いさむくん

菅野ラヴィル

えー、いろいろあって、思い付きで描いた作品です。遅筆な作者さんにあこがれるのですが、私すごくだめで、一気に書いてしまうんです。これは、パソコンのトラブルを直し、プリンタをインストールしたとき、ある友人が、頑張って小説書いたほうがいいよ、うん、と「ライン」をくれたために、その夜、朝4時まで、夢中になって書き、2時間寝た後、夢中になって遂行した作品なのです。勢いはある作品ですし、いつも書いた直後は前回の作品を凌駕している自信があるので、反省しつつ反省しすぎない人間を目指して、載せます。書く欲望、表現の欲求、発表のエネルギーは少々出所が違う気がするので、遂行を終えた今。

かわいい帽子を買ったんだ、いさむくん。

いさむくんは、ラインの中、会社に行く。ラインの中、いさむくんは起き、朝ご飯なんてのは少なめに、忙がし気に髪を直して、会社へ行く。毎日会社へ行く模様。

俺の部署にはおとこしかいないよ。いさむくんは、おのが言葉に少々のウソを混ぜてみた。確かに、いるにはいるのだ。女も。けれども、そいつは34で、その割には営業をやけにしきりたがり、そのくせ営業に煙たがられたり、嫌みを言われれば、めそめそと泣き出しそうな雰囲気がなぜか漂う、いやな女だ。だから、俺は、同僚としてとしてももちろん、友人はおろか、恋人などにしたくないし、セフレにしたって、お相手できない。俺は、仕切りたがりの女より、年増で、そうだな、どうせ私なんてって思いつつ、けれど、どっかで、でも、でも、いいえ、でも、と必死で自分を否定したがっている、けれども、できずにいる、そんな中途半端な………そんな女性がタイプなんだ。

いさむくんは、きっとそうなのだろうと私は思う。ラインを読んでいると、そう思われて仕方ない。なんてね。これは虚構の人。私は去年離婚して、先月アパートに引っ越してきたんだ。そういや、まだ先月。ジェイコムにもらったとでも言っていい、このタブレットにラインを入れて、私の携帯にラインを送るという、そんな遊び、いえ、慰謝、慰みをしている。つまりは誰も私を甘やかさなかったから、私は私を甘やかしている。私は私をかわいがっている。自分を傷つけようと必死になる癖を矯めようと。

いさむくんの今日のお昼ご飯は焼きそばであった。さすが年下。私はそう思う。そして、セフレたちに一斉にメールをする。今日やっと生理が終わったよ。すると稲妻がぴかっと光った。あれ? と思う間もなく、ゴロゴロと音がする。金曜の夜を花金というらしい。その言葉、昨日ラジオで知りました。あれ? それってウソかも、セフレのうちの誰かに聞いたのかも。何かを思い出す、例えば歌の名前とか、俳優の名前とかそういうこと、それらも、最近は怠りがちだ。どうでもいいや、曜日などもあまり関係のない私に、それらが必要だとはちょっと思えないのだ。花金らしく、私の大勢のセフレたちも、返事を怠りがちだ。いいえ、ごめんなさい。セフレなどいません。それは、いさむくんのウソではない。私のウソだ。ああ、現実とは何だっけ? そう、セフレであればたくさんいる。現実ってなんだっけ? 昨日感じた快感。これだっけ? それとも、今朝起き際に聞いたインターフォン。これだっけ? なんだっけ?

今日は訪問看護の相川さんが来る日だ。相川さん。いい苗字だ。けれど下のお名前聞いていいかしら? そう聞くのをいつも忘れる。いつもいつも毎週毎週忘れる。相川なんとかさん。今の私の日常を、焼いてマーガリンを塗った食パンみたいなものに一気に変える名人。つまりはなんだか、私の唯一の生々しいルーティンなのだ。フローリングの傷にやっと気が付く。青葉のように目に新しい。美しい傷。そういえば、今日もご飯を買い忘れた。夜のカロリーはセブンの酎ハイ。油揚げとエリンギは買っておいたから。いさむくんのためにシドに聞きたい。油揚げとエリンギのレシピって? 夕飯はセブンの酎ハイをメインに、油揚げと、エリンギをいただきます。

