くもりぞらとにじ

白石 あめ

僕ほど説明が簡単な人間はいない。

特異したことが何もない

ごくごく普通で平凡であった

そんな簡単な人間



夕闇が雲で覆いつくされて

夜の空が低くなった

憂鬱だ、なんて 考えて

ふと上を見上げると

月の光が差していた

月のみえるところだけ

雲にぽっかり穴が空いて

こちらを覗いて 何かを試しているようだ

光は僕のためではない

僕以外の誰かのための光

きっと僕が唯一 "君"と呼ぶ人のための



僕のくせは ため息だと

君はある日こう言った

その日から 君を忘れられない

僕の人生の中の 数ある人たちの中の一人であった君が

人生の主要人物に変わりつつある

君のことを思わずにはいられない



はぁ、



僕がため息をつくたびに 君は


パチンっ


僕の口元で手を叩いてこう言うんだ



「幸せが逃げちゃうよ。」



あ、好きだ。この人のことずっと好きなんだろうな。



僕の気持ちなんて知らんぷりして 君はニヤリと笑って



「こうやってすれば 幸せが戻ってくるんだよ。
 
ため息するときは 私の近くで してよね。」



君への想いは確信に変わる


こういう人だ


君はそういう人だ


誰だって優しくて


誰にも興味がないんだ


わかっていながらも


やっぱり


君のそばで



ため息をつくのは、やめられない

くもりぞらとにじ

くもりぞらとにじ

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-10-24

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