒幕がいるはずよ。」
「つまりは……犯人の一人を倒したってことか。すごいな、エリル。」
「……条件が良かっただけよ。それより、この防衛戦は? そろそろ火の国の軍に頑張ってもらわないと、魔法の負荷もあって全員結構ヘロヘロよ?」
「軍はねー、私がカラードくんに操縦を代わる時に状況を確認したけど、軍の到着まではもう七、八分かかりそうよ。」
「七、八分……軍が到着すればだいぶ楽になると思うけど、できることならその前にあの……後ろの方で動きを指揮しているのをやっつけておきたいな……」
 そう言ってロイドが顔を向けたのは魔法生物の大群の一番後ろ。あぐらをかいて宙に浮かんでる燃えるヤギって感じの魔法生物。六本ある腕であっちこち指差しながら命令するように鳴いてるのが見える。
「上から見た感じ、この場所に集まって来る魔法生物が減ってきたみたいで、たぶん他の場所で誰かが頑張ってくれているんだと思うけど、あの指揮官がいると軍が到着しても苦戦することになりそうだ。あと数分でいいなら、カラードと機動鎧装にその間だけ壁を守ってもらって、オレたちがダッシュであのヤギさんを――」
 とてもじゃないけど「ヤギさん」とか呼べるようなかわいい顔してない六本腕のヤギを見ながらあたしたちの最後の頑張りどころを決めようとしたロイドが……なんか遠くの方を見た状態でかたまった。
「……ロイド?」
「あれ……なんだ?」
 ロイドが指差した方向、ヤギよりも上――空の方を全員が見上げる。するとそこには大きな火の玉があった。
「あーん? なんだ、魔法生物のどいつかが落っことそうとしてんのか?」
「お、落っことすっていうか……こっちに飛んでくる感じ、だよ……」
「む? あのふちが黒い妙な色合い……ゼキュリーゼが使っていた炎ではないか?」
「使ってたっつーかまんまさっきの奴だぜ?」
 あたしたちにはわからないモノを感知してるストカがさらっとそう言った……え、じゃああれって――

『ルアアアアアアアアッ!』

 大音量の咆哮と共に火の玉が弾け、中から出てきたのは巻き角と骨みたいな翼を持った悪魔みたいなシルエットの魔法生物――ゼキュリーゼ。そこで転がるインヘラーの作戦によって怒りを爆発させてスタジアムを吹っ飛ばした奴が、骨の翼の下に展開させた巨大な炎を広げて真っすぐにこっちに向かってくる。
「おいおい、まさか壁に体当たりでもする気か!?」
「商人ちゃん、『ゲート』でどっか遠くに移動させられないのー?」
「できるけど疲れてるからあんまりやりたくないなー。でもロイくんがどうしてもって言うなら――」
「ぬ? その必要はなさそうだぞ。」
 すすっとロイドに近づくリリーの行く手を遮りながらローゼルが指を差す。見るとかなりの速さでこっちに近づいてくるゼキュリーゼをそれ以上の速さで追う炎が二つ、空を駆けてた。そしてその内の一つは降下してくるゼキュリーゼの頭上に位置取ると、爆炎と共に垂直落下を始めて――