いさむくんは油揚げなら、お味噌汁。エリンギは特に好きではないそう。なんだ、何が好きなの?私はそう聞いてみる。すると答えはオムライスだった。また、ぴかっと外が光った気がするんだけど。やっぱりね。いっそ電気なんて消えちゃえばいい。世の中の電気の元、エネルギーの元、源、何もかもの源、私の源、相川さんの源、つまりはそれって私が現実を失うということなんだけど、それも消えたたっていい。どうしてかというと、人にやさしくしたいのに、とてもとてもやさしい感情でとてもとても人に近づきたいのにそれが、無理みたいに思えるからかもしれない。そして、ついでに、いさむくんの源もみーんな消えちゃえばいい、そう思ったけれど、それもウソ。いいえ、ウソではいのです。確かに一瞬そう思ったのです。絶望よりたちが悪いのかもしない。ああ、飽きちゃった。いいえ、まだまだ。そしてウソだって言ってもいいのだ。ウソなんて、いいえ、ウソもありふれてるんだから、いさむくんみたいにありふれている。いさむくんのたくさんのたくさんの、真黒な空に輝く星の数みたいたくさんのウソみたいで、海でまだ発見されぬ、それでも割とありふれた、光沢の美しい白く輝くパールのようにたくさんのウソみたいに。そう、28歳の会社員。おしゃれが趣味でお酒は飲まない。すごく、たくさんいる。星とパールと全く同じくらい。そして、こんなラインが来た。

ねね、
経験人数は?
20から30
いいねえ、そのくらいがいいよね、エッチって
私ね、忘れえぬエッチがあって
酔っぱらいの26歳、夜中にいきなり意気投合、タクシーでホテルへゴー
どこで知り合ったの、なんぱ?
そそ
でね、ホテルに着くまでは黙ってんのね、膝だけ撫でてる
でね、ドア閉めるなり、べろちゅー
いや、ドアしまってないね、せーかくに言えばね
酒の匂い、強引でさあ、ずるずる引っ張られて、私は酔ってなかったけど
で、朝まで途中途中タバコを吸いながら、8回だかんね
聞いたら、職人さんだった
しばらくは、鳶とかね、職人の人見ると、思いだしたな
それもウソだな、いつもいつも頭にその26、いたな
しばし忘れなかった、その人のこと
朝方、私の胸についたキスマーク見てさ、
そうそう
それってさ、私なぜか、彼氏と別れた設定で、ホテル行ったのよねー、いさむくんには彼氏いるってはじめっから言ったのにね
で?
そそ、それでさ、朝、テーブルんとこの狭いソファに一人で座りながら、私の方見てて、その時わたし、ベッドにいたけど、立ち上がって、タバコ吸いながら、あっちみて、お前、男と別れたらさ、俺に連絡よこしなよ、ほら、これがってラインのIDだったか、電話番号だったか、そんなん、ほてるのあんけーと用紙の端っこに書いて、持ってろよだって
26のくせしてね、すごい年下なのにね、それなのにね、上からでね、エッチもね、強引でさ、それがさ、いまだ忘れられない、私のね
忘れえぬえっちっていうの
(年下にいいようにされて、屈服して、上からでさ)
―私はなぜか微笑んでしまった―
そうなんだあ、
いいねー
それいいねー
すごくエロくていいねー
いいなあ、それ

