有希の鼻唄

有希の鼻唄

彗星待機

絶望って、もしピンチの時にすぐに誰かが助けに来てくれるなら、楽観的なものになるかもしれない。

こうやって抱き合って、世の中という戦場を戦い抜く僕らは、癒し合うんだ。

世の中に溢れる「恋愛」の99%以上は、
「恋」の名を借りた利己のぶつけ合い、
「愛」の名を借りた利害の一致。

それでもね、今日がずっと続けばいいのに。
そう思って、待っているの。
彗星はまだ落ちてこない。

ラピュタ

感情は水のようだ。湧き上がり、流れ、集まり、波を起こす。
人体に必要不可欠で、時に人はそれに流され、溺れて死ぬ。

感情がおさまって、後から理屈は付いてくる。
それでも、論理は優しくないから嫌いだ。

それが木であれ、人工的な建物であれ、上へ伸びていくものは、心という大地に根ざしていなければいけない。
建物は冷たい頭で緻密に計算して作られる必要があるけれど、足元はいつも暖かく血の流れている
「生きている」ものに着いていなければいけない。
ラピュタは長く続かない。

この子が笑っている間は、まだこの世界も生きる価値がある。

純愛

あの人の魂が何かに捕まってしまったのなら、あの人の死をもってでも私はあの人の魂を解き放つ。
私はもうあの人に会えなくてもいい。
私はもうあの人の魂が自由に飛び回るさまを見られなくてもいい。
あの人の魂の温度はどうかそのままであって。
あぁこれが、私がむかし存在を否定した「純愛」ってやつかな?

大丈夫

私の本質が見えてしまって、幻滅だと去っていくのは仕方がないよ。
私はひとりぼっちだけど、けっきょく誰もかれも孤独なんだ。
大した事じゃない。
またうっかり人を信頼しかけてしまっていただけ。
またちょっと人間を好きになりすぎただけ。

大丈夫なふりをして生きてたら、いつか本当に大丈夫になるかな。
淡い期待かな。
穴のあいた風船に、空気を入れ続けて、がんばっている。

本当に欲しいもの

誰かに必要とされたくて、頑張って力をつけてきたけど、能力をもって与えることで必要とされるには限界がある。
同じ働きをするのなら、私でない誰かでも、アンドロイドでもAIでも替えがきくから。
替えがきかないのは、一緒に過ごした時間だけ、与えられたものだけ。

誰にも愛されず、誰も信じない。
そんな覚悟さえすれば、楽になれる?もう苦しまなくてすむ?
愛されるための努力も、信じる勇気も、報われない。
それなのに、愛されようと、信じようと、そんな方向に心も体も動いてしまう。
ねぇ、私は本当は何が欲しいの?何をしたいの?

死ぬまで騙され続けていられたなら

みんなが行く先が前だと、みんなが憧れる方向が上だと、そういう風に決まってる。
前や上はそんなにいいのかな。
そこで回れ右してみたら。左でもいいけど。
重力に逆らう方が辛いし、高いところは危ないよ。

私が、被害者になる想像しかせず済めば、私の人生はどんなに良かっただろう。
人々が、自分が加害者になる想像をしたならば、世の中はましになるのだろうか。

酷い幻想

誰かが受ける苦しみの原因は、その人自身にあると、人は思いたがる。
そうすれば、自分には苦しみが訪れないと、努力によって苦しみを避けることができると、安心できるから。
なんて愚かなんだろう。

痛みを分かち合うだとか共有するだとか、酷い幻想だ。
人間は高度に孤独なのだ。

意味と価値

苦労にも努力にも意味はない。結実したものだけが意味をもつ。
価値についてはまだよく分からない。

この世界は、壊れた楽器みたいだ。どんなにうまく弾こうとしても、私は音を鳴らせない。

心が、木から落ちて腐った柿のようになっている。ぐじゅぐじゅに柔らかく、べちょべちょに甘くなっている。

ニヒリスト?

「高い志なんてなくても、今日一日を丁寧に過ごして、それを確実に積み上げていけば、
 いつか皆と同じ所までたどり着けるよ。」

ねぇ、でも生きる意味がないと、人は苦痛に耐えられない。
なんとなくで生きられるならば、それはとても幸福なことだ。
そのただ中にいる本人には、気付かれることのない種類の幸福だけれど。

私はおそらくニヒリズムに取り憑かれていた。

素敵な提案

私が消えたら、この素敵な思い出たちも消えてしまう。
でも思い出だけじゃ生きていけないから、仕方ないよね。

きっとこの先、万が一社会的に成功したとしても、普通の人たちに上手く紛れ込めたとしても、
ずっと苦しいままなんだろうな。
そういうことを悟ってしまった。
死は無敵じゃないけれど、肉体が無くなれば痛みもなくなるんじゃない?