「『雷火爆炎飛翔脚』っ!」

 技名と共にゼキュリーゼの背中にめり込み、そのまま地面へ――魔法生物の大群のど真ん中に叩きつけた。その衝撃は凄まじく、近くにいた暴れる魔法生物たちが吹っ飛ぶ。

「まったく、いきなり飛び出すから何事かと――ってあれ? こんなところに足場……いや、壁? いつの間に?」

 作戦会議をしてたあたしたちのすぐ近くの壁の上に、両脚に炎をまとったフェンネルが着地した。
「師匠ー、無事だったんだねー。」
「え、アンジュ? スタジアムにいなかったから上手に逃げたのだと信じてたけれど……まさかこの壁はアンジュたちが?」
 壁のあっちとそっち、魔法生物が押し寄せる方と街の方を見たフェンネルはあたしたちが何をしてるのかを理解したらしく、嬉しそうに驚いた。
「ずっとスタジアムの中にいたから外の状況がわからなかったけれど――そうか、暴走した彼らの侵攻を食い止めてくれてたんだね。クロドラドはいるのかな。」
「いないよー? 見てもないしー。」
「おや、そうなの? あいつ、どこで何してるんだ……」
 ローブを脱いで全身ピチピチの黒タイツ――に見えるけど実はもっと悪い事に素っ裸っていう、事実を知ったらまともに見れなくなる変態……なのは今はともかくとして、フェンネルはかなり消耗してるように見える。たぶん、あたしたちがリリーの魔法でスタジアムの外に出てから今まで、暴れるゼキュリーゼと戦ってたんだろうけど……
「あ、あんた、なんて奴連れてきてんのよ! ただでさえいっぱいいっぱいなのに!」
「いやーそのつもりはないんだけど、スタジアムで僕らと戦ってたのに突然飛び出しちゃってね。誰かに引っ張られるように……いや、いきなり怒りの矛先を変えたみたいに――」

『フェンネルウウウウウアアアアアッ!』

 怒りとか憎しみとかがてんこ盛りの怒声を上げながら立ち上がるゼキュリーゼ。同時に……なんていうか、「怒りを爆発させる」っていうのを現実にしたみたいに叫び声といっしょに炸裂した爆風が周りの魔法生物たちを再度吹っ飛ばす。しかも今度のはかなりの威力だったらしく、それで気絶するのまでいた。
「びみょーに数を減らしてくれたけどー……あれから壁を守るのはちょっと無理がありそーだよー?」
 弱気な事を言うアンジュだけど、正直それには同意しちゃう。この場に集まったどの魔法生物も超える圧倒的な存在感やプレッシャー……間違いなく今日一番の強敵……!
「ふふふ、どうかな。一応一番の助っ人もいるからね。」
 言いながら空を見上げるフェンネル。そういえばゼキュリーゼを追う炎は二つあったけど、もう一つは……って、いつの間にかものすごく高いところまで上がってるわ……
「ふふふ、みんな、衝撃に備えた方がいいよ。」
 フェンネルがそう言ったのを合図にしたみたいに、空高くまで上がった炎が一瞬ポッとひかっ――

 ドゴオオオオッン!!