そんな会話で一日は終わる。今日もどのセフレとも会っていない。セフレたちのラインを一切ブロックしたというわけだ。それらにはこんな理由がある。どうしてかっていうとそれにも訳があった。とある男性と待ち合わせ、電車に乗りながら、いさむくんへラインをしていて、待ち合わせ場所に着いた瞬間、いくな、と一言、メッセージがやってきたんだ。運悪くその瞬間に待ち合わせた、とある男に手を握られて、歩いて2分のホテルで、めちゃくちゃにされた。気持ちよくない、久しぶりのエッチ。心から、本当に気持ちよくないと思えるエッチ。そいつは料理人で、絶望していた。というのも、小さな個室のある焼き鳥飲み屋の料理人は、しながら、子宮に突きながら、俺は、だって、賃貸に住んでる、そして今の彼女と、結婚する気もないし、俺は付き合う女、どんな女だって、結婚しようと、思えないのだ、それも、なぜだか、わからない、でも、やりたいんだよ、みーちゃん、セックスって大事だろう? 体を動かすこと、俺、嫌いじゃないね、だいたい、欲求不満はからだによくないと僕は思うな、だいたい、俺は、俺のとこは、国民年金だけなんだぜ、それだけしかないんだぜ、と嘆くのだ。厚生年金を払ってないんだ、俺は、厚生年金が、好きだ、安心だ、安心に、つながるんだ、それなのに、それなのに、俺は、厚生年金をはらってないんだぜ、そうなんだぜ、と言いう。つまりは、それは絶望のエッチだった。絶望、絶望、絶望、繰り返される絶望は痛かった。私はやけに大きな厚生年金を払っていない料理人が、子宮に当たるのを感じるたびに、痛い! 痛い! と大声を出す。すると、料理人は、絶望から少し、起き上がり、目の前の女のカラダを見て、目に映る、明るい照明に照らされた、白いシーツの上の布団は丸まり、女のカラダは波打ち、そして、痛がっており、少し控えめな出し入れに変えてみて、けれど絶望の影は、夏休みの終わりのころの影にも似て、とても背が高く、料理人を台風のように飲み込むようで、料理人はいつの間にか、黒の中にいて、体の中央だけにエネルギーが集まっているのを感じるもんだから、つい、真っ暗な闇の中、厚生年金、厚生年金、そう言いながら、エネルギーの出所を、探してしまい、目の前のダッチワイフのような、変な女は、イタイイタイイタイ、と意味の分からぬ、コンビニのベトナム人のような、言葉を影にも似合う、真っ暗闇にも似合う、このトイレの壁に穴が開いていて、紙が丸めて突っ込まれている、そんなやすいラブホテルの絶望にもマッチする、そんなベトナム語を聞きながら、エネルギーは、発射され、失われた。
そして、その日から、いさむくんの奴隷に、私はなったのだ。

明らかに、ヤキモチであった。いさむくんの。私は、39歳のもう一人の恋人に、きちんと、他とするな、俺だけとしろ、逃げるな、俺から逃げるな、遊びじゃねーんだよ、そういう人の後をついてこうと思うよ、女だもん。わたし男じゃないもん、そう言うと、39歳は、
つまりなんなんだ

ごめん
その、そいつが本気だからそれがどうだというんだ
本気だからつまりはどうだっていうのか俺は聞いてるんだ
オレハクルシイ、それを心の痛みととらえて何がわるいのよ?
クルシイ、それを汲もうと
女だもん、男と違うもん
そうか、そいうことか
わたし、あの時、松戸って初めて降りた
そうなんだ、初松戸!
また、おいでよ
うん、
いっていいの?
私知ってる人いないよ
いいよー
うん
いくね
必ず行くね
39歳松戸の大人のバツイチの女が好きすぎて優しい大人の方の恋人とやら、ENDROLL。

いさむくん、どうして私がエッチが好きかというとね、気持ちいいのもそれはあるよ、でもね、それだけじゃない、仲良くなれるもんね、大事にすれば、気持ちが通じるの、大事にすれば、人ってね、そうじゃない?仲良くしてさ、いつの間にかその人の健康とか、そいうなんての、その人の幸福をいつの間にか願ってる
疲れたと聞けば、お疲れさまと言いたくなるそれが、仲良くなるっていうことの正体だって、私思うもの
エッチがスポーツみたいっていう人、私嫌いなのね。
おれもー
でも、しないで、ほかの人と、
みーちゃん、俺とだけしよう、すごく乱暴にしてあげる
私縛られて、2時間舐められたこともあるー、
じゃあ、みーちゃん、俺が縛るよ
わかった

