フルーツバスケット版権小説「縛られるなら帯が良いのです(紫呉×透)」(性的表現あり・軽い拘束・無料)
フルーツバスケット、紫呉×透、本番描写少しあり。ホテルで出版社の担当と打ち合わせが終わった僕(草摩紫呉)は、ホテルの部屋に透くん(本田透)を呼びつける。いつもの何かが足りない部屋で、透くんは健気にも、自分を拘束するものを探し……。
【人物紹介】
*草摩紫呉(そうましぐれ):十二支の戌に取りつかれているため、女性に抱きつかれると黒い大きな犬に変身してしまう。しばらくすると元に戻る。普段は和服を纏って家で仕事している小説家。透が同居することになった家の家主。
*本田透(ほんだとおる):草摩紫呉、由希、夾とひょんなことから同居することになった。草摩家以外で事情を知る数少ない人。父親を真似して身についてしまった丁寧すぎる敬語が特徴。家事万能の尽くしキャラ。長いストレートの髪、白い肌に細い体が特徴。
*草摩由希(そうまゆき)、草摩夾(そうまきょう):草摩紫呉と同じく、女性に抱きつかれると動物に変身する。本田透と同級生。
*はーさん(草摩はとり(そうまはとり)):草摩紫呉の幼馴染で一番仲が良い。医者。
「だーめーだよ、透くん」
夕日にはまだ早い日差しの中でも白さが際立つ、空気をも弾くことができなさそうな細い指。薄い手の甲を経て幹となる手首は、二本まとめても自分の掌にあっさりと収まる。
それを、彼女の頭上で一つにまとめ、左手で、僕が順調に発育に協力している胸をやんわりと揉む。薄い桃色の乳首はすぐに存在を主張し、それがなんとも可愛らしく、挨拶代わりに軽く一舐めする。
彼女の腰がびくびくと跳ねるのは、両膝で挟み込む。
逃れようとする腕の力がかすかに強くなる。それでも抑えるのに支障があるはずもない。
「ねーぇ、いつもの通り。分かるよね」
長い髪の毛がかかる耳朶に囁く。ここも舐めてやりたいが、髪の毛がこうもかかっていると舐めづらい。ホテルの大きなベッドをぴったりと覆っていたシーツは、彼女が動くたびに大きな皴を作り、少し色素が薄い髪の毛の束を軽く巻き込む。
左手は彼女の胸から離れようとせず、右手は彼女の両腕を拘束するのに使っているのだから、髪の毛をかき上げてやれないのは仕方がない。
「うん。そう。透くんが、自分で留めておいてね。我慢できないなら……、……ま、ん、そうだね。やっぱりいつもの通り、縛っちゃおか」
「でも……今日は……」
「今日は?」
「あの……」
彼女の、男に組み敷かれて何もできない躰の、ただ、目が、何かを探すように彷徨う。
「うん。今日は?」
彼女が探すもの――。
「今日は……どうすれば……よろしいのでしょうか……」
もう既にこうして男の躰に強く拘束されているというのに。
彼女が探すものは――
――自らを更に拘束するもの。
僕の、帯、だ。
すっかりと従属されることに染めあげられた彼女の意識が、堪らない。
昼間、僕や皆のためにお茶を淹れる姿も。
そして躰を重ねている、僕だけが知っている雌としても。
時として誰よりも強いところを見せるのに。隷属を好むようにしか思えない心と躰。
……あぁ。実際に躰を重ねているとは言い難いか。
彼女が僕に抱き着くと、僕が戌になる。この、快感の時間が、霧散する。
初めて僕が彼女を部屋に連れ込んでから、彼女が自らの両手を差し出すようになるまでに、部屋の月暦を一枚も捲らないで済むほどだった。
彼女は、鈍いが、聡くないわけではない。
「ん、そうだね。いつもの、無いよね」
出版社での軽い挨拶帰りに透くんを呼び出した僕の出で立ちは、カジュアルなスーツだ。
ホテルのロビーで僕を見つけた彼女の反応は好ましいものだった。
素敵です、その一言が。
元々そのつもりで呼び出したとは言え。想定より早く、僕は彼女を部屋に引っ張り込み、唇を奪った。
「いいよ、今日は。何で縛られたい?」
何を探しているのか僕に知られたことに気が付いたのか、彼女は僕を濡れた瞳で見つめた後、目を反らす。
「透くんの好きなものでいいよ? 何がいいかなぁ?」