 ――たと思った瞬間に鳴り響く爆音。とんでもない地面の揺れで壁の上のあたしたちは全員跳び上がるように吹っ飛んだんだけど、それをロイドが風でつかまえてくれて……そうして見下ろした爆心地はわけのわからない状態になってた。
 そこはついさっきまで大量の魔法生物がひしめき合ってた場所で、フェンネルの攻撃とゼキュリーゼの咆哮でかなりの数の魔法生物が気を失って倒れてたはずなんだけど……今は特大のクレータだけがあった。周りを見ると砕けた地面と一緒に吹っ飛んだ魔法生物たちが山みたいに積まれてて、あれだけの大群がもはや意識のある奴はいるのかどうかってくらいの惨事になってる。
 ちなみにクレーターはギリギリ壁まで届いてはいないんだけど、ローゼルの氷がない中央の壁には大きなヒビが入ってた。
『バッハッハ! どうだゼキュリーゼ! 我ながら渾身のパンチを叩き込んでやったぞ! ついでに暴れる同胞たちも気絶させられたし、一石二鳥だな!』
 もうもうと煙の立ち込めるクレーターの中心からぴょんと跳ねて斜面に着地したのはゴリラ――ガガスチム。全身を黒いアーマーに包んだ姿でバハハと笑う。
 ……たぶん、ロイドたちとの勝負で見せたあたしのパクリ――肘から炎を噴出させて爆発的に加速するあれを空高くから、たぶん何度も加速して吠えるゼキュリーゼにパンチを叩き込んだんだわ。あたしのガントレットと同じ、加速の分の距離が長いほどに威力を増す……!
「どわ、俺が作った壁にヒビ入ってんじゃねーか!」
 ロイドが全員を壁の上に着地させると、ストカはぺたんと座り込んで壁の修復を始める。
 ……さっきまだまだ余裕って感じだったけど、あんだけ暴れておいてまだこんな大きな壁を直せるくらいの体力が……ああいえ、魔人族には魔法の負荷がないのよね……
『いやー危なかったぞ!』
「ぎゃああ!」
 全員を壁の上に戻してふぅって一息ついてたロイドが、いきなり背後から聞こえた声に悲鳴を上げる。
『いやはや、フェンネルさんと共に飛んでいた炎が空高くに上がったのを見てクォーツさんの『メテオインパクト』を思い出してな。慌てて機動鎧装部隊を壁のこちら側に退避させたが正解だったな。』
 声の主はカラードで、確かにあのまま魔法生物の大群の中にいたら巻き添え食って吹っ飛んでただろう機動鎧装全五体が、壁を挟んで街の方――さっきまでインヘラーのゴーレムがいた側に立ってた。
「あらー、グッジョブね、カラードくん。さすがにこんな衝撃には耐えられなかっただろうから、下手すれば五体全部がスクラップだったわ。」
「というか奥様、なぜこのような最前線に……機動鎧装まで引っ張り出して……」
「我が国の軍が遅いからよ。娘夫婦の危機に、おかーさん飛び出しちゃったわ。」
「でもおかげで助かったんだよー。正義の騎士くんも大活躍でねー。」
「ついでに言えばアンジュも、暴走する彼らと戦うなんて、これでケガとかしたら当主様に怒られるよ。騎士を目指す者としては正しい行動だろうけどね。」
 カンパニュラ家お抱えの騎士であるフェンネルが親子に一応の文句を言ったところで、ガガスチムがのしのしとこっちに歩いてきて……バシバシと壁を叩いた。
『バッハッハ、なんだこの壁は! いつの間にこんなモノ!』
「お前、このゴリラ! 壁が壊れちまうだろうが!」
『おお、お前の仕業か! なんだ、もう秘密にしなくていいのか!』
 あたしたちが小さな動物にするみたいに、サソリの尻尾を振り回すストカを面白そうにつつくガガスチム。それを見たフェンネルが何かを思い出したようにガガスチムに尋ねる。
「そういえばお前、彼女の事に気づいてたな。あの時の言葉から察するに、昔にも魔人族が訪ねてきたんだな?」
『おお、スピエルドルフってところの奴がな。高い知能を得たわしらみたいなのを尋ねてまわってるとかなんとか。このサソリもあの国の奴なのか?』
「サソリじゃねぇ、俺はマンティコアだ。」
 腰に手を当ててむふーっとガガスチムを見上げるストカ。
 ……この二人っていうか二体っていうか……戦ったらどっちが強いのかしら……
「なーおい、のんびり会話してっけど、これ今どういう状況なんだ? 集まってた魔法生物は今のパンチの衝撃でのされちまったし、騒ぎを起こしたっつー黒幕はそこに転がってるし、ブチ切れた中で一番やばそうな奴も倒したんだろ? あと何とかしねーといけないのはなんだ? それとも一件落着か?」
 アレキサンダーがそう言うと、フェンネルが困ったような笑顔になり、ガガスチムが大笑いした。
「ふふふ、残念だけど最後のはまだだね。」
「あん?」
『正確にはまだわからないってとこだな! 今のパンチでゼキュリーゼが正気に戻ってればいいが、そうでなけりゃ戦闘はまだ続くぞ!』
「おいおい、今のトンデモパンチで終わりじゃねぇのか!?」
「ふふふ、これが難しいところでね。他の者たち同様、ゼキュリーゼも故意に怒らされただけだからあまり大ケガさせずに気絶させたいのだけど……あんな怒り全開のゼキュリーゼ相手に手加減しながらというのは大変なのさ。」
 ……つまりさっきのパンチは手加減した一発だったってわけ……? どうなってんのよ……
『それにあいつはわしらの中で一番強力な再生能力を持っているからな! ほれ、そろそろ起き上がるぞ!』
 ガガスチムの言葉に全員がクレーターの中心を見ると、丸々埋まってたらしいゼキュリーゼがゾンビみたいに地面の下から腕を出したところだった。
「な、なんで今の内に拘束したりしなかったのよ!」
『バッハッハ! あのゼキュリーゼを縛れる道具があるなら教えて欲しいところだな!』
 両腕で身体を持ち上げながら地表にはい出てくるゼキュリーゼ。その顔には未だ怒りがあって、全身が外に出たところで――