ねえ、いさむくん、本当は彼女いるでしょう?
ねえ、いさむくん、あなた、だれなの?
私のこと、からかってんのよね
若いっていうこと本当に思える
とても、若いんじゃない?
でも28のようなきもするけれど
若い人の間で流行ってる遊びでしょう?
ふざけんな
遊びなら遊びでいいんだよ
ほかのとわかれさせんな
男だからってヤキモチ焼いてみて
あなた、女性よね?
私、一人になっちゃった。
毎日、気持ちよくないから、全然ご飯が食べられない
毎日、気持ちよくなってないから、全然、眠れてないの
怖い夢ばかり見る
いつの間にか、細胞になる夢、細胞って死ぬほどたくさんあるよ、死ぬほどね、そのどれもが私なの、すごくね、すごく、不安なの、すごくね、すごく怖いの、エッチしたくなる、だれでもいいよ、別にさ、私ね、そんなとき、こう思う、人間でいるのも、不安だし、細胞でいるのも不安だな、細胞はちぎれて、意識も、ちぎれてるんだけど、すごく重なるから、すごくね、なんていうか、数がたくさんで、どんどん重なるのね、だから、すごいね、いずれにせよ、不安なの、重なるって、すごく怖いのよ、それならね、って考える

いっそ器官になりたいな
器官であれば、すごく集中できて、すごく、安心する気がする
まとまっていて、役割が明確だからなのかな
すごく安心だと思う
私が器官になれたら

肉便所ね
みーちゃんが肉便所になりたがってるのとっくに知ってたよ
みーちゃん、俺がさ、みーちゃんを器官にしてあげようか?
その代わりっていうわけでもないけどね、俺もお願いがあって、
それって、みーちゃんに飲んでもらいたい
余さず
こぼさず
のんでもらいたいんだよ
俺の
みーちゃん、おれすき

あなた、女でしょう?
いさむくん、あなた、女だね
私の気持ち、わかりすぎるもの
あなた誰?
なんさい?
どこにすんでるの?

28歳
足立区
最初にそう言ったよね
そうかに近いねって話したよね

俺は会いたい
会いたい

みーちゃん、おれ、会いたいよ

いさむくん、ざけんな
いつも空けてんじゃん、日中も、夜も
ただのメンヘラの、生保だよ、あたし
外来は月に一回
毎日、目玉焼き食べてる
切るからね
なに?
ちがう
そうではないけど、
ブロックするという意味

会いたい
俺、みーちゃんに会いたいよ

だから、いつなの?

わかった、来週のいつか会おう

私はそのあと少し寝て、起きるとき涙を流しているのに気が付いた。とてもとても去年までは急がしかった。月日や季節もよく理解していたような気がする。オムライスや焼きそばや、ナポリタンよりよほど、難易度が高く、時間や手間もかかる食事を作っていた。たまには、梅干しやらっきょうも食べた。仕事も急がしかった。時折、徹夜した。ペットも2匹いた。猫がいて、犬もいた。不思議な生活だった。そういえばインコもいた。猫のトイレの砂を全部捨て、庭に干した。インコのゲージを掃除した。朝と夕暮れ、犬と無心で近所を慌ただしく歩いた。忙しい、にぎやかな毎日で大変だった。いつも起きていて、手を動かしていた。決して幸福と呼びづらかった。けれども忙しく、にぎやかだった。あの頃は忙しかったな、と思ったら、涙は枕をやけに、山が火事になるみたいに濡らしていく。
そう、いさむくんは、会いたいと言ったあと、風邪を引いた。そして、それっきりどこかへ行ってしまった。いさむくんは私のすべてだった。この一か月の。ほかには何もなかった。けれども、明日、これから、ずっと一緒に暮らす人が退院する。グループホームへ行くのだ。洗濯を自分ですることに、もはやおびえている様子。