白くて細い首が僕を誘う。少し酒が入った状態で眺める原稿用紙のように、僕はその陶磁の肌に吸い寄せられる。首元の隠せるか隠せないかぎりぎりのラインに口付け、彼女に聞かせるように、ちう、と音を立てて吸う。
「紫呉……さん……。あの……」
「ほうら、早く探さないと……」
遊ばせていた左手の指で、乳首を抓る。彼女がくっと背を反らし、足まで震わせる。
「大事なところ、触ってほしくないのかな? 透くんの好きなとこ」
「あ、そんなこと……」
「いいのかなぁ? ここだけで、ほら」
親指と人差し指、中指まで使い、片胸の先だけをこそばせる。
軽い刺激だけで、慣らされた躰は蠢き、女の香りを放ちだす。
「いいの? 僕の指……気持ちいの、知ってるでしょ?」
まるで秘部の突起を捏ね繰り回すかの如く、彼女の両手首を掴んだ親指の先で手首の一番細い箇所を素早く擦る。
「あの、ですが」
「いいの、このままで?」
「あ、あの」
何か言いかけた唇を、咎めるかのように塞ぐ。そして、強引に舌をねじ込み、彼女の小さな舌を探す。
雄弁だった瞳がきつく閉じられる。僕が舌で彼女の頬の奥を探ると、眉間に小さなしわが寄る。
甘い咥内を味わいつつも、左手での乳首への愛撫は続ける。
少し乾燥した指を濡らしたく、親指をしっとりと濡れた入り口に沿わせる。既に蜜を纏いつつも狭い間口は、襖に触れただけで僕をあっさりと受け入れ、広い部屋にも響く音を立てた。
もっと奥へと誘おうとするかのような足の動きを放置し、潤滑油を纏った指を再び乳首に這わせ、頂点に滑らせる。小さな膝が僕の腹を打ち、僕の舌で捕まえた舌がひくり、ひくりと動く。
その舌を飽きるまで遊びつくした後、僕はすっと彼女の口を解放する。
大きく息をついてから、ゆっくりと僕を見つめる。正面から視線を受けられたことに気が付き、また恥ずかしそうに顔を背ける。それを待ってたかのようにもう一度首元に舌を這わせ、跡をつける。
「ねーぇ、キスの間に、思いついた?」
「え、えっと……ですね……」
「んー? 僕は何でもいいよ。透くんが望むもので。ちゃーぁーんと、縛ってあげるからね」
「で、ですが……」
「ほぉら、早く決めてくれないと。夕食の準備、間に合わなくなっちゃうよ」
「は、そうでした、では早く」
彼女が小さな首を振り、辺りを見回す。
どこか、僕が思う一般的な思考とはずれた反応を示す彼女。
あの二人の夕食なんて放っておけばいいものを――。
一瞬でも、夾たちのことを頭に浮かべただろう彼女へのお仕置き替わりに、僕はまだ触れていなかったほうの胸の先を唇で掴んで引っ張った。
あ、と声を上げ、彼女は、今の現実を思い出す。
まだ柔らかい胸の先を舌で柔らかく転がしつつ、反対の胸は彼女の淫靡な香りを纏わせた指で弾く。既に乾きはじめた指先が痛かったのか、舌の刺激が気持ちいいのか、鼻息が漏れる。
「で、透くん、どうしたい? 和服じゃない僕に……どう縛られたい? あぁ、どう抱かれたい、って言ったほうがいいかな?」
「あ、あの……」
これまで見ないようにしていたかのように、ようやく、彼女の焦点が、僕の、まだ緩めてもいなかったネクタイに合う。
「これが良いのかな?」
彼女は、それが自分を拘束するものだと分かっているはずなのに、それを見て小さく微笑む。散歩を求めて自ら綱を探す犬のように。
「それなら、透くんが外して。僕の両手は塞がっているからね」
僕は彼女の腕の拘束を解き、身を起こす。首元に赤い痣を残し、片胸の先を自らの蜜の跡で光らせ、それでも普段の清らかさを失わない少女は、僕の下でゆっくりと身を起こし、僕のネクタイに両手を沿える。
荒いウール編みのネクタイの網目に手を添え、彼女が首を傾げる。細い指先が網目を広げるが、さすがに指は入らない。
「あ、あのね、透くん。これ……外し方、分からないのかな?」
「え、えっとすみません、ネクタイ……触ったことがありませんので……ごめんなさい!」
「だよねー。外したことがあったら、僕だって驚いちゃうよ」
ぺこっと頭を下げた彼女の額に、僕はキスを落とす。