『グルアアアアアアアッ!!』

 再度の雄叫び。にじみ出る圧力は少しも衰えず、あたしたちの方にバシバシと敵意を飛ばしてくる。
『バッハッハ! 他の場所の同胞がどうなっているかわからんが、まぁクロドラドが何とかしてるだろう! 街の近くに来ちまっているこの一番面倒なのの相手がここにいる面々の仕事! フェンネルの弟子に機械の塊に科学者よ! 暴れるのを押さえるのはわしとフェンネルが引き受けるから、人間の知恵を活かしてどうにか無力化する方法を考えついて欲しいところ――だっ!』
 言い終わると同時に肘からの炎で吹っ飛んで行ったガガスチムは、その勢いのままゼキュリーゼに殴りかかった。
『ガ――ガガスチムウウウゥゥゥッ!!』

 骨の翼の下に黒ぶちの炎を展開し、両腕に同じ炎をまとったゼキュリーゼはその拳を片手で受け止め、ゴリラの巨体を軽々と振り回して地面に叩きつけた。
「やれやれ、あんまり気乗りはしないのだけど……こうして街を守ってくれたみんなの力や奥様の頭脳をあてにしたいのは本当のところだね。スタジアムで戦いを始めてからここに来るまで、ゼキュリーゼを止める方法を僕とガガスチムで色々試したのだけど結果はご覧の通りさ。何かないだろうかね。」
「へー、こんなに困った顔のあなたは初めてみるわねー、フェンネル。科学者としてふっかけられた難題には挑まずにいられないけれど――ねぇ、ちょっと確認させてくれる?」
 困り顔でガガスチムに加勢しようと身をかがめたフェンネルにロゼがたずねる。
「暴れる彼らを見てればそれが魔法によるモノだっていうのは察しがつくけれど、具体的にどういう魔法かあなたは知ってる?」
「状況と、同じ魔法を受けたガガスチムの感覚からの推測ですが――人間に対する好意的な感情や同等の相手として認識、そういったプラスの考えを「持っていなかった」モノが魔法の影響で暴れています。あの魔法は人間に対する不満や嫌悪感を増大させて怒りや憎しみの感情として引っ張り出すモノのようで、プラスの考えを「持っていた」モノはそれを抑える事ができ、暴走せずにすんだようです。」
「となると……一概には言えないけど、派閥で言ったら暴れてないのはガガスチム派とクロドラド派、暴れてるのがデモニデア派とゼキュリーゼ派って感じねー……ちなみに序列で言ったらゼキュリーゼよりも厄介なのはデモニデアだけれど……彼女はどうしてるの?」
 さらっと状況を説明したフェンネルに、あっさりと状況を理解したっぽいロゼがそう聞いたんだけど……え、デモニデアって女なの?
「スタジアムにいたはずなのですが……見ていません。」
「そう……もしも暴れてるなら彼女の強さからしてすぐに見つかると思うけど、そうじゃないって事は暴走を免れたかもしれないわね。クロドラドは? 話からすると暴れてないみたいだけど。」
「僕らがスタジアム内にいる時、ガガスチムが外の状況の確認を任せたのですが……こちらも見てないですね。」
「四体中二体が行方知れず……ちょっと気になるけれど、まずはゼキュリーゼねー。なんとか考えてみましょ。」
「すみません、お願いします。」
 そう言って正面――ガガスチムと殴り合うゼキュリーゼに狙いを定めるようにして姿勢を低くしたフェンネルは――
「『石火瞬炎――』」
 足からの炎の噴射で宙に飛び出し、全身をひねってまるで一発の弾丸のように回転しながら――
「『――螺旋脚』っ!!」
 そのねじ込むような一撃でゼキュリーゼの巨体を蹴り飛ばした。
「せっかしゅんえん……むう、何やらどこかで聞いた事のある音だな……」
「交流祭でニンジャくんとか『女帝』さんが技名に使ってたねー。」
「ああ、そうだそうだ、桜の国――ルブルソレーユの独特な言葉の音だ。しかしどうしてそれをフェンネルさんが?」
「カッコイイから好きなんだってさー。師匠ーの技名って全部今のみたいだし、戦い方を教えてくれた時もあっちの兵法書とか格言とかを使ってたよー。小難しいからあたしにはチンプンカンプンだったんだけどねー。」
「フェンネルには桜の国にお友達がいるらしーから、その影響もありそうねー。さーさー、それよりも頼まれたことを考えるのよ!」
 パンパンと手を叩いてロゼがそう言ったけど……目の前で暴れるゼキュリーゼを眺めるあたしたちは全員、「どうすんだあれ」って顔をしてた。
