思いもしなかった

思いもしなかった

ほんとうに
思いもしなかった

あなたを 指差して
裁いて 遠ざけて
無視して

ドアをバタンと
音を立てて締め切って

その振動が
背中から私の心臓に
少しずつ小さなひびを入れながら
気づかせようとしていたのに


ほんとうは
こっちを見てほしいだけ

わたしが
どんな顔をしているか
どんな仕草をしているか

今日は目が腫れていて
髪がはねているとか
ちょっと喉か枯れていて
鼻が詰まっているとか

そんなことが
ほんの何秒でも
頭によぎってほしかった


そんな
思いもしなかったことを
突き付けられて

驚いて
唖然として

猫背で立ったまま
閉めたドアを見る

あなたが覗きこんでくるのを
ただずっと
待っている

思いもしなかった

思いもしなかった

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-02-05

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