「外し方も、結び方も、教えてあげるけど、ね。君が望むなら」
「は、はい。ありがとうございます」
まったく。男のネクタイを外すというのがどういうことなのか、分かっていないのだろう。
……すんなりと外されても、それはそれで興ざめだが。
僕が自分の指で緩め、そして一瞬で解き放つのを、彼女は驚愕の目で見つめる。
「魔法みたいですね……。簡単に……」
「そう? まぁ、またすぐに縛っちゃうけどね。ほら、また腕、あげて。あ、その前に、僕のシャツを脱がせてもらおうかな」
「はい、お任せください」
細い指がゆっくりと僕の胸を這う。露出していることを忘れているだろう白い胸が、ゆっくりと上下するのを上から愉しむ。少しまどろっこしいが、和服では味わえない楽しみだ。
「できました!」
「よしよし。透くんはいい子だねぇ」
美味しいお茶と和菓子を持ってきてくれたときのように、僕は透くんの頭をぽんぽんと撫でた。
彼女は初めて作った料理を誉められたときのように、にへらっと笑う。蜜を滴らせた躰のままで。
……あぁ、首輪、持ってくればよかった。透くんに良く似あう、深い赤の。
「さ、では続きをしようね」
僕は透くんの首輪姿をこの明るい部屋で見られなかったことを残念に思いつつ、両腕を軽く持ち上げ、手首を、外したばかりの紺色で軽く蝶結びにする。簡単に解けてしまう拘束。
抱きつかれたら戌になる僕が女性で性的に満足したいなら。まず相手の両手は縛り付けてしまうのが手っ取り早い。
行為の途中で戌になると、せっかく準備した濃密な空気が、一瞬で失われる。そこにあるのはなんとも間抜けな空間だけだ。
どのように対処するかは十二支それぞれだろうが、まぁ僕は結局ここに落ち着いた。
一本の縄が二人の間を彩った瞬間に。世界が切り替える。
先程までもお互いの躰と戯れていたはずだが、どこかで幕が上がる。
――きっとそれは僕だけが感じるのではない。
夜明け前に夢を見たあの日ほどではないが、ことわりが変わるのを、躰を重ねた相手となら共有できる、この世界――。
拘束した手首を、彼女の頭の上に戻す。素直に従う彼女の無防備な二の腕、そして脇へとちろちろと舌先を這わせる。そして、左手では彼女の胸の柔らかさを堪能しつつ、右手は、彼女の横腹、腰へとゆっくりと動かしていく。
両手で愛撫を始めた瞬間から、彼女の肌が一気に火照りだす。自分が手を引いて連れ出した相手が、自分を追い越して階段を駆け上がっていく。そんな幻想が堪らない。
片足を持ち上げ、内腿を何度も往復させる。何にも守られていない秘部を露わにさせないようにと抵抗を示すもう片足を軽く抑えてしまうと、あとは何の抵抗もない。右の親指と人差し指を薄い茂みに沿わせると、しっとりとした柔肉が指先を包み込む。
「こうされるの、待ちわびていたよね?」
拘束した腕の下、困ったような瞳で僕を見下ろす。更に困らせたくて、僕は人差し指と薬指で、貞淑な割れ目の横肉を辿る。時々ほんのわずかに中指で蜜の溢れる部分に沿わせてやる。
「んん」
甘い鼻息をあげ、縛られた両手を僕のほうに降ろしかけ、そして慌ててまた頭上に戻す。
「ん、そうそう。腕はそのままだよ」
手首を軽く縛って頭上に置いているだけなのだ。自分の意志で留めておくしかない。
お作法が今日もしっかりと守られているのを確認した僕は、遠慮なく中指を一本、泉に押し込んだ。
少しの愛撫で、指一本なら楽々と飲み込む。
中はこれほど好く僕に反応しているのに、快楽に溺れてはいけないことを自らに知らしめるように、彼女はきつく唇を閉じる。当初は痛がって閉じていたこともあったが、今は違う。
……そうか。
なにか物足りないのは、これだ。首輪もいいけれど、それよりも。
卑猥な閃きに、僕はうん、うん、と二回頷く。
「……透くん、ここがどこだか分かってる?」
「え?」
大きな目が開かれ、僕を見る。僕が浮かべているだろう黒い笑みを不思議な顔で見る彼女は、僕の思いつきなど解るはずもない。
「どーこかな?」
「あ、あの……」
焦ったように瞬きをして、僕の中指を締め付ける。彼女の心に合わせて膣口まで反応をみせるのが面白い。
急に抜いてまた差し込むと、「ひゃぁ」と軽く悲鳴を上げ、そして、「あ」と声を抑える。
そう。やはりこれだ。物足りないのは。
「どこかな、言ってみて?」
「あの……、……あ、あの……ホテル、と言えばよろしいのでしょうか?」
「そうだよ」
なんの変哲もない、先ほどまで担当と次回作の打ち合わせをしていたロビーの上の。正しい用途で使うなら何の変哲もない、部屋。
主に寝るために使われるはずなのに、夕方でもルームランプを必要ないほど無意味に光が差し込む部屋。
裸の少女をベッドに組み敷いているだけで、そこはおかしな空間になる。
……いや、そもそも組み敷いた段階でどこだっておかしな空間になるだろうが。
「えっと……突然どうされたのですか?」
「あぁ、そう。ホテルね。ホテルだよ。だったらどうするか分かる?」
「えぇと……」
「分からないかなぁ?」
中指を入れたままで、親指でくりくりと彼女の少し硬い部分を擽る。
「あ……んん」
「うーん、解ってないなぁ透くん。解ってくれないならこのままだよ」
ゆっくり親指の先で撫でているだけでは、透くんを涙目にさせることはできても、いかせるのは難しい。
「もう少し気持ちよくならないと駄目かなぁ。僕は今日、それだけを楽しみに来たんだけど。透くんったらひっどいなぁー」
「え、そんな、あ」
彼女が声を出しそうなタイミングで中指を回す。突然思いついたのに、まるで前から欲しがっていたおもちゃが転がってきたように気分が良い。
「そうそう。ちょっと解ってきたかな。もう少し、その調子だよ」
「え? 何を言ってるのか、あ、きゃ」
空いた手で乳首を押しつぶし、軽く捻る。
「こうやって上も下も虐められると、我慢できなくなっちゃうよね。透くんは。可愛いなぁ」
「あ……ダメです……声が……出てしまうのです」
「そ、それそれ。解った? ねぇ、僕、透くんの声が聞きたいな」
「声ですか? 声ならいつも、あ、んぁ」
「いつもの声ではなくってね、僕が聞きたいのは、透くんの、一番あまぁい声。解るよね?」
「え、ですが……」
「だーかーら、ここ、どこだか分かる?」
まだ解らないのか、それとも解ろうとしないのか。
……あぁ、そもそも、彼女をこう育てたのは僕だから、ね。
由希や夾が同居する家で、幾度も抱いてきたのだ。こう育つのも当然だ。
――薄暗い部屋で、僕が一日着ていた和服の袖を噛んで、声を押し殺しつつ。
それがいつもの、僕らの性行為――。
こんな明るく、ふかふかのベッドの上で、なんて。
僕らの関係は、そんなものではない。
……そう思うと、楽しくて仕方がない。
自分の歪さに向き合う瞬間は、嫌いではない。
すっかり尖り切った先を、舌先で丹念に舐めては、唇を当て。塗れた先に息を吹きかけると、腿で押さえ込んでいる細い腰がひくりと震える。
ぴったりと閉じられた、艶やかな唇。先程から結構攻めていると思ったが、んん、という軽い鼻声以外なかなか聞こえてこない。
「口が開けられないなら、せめて、僕を見て」
おそるおそる、と開けた瞳には、僕だけを映したい。
「……なぁんて言うとでも思った? まぁ、口も開けてもらうけどね。ほら、舐めて」
左の人差し指をぐっと彼女の唇に近づける。これが、そろそろ僕の指で気持ちよくなれる合図だと覚えた彼女は、素直に舌を出す。
その舌が指に当たる前にすかさず引っ込める。きょとん、とした彼女の顎を捕まえ、少しだけ開いた唇に、舌を滑り込ませ、舌を絡めあう。
子供のキスを知る前に大人のキスを覚えた彼女の舌は、なんとも僕好みに従順だ。素直に応じる舌に満足して、自身にすっと熱が入る。
「まだだからね。今日は透くんのいい声聞くまで帰さないから」
まだだ、と言うのは、彼女へ、ではなく、自分へだ。
今すぐにでも彼女の中を味わいたがる自身を宥めるように、唇から耳へとキスを繰り返す。
「ほぉら、手は、頭の上だよ」
「ネクタイが……むずむずするのです……」
「ネクタイ、嫌い? いつもの帯のほうが好き?」
「いえ、紫呉さんはネクタイも似合います!」
どうもいつも調子はずれな感じの会話になる。よくもまぁこんな会話をしつつ勃起していられるものだ、といつも冷静になってから思い出すが。
「そう? じゃぁ、家でもネクタイで縛ってあげようか?」
「え、そんな。縛るのなら、えぇとですね、えぇと」
白い背中や首元に流れ落ちる髪を愛でつつ後ろからも悪くはないが、やはり行為に溺れる顔を見つつ欲望を吐き出す方が好きだ。
「ふーん、ネクタイではなくて? 何がいい?」
「何と言われましても……あの……いつもの……」
「いつも、の?」
透くんが小さく頷く。
「いつもの……着物の……」
「着物の?」
「帯で……」
口付けの後より赤い顔で、彼女が囁く。それを見て僕の嗜虐心は一旦落ち着きを見せる。
「透くんは帯がいいんだ。へー、知らなかったなぁ」
「えっと……」
「じゃぁ、今度は帯で違うところ、縛ってあげちゃおうかなぁ~」
自分が何を言っているのかようやく気が付きさらに頬を赤らめる彼女の耳元で囁き、首元に唇を寄せる。柔らかい二の腕を軽く噛み、強く口付け、赤い跡を残す。
そのまま腋へ、腹へと舌でゆったりと辿っていく。僕の肩に触れさせた足がひくりと動いた箇所に辿り着くと、そこを丹念に舐め上げる。落ち着くと、また感じるところを探して下へと移動する。
薄い腹を通り、腿へ。スカートの下で見えなくなる内腿にきつく一つ、跡を残す。
そして、短すぎるスカートの裾にぎりぎり隠れるか隠れないかの後腿にも。
彼女を後ろから視犯する奴らにだけ判るだろう、彼女は雄に所有された雌である証。
夾たちだけではなく、彼女のクラスメイト達も、この白い肌の前では嫉妬の対象となる。はーさんまでもが、彼女を前にすると、随分と封印されていたやさしい笑みを浮かべたのだから、もう何と言ったらいいのだか。
透くんの人柄か。
いや。それだけではないだろう。こうして僕が大切に水を遣っている躰は、彼女が知らずとも男を誘う蜜の香りを漂わせているに違いない。
「ふぅ……あ、ん」
「透くん、まだ声、我慢したい? 僕としてはもっと頑張ってほしいんだけどなぁ」
「あの、決して我慢しているわけでは」
「ん? やっぱり出し方分からないかなぁ? もう少し、気持ちよくさせてあげないと駄目なのかなぁ?」
「そんな、こと、ぁ」
熟れた匂いを発しているそこにすっと舌先を当てると、彼女が息をのむ。
もう少しだ。
指先で泉を開き、濡れた粘膜を露出する。ひくりと蠢く部分で舌先を遊ばせると、彼女の両腿が拘束を解こうとするかのように激しく動く。
「どう?」
薄い毛の間を介して彼女を見上げる。解けかけたネクタイが辛うじて覆う手首はまだ頭の上で、二の腕に唇を押し当てている。
声を出さないように、と彼女が覚えたやり方だ。
舌で突起を大きく動かすと、彼女がぐっと自分の上に噛みつき、白い肌に赤が散る。
「駄目だよ、声を出したくなったら、どうするんだったかな?」
「あ、で、ですが……」
「僕がここを舐めているから、キスがねだれないって?」
彼女の瞳がしっかりと僕に絡みつく。大きな瞳がゆっくりと瞬きし、そして一筋の涙が左眼から音を立てずに流れ落ちる。
涙を拭う代わりに、中央から溢れ出た滴をすっと舐める。十分に潤ったそこは僕自身を求めてひくつくことを覚えている。
「でも、今日は、我慢しなくていいんだよ、ね?」
一度に二本、指をねじ込む。
「あぁ、ん」
大きな悲鳴を上げるが、すぐにぐもった声に替わる。彼女が両手で声を抑えたからだ。
「あー、駄目だったかな、ネクタイでは」
自らの口を塞ぐ彼女の手には、すっかり解けたネクタイが無残に引っかかっている。
「す、すみません、いつの間にか」
「やはり、いつものが良かった?」
「はい、外れない方がいいと思います! 申し訳ありませんが、もう一度、お願いできないでしょうか」
自身の体の中に指を入れ、今すぐにその細い躰を貫きたくて我慢も限界まで達している男に、自身と、自身を縛るための縄とをこうもやすやすと差し出すとは。
鴨が何か背負って行列でやってきたとしても、もう僕はきっと驚かない。
