「いらっしゃいませぇ」

「いらっしゃいませぇ」

お前のために来たんじゃねえよ、能なし女が。
しかしどれもこれもゴミばっかだな。何だ、このボールペンは。頭を押すと引っ込んだままちょぼが出て来ないぞ。ペン先が元に戻せないぞ。どうするんだこれは。
「いらっしゃいませぇ」
うるせえ。いちいち口を開くな。俺を見ると何か喋ろうとするなこいつらは。口を引き結べ。ゴミばっかりを売ろうとしやがって。このたわしも三つも袋にまとめて百円で売ろうとしやがって。その三つに分散された労力を一つにまとめろ。クズが。
「いらっしゃいませぇ」
何か言わないと気が済まないのか。気が散るじゃねえか。それになんだ、この安っぽい飾り付けは。お前等のお誕生日に来てるのではないんだぞ。
「いらっしゃいませぇ」
だまれ。いちいち反応するな。俺は探し物をしているんだぞ。色々と売ろうとしやがって。こんなに多くては見つからないぞ。もっと焦点を合わせろ。探さなくてならないではないか。
「いらっしゃいませぇ」
また言いやがった。この野郎。馬鹿にしてやがるのか。何処にあるんだよ。複雑に隠しやがって。所狭しと並べてよ。お前等の趣味かよ。お前等の趣味には付き合うつもりはないぞ。
「いらっしゃいませぇ」
それをやめろ。馬鹿にしているのか。よくぞ、いらっしゃいました、ご足労頂き有り難く存じます、お喉は渇いておりませんか、とか言え。お前等は言葉の意味をしっかり勉強しろよな。俺は何回いらっしゃってるんだ。お前等の趣味に付き合うつもりはねえ。
「いらっしゃいませぇ」
もう駄目だ。俺はもう帰るぞ。不愉快だ。
「いらっしゃいませぇ」
帰るんだよ。土人が。
「いらっしゃいませぇ」

「いらっしゃいませぇ」

「いらっしゃいませぇ」

「いらっしゃいませぇ」と心の動き。

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-11-20

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted