愛した花
好きだ。ヤマナ。
思い出のひでり
花が咲いた。
それは、不思議な花。
生命を与える花。
いのちがなくなるとき、この花は泣いた。
それは、ある少女がひとのために尽くした、少女の化身の花。
いのちがなくならないように、花は泣き、みるひとをなごませた。
涙は、心をいやし、水となり太陽にあたれば、心をうつくしくしてくれる。
花の時
花が死んだとき、人々は忘れていたことを思い出した。千年の月日でやっとそれを思い出した。
この花、最後の《いのち》である。
たったひとつしか地上に残っていない。
こころが汚いひとには、この花は咲かない。
ずーっと、大切にされるときを待つ。
空が青いこと。
それは、その花の願いの《夢》。
花はうつくしい。
太陽は、水にあたり、
うつくしく咲いて。
千年のかなしみ
花が枯れてから千年間、空がさびしがった。
花は、もうとっくにこの世にはない。
空は心配で《花》が笑っているかどうか考えていた。
雲は、どこか黒い妙な気持ちになっていた。
海は、空と同じ気持ちでいた。
地面は、割れて怒った。
竜が、白い竜が現れた。
その竜は、深い深い海の中と空の空の上へ住んでいたという。
その竜が、息を《ブオオオオオン》と吐くと、花が生まれた。
雲行きがあやしくなり、雨が降った。
三日後、久々に空が笑った。
太陽のひでりは強い。
人々は、めずらしい、と感じた。
そらが、晴れ、星がきらめいた。
ある少女
竜神さまを、尊敬する、ある少女がいた。
そらを海を、自然を司っていることを、知ってた。
竜神さまは、少女が好きだというと、竜神さまも大切にあつかった。
いつも守ってた。
その少女を。
少女は、自然が真っ白になると知り 、大急ぎで、竜神さまのもとへ行った。
竜神さまは、《消えてもあり、あっても消えてゆく》と言った。少女は、《止める。止めてみせる》と言った。
少女は、大自然だった、地上の世界と、青い、青い空と透き通った海を見せられて、その時代へと連れてゆかれた。
だれもいない。
動物、植物だけ。
その時代
少女は、しばらく、過去の時代で遊んだ。
とても楽しかった。
食べてもいいもの、食べてはいけないものがあると、竜神さまに教えられた。その分だけ食べた。
少女は、大人になった。
胸が膨らみ、顔丸く、目は黒目が大きく、黒髪。ウエストは、くびれてる。服装は、白い、布をまとった。
大自然で暮らすと、少女が十八才になる頃に、竜神さまが現れて、《そろそろ帰ってこい》といった。少女は、うたた寝していた。竜神さま、笑って、《花にするゾ》といった。
過去の記憶は良かった。
しばらく、少女は、元の時代へ戻るとき、ふしぎな空間へ入っていく感覚を感じた。それは、太陽が、一日に何十回も昇り降りする。
少女、ヤマナ
その後、時間がやっと調節されて、もとの時代へと帰った。少女が、竜神さまにお供え物の果物を差し上げたとき、大事なことを忘れてしまっていることに気がついた。
《あ、あれ。あたしの指輪がない》
それは、大自然の中にいるときに鳥からもらったものだった。
《指輪?それは、もって帰ってきてはいけない。》
竜神さまは、ヤマナに、《あの、食べ物は食べてないだろうな?》と言った。ヤマナは、首を振った。竜神さまは、《そうか。そうか。》といって、空へ帰った。
ほこら風
ヤマナは、小さな神社のほこらにいった。
木々がざわめいた。気持ちいい風も吹く。
ヤマナは、そこでお祈りをして、しばらく自然を感じた。
《すっごい。神様がいる。》
ヤマナは、今の時代では、十五才だ。過去の世界では、十八才になっていた。ヤマナはうたい、村へ帰った。
晩ごはん
夜、星たちぶつかった。《キュワーン》《キュワーン》ヤマナが、晩ごはんを食べてるときだ。空に何かが追って来ているのを見た。《ヴァアン》地面に何かが、落ちた。そして大爆発が起きた。
晩ごはんどころではなく、だいさんじ。
星影は、飛び、満月がギラギラと光る。
出された料理は、野菜と果物のみ。
晩ごはんの時に夏の異常な暑さを感じた。
その時、葉が散った。
《竜神さま。竜神さま。何とかしてください》
ヤマナ祈った。
その時は、何も起こらなかった。
《花と剣、どっちになりたい?ヤマナ》
声だけ聞こえた。
《花にしておこう》
ヤマナは、そのまま声を聞き、意識を失った。
そのまま夢をみた。
七日間の夢
夢は、七日間、続いた。
ヤマナは、小さい頃から、《竜神さま》と一緒にいる。
ヤマナは、小さい頃は、神様と一緒に遊んだ。
大爆発のあと、人々は、夢を見ていた。
真っ白い空間にいた。
好きだ、ヤマナ
【ホワイトホールド】という空間に、ひとつの虹が現れた。そこに竜神さまはいた。竜神さまは自然を駆け巡った。《好きだゾー。そなた》竜神さまは、そういって、ヤマナに抱きついた。
その後、《ヤマナよ。気に入ったか。その花は》
ヤマナは、花を散らして遊んでいた。
《この花、かわいい》
《そうか。そうか》
笑った。
竜神さまは、ヤマナに会うのが、楽しくてたまらなく感じた。でも、ヤマナがいつか、死んでしまうことを考えると、あの【花】のように、散って、老いぼれれば、世界の時計が止まってしまう、と考えていた。
《ヤマナ、永遠に生きてくれ》
竜神さまは、ヤマナに【死なない】食べ物を与えていた。そして、【死ぬ】食べ物は、一切与えなかったのである。【死ぬ】食べ物は、【百重の花】という、花びらが、いくつも重なった花だ。人間は、この食べ物が好きだった。
《それだけは、避けねば》竜神さまは、気をつけていた。
《ヤマナは、私の女になるのだ》
ヤマナは、そんなこと知らなかった。
《私が、ヤマナを触れるとき》
ヤマナは、どう思う?
ヤマナは、人間。
私は、神。
永遠に、私の女。
死なぬよう。
老けぬよう。
私と同じにする。
愛した花
私と同じようにせねば。
ヤマナは、普通の人間と友人を作るようになった。
小さい頃から、竜神が育てた娘であったが、【アマテラス】に頼み、竜神さまに育てられたことは、隠しておいた。
チセトという少年とヤマナが一緒にいる。
《なあ、ヤマナ》
《なあに。チセト》
《あー。お腹すいたなー。》
《そうなの?》
《これ、食べる?》
《ありがと。ヤマナ》
あっ。
あの食べ物は。
竜神さまは、見ていた。
《ならぬ》
《やっては、ならぬ》
《ゲキマズ。ヤマナ。これ、腐ってるぞ》
《えー。チセト》
《これ、食えよ。俺の持っているのが、おいしいよ》
《えー。》
竜神さまは、泣いた。
少女の記憶は、ここ止まっている。
そのまま、この少女は、竜神さまが、
《私の。》
といった。
その後、少女は【花】になった。
そして、千年の間、そらに穴があき、アマテラスたちは、地上に直下し、花が、散った。
【愛した、花】
愛した花
どうしてだ。ヤマナ。