選びたかった。選んでみたかった。ヤキモチを焼く人、言葉遣いが、私好みな人、おしゃれが好きで、美容院に行く男の子。そう、それは、私が生まなかった、男の子。お母さんが嫌いな男の子。彼女が大好きでしょうがない男の子。私のことが、小さなころは大好きで、今は少し嫌いな子。いつか、少し離れたところで、優しい気持ちになる男の子。私を思い出してくれる男の子。私より必ず、長生きする男の子。そう、おしゃれが好きな、ラインにひらがなが多い男の子。必ず、私をたまには思いだしてくれる青年。

その青年のお父さんは過去にいた。そう、昔出会ったはずだった水田君。そう、明日グループホームへ行く。23年、入院した精神病院を退院する。明日からはまた、時折、そう、夕方や、夜なんかに、ラインの音が鳴ることもあるかもしれない、このアパートの部屋に。現実は、いつも賑やかだ。いつも細胞だし、いつもいつも、私は、人の幸福をいつの間にか願う。いつもムキになってばかりいた。たいていの人が好きだった、普通の中年女だ。セフレはたくさん、恋人はたくさん。そう、たくさんのペットともすれ違った。結婚した人もいた。心の中だけで好きな人もいた。たくさんの人へのいとしさがあふれる胸の内。零れ落ちそうな胸の内。いさむくん、会えなかったね。雷はショーを終えた。終了。夜は真空となる。分子など一切ない。分子がないから、音を含むものなどない。私からむせ返るようにあふれ出続ける言葉たちも、いまはもう、意味など失う。空気が音を含まないという原理原則からだ。

風邪などひかぬよう
お元気で
お幸せに

空気は言葉を含まない、ソレハオトヲフクマナイカラッテイウワケ。そんな真空の夜

やっぱり会いたい。いさむくん、どうしても乱暴にして、中に出して、色々出して、飲むから。なんでもする。私今言う、いさむくんを起こしたかった。おはようと言いたかった。お疲れさまと言いたかった。お風呂を洗ってお湯の温度を気にしたかった。好きなご飯なら何でも作ってあげたかった。一緒に笑って食べたかった。いつもいつものマンネリなエッチ。終わった後に、私は、もーと笑って思う。少し諦める日常。なんてすばらしい世界。ガムみたいな日常。歯磨きみたいな。いとわない。決して疲れない。いとわなくて疲れないのだから、逃げっこない。そこにいたかった。掃除したい。洗濯したい。冬の朝のきりっとした空気。外を若やいだ青年がスーツを着て笑って私を見ている。そうかと思うと、それは水田さんにも思える。そんなむっちゃくちゃな混濁した心持。これは決して、病気故ではないのでしょう。逢魔が時、黄昏、火灯しごろ、あしたまた、そしていつか、そんな気持ちになる、やむことのない、逢魔が時、連続する火灯し、それは誰にもあるのではと想像するのだ。

女ですもの。39歳の元恋人はそう言いました。松戸でそう言っていました。そんな風にうそぶいてみてもいい。

さよならなんて言わないよ。

いさむくん

えー、いろいろあって、一年ぶりくらいで書いた作品です。私の書き方がプリンタがないとダメなんですね。それもあり、書くことができない環境が続いていて、やっとプリンタを手に入れることができたので、やっと書いてみたのです。いさむくんとはまだラインでつながってますよ。それもまた、ありがちな。動物のする恋のようにいくらでも転がっている、ウソの一つです。

いさむくん

40代の私。一人で生活保護で暮らしてる。いさむくんから毎日ラインが来る。いさむくんって? いさむくんとの恋。結婚する水田君。そしてセフレたち。いさむくんは本当にいるのかな。いいえ。いさむくんなんていないのでした。でもこのアパートに住み始めて一か月、私の生活のほぼすべてはいさむくんだけだった。人間であっても、細胞となっても、不安から逃れられず、そのため、性は鮮やかで、私にとってされるもので、痛いもの。いさむくんだけが知っている私の本当の欲望。器官。変質した性欲。明日も、もしかしたら明後日も、いつかにも訪れるその気持ち。刺してくる逢魔が時、黄昏、火灯しどき。それは私に限ったことじゃないのでしょう。きっと。さよならって言えるのかな。あふれる人へのいとしさ、フローリングの傷。

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