「んん、くくぅ、はははは」
腹の底から、笑いがこみ上げる。
あぁ、なんて、莫迦な子、だろうか。
「し、紫呉さん……?」
僕が突然笑い出した理由には思いが至らないのだろう。ネクタイを差し出したまま、首を傾げる。
「透くんって、さぁ……」
「……はい?」
体をぐっと動かし、お互いの睫毛も見える距離で視線を合わせる。
「ほんと、可愛いよ。僕の透くん、は」
この体勢は長くはもたない。何か言おうと動いた唇を強く塞ぎ、舌を押し込む。このまま舌が溶け合って、何も言えなくなればいいのに。
悦楽の台詞も、愛の言葉も。
そして、僕以外の、誰かを救う言葉も。
そう、僕以外の――。
彼女が僕を求めた証で濡れた手で彼女の両手首を掴んで頭の上に戻し、ゆっくりと唇を離す。彼女の両手首が定位置に落ち着いたことを確認してから、体を起こす。そして一気に貫いた。
漸く落ち着く場所を見つけた僕自身は、やすやすと彼女の中に入っていく。
最初こそ抵抗があったものの、今の彼女の躰はどんな僕でも受け入れる。黒い欲望も、ただ純粋なものを求める蒼い想いまでも。
「さぁ、透くん。今日は、可愛い声を出せるようになるまで、この部屋から出さないからね」
「え、ですが、そろそろお夕飯の」
「まだ、そんなこと言っているのかな? 解ってるよね、透、くん? 僕が満足しない限り、逃がしてあげないってこと」
両手で彼女の腿を大きく開き、自身で中を探る。小ぶりの胸が突き出され、ふるふると揺れるのを舐めてやりたいが、僕らの躰は限界をよく判っている。
これ以上は誰も近寄れない、近づけさせない距離を。
「ほぉら、透くん、まだ気持ちいい、って言ってくれないのかな? こっちの音より大きい声出してくれないと、帰さないよ」
大きなベッドがぎしぎしときしむ音。じゅぶり、じゅぶりと響く水音。その間に混じる、抑えようとしても抑えられない甘い吐息。
「もう少し、乱れてもらわないと、かな?」
「あ、あの、まだ続け、ん」
「そうだよ。透くんには、もっともっと、覚えてもらうからね。僕だけを」
そして、僕だけを特別に思うようにさせてみたい。
誰しもを受け入れようとする君だからこそ。誰からも愛されたくない僕だからこそ。
君が、僕だけを――
フルーツバスケット版権小説「縛られるなら帯が良いのです(紫呉×透)」(性的表現あり・軽い拘束・無料)
フルーツバスケットは、ずいぶんと前に放映されたアニメ(2001年度の大地監督版)を当時観て、紫呉さんにもうがっつりはまって、うっかり紫呉×透、紫呉×はとり、はとり×透、と節操なしに3作書いてしまい、それが自分の二次創作デビューだった(ような。もう忘れるほど昔)。岡崎律子のアルバムとか聞きまくったなぁ……。年賀状とかに紫呉さん、暑中見舞いに透くん描いたりしたなぁ……。和服の男性に色々されるのがいいなと思うきっかけは絶対紫呉さんだったと思うの。
……と。新しくアニメ化され……まぁ昔ほどの感動はないにしても、原作最後まで読んで、紫呉さんがどうなるか知っていても、結構頑張って真似したキャラクターデザインや、紫呉さんがきっかけで置鮎さんにがっつりはまった声が変わっていても、やっぱりつい見ちゃうよね。そして、何か書きたくなっちゃうよね。よね。
……紫呉×透の場合、個人的に、愛とか恋とか置いておいて、ちょうどよいところに事情知ってる可愛い女の子居るし何でも言うこと聞いてくれるし都合いいよね抱いちゃおうかくらいな距離感のままずるずるいっちゃいそうな感じが良いと思う。可愛いね、といいつつも自分のことしか考えず行為におよぶ感じで。まぁ二次元ですからね。
今回久しぶりに書いたのは、その個人的な好み優先で、紫呉さん視点一人称なので少しいつもより漢字多め、恋だの愛だの少なめ、にして書いてあります。
……今見ると、一番初めに書いたもの(https://slib.net/63454)はちょっと愛多めだったのね。この10年以上の間に歪んだのは、紫呉さんか、私か。(あの当時はまだ大地監督版アニメも原作も終わってなかっただろうし。)