「ガガスチムさんのさっきのパンチでも回復しちゃうのなら、攻撃して気絶させるっていうのは無理そうですよね……となるとさっきエリルが言ったようにどうにかこうにか拘束する方向なんでしょうけど……」
「ふむ、わたしの氷――ロイドくんとの愛の結晶であれば可能性はありそうだが、火の魔力で満ちたこの場所と現在の疲労からすると十分な硬度になるか不安だな。」
「あ、あたしの……鉄線、なら、カラードくんの『ブレイブアップ』で……強化、すれば止められる……かも……」
『うーむ、残念ながらそれは厳しいな。この機動鎧装の為に『ブレイブアップ』を使っているから、鉄線の強化だけであっても数分維持できるかどうかというところ。拘束し続けるというのは難しいだろう。トラピッチェさんの位置魔法で動きを――位置を固定してしまうというような事はできないのだろうか。』
「んー、見た感じバカ力っぽいから固定し続けるのは大変かなー。ロイくんにチューし続けてもらわないと。」
「えぇっ!?」
 動きを止める技を持つメンバーはいても、それをし続けるってなると疲労もあって難しそうね……っていうか毎回どさくさに紛れてこのエロ商人は!
「あらまー、やーねー。若いんだから頭を柔らかく使わないとダメよー?」
 あたしたちの会話を聞いてたロゼがポンポンとアンジュの頭を叩く。
「フェンネルとガガスチム、この国における最高戦力とも言える二人が力押しでできない事なのだから、残るは特殊な方法。仮に気絶させるとしたら物理的なダメージではなく……そう、第六系統の闇の魔法を使った精神的な攻撃とかになるわねー。」
「あー、確かになー。だけど俺らの中にそういう……搦手? が使えるのはいねーぞ。」
「あら残念。そしたら……ゼキュリーゼをああやって暴れさせてる魔法を解除なり無効化なりするっていうのはどう?」
 ロゼのその提案を聞いたあたしたちは同時に一つの力を思い出し、本人以外がそいつを見た。
「……えぇっと、みなさんなんでオレを……」
「ロイドくんがノクターンモードで使うあの「闇」、確か魔法を弾くのだろう?」
「そうよ、あんたの「闇」で怒らせる魔法を……こう、ゼキュリーゼから弾き飛ばすみたいなのできないの?」
「そ、そんなこと……い、いや、試したことがあるわけじゃないし、もしかしたら……」
「おー、そうだぜロイド! ぶっちゃけ本気になったミラとか無敵だからな! その力の一部でも使えるってんなら可能性大だぜ!」
 ロゼ以外の面々はロイドの力を知ってて、だから一気に希望が見えてきたわけなんだけど、何も知らないロゼは困惑する。
「?? さっきまで「どうすんだあれ」って顔してたのにそんなに? 未来の娘婿にはそんなすごい力があるのー?」
 興味津々にロイドの顔を覗き込むロゼ。その危ない格好でずずいと近づかれたロイドは顔を赤く……!
「ロイドくん、ロゼさんは人妻――」
「だだだ、大丈夫ですから! よ、よし! やってみるぞー!」
 慌てて離れたロイドはポケットから小瓶を――カーミラの血を取り出して口の方に持っていく……途中でピタッと動きを止め、おそるおそるあたしたちの方を見た。
「あ、あの、これを使うとその、後日アレな感じになるから……カラードとアレク、学院に戻ったら二人の部屋で寝泊まりさせてくれよ……」
『悪いがロイド、馬に蹴られて死にたくはないのだ。』
「わりぃな。」
「薄情モンめ!」
 そういえばそうだったわねって前回の事を思い出したあたしは顔が赤くなって心臓が……な、なに考えてんのよ! 今は戦いの最中――
「うむ、わたしの部屋に来てわたしのベッドで寝泊まりするといいぞ。」
「ロゼちゃんてば……あ、あたしも……」
「んふふー、ロイくんてばーもぅもぅ!」
「前回よりも進んでるわけだし、もっとすごいことになりそーだよねー……えへへー……」
「あんたらねぇっ!」
「うぅ……先が思いやられる……」
 赤い顔で何とも言えない表情のロイドは大きなため息をついた後、意を決して小瓶の中身を一気に飲み干した。
「??? ロイドくんは今何を飲んだのかし――」
 ロゼが聞き終わる前に、ロイドが黒い風に……黒い霧に包まれる。セイリオスの白い制服が黒く染まり、背中に黒いマントが出現する。身につけてるモノ全てが黒くなったところで霧が晴れ、一歩前にでたロイドは普段適当におろしてる髪をかき上げて後ろに持っていき――
「えぇっと……変身完了! ノクターンモード!」
 ――ダサい名乗りを上げた……



