〇〇■は 僕に殺される

頭の中から抉り出すような

そんな感覚だった

抑えきれない思いを

どこの誰につけてしまおうか


ラムネが好きだった

シュワシュワと不健康な音を立てて

僕の身体と肌に染みていく

綺麗な世界だと思った

そのビー玉の中身は

でもこの世から都合の悪いものだけを除いた

子供が見ているような世界だった


〇〇■につけられた傷の数々

彼らは僕の身体を這って

目をやるたびに ひどい記憶を思い出させてくれます

見える傷なんてなんてことないのに

もっとひどいのは別の場所

〇〇■には一生わからないでしょうね


この世で1番強い人はだあれ?

いつか母親に聞いたことがある

それは 正義の味方だよ

なんて母親は言っていた

正義の味方は強いのだろうか

もしも悪者の方が強かったら

正義の味方はどうするんだろう


そう言ったら あなたは


それでも正義の味方は戦うよ、だって正義の味方だもの。

名前だけの説得力は強いものだ


あなたは笑った

そして一粒付け足すように 一言吐いた


負けてしまえば、悪者が正義の味方になるのさ。

いつだって世界は強者が基準なんだ


ああ、残酷

夢を見ているように肩を落とす感覚だった

心底がっかりするような


僕はあの時 なんという名前の感情を抱いたのだろう


誰にも負けない強さが欲しい

もう痛みを感じたくない

臆病な僕は不純な理由で

この世で1番強い人」になった

不自由な自我

不自由な世界


強さを手に入れたって安易に生きていけるものではない

僕は正義を好んではいなかったし

悪徳に手を染めたいわけでもなかった


__この電車には優先席がございます。

____お年寄りや体の不自由なお客様、乳幼児へのご協力をお願いいたします。


そんな電車内

窓の外を通り過ぎるいろんな景色

僕は本当に強いのか


そんなことを思いながら

あなたに会いにいく


それだけが僕の救い


僕は強くなった


僕はまだ 何も手に入れられない


世界がついに僕のものになった


僕は 何者でもない


不自由な東京

不自由な僕

不自由 


不自由


不自由な〇〇■

〇〇■は 僕に殺される

〇〇■は 僕に殺される

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-10-13

Copyrighted
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