さぁ、人生で1番幸せな誕生日を、最後の誕生日にしようか。

私にできる唯一の

崩壊していく私に、為す術もない。
損なわれてゆく様を、見て、聞いて、感じる。
ただ分かっているだけ。

私は見ていた。彼女の首に悪霊が巻きついて締めるのを。
私は見ていた。彼女に首に添えられた鋭い死神の鉤爪が彼女の首を切り裂くのを。
私は見ていた。彼女がなたや斧で殴られ続けるのを。

私は聞いていた。彼女の呻き声を。
私は聞いていた。彼女の血が噴き出す音を。
私は聞いていた。彼女の肉体が潰れて削ぎ堕ちる音を。

私は感じていた。彼女の苦しさを。
私は感じていた。彼女の恐怖を。
私は感じていた。彼女の痛みを。

私はこうなることを全てわかっていた。
けれど私は何もできなかった。無意味な試みさえも。

喋らない理由

自分の気持ちをカタチにするのが苦手で、
カタチにならないから自分の気持ちなんて認めなくて、
ストーリーや芸術や他人が分かりやすく表してくれたもので代用して、
嘘から出たまこと、になりきれない嘘とまことの間で何となく生きてきた。
私はいつも、嘘から出たまことで、他人の言葉を紡ぐ。

私が喋らない理由は1つ確かにあったのだけれど、それを説明しようとした途端にバラバラな色んな側面を持ってしまって、しかもそのどれも言葉にすると嘘な気がする。

今となっては理由なんてやっぱり無いかもしれないとも思える。
確かにあったものが、形が曖昧になり、忘れられていく。
死んでしまった人の存在自体が消えていく過程に似ている。
私の意志で喋らないと言うより、ほとんど自然と喋れなくなったとさえ思う。

私の親友は青い

彼女が悲しみの中に留まり続けてしまったのは、そういう負の感情の方が馴染みがあったからだ。
嬉しいとか楽しいとかそういう感情っていい気分な一方で、不安定で不確かで彼女にとってはあまり馴染みがなかった。
自分に似合わない気がして落ち着かなかった。
悲しみに沈んでいる時はー起きているほとんどの時間がそうだけどー
慣れている感情で、苦痛である一方、これが帰ってくるべき場所だという感覚があった。
そうやって自分を痛めつけることが、生きていることそのものへの罪悪感を和らげる手段であったのかもしれない。

人生

テクノロジーはロマンティク。うっとりする。
サイエンスはエキサイティング。わくわくする。
アートはエキセントリック。びっくりする。
ストーリーはそれら全てを含んでる。
だから人ひとりの人生は                        。

無力や異常や弱さ脆さが直ちに罪になってしまう世の中から浮き上がったまま、
死ぬまでふわふわしていたい。

強さの意味

彼女の選択は正しい。世間を成り立たせるための、正論。
世間は私が居なくても成り立つけれど、私は世間がないと生活できないから、彼女が正しくないと困る。
私は正しくは生きられず、間違い続けながら、それを自覚しながらでも、生きられるだろうか。
それだけの強さを備えることができるだろうか。

色々なことに、慣れていかなくてはいけない。
心を硬くして、目を閉じて、耳を塞いで、
しっかり息を、吸って、吐いて、しゃんと立たなくては。
誰に後ろ指を差されても、世界から味方が一人残らず消えてしまっても、強く生きなくては。

Scienceに不可能なこと、文芸の挑戦

なぜ死ぬしかなかったのか。どれだけ考えても無駄だ。
scienceで説明できるのは「なぜ」ではなく「どのように」だから。
意識できるものはほんの一部であり、考えられる理由の全てが当てはまる可能性があり、
そしてそれら全ては本当の理由ではない。
本当の理由はけっして名付けられることがなく、本人も理解していない。

私の食べているもの

夕暮れ時、地平線のすぐ上の空を見るといつも、ひもキューのコーラ味とソーダ味の境目を思う。
それは、修学旅行とか、部活の遠征とか、記憶の中のキラキラした特別な時間。
そしてそれは、途方もない郷愁を伴っている。

帰宅ラッシュの帰り道にいる、振り切れた人たち。
ゴスロリっ子、全身ピンクの夫妻、モヒカン赤髪青年、仙人、ホームレスさん…
がんばれ、人々というモンスターと闘う戦士。

秋の夜中の散歩は好きだ。
暗闇と両手を繋ぎ、美しい歌を小声で口ずさみ、柔らかい冷気がちょんと鼻の頭を押す。
思わずてれ笑いをしてしまう、そんな時間。

魂の使い道

「成功」も「普通の大人」も甘いあまい私には荷が重すぎるのです。

正しさ? そんなのは頭のいい人に考えさせろ。
強さ? そんなのは頑強さの才能のある人に担わせろ。
美しさ? そんなのは外見に恵まれた人か預言者じみた奴に表現させろ。
優しさ? それならまぁ…、
苦痛についてはマニアだし?
ほんの少しなら任されてあげてもいい。

ロックンローラーの塊

ロックンローラーの塊がミキサーにかけられて、
何体かの肉体に配られて、
歌手や詩人や絵描きや職人やサラリーマンやらをやっている。

有希の鼻唄

「かたまり」を「たましい」って読んだんじゃない?ニヤリ
https://slib.net/95385

有希の鼻唄

有希は人々の20%に好かれ、80%に気にされず、20%に嫌われるような奴です。 ぜひ読んでください。 苦情を思いついた人はすぐページを閉じて去り、賞賛を思いついた人はTwitterからお願いします。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-11-16

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 彗星待機
  2. ラピュタ
  3. 純愛
  4. 大丈夫
  5. 本当に欲しいもの
  6. 死ぬまで騙され続けていられたなら
  7. 酷い幻想
  8. 意味と価値
  9. ニヒリスト?
  10. 素敵な提案
  11. 私にできる唯一の
  12. 喋らない理由
  13. 私の親友は青い
  14. 人生
  15. 強さの意味
  16. Scienceに不可能なこと、文芸の挑戦
  17. 私の食べているもの
  18. 魂の使い道
  19. ロックンローラーの塊