『――……どうしてこんな場所に……?』
 田舎者の青年が漆黒の指揮者へとなった頃、ヴィルード火山のとある場所にある洞窟の中、オレンジ色の光を蓄えた最奥に続く道の途中、大剣を引きずるトカゲの行く手に小さな者が立ちはだかっていた。
『んん? ああ、これか……なに、事故か天災に巻き込まれたようなモノだ……』
 身長は一メートルに満たず、分類するなら小動物として扱われるだろう小ささ。ふわふわの体毛に覆われ、その愛くるしい外見を表現するならば、「丸い猫」とでもなるだろうか。そんな愛玩動物としてしか見る事のできない存在を前に、巨大な体躯と強靭な四肢、鋭い爪や牙を持った上に大剣まで手にしたトカゲは、あろうことか目の前のそれに気圧されているようだった。
『悪いが時間がなくてな……あんな化け物まで出てきてはもはや……ん? なに、大した理由ではないさ。』
 傍から見ればトカゲの独り言だが、トカゲは目の前の愛玩動物と会話しているようだった。
『再度聞くが……どうしてここに? あなたの姿が見えないからもしかしたらとは思っていたが、ここにいるとはどういうことなのだ?』
 引きずっていた大剣をグッと構え、トカゲは戦闘態勢に入る。
『……なるほど、それは見過ごせないな。』
 穏やかな雰囲気での会話はそこで終わり、トカゲは鋭い眼光を愛玩動物にぶつける。
『……ははは、まぁ確かに。私があなたに勝てたことはない。同胞の中で唯一ガガスチムと同等の力を持つあなたが相手では、現状も相まって一層の不利だろう。だが――』
 構えは変わらず、しかし明らかな雰囲気――プレッシャーの変化に小さな愛玩動物はその身を震わせた。
『ついさきほど、悪魔と契約したところなのだよ、デモニデア……!!』

騎士物語 第八話 ~火の国~ 第十章 黒い罪人

 黒幕の一歩手前、依頼を受けた悪党をやっつけましたね。今回の章に登場した『罪人』は三人いて、内二人は戦闘をしていましたが、一人だけ何もせずに命を落とした人物がいます。
 が、彼女は彼女で後につながるある事をしています。この章よりも先の話になりますが……珍しく行き当たりばったりが上手い感じの伏線になりそうでワクワクしています。

 作中でも言われることですが、ヒロインの熱血主人公っぷりは「いつの間に……」という予想外の状態です。使う技がパンチとキックと炎と爆発ですからなるべくしてという気もしますが……エリル視点が続くと「あれ、ロイドくんどこ行った?」となってしまうのです。彼もたまに熱いのですがね。

 次はVSゼキュリーゼやVS黒幕が待っている――予定です。

騎士物語 第八話 ~火の国~ 第十章 黒い罪人

ゼキュリーゼの怒りを皮切りに勃発する魔法生物たちの暴走。それを止めるべく防衛戦を繰り広げるロイドたち。そこに黒い男、インヘラーが現れて壁の破壊の為に動き出し、エリルたちを襲う―― 一方、スタジアム内でフェンネルとガガスチムが押さえていたゼキュリーゼが突然外へと飛び出し――

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-12-16

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