【そこのね】
【そこのね】
重力の底値、
落ち窪み 今や月も掃いて
曇り払いても 運去りて
酔い已みに惑うばかりです。
今来た道を躊躇いほとほと癇癪を興す、
子供のように身を散らし幾度も嫌厭する
慟哭する風は何をふやかすか
緩んだ身いっぱいに雫は溢れて。
惰性にも寝転んだのがまずかったのだ。
もう起き上がる術も緒として終い、
とも、塗れてしまったのだ。
さぞや安っぽく動けそうもない有様
地面に這い擦るざまがさぞや滑稽であろう。
どうせ誰もいやしない
夢を見たのか現なのか。
懐かしい面が私を除き混んで浮く。
これが屹度、走馬燈なのだろう
生暖かい彼方の掌のように、」
塔からはんなりはらりと
熱い雫が墜ちましょうか。
いいえ、
深々日を浴びる
新緑の雑草に身を横たえ
空を見下げただけですから。
慟哭する名残だけが私を
髪は残薔薇に混沌して
やおら 靨だけを撫でてゐった。
【そこのね】